個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア!   作:波間こうど

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待ってくれている皆様。お待たせいたしました。ヒロアカ二次創作においてどれだけ面白く描けるのかが大事な体育祭ですよ。頑張っていきましょう。


個人トーナメントその1!

 

「で、僕たちを呼び出してどうしたわけ? 焦凍」

「‥‥‥」

「轟くん、唐揚げがなくなるから早めにお願いしてもいい? ゆずくんの唐揚げは人気だからすぐになくなっちゃうんだよ」

 

僕たちは騎馬戦が終わった後、呼び出されていた。誰かというのは言わなくても大丈夫だろう。轟焦凍くんである。言っちゃうのかよ。というか出久くんの胃袋掴みすぎじゃない? 僕。最早怖いんだけど。

 

「‥‥結局、俺は今のところお前らに勝ててねぇ」

「競技と僕の個性と相性が良かったからね」

「僕に関しては個性ろくに使えてないよ‥‥」

 

それはあれか? 個性を使わなくても障害物競走2位、騎馬戦1位になれたってことかな? まぁ、出久くんがそんな感じの嫌味を言うことはないだろうから、全然違うと思うけど。ただ使えなかったって話だろうし。使ったら負けてたまであるよね‥‥治療してもらえるかもわからない上に治療してもらえなかったら怪我を抱えたまま競技を続けなければならない訳だし。

 

実際、障害物競走は原作でも一位だったけど、騎馬戦はギリギリ滑り込みの四位、それだって人に助けられてって感じだし‥‥恵まれてだもん。今回みたいな発想になるのはおかしいことじゃない。というか僕が暴れすぎてその恩恵を受けているわけだからそう言う思考になるのも納得だ。

 

「‥‥俺の親父は万年No.2のヒーロー、エンデヴァーだ」

 

あ、出久くんが轟くんのことを追い詰めてないからオールマイトの隠し子云々の話はないのね。まぁ、僕があんだけ暴れたらそりゃそうなるか‥‥というかその暴れた理由である物間くんの曇らせ見れなかったんだけどどう落とし前つけてくれるんだ? おぉん?

 

「‥‥個性婚って知ってるよな。オールマイトをテメェで越えられなかった親父は俺の母親の個性に目をつけた」

「母親の親族を丸め込み、母親の個性を手に入れた親父は俺のことをオールマイト以上に育てることで自分の欲求を満たそうってんだ」

「記憶の母はいつも泣いてる‥‥お前の右側が醜いって、母は俺に煮湯を浴びせた」

「俺はそんなクズの道具にはならねぇ、左側を使わずに、上に行くことで俺はクソ親父を完全否定する‥‥」

 

この話いつ聞いても重いよね。普通にラスボスじゃんエンデヴァー。今の所倫理観だけで見たらヴィランよりヴィランしてるぜ‥‥曇らせるためだけにみんなに近づいてる僕といい勝負だ。は? 僕のが酷いが?

 

「‥‥緑谷、お前がオールマイトの何なのかを詮索するつもりはねぇし、舞妓のことを目の敵にしてることも否定はしねぇ。不快かもしれねぇ、だけど俺はお前らを超えていくぞ」

 

轟くんはポケットに手を突っ込んだまま踵を返す。僕の横で震えてる出久くんに少しだけ目を向けてから僕と目を合わせた。これは曇らせの種を植えるチャンスですね‥‥歩いていく轟くんに向かって口を開く。

 

「‥‥焦凍は自分の個性が嫌い?」

「‥‥俺の話聞いてたか?」

 

おっと、殺意のこもった視線ですねぇ‥‥クラスメイトに向ける物じゃなくない? まぁ、いいけどさ。

 

「聞いてたよ。でも、僕はその個性を優しい個性だって、昔言ったろ。その言葉は忘れるなよ」

「‥‥‥」

 

轟くんは僕の言葉を無視して今度こそ完全に振り返って歩き出す。その足を止めたのは次は僕ではなくて出久くんだった。

 

「僕はずうっと助けられてきた‥‥さっきだって、今までだって、ゆずくんをはじめ、色んな人に助けられて、ここにいる」

 

なんか原作より僕に焦点を当てた話し方するねぇ‥‥僕的にはそれでも一向に構わないんだけどさ。むしろ曇らせ的に見たら大幅なプラスだし。

 

