TS転生悪役令嬢、仮面のヒーローになって無双する~婚約破棄されたけど気にせず闇落ちルートを回避しつつ成り上がります~   作:折本装置

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「海洋都市オデュッセイア」

「久しぶりの王都でありますわね」

「ああ、そうだね、こうやって会うのも久しぶりだ」

 

 

 ウッドペッカー邸の中庭で、ローグと、ヴェーセルがお茶会をしている。

 彼女たちの傍に、それぞれ彼女たちのメイドと執事が控えている。

 

 

「これ、お土産ですわ。よかったらどうぞ」

「ありがとう」

 

 

 ヴェーセルが手渡したのは、先日遠征した鉱山都市からの土産である。

 人々を襲う怪物ゴレイムに対しての唯一の対抗策である仮面騎兵。

 王国のあちらこちらでゴレイムが発生するがゆえに、彼女たちは王国中を飛び回っている。

 

 

「それで、今回の用というのはなんですの?」

「ああ、遠征に行ってもらいたいんだ」

「遠征?」

「ああ、ヒールに、ね」

 

 

 ヴェーセル・グラスホッパーが仮面騎兵ヒールになってから半年が経過した。

 王都でのアメリア・ローズマリー事変や、先日の鉱石都市崩壊事件など、ゴレイムが起こした事件を次々と解決してきた自負がある。

 

 

「別に遠征なんていつものことですし、改まって説明する意味がなくてよ」

「確かにそうだが、今回は少々事情が異なるんだ」

「とおっしゃいますと?」

「海洋都市、オデュッセイア」

 

 

 そう言われて、ヴェーセルが顔を上げる。

 馬鹿な、と思った。

 そこだけは、ありえないと思っていたからだ。

 

 

「あそこは、既に別の仮面騎兵が派遣されているはずでは?まさか、死んで……」

「いや、そういうわけじゃない。順をおって説明する」

 

 

 ローグは、紅茶に砂糖を入れてかき混ぜてから一口飲む。

 ヴェーセルも、紅茶に口をつける。

 ヴェーセルは紅茶に砂糖やミルクは入れない派だ。

 紅茶特有の風味がなくなってしまうような気がするからだ。

 

 

「まず、オデュッセイアには二年以上前からずっとゴレイム騒動に悩まされている。理由は二つ、原因となるロックゴレイムがまったく見つからないこと。そして、ロックゴレイムが作り出しているゴレイム達が多すぎたことだ」

「ええ、それゆえに仮面騎兵が一人、常駐しているとのことでしたが」

「だが、王都にゴレイムが出たことで状況が動いた」

「確かに、あの時から法律が変わりましたわよね」

「ああ、『仮面騎兵は最低でも一人は王都に居なくてはいけない』というものですわね。合理的と言えば合理的なのでしょうが」

 

 

 先日のアメリア・ローズマリー事件があって、王宮は貴族街と自分達のみを守るためのルールを作ったというわけだ。

 王都は政治の中心であり、要人の居住地である以上間違いだとは思わない。

 思わないが、それを選択することで王都以外が手薄になってしまうのは事実だ。

 

 

「さて、オデュッセイアに一人、王都に一人では、動かせる人員が少なすぎる。そこで、いっそのことオデュッセイアの問題を解決してしまおうということになったそうだ」

「つまり?」

「仮面騎兵の数は、合計四人。ゆえに、王都に残らねばならない一人を除いた三人でオデュッセイアに向かい、その戦力を以てロックゴレイムを落とす、というのが作戦だ」

「な、なるほどですわ」

 

 

 ヴェーセルとしても、事情は理解した。

 長い間ゴレイムに苦しめられている人々を救える作戦ということ。

 ヴェーセルにとっては、参加することに異論はない。

 

 

「でも、どうしてワタクシのところには説明がされてないんですの?」

 

 

 このような作戦があるならば、ヴェーセルに国王陛下から指令が下るのが筋というものだ。

 

 

「それはその、ヴェーセルは本来この遠征に参加しないからだ。作戦には私と、あとの二人で当たる」

「……そういうことでしたのね」

 

 

 でも、今遠征してくれと言われたのではと言おうとして。

 

 

「ああ、そこで相談なんだが」

 

 

 ローグは、頭を下げて。

 

 

「私と、代わってもらえないか?」

「はい?」

 

 

 ヴェーセルは首を傾げた。

 しかしすぐに理解する。

 この遠征は本来ローグの担当であり、そしてローグは参加したくないからヴェーセルに代わって欲しいのだと。

 

 

「実はだね、二人のうち片方とは一緒に仕事をしたことがあるんだが」

「あるのだが?」

 

 

 首を左に傾ける。

 可愛らしさのあまり、傍にいたメイド三人は悶絶していた。

 

 

「その一緒に仕事をした仮面騎兵とちょっとしたトラブルになってしまってね……。それもあって少々気まずいんだよ」

「ええ……」

 

 

 もちろん、仮面騎兵とて人間だ。

 人間関係のトラブルだって起きうるし、それで仕事がしにくくなることだってあるだろう。

 

 

「そんなに問題がある人なんですの?」

 

 

 仮面騎兵、ということはヴェーセル達と同じく転生者であるはずだ。

 ヴェーセルもローグも、現代日本で生きてきた前世の記憶を有している。

なぜ転生者だけが仮面騎兵に変身できるのかはわからないが、残る二人も転生者ではあるはずだ。

 

 

「いや、どちらかというと私の方に原因があったというか……。まあ、悪い人間ではない」

「じゃあ何でもめたんですの?」

「だって、全然原作わかってないから」

「あっ」

 

 

 今の言葉で、すべてを察した。

 ヴェーセル・グラスホッパーたちが暮らしている世界は、現代日本とは違う。

 『ドラゴンライド・アルブヘイム』という戦闘系乙女ゲームと同じ世界であり、ヴェーセルやローグはそのゲームにおいて闇の力に呑まれて死亡してしまうネームドキャラクターだったらしい。

 なぜ、そんなゲームと同じ世界があるのか、そしてこんな世界においてどうして生まれ変わっているのかはわからない。

 わからないが、現実に起きていることではある。

 閑話休題。

 ローグの前世は、元々重度のオタクであり、『ドラゴンライド・アルブヘイム』もかなりやりこんでいた。

 それゆえに、彼女は原作のキャラについても当然詳しい。

 つまり、ローグが、というか彼の前世がその人物(キャラクター)に対していわゆる解釈違い(・・・・)を起こしてしまったというわけだ。

 

 

「まあ、別に構いませんわよ」

 

 

 ヴェーセルは、ふうとため息をついた。

 『ドラゴンライド・アルブヘイム』というゲームを前世で一切触れてこなかったヴェーセルとしては、どちらでもよかった。

 そもそも、一つのゲームをやりこんでいた人間がたまたまこの世界に転生する確率など、たかが知れているはずだ。

 その程度の違いを気にする方が珍しいだろう。

 

 

「……貸し一つ、ということにしてあげますわ」

「すまないね」

「別にいいですわよ。オデュッセイアのお土産を楽しみにしてくださいな」

「ちなみに、むこうでは新鮮な魚介が特産品だね」

「露骨な催促やめていただけませんこと?」

 

 

 ヴェーセルはため息をついた。

 確かに、刺身なんかは食べたいなと思ったが。

 

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