個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア! 作:波間こうど
書いてる話は正直全部僕が面白いとか、こうだったらいいなってものです。好き嫌いはまま、あると思います。ですが、面白いものを書きますので、楽しんで見ていってくださいね!
感想くれるみんな愛してるぜ‥‥(承認欲求モンスター)
休みの日に書いてストック、放出って流れを定番化していきたい今日この頃。
僕の後の試合は原作では飯田くんvs発目ちゃんだったんだけど、発目ちゃんは僕の暴れっぷりで完全に除外されてしまったので飯田くんの相手は梅雨ちゃんとなった。
その試合は結構白熱したものの、最終的には飯田くんがスピードで押し切る形で勝負を決めることになる。レシプロ使わなかったのは梅雨ちゃんのことを舐めていたというより温存って形だろう。次の相手は僕でその次は出久くんか轟くんだし、それが終わったら決勝だ。何回も使えるものじゃないし、一回戦から使うのには不安が残ったんだろうね。梅雨ちゃんが遠距離型の個性じゃなかったから一気に距離を詰める必要性がなかった、ということも理由の一つだろうか。
‥‥次絶対にレシプロ使ってくるよなぁ‥‥どうしようかなぁ‥‥勝つ方法は何パターンか用意してあるんだけども‥‥でもなぁ‥‥この世界の民度的に怒られそうなものが多いんだよなぁ‥‥この世界は現実に負けず劣らずクズが多いのもそうだけど一つの言葉に便乗する習性があるから‥‥どうしようか悩みどころだね。
あと、轟くんと戦う前に確かめておきたいこともあるんだけど‥‥厳しいだろうなぁ、これ轟くん戦で博打的にするのだいぶ怖いんだけど‥‥
そんな僕の悩みは一旦置いておいて、その次の戦い。この試合は僕的に見ものだ。なんと言ってもさっきの梅雨ちゃんvs飯田くんと同じく、未知の組み合わせだからだ。
耳郎ちゃんvs芦戸ちゃんである。
原作では耳郎ちゃんのところに青山くんがいたわけだけども。その青山くんは心操くんが上位に残らなかったからその煽りを受けて結局トーナメントには残ることができなかった。うーん。なんかごめんね‥‥
さて、試合はもう始まっているのだが、これがなかなか面白い戦いとなっている。
芦戸ちゃんの個性は『酸』。自分で酸を分泌し、戦うことができるわけだけど‥‥ちなみに自分でどんな酸が出せるのかは把握してないらしい。どうやって分泌する酸を峻別してるんだろうか‥‥
それに対して耳郎ちゃんの個性は『イヤホンジャック』。僕の頬を何度も何度もぶっ叩くあれである。あれなんであんなに殴られてるんだろうか‥‥不思議だ‥‥それはそれとして、これは索敵にも攻撃にも使える中々の便利個性だ。戦闘においてもイヤホンジャックを伸ばせる範囲がそこそこ広いこともあって一対一の戦闘において結構有利だと思うんだよね。
お互いに自分の戦い方を押し付け合うような戦闘をしてる感じだ。芦戸ちゃんは酸を飛ばしたり酸を纏っての近接戦に持ち込んでみたり、耳郎ちゃんが苦手な分野を分析するようにしているみたいだけど、耳郎ちゃんが上手にそれをいなしている。
耳郎ちゃんは上手いこと相手の攻撃を避けながら、イヤホンジャックを芦戸ちゃんに差し込むタイミングを測っているように見えた。まぁ、実際のところイヤホンジャックさえ差し込めば耳郎ちゃんの勝ちはほとんど決まるしね‥‥振動による体の内部への攻撃というのはガード不可能だし。なにそれ、強すぎない?