「オールマイト‥‥ゆずくん‥‥彼らのようなヒーローになりたい。だから、その宣戦布告に改めて返させてもらう。僕が1番になる」

 

うんうん‥‥なんか成長したなぁってしみじみとした気持ちになっちゃったじゃん‥‥おじいちゃんか? 僕は。

 

轟くんが少しだけ出久くんに視線を向けた後、歩き出すのを見てから。出久くんと一緒にお昼ご飯を広げていた広場まで戻る。まぁ、みんなある程度は残してくれているもののめぼしいおかずは無くなっていた。女子陣に相変わらず大絶賛されていると横にいた出久くんが地面に崩れ落ちる。

 

「そんな‥‥僕の唐揚げ‥‥」

 

原作でも見れないくらいに落ち込んだ顔の出久くんが見れたが、なんか違うなぁと思った今日この頃でした。ご飯くらい作ってあげるって、なんかその曇り顔は違うから元気出してくれない?

 

 

  × × ×

 

 

お昼ご飯が終わったので、少しだけトイレに行こうと足を伸ばす。こんな見た目をしているので毎回男子トイレに入るとすごい顔で見られるんだよなぁ‥‥まぁ、最近はみんな慣れてきたみたいだけども。頑なに僕の方に目を向けようとしないのは少しおかしくて笑っちゃうよね。峰田くんは視線を隠すことを覚えようか。

 

トイレから出て、手をハンカチで拭きながら廊下を歩いているとチアの服を着たA組のみんなを発見した。お、原作通りじゃん。可愛いね。

 

「あ、ゆずくんや!」

「やぁ、お茶子ちゃん。可愛い格好だね。妖精かと思っちゃった」

 

僕に対していち早く気づいたお茶子ちゃんに手を振って見ると女子陣が次々と僕に気づいてくれる。おーおー、絶景だね。この子達この体つきで高一? 犯罪でしょ。抑止力にならないといけないヒーローが犯罪者を生成するな。

 

「チアダンス?」

「そうですわ! 峰田さんと上鳴さんが先生からヒーロー科女子によるチアリーディングが開催されると!」

「へぇ〜‥‥みんな似合いそうだもんね」

 

これで僕は峰田くんたちに騙された哀れなみんなが全国中継の前でチアを晒すという場面に出くわしたわけだ。

 

なんかもうだいぶ面白いな‥‥この後思いっきり照れ顔晒してくれるかと思うと僕的にはポイント高い。というか峰田くんは原作とは違ってトーナメントに出ることになってるんだからさぁ〜‥‥トーナメントで当たるかもしれないヤオモモちゃんにカロリー消費させてチア服作るなんてそんなことさせちゃダメでしょ‥‥そんなこと言ったら上鳴くんなんて原作通り出るのにってことになるけど‥‥普通に考えて謀略のレベルじゃん。

 

面白そうだから口出さないけどさ。

 

「それで、みんなこんな服着てるんだ? 可愛すぎてアイドルの子かと思ったよ‥‥似合ってるね」

「‥‥‥!」

「‥‥‥ユズさぁ、ほんとさぁ」

「舞妓はいつか刺されると思う」

 

僕の褒め言葉は何やら好評ではないようだった。何てこった、僕の突発的な語彙力じゃ足りなかったらしい。このまま僕の持ってる語彙力全てで褒めてやろうか? ああん?

 

「それで、今から出るわけだよね?」

「うん! 私はここにいる女子で唯一トーナメントに出ないから‥‥ここでアピールしないと!」

「確かに。透ちゃんならいいアピールになるかも。可愛いのなんて一目瞭然だしね」

 

僕は褒めた後少しだけ上半身を後ろに逸らせた。さっきまで僕の頭があった場所をイヤホンジャックが切り裂く。危険察知能力が上がってるぜ。もしかして僕がワンフォーオールを取得した?

 

「危ないじゃんか」

「いや、ウチの役目かなって」

「ウチの役目かなって???」

 

なんだか僕が葉隠ちゃんを褒めた後、義務的に僕のことをしばくことにしているらしい耳郎ちゃんは少しだけ眉間に皺を寄せてそう言った。何が君をそこまで突き動かすの‥‥?

