個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア! 作:波間こうど
手が動いてたんだよね。みんなの推しキャラは今回どんな風に主人公に歪められてるかな? それでは、お楽しみください。
【A組side】
雄英高校1年A組にはムードメーカーがいる。
ムードメーカーと言っても率先して笑いを作りにいくタイプではない。どちらかというと自虐ネタであったり、ブラックジョークを好む少年だ。いや、少年というには少し可憐すぎる見た目をしているのだが。彼の冗談で教室中がドッと湧くことはあまり無い。
彼の名前は舞妓譲葉。雄英高校の倍率300倍を超える入試をトップの成績で突破した、所謂天才というやつである。本人曰く「僕に才能はないよ、全部運と努力」とのことだが、その辺りは今回は置いておこう。
何故彼がムードメーカーだと皆が思っているのか、それは彼の『空気を掴む能力』が余りにも長けているからだ。誰かの感情の変化、誰かの顔色が変わるとすぐに近づいて理由を尋ねてくれる。空気もしっかりと読めるし、状況の判断もしっかりできる。そんな彼は高校入学以来、そのパーソナルスペースの狭さ故にすぐさまA組のみんなと仲良くなった。男子のことはもちろん女子のことも下の名前で呼び、当たり前のように可愛いだのかっこいいだの言ってくる。しかもそれを本心から言ってくるのが尚のことタチが悪かった。
「アレは絶対に近所の少年少女の初恋を奪ってるね。間違いない」
というのは葉隠透の言葉である。彼女は一番最初に彼に「可愛い」と言われた存在で、ことあるごとに可愛い可愛いと褒め殺しにされている存在である。葉隠の個性上、見えることはないはずなのだが、いつだってその葉隠の顔色さえも見抜いてくるのが舞妓という少年だった。
誰のことも気にかけて、皆のことを優しく包むのが彼だった。
「あれ? 優雅寝不足? ちゃんと寝なきゃだめだよ? 部屋明るくしすぎてるから寝れないんじゃない?」
「おっ、三奈ちゃんアイシャドウ変えた? そっちもいいね! このブランドの新作も似合いそうだな‥‥今度プレゼントしようか?」
「あ! 電気そのチョコ一個ちょうだい! え〜、いいじゃん! 気になってたんだよね、その新作!」
「わかる。やっぱりお餅は砂糖醤油が一番だよね、お茶子ちゃんってば話がわかるなぁ」
「踏陰とダークシャドウ仲良いよね。僕も同じくらい仲良くなりたいな」
「実さぁ、僕も男の子だから気持ちはわかるけどもうちょっと慎ましくしなよ? ‥‥いや、おっぱいの話じゃないよ、誰が今サイズの話すんのさ」
「透ちゃん今日も可愛いね! え? 見えないって? 存在が可愛いから、オーラでわかるよ!」
「目蔵ってもしかしてその気になったらガードしながら攻撃もできるわけ? 強すぎない? 複製腕かっけぇもんね」
「猿夫、尻尾ってどうやって鍛えてたの? え? 筋トレ? あ、思ったより普通なんだ‥‥まぁ、努力に近道はないよね!」
「甲司の個性って動物と話せるんでしょ? いいなぁ‥‥僕動物好きなんだよね、近所の野良猫の気持ちを知りたいから今度うち来ない?」
「‥‥百ちゃん、この数学の問題わかる? いやね? 途中までは導けるんだけど、解答何回見てもこうなる理由がわかんなくて‥‥あぁ、なるほどね? さすが百ちゃん、頼りになるなぁ!」
「響香ちゃん。この前の新曲聴いた? 神だったよね! あのコード進行自体は古き良きカノン進行なんだけどさ、ギターのリフが良すぎて別物に聞こえるもん‥‥神だったよね!」
「天哉、これ相澤先生が学級委員長に渡せってさ、放課後提出らしいよ、頼むね委員長」
「梅雨ちゃん‥‥このカエルの種類わかる? ‥‥近所の子が飼い始めたらしいんだけど親御さんから相談受けて‥‥マジ? わかる? 詳しく教えてもらっていい?」
「範太〜、そこのペットボトル取って〜。範太ならテープで余裕でしょ〜」
「鋭次郎って実際どんくらいの硬さまで耐えられんの? 試したことないけど根性次第? 脳筋すぎない?」
「爆豪足下ろせ、注意かって? 命令だわ。成績が上の方が偉いでしょ? お、やんのか?」
「焦凍、もしかして夏は涼しく冬はあったかくできんの? ‥‥そっかぁ、いいね。優しい個性だね」
「出久くん、怪我しすぎ、本当に気をつけてよ? 活動できなくなっても知らないぞ? ヒーロー?」
人のことをよく見ていて、その中でも幼馴染である緑谷出久のことは特に気にかけているようで、いつも一緒にいる姿が目撃されている。それでいて他のクラスメイトの会話にも耳を伸ばしていて、いつでも会話に参加できるように準備しているみたい。そしていつだってその子に一番相応しい、一番欲しい言葉をくれるのが、彼だった。
入試の成績の1位に違わず。戦闘も勉強も、全て卒なくこなす彼は、いつだって笑顔で、いつだってみんなの背中を押してくれていた。
そうやって、切磋琢磨していた中で、悲劇は起きた。
