TS転生悪役令嬢、仮面のヒーローになって無双する~婚約破棄されたけど気にせず闇落ちルートを回避しつつ成り上がります~   作:折本装置

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「三人目の事情、そして」

「ああ、なるほど」

 

 

 確かに、仮面騎兵に子供を作ることはできない。

 だが、選ばれる前に作っておけば血は繋がる。

 同時に、彼とヴェーセルとの違いも見える。

 それは、性格や能力ではなくて社会的地位の問題。

 

 

 ガンドックも、ヴェーセルやローグと同じ転生者であるということは間違いないだろう。

 だが、彼の年齢はどう見ても三十代。

 結婚し、子供を作り、大人として社会的地位を確立していったはずだ。

 だからこそ、このように多くの部下を従えているのだろう。

 少なくとも二十人はいる。

 あるいは、ヴェーセルもあと二、三年結婚が早ければ子供を作っていたのかもしれないが貴族の社交界に出る前に生殖能力を失ってしまったので考えても無駄である。

 

 

「アナタが仮面騎兵になったのは、いつからですの?」

「俺は一年程度ですぜ。ヴェーセルさんは確か二か月くらいでしたよね?」

「ええ、まだまだ若輩者ですわ」

 

 

 この二か月、本当に色々なことがあった。

 

 

「ですが、新参だからと言って何もしないつもりもありません。アナタ方がそうしてきたように、ワタクシも仮面騎兵として、人々を守ります」

 

 

 仮面騎兵の代替わりのシステムは、『仮面』によって成立する。

 装着している『仮面』が破損することで、仮面騎兵は死ぬ。

 そして、四人が全滅することで新たな仮面騎兵の選別が始まる。

まず、神龍樹が仮面を生み出して、資格者に渡すことで新たな仮面騎兵が誕生する。

 

 

「確か、オルクハイドは二年だったかなあ」

「ああ、じゃあローグが最古参なんですね」

 

 

 ローグが仮面騎兵になったのは五年前である。

 それこそ、友人になった時点で彼は既に仮面騎兵に選ばれていた。

 ちょうど先代仮面騎兵が全滅したのだとか。

 

 

「ワタクシは、人を守り、自分を見てくれている人に誇れるヒーローでありたいと思っていますの」

「そっか、じゃあ俺も同じですね。息子に、妻に、家族に誇れるヒーローになりたいって思っているんでね」

 

 

 そう言いつつ、ガンドックはロケットを開いて見せてくる。

 そこには、ガンドックと一人の女性、そして五歳くらいの男の子が映った写真があった。

 

 

「ああ、この子がガンドック様の?」

「ええ、本当に、家族はいいもんでさあ。前世では仕事と趣味ばっかりで結婚なんてできなかったから、今こうして家族を持てたことが本当に幸せで仕方がないんです」

「では、猶の事頑張らなくてはいけませんわね」

 

 

 すっと、ヴェーセルは右手を差し出す。

 ガンドックも、その手を握った。

 

 

「仲良くなれそうで安心でさあ。俺、どういうわけかローゼイドとはどうにもうまくいかなくって……」

「ああ、あれはガンドック様は悪くないので気にしないでくださいまし。どちらかというとあのバカがおかしいだけですので」

 

 

 軍服を着たり、自分の部下に迷彩服を着せたりと、おそらくガンドックは生粋のミリオタなのだろう。

 そして、原作のガンドック・ファイアフライは軍服など着ていなかったのではないだろうか。

 だからローグはぶちぎれたのだろうが……そんなものは知ったことではない。

 ましてや、ガンドックが気に病む必要もない。

 

 

「オルクハイドとも、仲が悪いわけじゃないですけど、よくもないからなあ。」

 

 

 ヴェーセルにとってはいまだ姿も知らない、仮面騎兵オルクハイド。

 いったいどのような人物なのか。

 

「仮面騎兵オルクハイド様ってどんな方なんですの?」

「いやまあ、俺もここに来て一か月ほどになりますが、直接会ったことは数えるほどしかないんでさあ」

「そうなんですの?」

 

 

 一か月間共闘しているはずなのに、そんなことがあり得るのだろうか。

 

 

「仮面騎兵オーキドは、ずっとここで戦い続けているんだよ」

「ずっと?」

「時折休んではいるみたいだが、選ばれてから二年間ぐらいずっとここで戦い続けている。オーキドは継続戦闘能力に特化しているからな」

「二年って……」

 

 

 ヴェーセルは、仮面騎兵になってまだ二か月程度しか経っていない。

 だが、それでもわかることはある。

 仮面騎兵として戦うことは決して、楽ではない。

 戦闘時間としてはほとんど数分で終わるが、命のやりとりをしているということは確実にヴェーセルを消耗、疲弊させた。

 だというのに、それをほとんど休みなく行っている。

 肉体以前に精神が耐えられないと思うのだが。

 何をどうすれば、そんなことができるのか。

 そもそも、本当に人間なのだろうか。

 

 

「ぎしゃあああああああああ!」

 

 

 奇妙なゴレイムが飛び出してきた。

 いや、ゴレイムはそのすべてにおいて奇妙なのだが……今回現れたゴレイムもまた異様だった。

 それは、端的に言えばエビ型のゴレイムだった。

 

 

「車エビですかい?あれは」

「いえ、テナガエビではありませんこと?」

 

 

 二本の手、それが異常に長い。

 手を除いた部分よりもなお、手の方がずっと長い。

 

 

「ぎしゃああああああああああ!」

「下がってくださいな!」

 

 

 異様に長い両腕を、その先端にある鋏を振り上げる。

 

 

「とりあえず、変身を」

 

 

 ガンドックが再び『仮面』に触れる。

 ヴェーセルもまた、『仮面』を装着して、変身をしようとして。

 

 

『Exseed charge』

「ギシャ」

 

 

 テナガエビが、真っ二つに両断された。

 エビゴレイムが崩れると同時に、砂埃が舞い落ちる。

 エビゴレイムを構成していた砂が、散らばったのだ。

 コアが砕け散ったのだと、理解する。

 おそらく、あのテナガエビゴレイムは、逃げてきたのだろうと理解する。

 そして、逃げ切れずにたった今両断されたのだと。

 砂煙が収まったときに、そこに立っているのは一体の人型だった。

 

 

「もしかして……」

 

 

 一人の少女だった。

 ボブカットの黒い髪、髪と同じくらい黒い瞳。

 服装もまた上着から靴、靴下まで黒一色であり、喪服と言われても信じてしまうかもしれない。

 逆に肌は病的なほど白く、モノクロ映画と言われても信じてしまうかもしれない。

 唯一、頭につけたランの花のような文様の『仮面』だけが、モノクロから外れていた。

 モノクロの少女が、すたすたと歩いてくる。

 

 

「お前たちは、仮面騎兵か?」

「ええ、はい」

 

 

 物静かで、それでいて体の芯に響くような凛とした声。

 二年戦い続けていることといい、尋常ではないということがよくわかる。

 

 

「我は、アインス・オーキドマンティス」

 

 

 彼女は、自分の名を名乗り。

 

 

「またの名を、仮面騎兵オルクハイドという」

 

 

 何者であるかを、改めて示した。

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