「ね、舞妓くん的にはこれ耳郎ちゃんと芦戸ちゃんどっちが勝つと思う?」
「む‥‥難しいこと聞くね?」
うーんと、頭を悩ませるように腕を組む。正直、試合を見る前までは芦戸ちゃんが勝つだろうなって漠然と思ってたんだけど今はいい勝負‥‥下手をすると一撃で相手を戦闘不能にすることができる耳郎ちゃんの方が相性的に見ても有利かもしれないって思ってるんだよな‥‥運動神経は耳郎ちゃんよりも芦戸ちゃんの方が上だろうけど、なんか耳郎ちゃんは執念が違うというか‥‥もう気力だけで見ると決勝戦みたいなレベルだ。
「ん〜‥‥これは五分だね。三奈ちゃんの方が強いとか、響香ちゃんの方が強いとか、そういうことが言えるほどの差がないかな」
僕の言葉に対して葉隠ちゃんはそっかぁ、と声を漏らす。まぁ、どっちが勝ってもおかしくないって話だし、面白みはないだろう。
「つまらない解答でごめんね?」
「え? あぁ! ううん! 全然いいよ!」
何やら慌てるように手を振る彼女の反応に首を傾げていると試合が大きく動いた。
「‥‥‥ッ!」
「へ‥‥?」
耳郎ちゃんが足場を自身のイヤホンジャックから流した振動で砕き、それに足を取られてバランスを崩した芦戸ちゃんの足を蹴りで払ったのだ。地面に倒れた芦戸ちゃんに馬乗りになってイヤホンジャックを胸に突き刺す。
「しまっ‥‥!」
「ハートビートファズ!!!」
耳郎ちゃんの必殺技が芦戸ちゃんの体を貫通した。流石にあんなの食らっちゃったらひとたまりもないだろう。筋肉がすごい分厚いとか、もしくは体の中身の構造が違うとかじゃないとダメージ確定で入る内部破壊の攻撃使えるのやっぱり強すぎない?
「響香ちゃんの勝ちみたいだね」
「すげぇな‥‥芦戸相手に近接戦で競り勝った」
ここに今は控え室に向かった切島くんがいたらいい反応が見れただろう。あの子達中学校同じだし。まぁ、そうじゃなくてもこのたった数ヶ月で理解できるくらいに芦戸ちゃんが運動神経抜群女子ってことはわかってるけどさ。本当にすごいわ、そこらの男子なんか目じゃないくらい動けるもん。実際にキャラ紹介のところで運動神経は女子で一位、クラスでも上位って言われてたしね。
個性なしの殴り合いって面で見たら男子の下位層くらいは普通にノせるんじゃないだろうか。なんで耳郎ちゃん勝てたの? 個性ありきとはいえめっちゃ頑張ったんだな‥‥
「あ、響香ちゃんお疲れ様。三奈ちゃんも頑張ってたけど後一歩及ばずだね」
「うん、すぐに追いつくから待ってなよ。ユズ」
「う〜‥‥悔しい‥‥」
帰ってきた二人を出迎えるために立ち上がり、晴れやかな顔をした耳郎ちゃんとグータッチしてから悔しそうな顔をする芦戸ちゃんの頭をポンポンと撫でる。というか内臓攻撃受けたってのにタフだな‥‥
「‥‥舞妓はいつか刺されると思う」
「何回も聞いたけどその通り魔宣言はなんなの?」
「相手は知り合いだと思うから夜道に気をつけなよ」
僕が頭を撫でたら顔を少し赤らめた芦戸ちゃんがブツブツと文句を言った。さらに耳郎ちゃんになんかめっちゃジロリと見られたんだけども、僕何か悪いことしただろうか‥‥
続いてヤオモモちゃんvs常闇くんの試合は原作通り順当に常闇くんが二回戦にコマを進めた。この世の終わりレベルで絶望した顔のヤオモモちゃんを慰めつつ常闇くんの健闘を讃える。というか中世の騎士じゃないんだから常闇くんみたいな中距離型の個性相手に剣と盾って‥‥弱点を知っている身としては閃光弾とかが良かったと思うけど‥‥知らないとそんなピンポイントなものは作れないか。
さらにその後、鉄哲くんの代わりに障子が入った切島くんvs障子くんの戦いが幕を開けた。複製腕を上手に使って戦闘を行う障子くんは手数で攻めるタイプで、それを切島くんが硬化で返すという脳筋すぎる戦いの結果、勝負は切島くんの勝ちという結果に終わった。
これは障子くんの相性負けと言ったところだろう。複製腕って元々索敵とかそっち方面の個性だし‥‥手数を増やせても全部固くなって効かなくなったら勝ち目は薄い。
そして、一回戦の目玉試合の時間になった。
「あ、出久くんおかえり。お茶子ちゃんにアドバイスしたの?」
「ううん、断られちゃったや。おんぶに抱っこじゃカッコつかないってさ」
「あはは、お茶子ちゃんらしいね」
「なんでゆずくんは少し目を離すと女の子に囲まれてるの‥‥?」
「彼女みたいなこと言うじゃん」
なにやらブスッとした顔の出久くんにほらほら、座りな? と僕の横の席を指さしてあげる。さっきまで悔しがってたヤオモモちゃんが座ってたけど今は同じく一回戦で負けた梅雨ちゃんと芦戸ちゃんと仲良く少し上の席でお話ししてる所だ。そういえばこれでお茶子ちゃんが負けたら上に登る女子って耳郎ちゃんだけになるのか‥‥なかなか厳しいね、男女差。
「‥‥この勝負、麗日さんには頑張って欲しいけど‥‥」
「爆豪が油断とかするわけないしね。性別とかも考慮しないから多分開幕からぶっ放すよ」
僕の言葉に出久くんが深刻そうな顔で頷きを返す。そんな顔せんでもええやろ‥‥かっちゃんに虐められた記憶から彼ならやるってしっかりと考えているのだろう。まぁ、原作通りやってくれると思う。あいつ手加減を知らねぇのか?