 

「じゃあ僕はみんなの活躍をお客さんと同じく客席から見ようかな」

「あ、舞妓くんも着ない? きっと似合うと思うけど? 女の子みたいな可愛い顔してるし」

「‥‥‥透ちゃんはさっき僕のことを女の子扱いしないように言ったと思うんだけど?」

「忘れちゃったかなぁ〜? ふふ、どうする?」

 

なにやらわざとらしく僕のことを煽る葉隠ちゃん。何だろうか、違和感はあるが‥‥でもそれはそれ。僕のことを女の子として見るのは許せない。ちんちんあるからね。

 

「透ちゃん? 僕がさっき言ったこと忘れちゃったんだよね?」

「うん! 綺麗さっぱり!」

「‥‥‥葉隠?」

 

耳郎ちゃんがなにやら訝しんだ顔をしているが僕はそれを無視して葉隠ちゃんの腰を引き寄せた。その行動に耳郎ちゃんと同じく訝しんだ顔をしていたA組女子が悲鳴をあげる。

 

葉隠ちゃんは今は服を着てるしわかりやすいよね。といっても、チアリーディングの服だからお腹は見えてるんだけども。いや、見えてねぇよ。透明人間だったわ。

 

引き寄せた後僕は軽やかに身を翻して壁に彼女のことを押し付けると彼女の顔の横に手を叩きつけた。鉄の壁に反射して、ドン! という鈍い音が響く。

 

「ひぇ‥‥」

「欲しがりさんだなぁ‥‥そんなに僕に構って欲しいの?」

「あ、あぅ‥‥」

「何言ってんのかわかんないなぁ〜‥‥口で言えないならこっちに聞くけど?」

 

僕は葉隠ちゃんのお腹に手を当ててニコリと微笑む。うわ、肌のキメ細か! スベスベじゃん!

 

こういう壁ドンだのなんだのって知識はこの世界の少女漫画で見たものだし、間違っていないだろう。この手のオラオラ系が最近の流行りなのだ。

 

暗い廊下、壁ドン、美形の男子(僕が美少女顔であるという事実からは目を逸らして)、そして人には見られない個性を持つ少女、なんだかこの世界の王道少女漫画のようだ。わなわなと彼女が震えているのがわかる。さぞかし照れてくれているだろう。

 

「それで? 忘れちゃったんだよね? 思い出させてあげよっか」

「は‥‥はぃ‥‥」

「はいじゃないっての!」

 

スパーン! と僕の頬がイヤホンジャックによってしばかれた。なに? いいところだっていうのに‥‥嘘である。止めてくれて助かった。危うく放送禁止コード引っかかることするところだったわ。ジャンプじゃなくてヤングジャンプになるところである。

 

よくよく考えればジャンプからヤングジャンプって名前だけ見たら若返ったみたいなのにヤングジャンプの方が大人向けなのなんか釈然としなくない? どうでもいい?

 

「あんたら学校で何しようとしてんの! こ、ここにはウチらもいるんだよ!?」

「やだなぁ‥‥僕が悪い? これ」

「どう考えても舞妓が悪い」

「ケロ‥‥でも透ちゃんも結構悪くないかしら」

「どんぐりの背比べですわ。どっちもどっちです」

「これは流石にゆずくんを弁護できへん‥‥」

 

僕の行動は女子たちにおおよそ不評であるようだ。よくない? 僕が悪い? これ。

 

「スキンシップじゃん。透ちゃんだって許してくれるって、ね?」

「‥‥責任とってね?」

「葉隠!?」

 

ダメかもしれない。僕が顔を青くしながら後ずさると、冗談だよ、というように葉隠ちゃんがクスクスと笑った。その声を聞いてホッと胸を撫で下ろす。

 

「もう、やめてよね。僕が女子陣から怒られちゃうじゃん」

「ふふ、うん。ごめんね?」

 

ボソリとやめないけどね。なんて言葉を葉隠ちゃんが呟いた気がするけど気が付かなかったことにする。僕は難聴系主人公を目指しているわけではないので聞こえているが、ここで踏み込んでも藪蛇な気がするしね。

 

「それじゃあ改めてみんなの可愛いところ僕は外から見てるね?」

「うん! 楽しみにしてて!」

「ウチのキャラじゃないんだけどな‥‥」

 

