TS転生悪役令嬢、仮面のヒーローになって無双する~婚約破棄されたけど気にせず闇落ちルートを回避しつつ成り上がります~ 作:折本装置
「ヴェーセル、状況を確認したい。こいつらは敵ということでいいのか?」
「え、ええ。あの、殺さないようにだけ」
「わかっている。人間は殺さない」
アインスは、右腕を伸ばした。
そして、先端のドリルを
「あらっ?」
「は?」
刺されたヴェーセルも、無傷の『軍隊蟻』も、呆気にとられる。
アインスはヴェーセルに刺さった状態で、腕を引き戻した。
そして、彼女を手元に戻した状態でドリルを消した。
ヴェーセルは、見えない床の上に――透明化したゴレイムの上に放り出された。
「ぶ、ごほっ、ちょっと荒っぽいのではなくて?」
ヴェーセルは口から血を吐きながら、アインスを睨みつける。
体に穴一つ開けられたぐらいで死ぬようなことはないが、痛覚がないわけではないのだ。
「だが、誰も死んでいないし、貴様以外は傷つけていない。貴様の望み通りだろう」
「別にワタクシはワタクシの傷も望んではいなくってよ」
「まあ、すぐに再生するから問題あるまい」
「それはそうですわね」
ヴェーセルは、こくりとうなずく。
実際、傷はゆっくりと回復していた。
逆に、即時回復できないということから、消耗具合がよくわかるともいえる。
「へーっ、いいですなあ」
「っ!」
「な、んで」
背後から、聞きなれた軽薄な声がした。
とっさに振り向くと、そこには奇妙な物体があった。
四つのプロペラ、迷彩柄の機関部、二本のアーム。
そして何より下部に取り付けられた銃器。
「変形火器オリバランチャー、第三形態・
銃火器が、火を噴いた。
そして、ヴェーセルに着弾し、吹き飛ばす。
「ヴェーセルっ!」
体勢を崩して、ゴレイムの上から落ちたヴェーセルを、ドローンのアームが掴む。
腕を、足を、胴体を、髪を、いくつものドローンが掴み、飛んでいく。
「しま――」
ヴェーセルは、アインスの腕を掴もうとするも、すでに遠く。
そのまま、ヴェーセルの体は街を外れた森の方まで運ばれていった。
「貴方の相手は、私達です」
「!」
アインスは、目を見開いた。
無数のドローンのアームで視界をふさがれており、何が起きているのかわからない。
「ぬんっ」
無理やりドローンを引きはがすと、そこには。
「よう」
ガンドックがいた。
「どうして、ここに?」
「いやいやあ、分断することが必要だと思っただけさあ。あくまで各個撃破だよ」
「各個撃破、ねえ」
ヴェーセルにしてみれば、わざわざ分断するほどの価値が自分にあるとは思っていない。
変身するには体力が足りず、イクシードスキルは使い切った。
すでに戦闘能力はゼロと言ってもいい。
もっとも、途中から来たガンドックには、ヴェーセルが疲弊していることなどわからないのだろう。
ゴレイム討伐と人命救助より、縄張り争いに注力している者達だ。
ヴェーセルとは、根本的な部分がずれている。
彼女がゴレイムと戦って、消耗していることなどわかりようがない。
「ふん、アインスがアナタ以外に負けるはずがありませんわ。すぐにこちらに合流してくるはずです。そうなれば挟み撃ちですわよね」
実際のところ、ただのはったりである。
アインスが来るまでヴェーセルが耐えられる保証など微塵もない。
だが、それを知ってか知らずかガンドックは覆面の内から笑みを漏らす。
「おいおい、わかってねえなあ」
「ちゃんと、こっちだって戦力を整えて挑んでるんだよ。アインスに万が一にも負けないように、な」
「?」
「俺の仕事はさあ、ただゴレイムを倒すことじゃないわけよ。街に住む人たちにゴレイムに関する情報を伝える。これもお仕事お仕事ってわけ」
「それはわかってますわ」
ヴぇーせるとて、王都や鉱山都市では情報伝達もやっている。
ただ、オデュッセイアでは先着していて信頼関係を築いているであろうガンドックに任せただけで。
「そういうわけで、とある人物たちに情報を流した。『アインス・オーキドマンティスに擬態したゴレイムがヴェーセルを連れ去り、逃亡中だ』、とね。ついでに銃と弾も俺の権限でパスしといた」
「……は?」
一瞬、わけがわからなかった。
そして、すぐさま理解した。
ガンドックが誰に、誤情報を伝え、武器を与えたのか。
その意図がなんであるか。
「お前のところの部下と、アインスを殺し合わせる。んで、消耗したところで俺達がまとめて殲滅する。これが俺のお仕事プランってわけ」
「貴様――」
激昂して立ち上がったヴェーセルに。
「はいはい落ち着いて」
『FormⅠ――magnum』
炸裂。
弾丸が命中した。
「お前も、あいつも、今日死ぬんだからなあ」
意識が飛びそうになりながら、ヴェーセルが考えていたのはアインスと、