TS転生悪役令嬢、仮面のヒーローになって無双する~婚約破棄されたけど気にせず闇落ちルートを回避しつつ成り上がります~ 作:折本装置
だから、ヴェーセルは切り札を切る。
『Exseed charge――cyclone slash』
展開された翼剣が次々に彼の手に集まってくる。
それが、一本の大剣を作る。
さらに、スラスターの出力が上がる。
熱量が増し、爆発するかと思うほどの噴射力を以て、飛び回る。
竜巻のごとくきりもみ回転しながら、ゴレイムの胴体を切り刻む。
「どこにあるかわからないなら、ぶつ切りにしてしまえばいいのですわ!と、お」
ノリノリで言葉を発した直後、制御を失って、地面に突っ込んだ。
「あ、ぐ」
『鳥』のイクシードスキルは、剣を持った状態で乱回転しながら切り刻むというもの。
三半規管がめちゃくちゃになる技であり、『仮面』で身体能力が上がったことを加味してもなお、まるで制御しきれていない。
「十分だ、よくやってくれた」
『Exseed charge――Shooting allow』
いつの間にか、彼女は弓を構えていた。
そこにあった矢は、光を放っている。
ヴェーセルにも、ゴレイムにも、そこに含まれているエネルギーが尋常ではないことはわかる。
「ビ」
ゴレイムのちぎれた頭部から怯えるような声が発されるも、何かができるわけではなく。
「終わりだ」
光の矢はわずかに露出していたゴレイムのコアを撃ち抜き、破砕する。
「ギギギ、ギター」
コアが壊れると同時、ゴレイムが崩れて土へと帰る。
こうして、戦闘が決着した。
◇
「これで終わり、ですわね」
「そうだな……。だが、見つからなかった」
彼女の言うとおり、いくら探してもロックゴレイムを発見することはできなかった。
「『犬』で探ったり、上空を飛んでみたけど、周囲にゴレイムと思われるようなものはありませんでしたわ」
「そうだろうな、私も索敵でもこの町周辺を洗っているが、まるで出てこない。おそらくだが、陸にはいないんだろうね」
陸には居ない。
空の上には、地上に生きるゴレイムは存在できない。
ワイヤーのようなもので地上につながっていたとしたら、ヴェーセルならば気づくことができるはずだ。
「つまり、海中にいるってことですのね」
「ああ、それならば見つけられないのにも説明がつく」
「アナタの“索敵”は、海の中では機能しないと?」
どうやら、アインスの索敵は、ヴェーセルが使っていた『仮面』による索敵よりもずっと射程が長いらしかった。
そもそも、動物がいるかいないかくらいしか判別できないヴェーセルの索敵よりもずっと精度的にも優れているのだと思われる。
「我の索敵は、光のないところでは機能しない」
「なるほど……」
今の会話の流れで、
「アインス」
「どうした?」
そして、アインスが
「アナタ、
ヴェーセルは、アインスに問いかけた。
それは、質問ではない。
ただの、事実確認である。
「…………」
「反論しないということは、肯定と受け取りますわよ」
「どうして」
アインスの表情はまるで変わらない。
能面か人形のように、彼女の表情は変化がない。
ただ、声には動揺があった。
「根拠が必要でして?」
「…………」
「ワタクシが仮面騎兵として変身した時、周囲にゴレイムはいませんでしたが、変身できたんですわよ」
変身した後になって、二対のゴレイムが接近してきた。
逆に、あの時周囲にはゴレイムと思われるものはなかった。
アインス以外には。
「地下にいた可能性もあるだろう」
「いいえ、地下は完璧に索敵していますわ。そも、その地下にいたゴレイムがワタクシを襲ってこないのはいささか奇妙ですわよ」
いまだに変身は解除されていない。
ヴェーセルは、一歩下がる。
「それに、索敵方法にも疑問がありますわ。あれは、自分が生み出したゴレイムとの視界を共有しているのではなくて?」
以前、王都でアメリア・ローズマリーに成りすましたゴレイムに罠にはめられたときのこと。
あの時、完全にタイミングを計って攻撃をしてきたが、あれはおかしいのだ。
人を食うことしか考えていないはずのストーンゴレイムが連携して、二段構えの攻撃をしてくるはずがない。
すべての状況を遠くから把握していた鴉ゴレイムが、完璧な指揮をしない限り不可能だ。
そして、今回のアインスの言動から、確信を得た。
ロックゴレイムは、配下であるゴレイムと感覚がリンクしており、なおかつ操作できるのだろう、と。
「タツノオトシゴゴレイムが、アナタの作ったゴレイムだとしたら、ワタクシが変身できたという事実を隠すためだけにあのトビウオゴレイムを誘導してきた、とも考えられますわね」
さらに、もう一歩、もう一歩、と下がる。
そして、ちょうどアインスとの距離が
変身が、
「…………そうか、そういうことか」
「証拠は、これで十分ですわよね?」
あくまでも、先程の会話は結局のところ時間稼ぎ。
本命は、ちょうど十メートル離れたところ移動して、変身が解除されている状態にした。
これが、何よりの証明だから。
「もう一つ言えば、ゴレイム同士で殺し合ったのも妙な話ですわね。人を積極的に殺すゴレイムが同士討ちなどという無意味な行動をするはずがありません。アナタの作ったゴレイムが、アナタの命令で動いたのでなければね。何か反論はありまして?」
「……ないよ」
アインスは、かぶりを振って否定する。
もう少し言い逃れをするか、あるいは戦闘に入ると思っていたのだが。
「それで?」
「それで?」
「それで、どうするつもりなのかと訊いている。まさか我に自分の推理をひけらかすためだけにぺらぺらと喋ったわけではあるまい」
「ええ、よければ一緒に食事をいたしませんこと?」
「食事?」
「ええ、ワタクシアナタに大変興味があるのです。よろしいですわよね?」
「……ああ」
意図が読めないなと思いながらも。
アインスの側には、拒否権などあるはずもなかった。