個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア!   作:波間こうど

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スラスラと書いているように見えますが指が止まらないだけです。みなさんからの評価を受ける度に高まっていくモチベーション‥‥このまま体育祭終了まで書き切りたい‥‥書き切れるかな‥‥

今回は少し長いです。ご容赦を。


個人トーナメントその3!!!

 

 

結局、飯田くんの対策はどうするべきかわからなくなってきたのでぶっつけ本番。個性で翻弄する形にすることにした。服を脱いで外に投げ捨てて不義遊戯するとか、靴を「明日天気になれ」の勢いで吹き飛ばして不義遊戯するとか、いろんな案があったんだけども、これ使って勝ってもなんかブーイング出そうだしやめておくことにしたのだ。曇らせのためにもできるだけ良い印象で勝ちたいからね。

 



『A組委員長! 飯田天哉!! vs! ここまで負けなしの天才少年!! 本当に男か!? 舞妓譲葉!!』



 

「プレゼントマイク先生は後でぶん殴ろ」


「気持ちはわかるが落ち着きたまえ」



 

手をぷらぷらしながら舞台の上にいる僕に対して冷静にツッコミを入れた飯田くん。いやでもさぁ‥‥あんな風に言われたら僕が男だってことわからせないとだけど‥‥BLの趣味はないんだよねぇ‥‥だから葉隠ちゃんにしたみたいなのはできないし。どうしたらいいかと言われたらもうアレでしょ? 拳で解決するしかないじゃん?

筋肉は全てを解決するからね‥‥

 

それか振り切れるか。‥‥振り切れても面白そうだな‥‥とはいえ線引きは必要になるんだろうけど。僕が好きなのは異性だし、さらにいうと僕の性自認は男だからね。下手に勘違いさせたら可哀想だし。まぁ、僕みたいな女の子みたいな顔した相手が好きになるのなんて男ばっかりなんだろうけどさ。



 

これまでの16年で告白されたことないもんね。前世でもされた覚えないけど。

たぶん前世ではあるはず。ど、童貞ちゃうわい!

 

振り切る‥‥振り切るか‥‥それで誰かを曇らせられるのならアリか? いや、でもなぁ‥‥恋愛曇らせ今のところ考えてなかったんだよなぁ‥‥でもやれるのならした方がいいか‥‥どんなのがいいんだろうか。でも始めるならジャブからが良いよね。反応が見れる何かないかな‥‥

 



あ、これはどうだろう。



 

「よし、それじゃあ始める前に一つ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」


「む、なんだ? 俺で答えられることなら答えるが‥‥」


「ありがとう。天哉は優しいね」



 

グッと体を逸らしてから体を半身にする。そしてチュッと投げキッスを飛ばしてから飯田くんに問いかけた。



 

「天哉はどんな女がタイプだい?」


「‥‥‥‥は?」



 

『キャーー!!!!! なんで投げキッスしたんだ舞妓ぉぉぉぉぉ〜!!!! 会場は黄色い悲鳴に包まれているぞ〜!!!』



 

プレゼントマイク先生の言うとおり会場は黄色い声援に包まれていた。そんなに声あげることか‥‥? まぁ、男がいきなり投げキッスしたら声は出るか。僕が東堂の投げキッス見た時は「ヒェッ」って声出たもんな‥‥種類が違うけど、それは僕の見た目が可愛いことに由来する変化だろう。振り切るってこういうのでいいのだろうか‥‥?

後黄色い声も聞けるけど全体的に野太くない?

