TS転生悪役令嬢、仮面のヒーローになって無双する~婚約破棄されたけど気にせず闇落ちルートを回避しつつ成り上がります~   作:折本装置

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「アインス・オーキドマンティス」

「どうも、アインスさん、お久しぶりですねえ。息災でしたか」

「ああ、もしかしてオリバロッソか?我なら特に問題はない。それより、一体うち漏らしたゴレイムを見なかったか?ウナギのような見た目のゴレイムだ」

 

 

 アインスは、どうやらガンドックの顔を見たことがなかったらしい。

 まあ変身している間は、顔が見えないので仕方がないのかもしれないが。

 

 

「ああ、それなら俺達が倒しているんでご心配なさらないでくだせえ」

「そうか、それは良かった」

「あの、これはいったい何なのです?」

「見ての通り、だ。我々は今手詰まりでな。街の外を我が、街の中をオリバロッソが担当しているが、それでギリギリだ」

「それゆえに、さらにもう一人、とこちらのヒールに増援をお願いしたんでさあ」

「なるほど」

 

 

 ヴェーセルはようやく状況が飲み込めた。

 

 

「貴様には我とともに、ロックゴレイムの捜索及び討伐に参加してもらう」

 

 

 アインスは、ヴェーセルを指さした。

 つまり、元凶を討つ捜索担当と、町や人々を守る防衛担当。

 元凶のゴレイムがいつまでたっても見つからないから、ヴェーセルが派遣されたというわけだ。

 加えて、この短時間で二体もゴレイムに遭遇している。

 余程余裕がないのだろう。

 つまり、ヴェーセルの仕事はロックゴレイムの発見と討伐。

 それも、迅速に行わなければさらに被害が出てしまうだろう。

 

 

「あ、あの、私達は」

「ふむ、君達はメイドか。仮面騎兵でないなら下がっていろ。ロックゴレイムに出くわした場合に足手まといになる」

「え……」

「ルーナ、ワタクシは貴方が足手まといだとは思いませんの」

「そう、なんですか?」

 

 

 当然だ。

 ヴェーセルにとって彼女たちは頼るべき存在であり、弱者だとみなしたことは一度だってありはしない。

 

 

「けれど、正直に言えば初対面の相手と組ませることには不安がありますわ。特にジニーやアルは人づきあいが得意な方ではありませんもの。自分でもよくお分かりなのではなくって?」

「それはそうですね」

「……正直あまり好きなタイプではない」

「我の前でそれを口にするのか……」

 

 

 アインスは、少し嫌そうな口調になった。

 

 

「ともあれ、ヒールだったか。今から付き合ってもらうぞ」

「まあ、構いませんけど」

「メイドさんたちは俺らで宿まで案内するんで、大船に乗ったつもりでいてくだせえ」

「お任せしましたわよ。ああ、一つだけ、伝えておきますわ、ガンドック様」

 

 

 ヴェーセルは、すっとガンドックの隣まで近づいて、耳元で囁く。

 

 

「なんですかい?」

「アナタが、何を考えていようと、本当の自分を隠していようとどうだっていい。ワタクシはそんな些細なことを気にしたりしませんわ」

 

 

 ただし、とヴェーセルは一言だけを付け加える。

 

 

「もしも、あの三人が傷つくようなことをすれば、ワタクシがアナタと下手人をブチ殺しますわ」

「……肝に銘じておくぜ」

 

 

 ガンドックは、ヴェーセルの眼光に気圧されつつ、ルーナや彼の部下たちを連れて宿へと向かった。

 ヴェーセルは、彼女たちが見えなくなるまで手を振り続けていた。

 

 

 

「では、行こうか」

「ええ、ロックゴレイムを、首魁を討ちに行きましょう」

 

 

 先ほどまで顔も知らなかった、急造コンビが誕生した。

 

 

「まず、今回のゴレイムについてどの程度知っている?」

 

 

