TS転生悪役令嬢、仮面のヒーローになって無双する~婚約破棄されたけど気にせず闇落ちルートを回避しつつ成り上がります~   作:折本装置

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「聞き込み開始」

 同時に、ルーナたちはてきぱきとテントの設営を始めた。

 そういえば、テントを張ったことはなかったなとヴェーセルは気づく。

 貴族に生まれた以上野営をすることなどまずないし、前世でも没個性的に生きてきたのでキャンプなどをする機会もなかった。

 現代日本にあったようなワンタッチタイプの便利なテントではなく、むしろ手で一つ一つ組み立てていかなくてはならないものだ。

 が、常人離れした身体能力を持ったルーナやアル、魔法を使えるジニーがいるので瞬く間に終わってしまう。

 

 

「ヴェーセル様、拠点ができました」

「わかりましたわ。では、捜索に……」

 

 

 ぐうーっ、という音が当たりに響いた。

 

 

「む、しまった。私としたことが」

 

 

 と、隠密である自分が、大きな音を立ててしまったことを悔しがるアル。

 

 

「す、す、すみません。あの、朝から全然食べてなくて」

 

 

 顔から汗を滝のように流して謝るジニー。

 

 

「あ、あの、ヴェーセル様、あまり見ないでください」

 

 

 女性らしい恥じらいを見せ、顔を真っ赤にしてうつむくルーナ。

 

 

「一旦、食事にいたしましょうか。何か食料はありますか?なければちょっとクマかイノシシを探してきますが」

「あ、はい。携帯食料を持ってきてます」

「しれっと熊を倒す前提ではなしてるね、ヴェーセル」

「まあ、熊くらいなら余裕でしょうね。万全な状態なら私でも倒せますし」

「……そういえば、私以外みんな戦闘民族だった」

 

 

 アルは、半目になりながらジニーと一緒に携帯食料を取りに行った。

 

 

 ◇

 

 

 食事をとり、ルーナの淹れてくれた紅茶を飲んで。

 ヴェーセルとジニーは、街に戻っていた。

 ちなみに、ルーナとアルも街にいるが、別行動中だ。

 四人一緒にいるとどうしても目立ってしまうため、二組に分かれている。

 索敵能力の優れたアルと、身体能力に秀でたルーナを組ませた形だ。

 何かあれば、体力のある方がない方を抱えて逃げられようになっている。

 拠点にしているテント以外にも、集合場所はいくつか決めており、もしガンドックたちにテントを見つけられても問題ないと言える。

 

 

「あの、ヴェーセル様」

「なんですの?」

「その恰好、大丈夫なんですか?」

 

 

 ジニーは、メイド服を着ていない。

 深緑を基調とした柔らかいローブに身を包んでいる。

 なぜメイド服じゃないかと言えば、目立つからだ。

 ヴェーセル達は現在ガンドックとその部下から身を隠さなくてはならない立場にある。

 当然、メイド服ではすぐに発見されてしまうため普通の服に着替える必要がある。

 顔も割れているため、素顔を隠すため色眼鏡をかけている。

 なぜ色眼鏡なのかと言えば、ヴェーセルの好みだ。

 

 

「やっぱりジニーには眼鏡が似合いますわ!」という性欲丸出しの意見を受けて、ジニーは「しばらく外さないでおこう」と思いながら色眼鏡をつけた。

 そして、顔を隠す必要があるのはヴェーセルも同じだ。

 なので、ルーナが用意した服を着ている。

 ここまではいい、当然の行動だからだ。

 

 

「あの、でも」

 

 

 地味な灰色のブラウスとベージュのスカートを身に着けている。

 それはいい。

 

 

「顔、大丈夫ですか?」

 

 

 顔を――顔を覆っている『仮面』を見て、ジニーはおそるおそる尋ねた。

 

 

「何を言っていますの。こうして顔を隠すことで、ガンドックの目を欺く。完璧な作戦ですわ」

 

 

 確かに顔は隠せる。

 だが、その代償としてかなり目立っている。

 というか、通行人からの視線が痛い。

 無理もない。

 比較的閉鎖的な村社会であるはずなのに、よそ者が二人紛れ込んでいるのだ。

 おまけに、色眼鏡と『仮面』の不審者二人組である。

 

 

「そんなに気になるなら、魔法で姿を消すというのはどうですの?」

 

 

 ジニーが扱う魔法には、透明化もあったはずだ。

 

 

「透明化は移動しながらだと解除されてしまうんですよ。潜伏するためのものなので」

「なるほど」

 

 

 ヴェーセルは時折『仮面』を外してバックルに装填し、変身できるかどうかを試している。

 ちなみにその間は手で顔を覆っている。

 ジニーは内心「それはあんまり意味ないのでは?」と思っていたが、突っ込まなかった。

 

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