『START!!!!』
プレゼントマイク先生が大声をあげる。それを合図に低姿勢でお茶子ちゃんがかっちゃんに向かって突っ込んでいった。まぁ、かっちゃんとお茶子ちゃんの個性の相性を考えたら速攻でタッチするというのはまぁ、ありがちな考えだろう。多分クラスメイトみんながそう考えたと思う。しかし、それに対してかっちゃんは手痛い爆破で返した。その後もお茶子ちゃんの特攻を全て返す刀で爆破する。
「お茶子ちゃん‥‥」
「見てから反応してやがる‥‥爆豪マジで反射神経どうなってんだ‥‥」
「爆豪まさかそっち系の‥‥」
峰田くんの考えに対して否めないなぁ、と思いながら戦いを見つめる。すご、あんなに石上げながら突撃してんの? マジでどうなってんだよ‥‥Puls Ultraしすぎだろ。総合したら数百キロは余裕でありそうだけど‥‥キャパは?
クラスメイトからの評価は概ねやっぱりこうなったかって感じである。ちなみに出久くんと僕も同じ評価だ。おいおい、この短時間で幼馴染と同じ評価をクラスメイトに植え付けるとかどんだけ乱暴なの知れ渡らせてんだよ、ウケる。普通に考えてヴィランの行動なんよ。
ただ、かっちゃんの行動は今回ばかりは正しい。
「おい! それでもヒーロー科かよ! 女の子一人いじめて遊んでんじゃねぇ! さっさと場外にでも放り出せよ!」
一人のヒーローが見かねてブーイングを始めると、それに端を発してヒーローの皆さんからブーイングが飛んだ。やれやれ‥‥この世界の人たちは乗っかるのが好きすぎだろ‥‥一人の言葉に流されすぎ‥‥それがヒーローの姿か?