雄英高校USJ襲撃事件。
新聞の見出しにも大きく刻まれたこの事件は、A組の皆の心に大きな傷跡を残すことになる。自分たちはヒーローになりに来ているのに、チンピラを倒す以外に何もできなかったこと。
そして、自分たちの中でただ一人、舞妓譲葉だけがヒーローとして、なすべき事を成したという事実。その二つが皆の心に重りになって伸し掛かる。そしてその二つよりも大きく心を蝕んだのは、『舞妓譲葉の右足欠損』である。
これは本当なら同じクラスの耳郎響香が負っていた傷だという。彼は自分の足を犠牲にして、『怪我をした』という概念を入れ替えたのだとか。事件の後、皆で集まって話す中で涙ながらにそう説明した耳郎はとても辛そうで、苦しそうで、彼女のことを救った彼という存在が遥か遠くに見えた。
自分が同じ個性を持っていた時、それができるだろうか。
緑谷曰く、彼は昔から変わらないそうだ。昔から、自分のことを後回しにして自分のことを助けてくれたのだという。それは自己犠牲がヒーローの本質であることを知っているから、だとか、ヒーローだったらこうするから、ではなく、『体が勝手に動いてしまう』のだと、彼は言った。憶測の域を出ないが、いつも彼は考えるよりも体が動いているのだと、緑谷は言うのだ。
彼は、いつの間にかA組にとって、なくてはならない太陽になった。輝き、周りを照らす。だから、自分たちも前を向いて進まなくちゃと、思わずにはいられない存在。
それが舞妓譲葉だった。
彼は足を失った後も、ヒーローとしてではなく、ヒーローになりたい者として、いつも動いていた。学業も、訓練も、真面目にこなし、それでいてクラスメイトとの交流を止めることがない。まさに完璧な少年だった。
‥‥ときどき爆豪と口論するところ以外は完璧な男の子である。その爆豪との口論でさえ、クラスのみんなには風景の一部として受け入れられた。勝気な一面として捉えることで評価が上がりすらした。
そんな優しい彼が、怒ったりするなんて、考えたこともなかった。
「‥‥おい、なんのつもりだよテメェら」
それは、とある日の放課後に放たれた言葉だった。いつもは優しく、男子にしては幾分か高い声で話す、笑顔の絶えない彼から発せられた言葉なのだと理解するのに数秒の時間を要した。目を見開き、青筋を立てて、群衆を睨む。いつもの高い声とは全く違う、体が震え出しそうなほどの低い声。
「ゆずくん‥‥?」
緑谷が声をかけるがその声は届いていないようだ。今までになかったことである。爆豪との口論の中でさえ緑谷が止めれば必ず止まった彼が、文字通りブチギレているのだと理解するのに時間はかからなかった。
スラスラと流れ出てくる罵倒、嘲笑、煽り。全て全て、彼の口から聞いたことがない言葉だ、何がそんなに彼の逆鱗に触れたのか。それをA組の皆はすぐに知ることになる。
「まだ傷が癒えてない女の子がいる、心の傷だぜ? わかるか?」
彼は、自分のためではなくて、友達のために怒っていたのだ。
それが、たまらなく彼らしくて、それでいて、その痛々しい傷痕が、見ていてたまらなく苦しくて、顔を顰めてしまう。
耳郎なんて泣きそうだ、気づいた八百万が背中を撫でる。境遇を知っているA組は耳郎に同情してしまう。しかし、舞妓が誰よりもその耳郎のことを気にかけてこの行動を起こしていることもわかっていた。
『まだ心の傷が癒えていない女の子がいる』
これはA組の女子全員に当てはまることだ、クラスメイトが足を無くしても楽観的でいられるような奴なんてA組にはいない。だが、それでも、この言葉はきっと耳郎に吐いているんだろうな、という確信があった。そのことに何故か少しばかりモヤっとした何かを感じる者もいて、そのことに自己嫌悪に陥った。
彼は当たり前のように側に居て、当たり前のようにみんなの心の深いところに居座っているのだ。
「そういうわけで!」
にこやかに、笑って、他クラスのガヤを馬鹿にするように、威嚇する彼の姿が、中学時代の爆豪に重なる。それに気づいたのはきっと緑谷だけなのだろうけど、いや、気づいた緑谷だからこその些細な違和感。
それは、後々になって気づくことになる大きな絶望の前触れだということは、ここにいる誰も、緑谷出久も爆豪勝己も、知らなかった。
「1から20位くらいまで独占しようね! 期待してるよ? みんな」
ただ、彼がこんな風に士気を高めてくれたからには1から20位まで、僕達で埋めるんだという意識だけが、みんなの心を繋げた。
× × ×
「舞妓譲葉。お疲れ様です」
「こんにちは、黒霧さん。いつもお疲れ様です」
僕はいつもの路地裏にやってきていた。ここじゃないとワープの時に目立つのだ。もうすぐ体育祭であり、みんなで訓練をしていたのだが、今日は病院だということで早めに上がらせてもらったのだ。まぁ、嘘だけども。というか病院って言った瞬間にみんな顔曇るの最高すぎない? 何? 僕のことを悶え殺す気?
