TS転生悪役令嬢、仮面のヒーローになって無双する~婚約破棄されたけど気にせず闇落ちルートを回避しつつ成り上がります~ 作:折本装置
「あの景色を守るため、いやより良くするためにひとつ提案があるのだが、いいか?ヴェーセル」
「何ですの?」
「今ここで、元凶のロックゴレイムを討伐しないか?」
「……!」
「ちょうど、イクシードスキルも補充されるころだろう?」
「ええ、そうですわね」
時刻は、夜の十二時。
イクシードスキルは日に一度。
さらに、ストックが
だから、この夜のうちにゴレイムを倒すのは間違いではない。
相手がロックゴレイムであったとしても、二人の全力をぶつけられれば仕留めることはできるだろうから。
「今日は月も星もはっきり出ている。光源には困るまい」
「ならどうにかして殺す。海の中にいることは確定しているからな。それに、おおよその居場所ももうわかった」
「わかったんですの?」
海が広いのは、この世界も全く同じだ。
むろんオデュッセイア近海にいるのは間違いないが、それにしてもその範囲は陸地とは比較にならないだろう。
もしかしたら、ここから目当てのロックゴレイムにたどり着くまでには数か月かかる、ということも十分にあり得る。
「いや、すぐに見つかるよ」
「どうしてそう言い切れるのです?」
「これだ」
とんとん、と足で地面を踏みつける。
直後、大地が隆起した。
そしてそこから出現したのは、枝のような、それでいて節が無数にあった虫のような怪物。
ナナフシ型のゴレイムだった。
そして、その直後にナナフシゴレイムの姿がゆっくりと消えていく。
「消えた?」
しかし、土に還った様子もない。
姿が消えたのか、光学迷彩の類だろうと気づく。
「ロックゴレイムが作れるゴレイムは、ロックゴレイムによって少しづつ異なる。我の場合はナナフシやタツノオトシゴといった擬態生物だな」
言われてみれば、アメリアが出してきたゴレイムはすべて鳥だった。
そして、問題のゴレイムもトビウオやテナガエビなど、海生生物に限定されている。
「そして、我のゴレイムは主にこうして、ステルス系の能力に秀でている。だからこいつらに海中を探らせていたが」
「情報の共有が途絶えた、と?」
「そうだ。まず間違いなく、ロックゴレイムの仕業に違いない。そいつらが消えた位置から、おおよその場所を推測できる」
「確かに、そうですわね」
「こいつらを、先行させる。そして、見つけた時点で襲撃をかける」
「あの、ちなみに移動手段は……」
アインスは、曇りなきまなこで、まっすぐにヴェーセルの方を見てきた。
ヴェーセルは、すべてを察した。
「わかりましたわよ……」
ヴェーセルは、渋々といった表情で、『仮面』に触れた。
◇
「おそらく、これまで送り込んできたストーンゴレイムからの視覚共有が途切れた場所から推測するに、このあたりだろうと推測できる」
「今、あのナナフシゴレイムがワタクシたちの真下に居ますのね」
「そういうことだな」
海上にて、ヴェーセルとアインスは作戦について改めて話し合っていた。
ヴェーセルは『鳥』に変身して。
その両手に、アインスを抱きかかえている。
彼女の体は、驚くほどに軽い。
土でできているはずのゴレイムだが、人に擬態している間は重量すらも人と同じである。
「まるで、鳥が餌をはこんでるみたいですわ」
「確かに」
別にいいのだが、傍から見れば仮面の戦士が女の子を抱えてさらっている絵面でもある。
見栄えを気にしているヴェーセルにとっては、最悪のシチュエーションである。
「それにしても、アナタは飛ぶ手段とかはないんですの?」
「あるにはあるが、正直なところ長時間の飛行は無理なのだ。ゆえに、今回は貴様の力に頼っている」
「ふうん」
思えば、彼女の――オルクハイドの能力は詳細がつかめていない。
ヒールなら、様々な状況に適応しつつも、近接戦が本領なんだとわかる。
ローゼイドなら魔法、オリバロッソならば弾薬生成を伴った遠距離主体であると理解できる。
だが、オルクハイドはどちらでもない。
ドリルや大鎌の白兵戦のみならず、弓矢を使っての遠距離攻撃もこなせる。
さらに、彼女曰く短時間なら飛行能力すらあるという。
やはり、彼女のことはいまだに理解できていない。
「ああ、無理だと思ったら遠慮なく我のことは海中に捨ててくれ。別に溺死とは無縁だからな」
「しませんわよそんなこと」
「ちなみに、海中戦での経験はあるか?」
「ありませんわ」
「だろうな、我も全く同じだ。対して相手は魚型のゴレイム。まともに海中でやりあえば、二人がかりでも負けかねないだろう」
「では、どうするつもりなのです?」
ヴェーセルは、代わらず無表情なままのアインスに問いかける。
彼女は、親指を立てて。
「――我に任せろ。貴様に戦い方を教えてやる」
そういって、ヴェーセルの手を振りほどき。
海中に沈んだ。
「ああ、なるほど」
まず真っ先に、飛行している彼女の視界に入ってきたのは巨大な
頭部の直径だけで、優に百メートルは超えている。
足まで含めて考えれば、二百メートルを超えるかもしれない。
その上に、二体の人型がいる。
「武装展開」
一人は、言うまでもなくアインス。
先ほどと同じ、ハナカマキリを連想させる戦士、仮面騎兵オルクハイドへと変身している。
鎌を大量に使ってトラばさみのようなものを作り出し、それでもう一体の動きを封じている。
「ツ、ツナ」
一方、トラばさみで捕獲されている方は、異形だった。
首から上はマグロの頭。
首から下は、鱗の生えた人間。
魚が人間に進化したら、こういう見た目になっているのかもしれない。
風船のように膨れ上がり、巨岩に擬態できるゴレイムだったのだが、少しの衝撃で水風船のように破裂してしまうという弱点があった。
「それって、どのような能力を得るのかも指定できるんですの?」
「ある程度はな。我の場合擬態生物という特徴に根差した能力であれば大抵は問題なく成立する」
姿を消せるナナフシだったり、膨張して形状を変えることが出来るタコであったりだ。
そして、ここだけではない。
「さらに向こうへ!」
『feather missile』
ジェットパックの両端についている羽が、バラバラに放出、展開されてマグロゴレイムに着弾し。
ゴレイムの体を、打ち上げた。
速度と手数に秀でたミサイルは、肉体を壊し、コアを粉砕するには至らない。
だが、相手を動かすことはできる。
「ツ、ツナアアアアアアアアアアアア」
逃れようにも、表面に羽の刃が突き刺さっており、引きはがすことはできない。
そう、ヴェーセルとアインスの作戦は、敵をとにかく海から引きはがし、空中戦に持ち込むこと。