TS転生悪役令嬢、仮面のヒーローになって無双する~婚約破棄されたけど気にせず闇落ちルートを回避しつつ成り上がります~   作:折本装置

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「反撃の翼」

「ヴェーセル様、『鳥』は現在存在が判明している形態の中でも特に強力で、扱いが難しい追加装甲となっています」

「そうなんですのね」

 

 

 アメリア・ローズマリーを撃破した直後のこと。

 ジニーに『鳥』が解放されたことを報告して、彼女からそのまま『鳥』についての説明を受けていた。

 

 

「今まで、追加装甲の扱いに困ったことは、ヴェーセル様はほとんどなかったと思います。それは、歴代のヒールにも共通していますね」

「そうですわね」

 

 

 ジニーが教えてくれる知識は、過去に歴代のヒールが残した文献から得た情報だ。

 ヴェーセルには、理解できない。

 数多の文献を網羅し、さらに言えばそれらの情報を整理し、統合して要点をまとめてヴェーセルに伝える。

 どうすればそんなことができるのかわからない。

 一つ言えるのは、彼女が自分のメイドでいてくれることに感謝せねばということだけだ。

 感謝と愛情をもって、抱きしめながら匂いを嗅ぐと、「うえぁ!」と顔を真っ赤にしながら固まった。

 そういうところも可愛い。

 

 

「と、ともかくですね。そんな素晴らしい適性を持ったヒールたちですが、彼ら彼女らが制御できなかったり、制御困難だったと記しているのが『鳥』です」

「そんなに難しいんですのね」

「ええ、ですがこれまで判明している十種類の装甲の中で、扱いさえわかれば『鳥』に勝るものはないでしょうね」

「十種類って、どんなものがあるのでして?」

「ええと、『鼠』、『牛』、『兎』、『蛇』、『馬』、『羊』、『猿』、『鳥』、『犬』、『猪』ですね」

「……なるほど?」

「どうかされましたか?」

「『龍』と『虎』が抜けてますわね……」

「ど、どうしてそう思うんですか?」

「どうしてって」

 

 

 十二支から抜けているものを言っただけなのだが、ジニーは不思議そうな顔をしている。

 そういえば、この世界には干支という概念は存在しない。

 ちなみに還暦とかそういう概念もない。

 もちろん、それとは別に誕生日を祝ったり長寿をありがたがる文化自体はあるのだが。

 ともあれ、日本人の前世を持つヴェーセルにとっては『虎』と『龍』がまだ未開放なのだろうと察せた。

 加えて言えば、龍も虎もヒーロー的にはかなり重要な立ち位置にいるはずであり、それもあって気にしていたのだがそれはさておく。

 

 

「とにかく、『鳥』の能力が異常なのは、人間離れした挙動が多いからです。基本的には習うより慣れろ、でこなしていくほかありません」

「ふうん、でもこれまでも結構人間離れした挙動は多かったと思いますわよ」

 

 

 一番ひどかったのは『鼠』だ。

 個人が無数に分裂して、一気に統合される感覚。

 ゲームにおける無数の分岐ルートを一度に読み込めばあんな感じになるのだろうか。

 

 

「確かに、ただこれは私の経験則ですが、三次元空間の処理に必要とされる演算能力は尋常ではありません」

「ふっふっふ。ワタクシを誰だと思っているのです?一応座学は学年トップですわよ?ささっと習得して、悪役劇場を見せてやりますわ!」

 

 

 前世の記憶(大学受験勉強)を振りかざしながら、ヴェーセルは自信満々に言い切った。

 

 

 結論から言えば、ヴェーセルは何度か試した結果。

 これを完全に使いこなすのは無理(・・・・・・・・・)という結論に至った。

 

 

 ◇

 

 

『Form shift――Rooster booster』

 

 

 シードマスクの出す音と同時に、空中から、『鳥』の覆面と奇妙な機械が下りてくる。

 それは、彼女の背中に装着された。

 それは、ジェットパックと言われるものに近かった。

 されど、それには無数の、金属光沢がある羽根がついていた。

 反撃の翼が、今開く。

 

 

「さあ、悪役劇場開幕ですわーっ!」

『High jack』

 

 

 ジェットパックから熱を噴射して、ヴェーセルは飛翔する。

 『鳥』の特性の一つは、ジェットパックによる飛行能力と、それによって確保された機動力だ。

 ゴレイムには、一つ欠点がある。

 それは、「地面から離れられない」ことだ。

 土から生まれたゆえに、土から離れることが許されていない。

 飛行能力があるトビウオゴレイムも、尾びれをギリギリで地面につけてこすりながら滑空をしている。

 であれば、飛行能力があれば制空権を一方的に確保できるというわけだ。

 

 

「…………」

 

 

 上空にいると、色々なものがよく見える。

 人も、建物も、自然も見える。

 だがしかし、この状況でなお、トビウオ以外のゴレイムは見つからない。

 近くにロックゴレイムがいるはずなのに。

 どうして上から見ても、下から探っても見つからないのか。

 

 

「今は、それより目の前の敵、ですわね」

 

 

 ヴェーセルは、スラスターを操作して、逆に地上へと降下していった。

 

 

「せいやああああああああああああああっ!」

 

 

 そしてその勢いのままに、跳び蹴りを見舞う。

 重力と推進力によって、加速した一撃はトビウオゴレイムの頭部に直撃。

 そのまま、眼球を粉砕する。

 

 

「ふっ」

 

 

 同時に、アインスの放った矢が、五本とも頭部に命中し、完全に粉砕した。

 

 

「ビビビビビ」

 

 

 だが、すぐさま頭部が修復される。

 どうやら強度が脆い代わりに、このストーンゴレイムは再生力に秀でているらしかった。

 だが、わかったこともある。

 

 

「この感じだと、頭部にはコアがなさそうですわね」

「つまり、胴体のどこかか……。本当にどうしたもんかな」

 

 

 トビウオゴレイムの胴体は、長い。

 十メートルはあるようなもののどこかに、恐らくはバスケットボール程度のコアがある。

 ほぼ全身を砕かなければ、コアの位置を把握できない。

 二人でほとんど同時に攻撃を当てなくてはならないが、自分から突っ込んでくる頭部以外を狙うのは難しい。




反撃の翼が、今開く!
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