「それでは、死柄木弔がお待ちです」
「あ、今日は先生じゃないんだ」
まぁ、そんなことだろうと思ったけどね。なんて頭の中で考えながら僕は黒霧さんのワープホールに足を踏み入れた。そして全身が抜けると見えたのはいつものバーだ。
「やっほ、弔くん。元気してた?」
「‥‥譲葉」
ガタン、と椅子を倒しながら弔くんが立ち上がった。そして僕のタートルネックの服を見て苦い顔をする。ははぁ〜ん? 今日も僕のことを悦ばせに来てくれたわけ? 最高の相棒だね?
「‥‥首、痛くないか」
「随分マシだよ」
「足は、歩けるのか」
「最近の義足は性能が良くてさ、僕も才能があってすぐ歩けるようになったよ」
「‥‥‥‥それから」
「大丈夫だよ、僕が選んだことだから。弔くんは気にしなくていい」
僕の言葉に弔くんが捨てられた子犬のような顔をした。なにそれ! 可愛すぎる〜! 僕のことをこんなに楽しませてくれるとか本当に最高だよ君ってばさ! 僕のことを楽しませるためにこの世に生を受けたんじゃないかって思うくらいに僕のことを満たしてくれるよね! 本当になんでもしてあげたくなっちゃう♡ 他の子を曇らせる邪魔になること以外ならなんでもしてあげるからね♡
「嫌いにもならないし、怖くもないからね?」
「‥‥死なないか?」
「死なないよ、安心しな? というかこれからもたくさん、こういうことを経験するよ、君は。ましてや君は王だ。他の兵士がたくさん怪我するのを安全な場所から見ていなくちゃいけない立場なんだからさ、慣れないとだよ?」
「慣れねぇよ、こんなの」
そう言ってくしゃっと顔を歪ませた弔くんのことを優しく抱きしめてあげる。こんな風に抱きしめられるの、怖いよね? トラウマだよね? お母さんは抱きしめられなかったもんね? 消しちゃったもんね? でも安心しなよ、僕は消えないから、もし消えたとしても‥‥
君の心に傷痕として残り続けてあげるからさ。
「‥‥先生、どうせ聞いてるんでしょ? 弔くんって昔からこんな感じ?」
『いや? 譲葉が特別なんだよ。いい友を持ったね』
チラリとテレビを見ながらそう口にするとやっぱり聞いていたラスボス先生がそう口にする。僕にはわかるよ、困ってるでしょ? この世に未練ができる弔くんにさ、でもそれ以上に弔くんの成長に喜んでもいる。だから、僕のことを排除できないんだろ? わかってるよ、不確定要素が多すぎるもんな? 安心して? まだ僕は味方でいるからさ。
「弔くん、落ち着いた? そろそろ作戦会議しよ」
「‥‥あぁ」
「‥‥え? 黒霧さん、僕の聞き間違いじゃないよね? 弔くん返事したよね? なんで離さないの? ちょっ、ちょいちょい、このまま作戦会議は格好がつかないって!」
「しばらくはそのままにしてあげましょう。死柄木弔が落ち着くまでね」
どこか優しい瞳で黒霧さんが僕と弔くんを見る。言っとくけど今の弔くん僕っていう中性顔の美少年に抱きついてる成人男性だよ? 普通に逮捕案件でしょこんなの。捕まらない方が奇跡だからね? ‥‥いや、捕まえるには罪状が多すぎて未成年淫行なんて触れられもしないかもしれないけどさ。
「全く、しっかりしてよ? 王様」
僕の言葉にこくんと頷くのが、振動として肩に伝わった。いい曇らせたくさん見せてくれるのはいいけど依存されちゃったら困るなぁ‥‥ほら、僕ってペットの面倒は最後まで見るタイプのブリーダーなんだよね。
× × ×
「緑谷、お前には負けねぇぞ」
迎えた、体育祭当日。僕たち全員が揃った控え室で体をほぐしていると、轟くんが急に立ち上がってそう言った。
