TS転生悪役令嬢、仮面のヒーローになって無双する~婚約破棄されたけど気にせず闇落ちルートを回避しつつ成り上がります~   作:折本装置

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「決めつけと誤解」

「なるほど……」

 

 

 ヴェーセルは理解する。

 おそらくは、ヴェーセルが暴れているのを察知したうえで、隙を伺っていたのだろう。

 そして、彼女が倒れこんだ千載一遇のチャンスを狙って囲んだというわけだ。

 目的は、ヴェーセルと、アインスの排除だ。

 ゴレイムに傷をつけられる弾丸。

 一、二発ならともかく、何百発と打ち込まれれば仮面騎兵といえど死ぬかもしれない。

 

 

「聞こえなかったか?アインスの居場所を教えろと」

「知りませんわ」

「なっ!」

 

 

 教えろと言われて教える道理がない。

 ましてや、この質問をした時点で彼らはヴェーセルに「アインスの位置がわかっていない」という情報を与えているということになる。

 つまり、アインスの居場所を吐いた時点で彼らにヴェーセルを活かす理由がなくなるのだ。

 合理的に考えても教える意味がない。

 それに――心情的にも仲間を売るなどありえない。

 

 

「お前……抵抗などできる立場か?我々がその気になればお前など簡単に殺せるのだぞ?」

 

 

 ごりっと銃口をヴェーセルの額に押し当ててくる。

 とはいえ銃弾だけでは今のヴェーセルにとって致命傷でも何でもないだろう。

 

 

「できるものならやってみればいいですわ。ワタクシは仲間を裏切るつもりはありませんの。どこかの軍人ロールプレイと違ってね」

「はっ、仲間、仲間ときたか。これは傑作だ」

 

 

 『蟻』は、馬鹿にしたような声を漏らす。

 

 

「ヴェーセル、お前がガンドック様に伝えていた情報によれば、アインス・オーキドマンティスが作るゴレイムはすべて擬態生物であるらしいな」

「……ええ」

 

 

 タコにナナフシなど、擬態能力を持った生物のみに限られる。

 ヴェーセルも何度かアインスがゴレイムを作っているのを見たし、間違いないはずだ。

 

「なら、さっきのヤドカリたちも擬態生物と言えるはずだ」

「うん?」

 

 

 ヴェーセルは首をかしげる。

 そして、何を勘違いしているのか理解した。

 要するに、彼らはあのストーンゴレイムを作り出し、けしかけたのがアインスであると思い込んでいるのだ。

 ヴェーセルとアインスがマグロゴレイムを殺したことを疑ってはいないのだろう。

 その上で、まだゴレイムが出現する以上、容疑者は彼らの中ではアインスしかいない。

 

 

「待ってくださいな。アインスの仕業ではありませんわよ。これは別のゴレイムが……」

「黙れ。とにかく、奴を討てばこの問題は解決するはずだ」

「無茶苦茶ですわよ……。そもそもヤドカリは擬態生物でもないですし」

 

 

 周辺環境にあわせて姿を変えるタコやカメレオンと、外注品(・・・)である貝殻を纏っているヤドカリでは本質が明らかに違う。

 ましてや、カニやダンゴムシなど、何の関係もない。

 ヤドカリゴレイムやカニゴレイムを作ったのは、アインスではない。

 つまりもう一体、マグロゴレイムやアインスとは別にロックゴレイムがいるはずなのだ。

 それを見つけて殺す以外に解決策はない。

 ないの、だが。

 

 

「仮にそうだったとしても、まずはアインスを殺してゴレイムが現れなくなるかどうか確かめるべきだ。違うか?」

 

 

 それは意味がない。

 戦力をいたずらに削るだけだとヴェーセルは考える。

 だが、彼らにはとどかない。

 彼らは、『蟻』だ。

 当主であるガンドックが指示するままに従う、兵隊蟻に過ぎない。

 死ぬか、ガンドックが命令を翻すまで止まらない。

 少なくとも、客観的に考えて人間であるはずのヴェーセルまで殺そうとしている以上、言葉での説得は不可能だ。

 

 

「我らに与えられた通常弾はお前を殺しきる力は恐らくないだろう」

「だが、何百発も当てれば再生能力の限界まで追い込み、戦闘不能には出来るはずだ」

「お前の動きを封じ、囮にしてアインスをおびき出す」

「っ!」

 

 

 三連戦で、消耗しているヴェーセルにはもう抗う術がない。

 それ自体はいい。

 だが、アインスならばボロボロのヴェーセルを見つければ救出に来る可能性がある。

 その場合、周辺に待機しているガンドックが出てきておそらくアインスは負ける。

 ストックを消費して無尽蔵にイクシードスキルを打てるオリバロッソ。

彼に一対一で勝つのはほぼ不可能だ。

逃げようとするも、身体に力が入らない。

 

 

「全員撃――」

「その必要はないぞ」

 

 

 声がした。

 それは決して大きくはなく、けれど凛としていて、人が聞きいらずにはいられない声だった。

 

 

「あれは……」

 

 

 声の主は、ヴェーセル達の真上にいた。

 まるで何か透明なものの上にいるかのように、仁王立ちしていた。

 白と黒で構成された美少女。

 その美少女が、右腕から螺旋衝角(ドリル)を生やしている。

 

 

「我は、ここにいる」

 

 

 アインス・オーキドマンティスがそこにいた。

 

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