 

「舞妓くん‥‥好みのタイプとは‥‥」


「いや、僕が気になっただけ。男でもいいよ」

 



体を伸ばしたり、小刻みにジャンプしたりして体をほぐす。いつスタートを切られてもおかしくない、というかなんでプレゼントマイク先生はスタート切らないんだ? 僕の投げキッスで動揺してんのか‥‥? おもしろ。もっとしてやろーかな。



 

「なんか聞きたくなったからってだけだから言わなくてもいいよ」


「む、そうか‥‥改めて考えると特定のタイプというものはなかなか出てこないな」

 



飯田くんはしばらく唸った後、「真面目な女性がタイプかもしれない」と生真面目に言い放った。なんかじわじわくるな‥‥

全部模範解答坊ちゃんめ‥‥

 

「うんうん、天哉らしいね‥‥緊張はほぐれた?」


「‥‥君は緊張をほぐす方法をもう少し別に知らないのか?」

 



飯田くんの言葉にてへ、と可愛らしく舌を出しておく。これくらいはサービスしてあげるとしよう。振り切るってこれで合ってるのだろうか‥‥恋愛感情には少し疎いんだけども。なんと言っても最後に恋愛したのは前世のことだろうからね。漫画のキャラとかは手に取るようにわかるんだけど‥‥でも今の僕はこの世界の住人だから三人称視点持ってないんだよね。

 

『準備はいいか!? それじゃあSTART!!!』



 

それじゃあて、軽いな?

 



「俺は全力で君に挑戦する‥‥! 本気で行くぞ! 舞妓くん!」


「かかって来なよ、天哉」



 

スタートの合図と同時に飯田くんはそう言うと、クラウチングスタートのポジションをとった。そして一気に地面を踏み締める。

初手からレシプロで来ると思ってたよ。

 



原作の轟くんの時と同じく初手は飛び上がっての上段蹴り、これをしゃがんで避けたら次は上段からの蹴り下ろしだよね。予想通りだ。

 



「むっ!」

 



手を叩いて僕と飯田くんの場所を入れ替える。でも個性については割れているからどんな体勢で交代させられてもレシプロが持続するようにしていたのかすぐさま体勢を整えて追ってきた。



 

「はっや」



 

距離とっても一歩で詰められるのなら意味ないんだよね‥‥大体50メートル走で3歩しかいらないようなやつだぞ? 足が速いとかそのレベルじゃないんだよ。

 

 でも、そんな彼の足の速さよりも僕の個性の発動の方が早い。それは個性把握テストで実証済みだ。何度も場所を入れ替える。途中で対応してきたら入れ替えずに手だけを叩く。東堂が花御や真人にしてたブラフ。これで入れ替わるのと入れ替わらないの択、さらにいうのなら次にどんな動きをするのかって択まで迫れる。たった10秒ぽっちじゃ対応できないだろ?

 



「入れ替わらない‥‥ッ!」


「手を叩けば入れ替わるってわけじゃないよ」

 



『おぉっと!! 飯田のレシプロを華麗に個性を使って避けて行く舞妓ぉ!! こいつ個性の発動タイミングが完全にプロのそれだぞ!?』


『舞妓は個性を使いこなすという意味ではおそらく一年で随一だろうな』



 

お褒めに与り光栄です。‥‥なんかめっちゃ相澤先生が甘やかしてきてるイメージあるんだけどこれは僕にだけだよね? USJで助けたのがまだ効いているんだろうか? それだけじゃないだろうけど‥‥白雲さんとの思い出と被ったとかかな? そんなシーンあったか?

 



「天哉のレシプロは余りに速すぎる。そのスピードを捌き続けるのは僕だって難しい。だけどそこまでの強化だし、必殺技なんだから制限時間があるだろう?」


「くっ‥‥!」


「10秒ってところかな? ‥‥これが何分間もだったら流石の僕も捌ききれなかったね」



 

飯田くんのエンジンがエンストする。動けなくなったタイミングで僕は飯田くんに近づいた。今現在の飯田くんの実力から考えるとここから反撃されるなんてことはないだろう。

 



「負けを認めてくれるとありがたいな。僕だって好き好んで友達をどつきたくない」


「‥‥‥参った」



『勝者、舞妓譲葉!! 3回戦進出!!』

 

ミッドナイトが口にした僕の勝利宣言を聞いて安堵の息を溢す。多分ここ十数年生きてきて一番濃い10秒だったよ、他の試合と比べても早く終わりすぎでは?