みんなが可愛らしくスカートの裾を振りまきながらボンボンを持って会場に歩いて行く可愛らしいみんなに手を振ってから僕は踵を返す。これ、普通に考えてたら罠だってことくらいわかると思うんだけどなぁ‥‥

 

 

「騙された‥‥!」

「アホだろあいつら‥‥!」

 

案の定みんなに面白いものを見るような目で見られるA組女子のみんなを見ながら一人でクスクスと笑う。トーナメントに出るみんなはそれぞれ精神統一してたり、各々のコンディションを整えているようだった。

 

そんな中、心操くんが上位に上がってこなかったことで尾白くんと庄田くんの棄権の話とかのゴタゴタもなかったので、僕はみんなのチアを眺める。なんか一人だけ得した気分だぜ‥‥

 

「ユズ! そんなにニコニコしながら見んな!」

「え〜‥‥可愛いのに」

「か、かわ!?」

 

何やら恥ずかしそうにしている耳郎ちゃんのことを観客席から揶揄いながらみんなのことを眺める。うんうん、いい眺めだぜ‥‥この子達みんな曇らせる曇らせない以前に普通に可愛い女の子たちなんだってことを忘れそうになるよね。僕じゃなかったら恋しちゃってるぜ? 恋心は適切な用法用量を理解して気を配ろうね? あの距離感男子みんな恋に落ちちゃうんだから。

 

届かない距離でもイヤホンジャックを伸ばしながら威嚇してくるポメラニアンみたいな耳郎ちゃんに手を振ってから時計に目を移す。

 

戦いの時間は刻一刻と迫っていた。原作とは完全に乖離した試合が幕を開ける。

 

 

  × × ×

 

 

発表された対戦トーナメント表は原作とは大きく違うものになっていた。僕があれだけ暴れて心操くんや鉄哲くん、塩崎さんを追い出してるからね。さらに言うなら発目ちゃんのことも追い出してます。どっかで関係は持ちたいので声はかけに行くつもりだけどね。彼女が曇るところとか見たいじゃん。見たくない?

 

ちなみに対戦トーナメント表は

 

緑谷vs峰田

轟 vs瀬呂

舞妓vs上鳴

飯田vs蛙吹

 

芦戸vs耳郎

常闇vs八百万

障子vs切島

麗日vs爆豪

 

という形になっていますね(敬称略)。どう考えても原作崩壊なんだよなぁ‥‥

 

あと、僕がめちゃくちゃ美味しい場所にいるんだけど‥‥上手くいけば轟くんともかっちゃんともやれるぜ‥‥最高だな?

 

「‥‥‥」

「なに? 流石のユズも緊張してきた?」

「してないよ。あとチアのままのが可愛かったのに」

 

耳郎ちゃんのイヤホンジャックを避けながら返事をする。まぁ、緊張していないと言えば嘘になる。僕は未だに轟くんに対する明確な勝利のイメージが持ててないし。普通に一対一って相性悪いんだよなぁ‥‥

 

「響香ちゃんは三奈ちゃんだっけ? 緊張してんの?」

「‥‥してるに決まってんじゃん。ウチはアンタみたいに心臓に毛が生えてるわけじゃないんだから」

「失礼な」

 

胸を押さえながら息を吐く彼女は本当に緊張しているようだった。原作ではここまで辿り着けてないからね、耳郎ちゃん。どんな戦いになるのかは想像もつかない。

 

「‥‥響香ちゃんと当たるなら決勝かな」

「へ?」

 

僕は耳郎ちゃんの頭をポンポンと撫でながら笑ってみた。ほらほら、存分に曇る準備してくれていいんだからね? どこまで勝ち上がれるのかはわからないけど勝ち上がっても当たるのはかっちゃんだし、決勝まで上がって来れる確率はとことん低いけど‥‥一応気にかけてるよ、と言うところを見せておく。これで負けたらそこそこ曇ってくれるでしょ?

 

「待ってるよ。登っておいで」

「‥‥なにそれ」

 

クスッと笑った彼女は緊張が少しはほぐれたようだ。僕の方に体を倒して肩に頭を乗せてから目を閉じる。恋人の距離感やめなー?

 

「待ってなよ」

「うん」

 

よし! 楽しく話せたな!