そして、今日ここが僕にとっての曇らせポイントである。体育祭で曇らせのポイント稼げるのはここくらいなもんだよね。
僕はすぐさま手を叩いて相澤先生のマイクを手元に召喚する。相澤先生とプレゼントマイク先生が実況してる場所は僕たち雄英生の座っている席からも良く見えるし、ここまで呼び出すのはチョロい。ついでにあっちにはそこらの石ころを贈呈してあげた。
「おい、今遊んでるって言ったのプロ? ヒーロー何年目? それに付随してブーイングしたお前らもだぞ、お前らこそここに遊びにきたのか?」
会場がざわつくのを肌で感じながら席を立ち、ジャンプして目の前にある手すりのついた壁に飛び移る。観客のみんなが僕のことを見やすい状態にしてからマイクに向かって声を飛ばした。声の質は低め、怒っているってことがわかるくらいに目尻を吊り上げる。
「雄英の体育祭は伊達や酔狂でやってんじゃねぇんだよ。こっちは真剣にやってる。本気で勝ちてぇから油断もできないし、手も抜けないんだよ。ヒーロー免許さっさと返納して転職しろ間抜けが」
彼らがブーイングしてた方に向かって彼らがブーイングした際に使っていた親指を下に向けるハンドサインをしてやる。ヒーローに向かってするハンドサインじゃないけど、あっちが先に年下の子供に向かってしてるんだから僕が使っても許されるよね? あのヒーローたちのヘイトを貰うにはこれくらいしなきゃ。
「お前ら視野が狭いんだよ。お前らみたいな一般人以上ヒーロー未満な奴がいるせいでヒーロー飽和社会とか言われんだ。ふざけんじゃねぇ。さっさと帰れ、見る意味ねぇよ」
『舞妓』
僕の最後の言葉を聞いてプレゼントマイク先生のマイクを通して相澤先生に名前を呼ばれる。これ以上はダメってことかな。まぁ、言いたいことは言ったし、モブヒーローの皆さんの嫌な顔も見れた、種も蒔けたしいいとしよう。
相澤先生が僕の送りつけた石ころを手に持ちながら早くしろ、と目で訴えかけてきたので手を叩いてマイクと石ころの位置を交換してあげる。そして、ゆっくりと視線を今闘っている二人へと移した。
『今舞妓が言ったことは全部正しいぞ。爆豪はここまで上がってきた麗日のことを認めてるから警戒してんだ。この戦いを見て未だに遊びだのって言うのなら家に帰って転職サイト見てろ』
相澤先生の言葉と同時。その瞬間に、流星群が降り注ぐ。お茶子ちゃんが準備した起死回生の一撃だ。
『流星群〜!!??』
プレゼントマイク先生がびっくりした声を上げた。いや、あんたの位置からは気づいてなくちゃいけないでしょうよ‥‥あと、プロは間抜けすぎる。そんなのだから最終決戦でヒーロー科が出張らなくちゃいけないんだよ。免許返納しろっての。
いやまぁ、かっちゃんには関係ないんだけどさ。腕を上に上げて大きな爆発一つで瓦礫をかき消す。すげぇ威力‥‥余波でお茶子ちゃんが飛んでいったぞ。つーか瓦礫は数百キロあったんだよ?
「それを一撃て」
まぁ、そこのモブヒーロー共のうちの何割があの流星群を防げるのかは知らないけどそんなに多くもないだろう。つまり、さっきの不意打ちは完全に決まれば何割かのヒーローは防ぐ手立てもなく負けてしまうと言うことだ。雄英の先生陣が強いから忘れがちだけどヒーロー飽和社会なんて言われてるくらいだからね。この世界。強いヒーローばかりではないのだ。
だからモブヒーローの皆さんは理解できましたかね? 自分がブーブーと豚みたいにブーイングしてた相手の方がよっぽど正しい選択をしていて、貴方たちはヒーロー科一年の女の子に負ける程度の実力しかないってことがさ。わかってるからそんな顔してるんだもんね? でも質が悪いわ、45点の曇り顔だね。
元が輝いてないと曇ってもイマイチなんだよなぁ。
お茶子ちゃんの負けが決まってロボットに連れて行かれるのを眺める。ほんと、よく頑張ったよ。原作では優勝する男相手に一矢報いるくらいの戦いしてるわけだし、そりゃ、かっちゃんも認めるわな。流石は僕の曇らせ的なライバルだぜ‥‥ぜひ僕のやりたいことの邪魔をしないで欲しい。
「ゆずくんは麗日さんの狙いが見えてたの?」
僕が手すりから飛び降りると出久くんが僕にそう聞いてきた。うーん、原作知識で知ってましたとは口が裂けても言えないしなぁ‥‥見えてるのか見えてないのならどっちの方が評価高いんだろ‥‥
「見えてなかったよ。でも、作戦がなかったとしても、お茶子ちゃんはヒーローだった。それだけ」
「‥‥そっか」
何やら思案したような顔をして出久くんが手を握りしめる。なになに? 曇るには至らないけど自分の嫌な部分を見つめてるみたいな顔、さっきのモブヒーローの曇らせよりはいい顔だぜ? 53点。
あ、いいこと思いついた。
「‥‥出久くん、次君が勝って、僕も勝ったら、当たるよね?」
「え? ‥‥うん」
顔をあげた出久くんの瞳が僕の視線と交差した。目が合うと同時にその胸に優しく拳を押し当てる。
ここで、10年間で培った曇らせの種を上手に開花させましょう。思いついたならやらなくちゃね。
「決勝戦じゃないけどさ、いつだかに約束したの覚えてる?」
「‥‥‥!」
「先に上がって待っててよ」
主人公は君なんだ。君が軸になって物語ってものは進行する。だからこそ、君に寄り添って今まで動いてきたんだ。
もし、僕を含んだ『僕のヒーローアカデミア』があるのなら、僕は君にとって手近なライバルで、すごい奴で、何故か美少女顔で、同じタイミングで個性を発動させた親友って扱いだろう? そんな奴との熱い約束、それは少年漫画的にはめちゃくちゃ激アツ展開だと思うんだ。今きっと黒い外枠で過去の記憶がフラッシュバックしたろ? それでいいんだよ。その存在する記憶は僕が植え付けた伏線だからさ。
ほら、僕のことを楽しませてよヒーロー。僕の手のひらの上で踊って?