 



「ほんと、えげつない蹴りばっかり打ってきてさぁ‥‥あれ当たったら死なない?」


「それ全部避けただろう‥‥どうやったら当てられるんだ‥‥?」


「うーん‥‥天哉の個性上先読みが大事かな? 今回は入れ替えられる、今回は入れ替えられないってことが把握できたらレシプロで1秒もかからない距離の場所にいる僕なんて一撃でしょ」



 

正直、通形ミリオの言っていた予測というのは何も彼に限った話じゃない。サーナイトアイほどではないにしろ、予測さえできればどんな状態からでもひっくり返せるような案が編み出せるはずなのだ。ま、これは原作を知っている僕だからこそ言えることかもしれないけどね。



 

「予測‥‥予測か‥‥」


「天哉は賢いから、きっといいヒーローになる。予測をしっかりと頭に入れときな」



 

飯田くんと話しながら階段を登る。そしてA組のみんながいる観客席までたどり着いたその時のことだ。



 

「舞妓くん! 飯田くんとデキてるの!?」


「ユズ! 説明して!!」


「ごめん、本当になんの話???」



 

胸ぐらを掴まれてブンブンと前後に振られながら疑問の言葉をこぼす。マジで何? 今試合から帰ってきたクラスメイトに対してすることじゃなくない?



 

「だって投げキッスしてたじゃん!」


「ウチらにはしないじゃん!!」


「女の子に投げキッスなんか流石にできるわけないでしょうが。君たちは嫁入り前の娘だって自覚を持て」

 



というかなんでこんなに必死なんだ? いやまぁ、クラスメイトの男子二人がデキてたら気まずいか。そりゃいつも仲良くしてる男子が男と付き合ってるってなったらこんな反応にもなる‥‥のか? それにしてもって感じはするけど。でも恋愛感情じゃないだろうし‥‥なんだろ?

 



「待ちたまえ。あれは緊張してた俺に対して舞妓くんが緊張をほぐすためにしてくれたユーモアだぞ」


「そうそう。天哉のことは好きだけど友達だって。僕の好みは女の子だし」

「お前が恋愛対象女って言うとなんか頭バグるな‥‥」

 

 飯田くんがフォローしてくれるからそれに乗っかっておく。いや、緊張をほぐすためって捉えてくれて助かるね。実際は少し吹っ切って女の子みたいな顔をしてる面を出してみたらどんな効果が得られるのかってことを知りたかったんだけど‥‥そんなことまで言わなくていいでしょ。

あと上鳴くんは後でシメる。

 

「まぁ、僕が男の子と付き合ってたら気まずいのはわかるけども。そこまではしゃがなくてよくない? あ、僕のこと好きなのかぁ〜? なぁ〜んて」


「お前マジか? マジで言ってんのか? 舞妓? オイラお前のことが日に日に許せなくなっていきそうだよ‥‥」


「‥‥業が深い」



 

なんか峰田くんと常闇くんに呆れられてしまった。というか峰田くんに関していうのならキレてら。じゃあ女子関係の話かな‥‥でも僕みんなに何かしたっけ? 女子の体はダメな部分触ってない(葉隠ちゃんの件は見えないところでしてるからノーカン)し、女子と付き合ったりもしてないし‥‥なんだろ?(2回目)



 

むむむ‥‥かっちゃんと出久くん、轟くんとかそれから弔くん辺りの心情は読みやすいんだけどなぁ‥‥なんか最近読心の精度下がってきてる?

 



「あ、響香ちゃん。そろそろ試合だね」


「‥‥うん」


「緊張してる?」

 

 どうやらさっきまでテンションが高かったのは緊張を誤魔化すためのものだったらしい。毎回毎回緊張してたら大変だと思うんだけどな‥‥でも緊張してる顔も可愛いから僕的にはお得だね。今日全体を通して耳郎ちゃんすごい僕のこと楽しませてくれてるんだけど何? 僕のこと好きなの?