 

内心ガッツポーズしながら周りの視線を無視する。いや、ここ観客席だしクッソ目立ってるよね。まぁ、気がつかないことにしてるけども。この後で顔を赤らめる耳郎ちゃんが見れるのならそれでいいかなみたいな節があるぜ‥‥この子の顔は多分癌にも効くようになる。

 

「ねぇー! 舞妓くん!」

「わっ‥‥!」

 

僕がうんうんと頷いていると僕と耳郎ちゃんの間に葉隠ちゃんが割り込んできた。まぁ、この観客席の仕様から考えたら後ろから割り込めるっちゃ割り込めるけど、段差あるから危なくない?

 

「なに? 透ちゃん。」

「次の試合緑谷くんじゃん! 幼馴染としてどう思う!?」

「あぁ、そのこと?」

 

透ちゃんは僕と耳郎ちゃんの間に体を挟み込み(椅子の段差があるせいで結構辛い体勢だと思うんだけど大丈夫なのだろうか)ながら僕に質問する。

 

うーん、原作通りなら勝ち、とか負け、とか言ってあげられるんだけどなぁ‥‥正直わからないというのが本音である。まぁ、主人公だし、勝つとは思うけど‥‥峰田くん相手に出久くんが有効打持ってないんだよね‥‥個性使ったらオーバーキルだし‥‥それにこんなところで怪我してたら轟くん戦が厳しいものになる。無個性でどうすりゃ勝てるんだろ。ただ‥‥

 

「うーん‥‥どっちが勝つかはわからないけど、出久くんに勝ってほしい気持ちはもちろん強いよ。僕が出久くんとやりたいからね」

「お! その心は?」

 

葉隠ちゃんは耳郎ちゃんに頬を押し返されて僕たちの間から撤去されそうになるのを何とか堪えながらそう聞いてきた。体勢的に辛いだろうから早く座り直せば? なに? 僕と耳郎ちゃんの間に何か執着でもあるの?

 

「そんなの、ライバルだからに決まってるじゃん」

「男の友情的なやつだ!」

「いいなそれ! 熱い! 男だ!」

 

僕らの会話を聞いてたのか斜め後ろの席からお茶子ちゃんが顔を出した。それに対して切島くんも反応する。後ろを振り返りながらその二人にもついでに話してあげようと振り返ると自分がライバル認定を受けていなかったことに不服そうなかっちゃんと目があった。なんかお前だんだんと可愛くなっていくな‥‥何事?

 

「僕らは小、中ってずっと一緒だったからね。ヒーローになりたかった身としてはずっと、出久くんのことは憧れだよ」

「それは以前お話ししていた舞妓さんのヒーローだからですの?」

「もちろん。そういう面もある」

 

ヤオモモちゃんにそう返してから試合が始まる前の緊迫した試合会場を見つめる。そこには出久くんと峰田くんが立っていた。出久くんは精神統一をしているのか目を閉じて手をだらんと下げている。勝負のその時を今か今かと待ち構えているようだ。

 

「ただ、僕はさ。アイツにだけは負けたくねぇーの。誰よりも優れてるヒーローだからさ」

 

これは僕からあっちに向けての激重感情の布石である。これが後々の曇らせに効いてくるわけよ‥‥ふっ、敗北が知りたいな‥‥。こうやってしっかり蒔いた種が芽吹いてくれることを祈ろう。

 

試合開始を告げる声が上がった。プレゼントマイク先生の大声が上がるや否や出久くんは目をカッ! と開いて地面を踏み締めて峰田くんに向かって一直線に進んでいく。

 

「一度オイラのもぎもぎに引っ付けちまえばオイラの勝ちだ!」

「そうだよ‥‥! だから、対策はしてある‥‥!」

 

峰田くんの投げたもぎもぎを華麗に避けると峰田くんに体当たりを喰らわせた。峰田くんの身長が低めなのと、出久くん自体がムキムキなのもあって体重差はすごいことになっているだろう。モロに喰らって仕舞えば峰田くん的には大ダメージは逃れられない。

 

「追い討ちは右の大振り」

 