「すぐに追いつく」
「うん‥‥!」
控え室へと歩いていく出久くんを見送ってから椅子に座ろうとすると帰ってきてたかっちゃんと目が合った。もう上がってきてたんだ、まぁ、動き回ったけど怪我はしてないもんね。上がってくるのも治療がなければ早いか。
「‥‥テメェ、デクとの約束ってなんだ」
「なに? 聞いてたの? みみっちいな」
「こんなところで会話してるテメェらが悪りぃだろ」
それはそう。ここ普通にみんないるしね。なんなら何人かはよく聞いてくれました! みたいな顔してる。そんなに気になるかな?
「雄英の体育祭、みんなが見てるその大舞台の決勝戦で、やろうって。どっちが1番のヒーローになれるか、競おうって約束」
「あ゛?」
「僕たちは幼馴染で、親友で、ライバルだからさ」
それ以外に何かある? とかっちゃんの方を見ると今にも怒髪天ですとでも言うような顔をして僕を睨んでいた。そんなに睨むことある? 何がそこまで気に障ったわけ?
「お前‥‥ライバルは‥‥お前のライバルは‥‥ッ」
なにやらブツブツ言ったかっちゃんは、出久くんよりも強く拳を握りしめると、親指だけを出して首を掻っ切るようなジェスチャーをした。
「お前と決勝で当たんのは俺だ‥‥ッ! デクなんかじゃねぇ‥‥ッ!」
「それ以前の問題でしょ。まだ決勝にも登ってないよ」
「それでもだ‥‥ッ! 俺は決勝まで登るから、テメェも登ってこいや‥‥ッ! ぶち殺してやる‥‥ッ!」
僕を射殺すような視線で睨み、かっちゃんはズンズンと人と離れた席に腰を下ろした。何やら機嫌の悪いかっちゃんを気にした切島くんが近づいていく。君いい子すぎるな‥‥
何にキレてたんだろ。でもまぁ、なんか曇らせに使えそうだし良しとしよう。うん。
さて、小休止を挟んで、次はヒロアカ屈指の名試合だ。存分に楽しんで鑑賞するとしよう。
× × ×
出久くんと轟くんの試合は、ヒロアカだけじゃなくてジャンプにも名を残す名勝負だと僕は思っている。ヒーローとしては何より、主人公として、その姿を読者に印象づけたあの戦いは僕も一読者として興奮したものだ。
「‥‥‥」
原作通りの出久くんは十分に轟くんの心を動かすに足るだけの言葉を与えることができていたけど‥‥僕と深く関わりを持ってしまった以上どうなるのかはわからない。未知数であると言ってもいい、まぁ、ヒーローとしての心構えや憧れを抱き続けている部分、個性をもらったところなんかは変わっちゃいないが、それでも、不確定要素はある。それ故に不安もある‥‥
「ユズ。なに自分の試合より緊張した顔してんの」
「いや‥‥出久くんのこと考えると絶対にやらかすと思うんだよね」
「それって自滅するってことか?」
「後遺症残るレベルの大怪我だって後悔なくするだろうからなぁ‥‥。焚き付けなけりゃよかったかな‥‥」
耳郎ちゃんや瀬呂くんに反応してからうーんと唸る。実際は出久くんが轟くんのことをしっかりと救ってくれるのかどうかってところなんだけど‥‥家庭の事情を知ってんのは僕と出久くんと盗み聞きしたかっちゃんだけだしね。そんなこと言ったってクラスメイトのみんなはわかってくれやしないだろう。大体救うだの救わないだのって話自体原作知らないとわかんないし。
『START!!!!!』
始まった試合は壮絶なものだった。短期決戦を目指す轟くんに対して指を壊しながらもそれを相殺し続ける出久くん。戦い方だけ見たら普通に頭の悪い戦い方なんだけど‥‥個性が馴染んでない出久くんの取れる策としてはこれが最大限のものなんだから仕方ないよね‥‥それがわかっているのは出久くんとオールマイト、リカバリーガールと僕のような彼の個性が貰い物であると言うことを知っている一部の人間くらいなものだろう。
二人の会話はここまで届かない。二人が話せる程度の声でしか会話しないからだ。ちなみに観客席に聞こえる声といえば雄叫びか、かっちゃんの「死ねッ!」くらいのものである。体育祭で暴言あげながら競技に出るのやめなー?