「お、意気込みは十分みたいだね? 焦凍」
「‥‥舞妓、お前にも俺は負けない」
「ふふ、いいね。宣戦布告かな?」
僕がおちゃらけて返すと、轟くんは少しジロリとした視線を返した。うんうん、悪くない、復讐に染まったいい目だ。でも、僕が見たいのは曇った顔で、そういう顔じゃないんだよね。
「‥‥オールマイトに目をかけられてる緑谷、それから、俺が勝てねぇと思ったお前。俺はNo. 1にならなくちゃならねぇ。どっちも超えていく」
「あはは! いいね! でも間違ってるぞ、焦凍」
なになに? 僕に勝てないって思ってくれてたんだ? どこで思ってくれたのかは知らないけど‥‥嬉しい誤算だな。轟くんの心象に踏み込むのはもうちょっと先だと思ってたよ。でもまぁ‥‥今の君は曇らせの前に一度その心の内側のモヤを振り払わないといけない段階だしね? 味付けをする前に下拵えをするから料理は美味しくなるように、君のことをしっかり曇らせるためにはまず根っこの部分を揺らさないとね?
「僕と出久くんだけじゃないでしょ? 他のみんなにも勝つって言わなきゃ。宣戦布告する相手が足りないね。客観的に見て焦凍の方が上だとしても‥‥僕がその立ち位置入れ替えちゃうかもだよ?」
ピリッと、少しだけ言葉に棘をつけながらそう言うと、轟くんが僕の目の前から飛び退いた。そんなに驚いた猫みたいな反応する‥‥?
「‥‥言っておくけど、1から20位を独占って言っても。僕は負けるつもりないよ? やるからには1位を獲りにいく‥‥ここにいるみんながライバルだ。僕はみんなより優れているなんて思ってないよ。でも少しだけ前を歩いてるって自覚してる」
手を前に出して、銃を撃ち抜くようなモーションをする。そして全員に、一人ずつに銃口を向けてから弾を撃つ動作をしてみせた。最後に銃口にフッと息を吹きかける。
「さぁ、魅せてよヒーロー! 僕を超えてみろ!」
僕ができる最大限の種まきと、煽りを見せて、かっちゃんが我慢の限界だと立ち上がった。
「上等じゃボケが!! 俺がトップ獲ンだよ!! 半分野郎!! 宣戦布告する相手がちげぇわカスゴラァ!!!」
「轟くんの方が客観的に見ても実力は上だと思う‥‥だからって、負けてあげられない‥‥! 僕は、No. 1になるって、約束してるからッ!」
原作の場面をさらに熱いものに作り変えてあげる。うんうん、こんだけ煽ればさぞかし楽しめる体育祭になることだろう。僕は思いっきり楽しみに行く、今回は、僕という存在を世界に見せつけるための日だからね。
もちろん、いつか来る曇らせの伏線としてね!
「さ! 行こうか、1年A組! 誰が勝っても恨みっこなし! そんじゃあ! かかってこいやぁ!!」
「望むところじゃァ!!!!!」
僕の声にみんなが声を合わせてそう返した。なにそれ、原作以外のアドリブでもそんな風に声合わせられるのかよ。ふふ、楽しくなってきたね!
僕たちは闘志をそのままに会場に足を踏み込んだ。
× × ×
『どうせお前らアレだろ!? ヴィランの襲撃を撥ね退けた奇跡の新星!! ヒーロー科! 1年A組だろぉ!!!???』
マイク先生のやけに煽る言葉を聞きながら入場する。うんうん、気合い十分。出席番号とか完全に無視して僕が先頭で歩いてるけどいいのかな? これ後で怒られない?
ゾロゾロと宣誓台の前に(流石に出席番号順)並ぶと、ミッドナイト先生が現れてスパーン! と鞭で空気を叩いた。僕はMじゃないのでそそられないが、叩き方とか今度教えてもらえないかな? いや、深い意味はないんだけどね?
