TS転生悪役令嬢、仮面のヒーローになって無双する~婚約破棄されたけど気にせず闇落ちルートを回避しつつ成り上がります~   作:折本装置

82 / 99
「火砲」

 二体目は、ダンゴムシ型のゴレイムだった。

 岩のように固い甲殻を持ち、丸まった状態で自由に回転することが出来る。

 『蛇』の鞭や『羊』の盾で動きを阻害しつつ、ヴェーセルは徐々に殻の隙間をこじ開ける。

 わずかな隙。

 

 

『Form shift――horse chainsaw』

 

 

 そこに、刃を通す。

 腹部は背中ほどの強度はなく、ゆっくりと刃が通っていく。

 

 

「はあああああああああああああ!」

『Mower cycle』

 

 

 チェーンソーがバイクに変形する。

 しかし、チェーンソーは収納されない。

 バイクのフロントフェンダーの部分からチェーンソーが飛び出している。

 チェーンソーは回転しながら胴体にめり込み、コアを削っている。

 このバイクは、現代日本のバイクとは違う。

 ある程度の自律行動が可能なのだ。

 ヴェーセルは、バイクから離れると同時に、頭部にしがみついて行動を阻害する。

 その間に、チェーンソーバイクはじわじわとめり込んでいく。

 刃がコアの半ばほどまで食い込んだタイミングになって、ヴェーセルは動いた。

 

 

「これで、とどめですわーっ!」

 

 

 足で、バイクをさらに押し込む。

 仮面騎兵として強化された脚力、加えてバイクの馬力(・・)の重ね掛け。

 

 

「GYUGAAAAAAAAAAAAAAA!」

 

 

 腹部が裂け、土をボロボロとこぼす。

 丸まった体勢を維持することもできなくなっている。

 

 

「ほーっほっほっほっ、コアの位置がわからないので、出てくるまでお腹を切り刻んで差し上げますわーっ!」

 

 

 切る、斬る、キル。

 

 

 (コア)を断つための刃を、ヴェーセルは振るい続ける。

 それは、ゴレイムのコアを砕くには、十分だった。

 

 

「GA、ガスボンベ……」

 

 

 ダンゴムシゴレイムは、堅い背中の甲殻ごと崩れて土に還っていった。

 

 

「さーて、これで二体目。あとは……」

 

 

 屋根の上に登って、三体目、四体目のゴレイムを探す。

 三体目、はいつの間にか崩れて土の山に変わっていた。

 もしかしたら、ガンドックたちが対処したのかもしれない。

 

 

 ――見つけた。

 

 

 ヴェーセルは、バイクを使って四体目のゴレイムがいる場所まで迫る。

 

 

「これで、最後ですわね!」

 

 

 最後のゴレイムは、ヤドカリ型だった。

 どっしりとした巻貝を背負い、鋏のついた体を出している。

 

 

「これ、どう考えてもコアは貝殻の中にありますわよね……」

 

 

 ゴレイムのコアは個体によって位置が違うのだが、傾向はある。

 露出しやすい体の表面や、攻撃に使う部位には大抵コアはない。

 元々、ヤドカリというのは柔らかい体を守るために貝の中に引きこもるという生体をしている。

 この貝殻は、ゴレイムにとっても盾であるはずだ。

 あるいは、殻を生成するのが能力なのかもしれない。

 ヴェーセルは、殻の上に飛び乗ると、チェーンソーをたたきつける。

 金属同士がこすれるような音がして、火花が散る。

 

 

「これ、さっきのカニよりもはるかに硬いですわね」

 

 

 例えるなら、鎧と家を比べるようなもの。

 これは、殻以外の頭部などを破砕してから奥にあるコアを破壊するべきなのかもしれない。

 

 

「YADOOOOOOOOOOOOO」

「…………え?」

 

 

 ヴェーセルは、チェーンソーを向けたまま固まっている。

 それは、延々とチェーンソーを当てても壊れない殻に心を折られたからではない。

 むしろ、殻に刃が通り始めている。

 では、それが吉報であるのかといえば、そんなことはない。

 殻が、変形を始めたからだ。

 殻から、棘のようなものがいくつも生えていく。

 棘だと思っていたものの何本かが、()、つまりは空洞であることに気付いた。

 筒は、他の棘よりもずっと太く、長かった。

 あるいは、大砲だった。

 切れやすくなったのは、強度を捨てて、攻撃力にリソースを割いたからだと理解する。

 

 

「待て」

「YADOOOOOOOOOOOOO!」

 

 

 大砲から、無数の砲弾を放つ。

 家屋や石畳が砕け散る。

 助けを求める悲鳴が、苦痛のままに出る絶叫が、響き渡る。

 

 

「ふ、ざ」

 

 

 ヴェーセルは、覆面の中で歯をきしませる。

 砕けそうなほどに、両手を握りしめる。

 同時に、理解する。

 このゴレイムの能力は、堅い殻を作り、変形させて武装する能力。

 棘を生やし、砲門を作り出し、周囲を殲滅する超強力な能力だ。

 射程も長く、攻撃力も人を殺傷して余りあるほど。

 何より、遂行速度が早すぎる。

 砲撃をするまで、一分とかかっていない。

 放置していれば、周囲一帯が焦土と化す可能性すらある。

 もちろん、持久戦を続ければいずれはヴェーセルが勝てるかもしれない。

 だが、それではここにいる人達は誰も助からない。

 ガンドックと言い、火器使いは本当に碌なことをしない。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。