しかしまぁ、とびきり大きい声なら聞こえる距離感だ。だから僕はさっき、かっちゃんに向かってブーブーとブーイングを垂れていたあのモブヒーローの声が聞こえたのである。かっちゃんに自分の言葉を届けようとしていたから大きい声だったし、かっちゃんにだけ大きい声を届けるって言うのは不可能だからね。しっかりと僕たちにも聞こえていた。
「全力でかかってこい!!!!」
ボロボロになった指を強く握りしめて出久くんが叫ぶ。どっちが挑戦者なのかと問われればどう考えても出久くんが挑戦者なのに、“かかってこい”とは随分と強気だな‥‥まぁ、言いたいことはわかる。片方の力だけしか使わないで闘ってる今の轟くんって舐めプし続けてるような状態だし‥‥出久くんじゃなくたってイラッとするわ。
「緑谷なんでそこまで‥‥ッ!」
「ボロボロじゃん」
「指全部イってんだろ‥‥」
まぁ、その出久くんが戦う姿勢に関して言えばクラスメイトもドン引きである。そりゃ引くよね、こんなやべぇ戦い方してたら。僕も結構引いてる。原作で見てた時は「やべぇ、すげぇ、カッケェ!」と純粋な少年くらいの感覚で見れたのに今となってはやべぇ、なんだこいつ怖い(戦慄)だもん。どうやったら指ぶっ壊しながら戦う幼馴染を正気で見れるんだ? 原作知っててもトチ狂ってるだろ。
「舞妓! 止めないの!?」
「そうだぜ! あのままだと緑谷絶対に後悔するって!」
「止めないよ」
一人の曇らせスキーとしてではなくて一人の原作ファンとして、この試合を止めることは絶対にできない。この試合がないと初期ロキくんから改心してくれないし、そうなると曇ってくれなくなっちゃうからね。結局曇らせに行き着くんかい。
「出久くんの選択をいつだって僕は尊重してるから」
「君の!! 力じゃないか!!!」
その声は、僕たちにも届いた。煽っているのは僕にもしっかりと伝わっていて、その上で、緑谷出久という少年が心の底から捻り出した言葉。そうだよね、無個性だった君にとっては個性があるのに使わないなんてちゃんちゃらふざけた話だもんね。
個性は身体能力、生まれつき体に備わっている力だ。あることが当たり前で千差万別だから『個性』だから出久くんといった個性を持って生まれてこなかった人のことを『無個性』という。でも失礼な話だ。生まれつき体に備わるべきものが一つないってだけで人として当たり前の『個性がない』と言われるんだから、この世界は捻じ曲がっている。
その歪みこそ、僕が最大限活用したいこの世界の曇らせの本質なのだ。
轟くんが炎を出した、この体育祭で初めてのことだ。どこか悔しそうな苦笑いを浮かべながら、出久くんと対面する。涙すら浮かんで、自分の抱えていたものを全部ぶち壊された顔をしている。
こうやって心理的なストレスとして多大なものを受けた轟くんをこの後の試合で僕がセラピーすることで心の内側にまで入り込んでいこうと思っております。楽しみにしててね(愉悦)
試合は一瞬で片付いた。勝ったのはもちろん出久くんではなく、轟くんだった。まぁ、炎が使える上に氷で足元を固定できる轟くんからしたら体壊すほどのパワーとはいえ足元を固定する力がない出久くんは放出個性でのやり合いにおいては分がある相手だっただろう。
「負けちゃったかぁ〜‥‥」
「いやでも轟が今まで使わなかった左側使うまで追い込まれたって考えたら緑谷すげぇな」
「でもどう見てもボロボロだぜ?」
「まぁ、惜しいところまでいったね」
クラスメイトからの評価はだんだんと回復してきた。まちまちといったところだろう。僕個人の視点で見てもかっこいいかは置いておいていい試合だったと思う。これがないと僕が轟くんの心に入り込めないからね、ありがたいね。