 

「踏陰強いからね。でもまぁ、緊張しすぎたら勝てるものも勝てなくなるよ」


「わかってるけど‥‥」

 

 感情となかなか上手く切り離せないって感じだろうか。耳郎ちゃんが常闇くんに勝てるとまでは思えないなぁ‥‥相性勝ちできなかったら結構理不尽な強さを誇ってるからね、常闇くん。強すぎるんだよ‥‥まさに闇を抱える者だ。なんか厨二病みたいな呼び方しちゃった。いや、本人的には好きそうだけども。

 



「ほら、行ってきな? 待ってるから」


「うん、ウチ頑張るよ」


「踏陰も頑張ってね、響香ちゃん強いよ?」


「わかっている」



 

さてさて、二人の戦いは少し楽しみだな。僕は椅子に座りながら疲れた体をほぐすように体を伸ばした。

 

 




  × × ×




 

 

耳郎ちゃんと常闇くんの試合はヤオモモほど一方的な試合にはならなかったものの、予想通り、耳郎ちゃんの負けで決着がついた。

 

元々一対一だと光源を出せない限りほとんど最強に近いような常闇くん相手に同じく中距離主体のイヤホンジャックが個性である耳郎ちゃんはめちゃくちゃ相性が悪いんだよね。イヤホンジャックを使って地面を砕いたり、出来る限りの策を弄していたみたいだけど結局最後はダークシャドウに場外に弾き飛ばされて負けてしまった。これはまぁ、相性が悪かったかな。

 



「ごめんユズ‥‥決勝まで行けなかった‥‥」


「よく頑張ったでしょ、あれは踏陰が強すぎるわ」



 

悔しげに唇を噛み締める耳郎ちゃんの頭を撫でつつ、次の試合を眺める。ちなみに手を頭から離すと「やめんな‥‥」と涙声で言われてしまった。ここで顔を覗き込みたい衝動を抑え込んだ僕は偉いと思う。ここで耳郎ちゃんの顔を覗き込んだりしたら折角せっせと積み上げてきた好感度が下がっちゃいかねないしね‥‥それはそれとしてその顔を僕に見せてくれないかな? 悪いことはしないから‥‥ダメ? そっかぁ‥‥

 

 続いてのかっちゃんvs切島くんは原作と同じような戦いになった。とはいえかっちゃんの動きは原作よりも改善されているように見えるけどね。改善されてるというよりは怒りをぶつけてるみたいな。なんにせよイライラしてるのが伝わってくる。

 

 ‥‥愚痴として聞いて欲しいんだけど、トーナメント戦って上に行けば行くほど試合の数が減っていくから疲れてるのに強い人と時間をおかずに戦わないといけなくなるんだよね‥‥普通に疲れるなぁ‥‥

 

 しかし! 次は待ちに待った轟くんとの戦いである。この戦いは僕にとっては負けられない戦いであると同時に、彼の心に深くまで潜り込むためにも重要な戦いなのだ。負けるわけにはいかないぜ‥‥!



 

「‥‥行こうかな」



 

よいしょと腰を上げる。流石の僕でも緊張してきたな‥‥かっちゃんを曇らせるためにはこの試合を勝たないといけないんだけど‥‥轟くんに一対一で明確に勝てるヴィジョンが浮かんでないんだよねぇ‥‥

 



「舞妓くん! 頑張ってね!」


「ユズ、負けたら許さないから」


「はいはい、あ、そうだ。出久くんに伝えて欲しいことがあるんだけど伝言頼まれてくれる?」

 

 僕は耳郎ちゃんや葉隠ちゃん、みんなに送り出されながら体を少しほぐすつもりで腕を伸ばして振り返った。

 



「僕を見てなってさ」

 

 




  × × ×




 

 

僕がステージに着いたとき、もう既に轟くんはステージに先に上がっていた。早いな‥‥出久くんとの試合の後はクラスメイトのところに戻ってこなかったもんね、一人で冷静になりながら出久くんの言っていたことを考えていたのだろう。



 