 アインスとヴェーセルの二人は、走って移動する。

 ヴェーセルは道がまるで分からないので、アインスが走るのについて行っているだけだ。

 

 

「それなりに動けるようだな」

 

 

 ちょうど道を走っていた馬車を追い抜きながら、アインスがヴェーセルに声をかける。

 

 

「まあ、仮面騎兵ならばこれくらい当然でしょう?」

「それはそうだな」

 

 

 『仮面』が体に入り込んだことで、彼女たちの身体能力は大幅に引き上げられている。

 はっきり言って、ゴレイム以外の生物は基本的には敵にならない。

 例外があるとすれば獣人くらいだろうか。

 

 

「それで、もうロックゴレイムの目星はついているんですの?」

「いいや、全くだ。というか、それができていたら苦労はない」

「…………それ、何でそんなことになってるんですの?人海戦術を駆使すれば絞り込めるでしょう?」

「……どういう意味だ?」

「ですから、人に化けているなら村人一人一人をチェックすればわかるでしょう?」

「それなら、もうやっている」

「へ?」

 

 

 ヴェーセルが間の抜けた声を発する。

 

 

「だから、オリバロッソにやらせた。けど、誰もロックゴレイムに成り代わられていなかった。さらに言えば、行方不明者すらいない」

「それは、どういう?」

 

 

 はあ、とため息をついて彼女は言葉を発する。

 

 

「つまり、ロックゴレイムは人間に擬態していない。そして、街の中にもいない。人里離れたどこかに潜んでいる」

「はあ?」

 

 

 めちゃくちゃな論理に、ヴェーセルは固まった。

 だが、それもあり得るかと納得する。

 アメリア・ローズマリー事件においても当初鴉ゴレイムは人に化けずに、平民街で人間を襲っていたことが確認されている。

 街中にいないなら、街の外にいると考えるのは無難である。

 さらにいえば、どこにいるのかわからないと言っても、街の周辺に存在しているのは間違いない。

 何しろ、あくまでもオデュッセイアが襲われているわけで。

 つまりは、この周辺にいるのだろう。

 

 

「現時点でできることは、とにかく索敵を張り巡らせつつ、出てきたゴレイムを全て狩ること。さらに、ゴレイムを見つけ次第周辺にロックゴレイムが存在しているものだと考えること」

「つまり、片方が街の中に入らないようにゴレイムを倒し、もう片方が仕留めればいい」

「ゴレイムの索敵は、ワタクシがやってもよろしくって?」

「構わないぞ。すでに我も索敵はやっているが……好きにするといい」

「じゃあ、お言葉に甘えて――変身」

 

 

 そういって、ヴェーセルは走りながら変身した。

 心の中で、昔走って変身するヒーローを見たな、と思いながら足を止める。

 

 

「ここに居ますわ、ゴレイム」

「ちょっと待ってくれ」

 

 

 すっと手を差し出して、同じく立ち止まったアインスはヴェーセルに言葉をかける。

 

 

「何ですの?」

「いや、索敵って、何をしているんだ?」

「ですから、ゴレイムが周辺にいないと変身できないでしょう?つまり変身できるので、あたりにゴレイムが潜んでいるんですのよ」

「…………いや、その」

「?どうかいたしまして?」

「ええと、いや、なんだ、つまり」

 

 

 どういうわけか、歯切れが悪い。

 ヴェーセルとしては、何を考えているのかよくわからない。

 そもそも、まるで『仮面』を使ってのゴレイム索敵を知らないかのようだ。

 オリバロッソに判別を任せているらしいし、本当に知らなかったのだろうか。

 ふと、彼女を見ると。

 随分と、険しい顔をして、横を見ていた。

 そこに、何かがあるとでもいうかのように。

 

 

「来るぞ」

「え?」

 

 

 その直後、木々をかき分けて、怪物たちが現れた。

 一体は、タツノオトシゴのようなゴレイム。

 もう一体は、トビウオ型のゴレイム。

 つまり。

 

 

「ゴレイムが、二体?」

 

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