「さて、そろそろ行こうかな」
「次の試合、頑張ってね! 舞妓くん!」
「ん。応援しててね、透ちゃん」
葉隠ちゃんにヒラヒラと手を振ってから歩いて行く。原作通りステージの修繕に時間がかかるからそれまでの間に少しだけ出久くんの様子を見に行こうかしらね。
× × ×
「やぁ、出久くん。お疲れ様」
「うぅ‥‥ゆずくん‥‥」
僕が出久くんの元へ向かって行く途中でお茶子ちゃんと飯田くん、それから心配で様子を見に行こうとしている梅雨ちゃんと峰田くんと合流した。どうやら僕と同じことを考えていたらしい。類友ってやつかな。
「あ、先生お久しぶりです」
「!? 舞妓少年‥‥!」
「誰? この人」
「雄英の先生? かな? 科目とか知らないけど」
オールマイトだとは知らないお茶子ちゃん達と保健室に入ると。
「まぁ〜た無茶して。本当に後遺症残る怪我するよ?」
「あれじゃプロも欲しがんねぇよ」
「塩を塗りこんでいくスタイル感心しないわ」
僕が出久くんのおでこをペシっと中指で弾けば、出久くんは心底悔しそうな顔をした。曇り顔じゃないけど自分の愚かさとか弱さを自覚したいい顔だな67点だぜ‥‥曇り顔じゃないのにそんなにいい顔してくれるの本当に育ててきた甲斐があるってもんだよ。流石は僕の子(違う)
「追いつかなかった‥‥」
「馬鹿だなぁ‥‥僕が優勝するまでに歩けるようになりなよ?」
笑いながら出久くんの頭をくしゃくしゃと撫でてから飯田くんたちの方に振り返る。するとお茶子ちゃんと梅雨ちゃんに怪訝な目を向けられた。
「‥‥もしかしてゆずくんって‥‥」
「ケロ‥‥男女関係ないのかしら‥‥」
「舞妓と緑谷ってデキてんの?」
「君たちもうちょっと隠すとかしないの?」
感情ダダ漏れじゃん。普通もうちょっと隠そうとするでしょ、しない? あと僕の恋愛対象は女の子だって。ヒロアカの世界でどの子が一番好きかって聞かれたら‥‥レディ・ナガンとかかなぁ、いい顔するよね。
「ほらほら! 出な出な! 今から手術なんだよ!」
「体育祭で手術するほどの大怪我するの本当にやばいな‥‥」
リカバリーガールに追い出されて廊下へとゾロゾロと出てくる。そして控え室に行こうかとみんなに軽く挨拶してから観客席とは逆の方にある控え方へ足を向けたタイミングで、飯田くんから声がかかった。
「舞妓くん」
「ん? どうしたん? 天哉」
「俺は、負けないぞ」
「おぉ、楽しみにしてるよ。僕も同じ気持ちだからさ」
飯田くんが差し出してきた握手を返してから二人で違う控え室へと歩く。さてさて、飯田くんをどうやって攻略したもんかな。
休みの日を使ってガリガリ書いてます。本当に感想してくれる皆さん大好き。もちろんお気に入りしてくれる方もここ好きしてくださる方も大好きです。評価してくださる方はありがたいな‥‥ただ、低い評価入ってるとしょぼんってなるよね。人間だもの。
皆さんの言葉に励まされてここにいます。曇らせのメインディッシュに辿り着くのにはまだまだ時間が掛かりますが面白いものを書きますのでよろしくお願いします!
映画編を入れるかどうかのアンケートをさせてください!
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入れたのが見たい!
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本編だけ追いかけるのでOK!
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アンケート結果が多い方で!