グッと右手の拳を握った出久くんが峰田くんのお腹に拳を打ち込む。タックルで浮き上がった峰田くんの体は地面に叩きつけられた。出久くんはさらにそのまま体勢を崩さずに足を前に進めると峰田くんの腕を両手で掴んでそのまま場外へ向かって投げ飛ばす。場外の壁にまで吹っ飛んでいく、というようなことにはならなかったけど、受け身も取れないまま、峰田くんが線の外に叩きつけられた。

 

『峰田くん場外! 勝者緑谷くん!』

 

なるほど、僕と一緒に研究したヒーローの戦闘スタイルだったり、僕と過ごした時間というものは彼にとても大きな影響を与えていたようだ。流石に無傷で勝つとは思ってなかったな‥‥

 

しかし、しっかりと勝ち切ってくれるのはいいことだ。この場合は峰田くんが弱いのではなくて僕と過ごした時間が出久くんを成長させていたと捉える方がいいよね。

 

「クソデクが‥‥ッ! あのフォームは俺の‥‥!」

「爆豪の大振りと同じフォームだったなぁ」

 

ワナワナと震えるかっちゃんに上鳴くんが感心したように口にした。うん。原作での心操くんとの戦いのように殴ってくる相手じゃなかったから自分から攻撃の意思を見せたんだろうけど‥‥よりにもよってかっちゃんの得意技を選択するか。いい選択だね。

 

何故なら僕がかっちゃんの曇り顔を見れるから。いい顔だね〜! 自分の得意技がよりにもよってナードな出久くんに取られちゃってて悲しいかな? 苦しいかな? 悔しいかな? いい顔してるね〜! 自分が負けた時の経験で勝ち上がってきた原作よりも、自分の技を使われて、完璧に模倣されて上に上がられる方が不快度合いは上だよね!

 

「はー‥‥緑谷のやつ個性使わずに勝ちやがった‥‥」

「あれ全部読んでたのか?」

「うん、実を相手にするなら持久戦に持ち込まれるのは避けたいよね。もぎもぎが増えれば増えるほどこっちの動きが制限されるし、相手は動きやすくなる‥‥先手必勝の畳み掛け、これがベストアンサーだってことには出久くんも気づいてたみたい」

「出た! 分析ゆずくんや!」

 

お茶子ちゃんに言われてペラペラと話していたことに気づく。うーん、僕が出久くんに大きな影響を与えているように僕も出久くんに大きな影響を受けてるみたいだなぁ‥‥あっちから貰うつもりはなかったんだけどガッツリと癖が染み付いちゃってるぜ‥‥染められちゃったってこと!? 隙あらばBL展開にしようとするのやめなー?

 

「でも、出久くんの作戦勝ちなのは確かだな。実が勝ちたいなら出久くんから逃げながらもぎもぎを撒いていく長期戦狙いが一番良かったんじゃないかな」

「なるほどなぁ‥‥でも緑谷相手なら超パワー警戒してできるだけ早く捕まえたくなるのはわかるわ」

 

言いたいことはわかる。でも出久くんの超パワーは今現在デメリットがあることについても理解しておかないといけない。そのことをしっかりと把握できていれば負けなかったと思うんだよね。出久くんと殴り合うのは流石の僕も嫌だけども、殴り合い以外の観点から見るとただの行動派ヒーローオタクだし。深読みしてくれるタイプでもあるから頭をフル回転させればもうちょっと峰田くんも戦えたはずだと思うけどなぁ。

 

「それじゃあ、もうそろそろ僕も準備しようかな」

「もう? 早くない?」

「ん〜‥‥焦凍今キレててさ、たぶんこの試合すぐに終わるから」

 

耳郎ちゃんの言葉に対して考える素振りを見せてからそう返答する。正直どんな試合展開になるのかなんて分かり切ってるしね。クラスメイトみんなが頭に?を浮かべているが見てればわかるよ、とだけ言ってから控室に向かうことにした。

 

 

  × × ×

 

 

『A組のスパーキングキリングボーイ! 上鳴電気! vs! ちょっと強すぎないか!? 入試主席のぶっちぎり!! 舞妓譲葉!!』

 

紹介を受けながらのびのびと体を伸ばして、目の前で何やら冷や汗をかいている上鳴くんに向かって声をかける。なんでそんなにビビってんの?

