TS転生悪役令嬢、仮面のヒーローになって無双する~婚約破棄されたけど気にせず闇落ちルートを回避しつつ成り上がります~   作:折本装置

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「蟹って悪役として完璧なデザインですよね」

 最悪の事態に歯ぎしりしつつも、ヴェーセルは切り替える。

 

 

「……さっさと倒しますわ!」

 

 

 時間はかけられない。

 他のゴレイムを倒さなくてはならないから。

イクシードスキルも使えない。

 二体目以降の相手に、そして今どこにいるかわからない元凶のロックゴレイム相手に温存しておく必要があるから。

 

 

『Mower hopper』  

 

 

 ヴェーセルは『兎』のスキルを行使して、足場を形成、上に跳躍する。

 泡による攻撃も、鋏も、空中には当然届かない。

 

 

『Form shift――Booster rooster』

 

 

 『鳥』の覆面と、ジェットパックをまとい、突撃する。

 ジェットパックの左右についた翼が羽に分割され、ミサイルとして飛来する。

 ミサイルはすべて、カニゴレイムの眼球に突き刺さる。

 

 

「KYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」

 

 

 カニゴレイムは絶叫しながら眼球を鋏で押さえるが、剣が刺さったままでは再生できないらしい。

 であれば、対処法は一つしかない。

 

 

「KYAAAAAAAAAAA」

 

 

 鋏を振り上げ、頭部へと落とす。

 そして、眼球を翼剣ごと砕く。

 感覚器はつぶれるが、それでもなお問題はない。

 すぐにまた、再生できる。

 

 

「それは、もう叶いませんわよ」

『Form shift――punching chimpanzee』

 

 

 ヴェーセルは、続いて最大の攻撃能力を有する形態を身にまとう。

 先ほど、カニゴレイムがやってみせたように。

 

 

『Gramp stamp』

 

 

 指を組み合わせた両腕を、戦鎚のごとく。

 砕けたゴレイムの顔面にたたきつけた。

 スキルを使用した打撃によって、頭部が粉砕される。

 そして、コアは予想通り頭部にはない。

 背中の甲羅が異様に硬かったこともかんがえると、やはりコアは胴体にあると考えるべきだろう。

 背中の甲羅は破れない。

 イクシードスキルでも使わなければ無理だろう。

 前面も、泡をまともに浴びればダメージは甚大だ。

 だが、既に鉄壁の守りには(きず)ができている。

 そこから突破すればいい。

 

 

『Form shift――horse chainsaw』

 

 

 ヴェーセルは、さらに形態を変える。

 手甲が消失し、チェーンソーが顕現する。

 絶対に削り切る、殺しきるという心を乗せた彼女の剣が振るわれる。

 

 

「ああああああああああああああああああああああ!」

「KYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」

 

 

 回転する刃が土塊の体を削って行く。

 カニゴレイムもまた、負けじと足掻く。

 ヴェーセルを振り落とすために横走りで建物に激突する。

 器官のみを修復し、溶解液を含んだ泡を不完全ながら放出する。

 なれど、動いても落ちず。

 毒を浴びても死なず。

 やがて。

 膠着状態は、終わりを迎える。

 カニゴレイムの胴体が、真っ二つに切り開かれることによって。 

 

 

「見えましたわ!」

 

 

 真っ二つになったことで、ぼろぼろと土でできた体が崩れていく。

 修復能力が追い付いていないのだ。

 ヴェーセルは砕けかけた、されど再生を続けるゴレイムの中からコアを発見する。

 コアを中心に再生が始まっていたからだ。

 見つけたのならば、あとは砕くだけ。

 

 

『Form shift――booster rooster』

 

 

 さらに、最後の形態変更。

 『鳥』の覆面を被り、ジェットパックの両側についた翼剣を操作する。

 すべての翼を一本の剣にまとめ上げる。

 名をつけるなら、重翼剣とでもいうべきか。

二メートルはある刀身を、コアに向かって振り下ろした。

 

 

「せいやああああああああああああああああっ!」

 

 

 重力と推進力が、すべてたたきつけられて。

 コアが砕け散る。

 

 

「KYA、キャンディ」

 

 

 カニゴレイムは、完全に土に還ったのだった。

 

 

「よし!次ですわ!」

 

 

 破壊音と悲鳴を聞きながら、ヴェーセルは次のゴレイムの方向へと駆け出した。

 

 

 ◇

 

 

 ヴェーセルが一体目のゴレイムを排除し終えた時。

 彼女を少し離れた場所から管理する、一人の男がいた。

 彼は蟻のような覆面をつけて、両腕で黒電話を抱え、誰かに連絡を取っていた。

 

 

「ガンドック様、住民の避難、完了しました」

「了解」

 

 

 電話の相手は、上司であるガンドック・ファイアフライだった。

 

 

「……にしても、最悪の事態でさあ、まさかこのタイミングで襲撃してくるなんて。報復行為ってことでしょうが……」

「はい、あの、ヴェーセル・グラスホッパーが現れましたがどうしますか?」

「うーん、とりあえずゴレイムが全員死ぬまでヴェーセルは放置で構いませんぜ。君達は可能な限りそこに足止めしてくれればいいでさあ」

「承知しました」

「俺もすぐそっちに向かいます。到着次第ゴレイムを排除して――ヴェーセルを潰す」

「はっ」

 

 

 通話が切れると同時に、オリバロッソは動き出した。

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