「やぁ、焦凍。顔色がお昼よりも良くなったね。吹っ切れた?」


「‥‥‥舞妓」


「準決勝の舞台とは思えないくらい浮かない顔だけどね。 どうかした? 出久くんが何かした?」


「‥‥‥」



 

轟くんは左手を目の前に出して手のひらを見つめる。ここにいるのがかっちゃんだったら多分爆破されてるぞ。原作通り「どこ見てんだ半分野郎!!」ってな具合に。まぁ、たぶん原作通りの会話がなされたんだろうから出久くんに壊されたものが頭にチラついてるんだろうけどさ。

 



「‥‥なぁ、舞妓。緑谷っていつもあぁなのか?」


「あぁって?」


「めちゃくちゃやって、他人の抱えてるもん、全部壊していく‥‥」


「お、これで君も僕と同じ被害者だね。余計なお世話で、核心ついてくるでしょ、あの子」


「‥‥‥あぁ」



 

うんうん、原作ではかっちゃんに言ったセリフが僕に向かってるのはまぁ、想定の範囲内だね。



 

「僕に対してもそうだったもん。デリケートなところにズカズカ踏み込んできて、守ってるものとか、プライドとか無茶苦茶にしてさ、最後には一番ヒーローみたいに笑うんだ」


「‥‥俺のもそんな感じだ」


「うちの親友がごめんね。厄介な親友を持ったよ、本当にさ」



 

轟くんが微笑む。今時点で微笑むくらいには精神が安定してるのか、すごいな? 出久くんセラピー留まるところを知らないじゃん。これだから人たらし主人公だとかなんだとかって呼ばれるんだよ? 自覚待って?



 

まぁ、その成果は僕の曇らせのための種蒔きに使わせてもらうんだけどね。



 

「焦凍」


「‥‥‥」


「君の右側は倒れそうな人を支えることができる。君の左側は凍えている人を温めることができる‥‥‥優しい個性じゃんか」



 

出久くんが綻ばせてくれたその場所に、僕の存在を大きくねじ込む。本当は優しくて、天然で、純粋な高校一年生の少年だ。他人のことを考えて怒れる君は、僕のことを想ってさぞかし曇ってくれるでしょ? そう信じてるんだよ?

 



だから捻じ曲げてあげるね。そのまっすぐなヒーローの心をさ。

 

「君の個性は優しい個性だ、それはエンデヴァーの力じゃない。君の力だろ」


「‥‥‥緑谷もお前も、なんで、そんなに」


「そりゃクラスメイトが困ってるからさ。僕たちは友達だろ?」



 

グッと構えを作る。轟くんと話してて忘れそうになるけどここ雄英高校体育祭準決勝の舞台なんだよね‥‥普通に目立つ場所で、戦わなくちゃいけない場所なんだわ。でも関係ないね。曇らせの種を埋めることのほうが重要だからさ。



 

「それに余計なお世話ってのはヒーローの本質なんだぜ?」


「なんだよそれ‥‥そんなことのためにお前ら自分から不利になっていくのかよ」



 

轟くんが肩幅に足を開いて腰を深く落とす。右も左も両方使うつもりのときの体勢だ。最初から両方使ってくるつもりだよね。

 

「焦凍、遠慮しなくていいからね」


「‥‥わかってる」

 



『START!!!!!』



 

戦闘が始まる。氷が地面を這うようにして飛び出してきた。スピードも大きさも瀬呂くんのときのやつじゃん。これは僕に相殺できない、手を叩いて轟くんと場所を入れ替える。すると僕の代わりに轟くんが氷漬けになった。なんか珍しい光景かもしれない。瀬呂くんみたい。

 



「頭冷えた?」

 



轟くんは他の子が凍ったのとは違って、自分が凍っても即座に左側を使って氷解する、が、その一瞬があれば十分だ。手を叩く、溶けてカケラになり地面に落ちる寸前の氷と僕の場所を入れ替えた。そして右足を軸にして左足での蹴りをお腹に捩じ込む。

 



「‥‥ぐッ!」



 

『おぉっと! 生々しいの入ったぞ!! それにしても個性の発動タイミングがやべぇ!』


『轟が炎で相殺できないタイミングで入れ替わることで氷で固めて隙を作ったな。これで轟はあの氷結を連打できなくなった』



 

このまま畳み掛けたいところだけど‥‥まぁ、そう上手くはいかないよね。僕の目の前を炎が通る、それを避けるように後ろに飛ぶと炎は僕を追うように空を舞った。熱いんだけど!

