TS転生悪役令嬢、仮面のヒーローになって無双する~婚約破棄されたけど気にせず闇落ちルートを回避しつつ成り上がります~ 作:折本装置
二体のゴレイムを見て、ヴェーセルは固まってしまった。
ゴレイムが二体いたとして、本来であれば、別に動じるようなことはない。
ここには仮面騎兵が二人いる。
あくまでも、一体ずつ分けて倒していけばいいのである。
だが、今回は事情が違った。
「ゴレイム同士で、戦ってる?」
ゴレイム同士が、牙を、爪を剥きだしている。
トビウオの形をしたゴレイムが、タツノオトシゴ型のゴレイムの首にかぶりつく。
「ぎゃ、あ」
首がちぎれとんだ。
同時に、トビウオゴレイムの顎も反動で砕け散る。
そして、ボロボロとタツノオトシゴゴレイムは崩れていく。
どうやら、コアが砕けたらしい。
「ゴレイム同士なら、ゴレイムを殺せる……」
ゴレイムを人が壊せないのは、ゴレイムが固すぎるから。
ダイヤモンドにダイヤモンドをぶつけて研磨するのと同じ理屈だ。
とはいえ、結果としては一体に減ってくれたわけで。
これはむしろありがたい。
やることは、二つ。
ゴレイムを倒すことと、周囲にいるはずのロックゴレイムを探知すること。
「ここは我に任せて、下がっていろ」
両手を、腰のあたりでそろえ、拳を握って構える。
病弱にも見える美少女がそのような姿を取るのは奇妙だったが、不思議と堂に行っていた。
まるで、いや実際に何百回何千回と行ってきたことなのだろう。
「変身」
『Change――Orchid』
宣言と同時に、彼女の体は崩れる。
「は?」
意味の分からない光景に、ヴェーセルの口から音と驚きが漏れる。
まるで、砂の城が崩れるようにぼろぼろと崩れて、地面に散らばる。
そして、土が再構成されるように盛り上がって一つの円柱が出来上がる。
繭か、あるいはカマキリの卵のような形。
理科の授業で聞いた話を、思い出した。
蝶がさなぎから成虫になるとき、一度体をドロドロに溶かしてから再構築するのだと。
実際に観たことはないが、それに近いことが起こっているのだろうと確信できた。
「これは」
やがて、円柱状の塊が割れて、中から一体の人型が現れる。
それは、蘭の花を全身に纏った異形だった。
されど、植物というほどおとなしい雰囲気ではない。
まるで、怪物がギリギリのところで檻に入っているような、暴力的な印象を受けた。
「武装展開――戦闘開始」
宣言すると同時に、地中から大鎌が飛び出し、それを彼女が掴む。
「ふっ、しっ」
大鎌で、的確にゴレイムをそいでいく。
「ハナカマキリ……」
蘭に擬態し、獲物を狩る捕食者。
オルクハイド――アインス・オーキドマンティスに対して抱いた印象はそれだった。
「なら、ワタクシは索敵をいたしますわ!」
『Form shift――dig dog』
先日、鉱山都市で「ゴレイムを三十回、最初に発見する」という条件を達成したことで得た『犬』を使う。
「これが、『犬』……」
それを何と言えばいいのか。
端的に言えば、シャベルのついた手甲。
植物が根を張るように、シャベルが伸びて地面に広がっている。
『犬』は、索敵に特化した形態だ。
シャベルが、根を張るように伸びて、無数に枝分かれすることによる原始的かつ物理的な索敵。
地下にいれば、触れるから気づく。
地上に居れば、目視するかあるいは根を伝わってくる振動で気づく。
だがしかし。
「見つかりませんわね」
戦闘能力を捨てているだけあって、『犬』の索敵は広域だ。
半径一キロ先の生物だって見つけられる。
人の足音、獣の足音、あるいは地を進むミミズやモグラ。
そして、ゴレイムの出す振動に、さらに言えば目の前で走り回りながら攻撃を繰り出しているオルクハイドの動きもすべてわかる。
すべてわかるのに、ロックゴレイムは見つからない。
「ふっ」
そうしてヴェーセルが根をさらに伸ばし、索敵を続けている間にも、戦闘は続き状況は動いていた。
「武装展開」
アインスが宣言すると、地面から、弓が飛び出した。
弓に同じく地面から生えた矢を五本同時をつがえ、放つ。
矢はトビウオの胴体に突き刺さる。
「び、びびびびびびび!」
激昂したトビウオゴレイムはそのままアインスの方にめがけて突っ込んでくるが。
「武装展開」
今度は、『ドリル』を地面から取り出す。
いや、それをドリルと呼んでもいいのだろうか。
鎌の刃が幾重にも重なり、螺旋を描いてドリルのようなものを形成している。
そして、それを、トビウオゴレイムの突進してきた頭部へと
顔と胴体の一部分がドリルに巻き込まれ、抉り飛ばされる。
だがしかし、それでもトビウオは止まらない。
即座に頭部を再生させて、またしても突進する。
「面倒な……」
アインスからつかず離れず、飛び回って突進を仕掛けている。
再生能力が比較的高いこと、加えてスピードと機動力に優れていること。
機動力ゆえに、うまくとらえることができず、攻撃をうまく当てることが出来ていない。
そして再生能力の高さから、少し削った程度では、容易く回復してしまう。
「トビウオかあ」
よく見れば、尾びれは地面に接着している。
先日戦ってきたゴレイム達もそうだが、やつらは地面から離れられないのかもしれない。
鳥型のゴレイムでさえも、地面から離れようとしなかった。
「鳥……」
あれならば、このゴレイムを撃破できるかもしれない。
「それに、これは」
既に、村一帯にまで張り巡らせた根から、ヴェーセルは大量の情報を得ている。
そこから、情報を解析した結果は。
「まずい、ですわね」
顔を歪める。
よりにもよって最悪の結果だ。
「手を貸しましょうか!」
「手を出すな!お前は索敵に集中しろ!」
索敵は、もう
こちらの面で今の彼女に出来ることはない。
「ならば、こちらも使わない手はありませんわね」
ヴェーセルは仮面に触れる。
「ロックゴレイム撃破」によって解放された、新たな「装甲」を使うために。
『Form shift――Rooster booster』
現在彼女が使える中での――