 

「さて、電気。覚悟はいいか?」

「おう! 俺だってやれるってところ見せてやるぜ!」

 

轟くんvs瀬呂くんの戦いは悲惨なものだった。原作通りのドンマイ展開である。あんなのどうしようもないよね。僕にもあれ見せてきたのどう考えてもこれの対策してろよって宣戦布告だと思ってるんだけどどうかな‥‥轟くんならそうやってブラフかましてからなんか裏の手を隠してそうで嫌なんだけども。いや、この時期は左使わないだろうしあんまり警戒しすぎなくてもいいのか?

 

そんなこんなで待ちに待った僕の試合である。正直、対戦の組み合わせを見た瞬間からどうするのかということは決めていたので、僕からしたらこれは消化試合もいいところなんだけど‥‥まぁ、上鳴くんにそんなことを告げるのは酷というものだ。

 

上鳴くんはサポートアイテムがない状態だと放電を撒き散らすことしかできない。近づいたら終わりである。なら近づかなければいい。

 

『Ready!! Fight!!』

 

試合が始まると同時に僕は後ろ向きに駆け出した。チラリと後ろを振り向くと上鳴くんが驚いた間抜け面晒しているのが見える。ウケるね。

 

「電気の個性は強力だけど! 指向性がないのがネックだよね!」

 

舞台から飛んで、場外に向かう、そして足がつくギリギリで個性を発動した。

 

「あ!」

「これで僕の勝ちね」

 

『上鳴くん場外! 舞妓くんの勝利!』

 

ミッドナイト先生が僕の勝利だということを告げてくれる。うんうん、今回僕は逃げただけなんだけどね。まぁ、でも逃げていくヴィランを捕まえられるかどうかも重要なポイントだし、放電だけだと活躍できないかもしれないということが知れるのも自分の問題が知れて良かった、という風に思って貰うことにしよう。

 

「ズルじゃん!」

「電気の個性相手に真正面から相手するのは愚策でしょ」

 

お互いの健闘を讃えあうように握手をすると上鳴くんが声を上げた。まぁ、言いたいことはわからないでもない。でも、僕のこの個性は必中だから受けるだけで相手のことを特定の条件下で縛れる。そのことについて対策していない相手が悪いと思うんだよね‥‥

 

「電気の個性が強いから正面からやり合いたくなかったんだよ」

「嬉しいけど嬉しくねぇよ!」

 

これは本音だ。原作のUSJ編で耳郎ちゃんが言っていたセリフだけど電気系の個性は勝ち組の個性だ。ヒーローじゃなくてもその個性を持っているだけでそれなりにいい職場につけるし重宝される。その上、上鳴くんはヒーロー志望で雄英に受かるほどの個性だ。一対一の障害物がない場所でやり合うには相手が悪すぎる。

 

なので切島くん的にいうと男らしくない勝負を挑むしかなかったんだよね。許してほしい。

 

「まぁ、僕が優勝するからさ! 優勝した相手に負けたってことなら少しは溜飲も下がるだろ?」

「そうだけどよぉ‥‥あとなんでお前そんなにいい匂いすんの?」

 

上鳴くんと肩を組みながら僕がそう言うと、上鳴くんがいい匂いすると馬鹿なことを言い出した。汗かいたら匂いには気を使うでしょ。

 

「上鳴くん! 今すぐ離れて! ゆずくんも!!」

 

何やら切羽詰まった顔で2階の席から身を乗り出して僕らに向かって声を上げてくる出久くんに手を振りながら僕たちは控え室の方へと歩いて退場して行った。何言ってんだろ‥‥全然聞こえないんだけど。まぁ、おめでとうとかかな? にしては迫真すぎる顔なんだけども。

 

「俺今身の危険感じてる」

「? なんで?」

 

冷や汗をかきながらそう溢した上鳴くんに僕は首を傾げることしかできなかった。そんなにビビるようなことあるか?

 

 





さて、原作とは完全に乖離したお話を進めていくとなりまして、原作と乖離すると何が辛いってガッツリと内容を考え込まないといけないんですよね。そのこと自体は全くもって問題ないんですけど文字に起こすと違和感出たりして筆が止まることもしばしば‥‥ままなりませんなぁ‥‥

そういうときは感想を一つ一つ読み返して元気をもらっております。これからも頑張っていきますので応援どうぞよろしくお願いします。

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