「選手宣誓! 1年A組! 舞妓譲葉!」
「えぇ、ゆずくんなの!?」
「まぁ、入試一位通過だしなぁ‥‥」
「ヒーロー科の入試な」
僕が呼ばれるやいなやそんな声が周りから聞こえる。僕はあえてその「ヒーロー科の入試を強調した生徒」に向かってヘラリとした顔を向けた。
「雄英で一番偏差値と倍率の高いコースの入試ね」
悔しそうな顔をしたその生徒を無視するように颯爽と歩いてから宣誓台に登る。マイクを手に取ってからあーあー、と少しだけマイクチェックした。
「宣誓、本日、空の晴れ渡る善き日に、雄英高校体育祭という大きな舞台に立つことができることを誇りに思います」
僕の声が響き渡る。本当は主審のミッドナイト先生の方に向かって言わないといけないんだけど、パフォーマンスのためにマイクを手に取って後ろを向くことにした。
「ここまでが台本で、こっからがアドリブです」
「先日、雄英高校はヴィランによる襲撃を受けました。そこでは数名の怪我人も出たというのはみなさんの記憶にも新しいでしょう」
「なにせ、僕もその一人です。この首の怪我は首謀者と思われるヴィランにつけられた傷です」
「さて、なぜこんなことを言うのか、こんな内容を皆さんに届ける理由はなんなのか‥‥」
ここまでゆっくり話すと、僕の声にざわつく雰囲気が伝わってきた。そりゃ、こんなにカメラとかある場所で被害者ですなんて言ったら何事かって思うよね。
それもこれも全部曇らせのための種なんだけど、それに気づいている人はいない。多分、画面を通してこの言葉を聞いているラスボス先生だってわかっていないだろう。
「僕たちはヒーロー科だ、将来的にヒーローになる、そんな僕たちがこの体たらくでいいのか!? そんなわけがない!」
力強く、叫べ。
「オールマイト、エンデヴァー、ホークス! 名のあるヒーローの先達はたくさんいる! 彼ら、彼女らの跡を継ぐ僕たちが! ヴィランの襲撃に晒されただけの存在でいてもいいのか! 断じてそうであってはならないでしょう!」
僕が次世代を担うのだと誤認させろ。
「断言します! 雄英高校ヒーロー科! 1年A組! 僕たちが次世代を担う、ヒーローとなるために! ヴィランの襲撃をも苦としない! 皆さんを守れる平和の象徴になるために! 僕たちが平和の要となるために!!」
そうすれば裏切ったときのその曇りはさぞかし甘美なものになるから。
「今大会の台風の目! 僕たちがヒーローだと! 僕たちがきたと言うことを見せつけますことを! ここに宣言します!」
会場が沸き上がる。まぁ、こんだけ煽られれば沸くよね。みんなノリがいいなぁ、まぁ、これについては僕がアドリブだとか言ってるせいもあると思うけど。しっかりと台本作って練習してきてるんだよね。心は掴めたかな?
「僕たちを見ていてください!」
会場の熱気をぶち上げてからマイクを置いて、カメラに向かって頭を下げる。階段を降りると困った顔をしたA組のみんなと目が合った。
「どうかした?」
「ゆずくん‥‥これは‥‥」
「これは? 何? 怖気付いちゃった?」
ヘラヘラしながら返す。そして出久くんのおでこをデコピンしてあげてからみんなに悪戯に笑いかけてあげた。
「僕を超えてくれるんでしょ? 期待してるよ? みんな」
僕の言葉を皮切りにみんなの顔色が変わる。いいね、情熱的な顔色だ、アガってけアガってけ、その分僕が落として、味わい尽くしてやるからさ!
そんな僕の思いを胸に秘めて、雄英高校体育祭が、幕を開けた。
本日は少し短めです。書き溜めとかないので、筆が乗ったタイミングであげてますからこういうこともありますよね。
お気に入り登録、ここすき、励みになっています。これで10話ですし、改めてお礼を言わせてください。
感想も全て見ています。なんか譲葉の理解者が死ぬほど居て面白いです。常連様方は名前を覚え始めてしまいました、いつも本当にありがとうございます。できる限り返信をするつもりです。皆様の応援を背に受けて、頑張りますので、これからもよろしくお願いします。
映画編を入れるかどうかのアンケートをさせてください!
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入れたのが見たい!
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本編だけ追いかけるのでOK!
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アンケート結果が多い方で!