 



「あっつ! 服の袖焼けちゃったじゃん!」



 

ジャージの右袖を千切ってからポイッと手前に投げ捨てる。そしてひらひらとゆっくり地面に落ちようとしたそれと轟くんの位置を入れ替えた。



 

「ッ!」


「ハァッ!」



 

左手で胸ぐらを掴み、右の拳を右頬に捩じ込む。胸ぐらを掴んでることで逃げられなくなっている轟くんに引き戻した拳を鳩尾に捩じ込み、再度拳をお見舞いしてやろうと手を引き戻したタイミングで胸ぐらを掴んでいた左手が冷たいものに覆われる。油断した‥‥!

 

「‥‥いッ!」


「‥‥お前の個性は拍手が条件だったよな?」



 

慌てて前蹴りをぶち込んで轟くんと距離を取るもその時点でもう既に左手は凍りついていた。わぁお、霜焼けとかじゃ済まなそう。凍傷とかになるのでは? 指が腐り落ちちゃう〜‥‥いや、それはそれでみんなが曇ってくれるか?

 



「痛いんだけど‥‥解いてくれない? この氷」


「俺だって痛てぇよ。バカスカ殴りやがって」


「それはごめん」

 

 それはごめん(本心)。だけど僕決定打ないんだもん。武器とかあれば話は別だけど持ち込み禁止だし。個性が環境に依存してる身としては徒手空拳に頼って頑張ってることを褒めて欲しいくらいなんだけど? 君とかかっちゃんみたいに優れた範囲型個性ってわけでもないんだわ。



 

やっぱり不義遊戯は使い勝手はいいけど一対一のガチンコ戦闘には向かないなぁ‥‥やっぱり極の番とか領域使えたほうがいいんだろうけど、使える気がしないし‥‥イメージできて、今すぐに使えそうでこの状況を打開できそうなものってあるか‥‥?



 

‥‥一つだけ、あるか。

 



「なんで攻めてこないの? 絶好のチャンスじゃん」


「個性を使わないで俺とやり合う気か? 生憎手加減しねぇぞ」


「問題ないよ、僕もここで負けるつもりはないし」



 

正直このままどこまでやれるかと言われればわからないけど‥‥やりたいことがある。そのためには追い詰められなくちゃ。

僕は今まで今世において苦労してきたことがない。個性についてはもちろん、まぁ、片足を曇らせのためにくれてやったときはだいぶ痛かったけどそれくらいなもので、大怪我をしたこともなければ、死ぬような目にあったこともない。

 

多分右足を無くしたアレを除くと一番の大怪我は出久くんのことをいじめてたやつと個性を使わないで殴り合いしたときだろう。

ここまでそんなに大変な思いをせずにやってきたように見える。

 

無個性だったが個性を手に入れて、今の今までやってきた。そんなキャラが強いのは面白みに欠けるのだ。ここは『僕のヒーローアカデミア』の世界なのだ。つまり少年漫画なわけである。ピンチに陥った方が覚醒イベントを手に入れられるだろうという打算がある。無理なら無理で仕方ないが‥‥



 

博打だけど、打算だけど、それでもできるんじゃないかという謎の自信があった。

今できたら、強いキャラがもっと輝くってそんな気が。

 

「来ないならこっちから行くぞ」


「‥‥‥‥」



 

USJで、耳郎ちゃんの怪我を入れ替えたときに、触れた気がするのだ。捉えた気がするのだ。今の今まで、上手くいかなかったけど‥‥今ならできる気がするのだ。

 

それは主人公の親友補正、幼馴染ブースト、ライバル判定、それから謎の個性判定。最後にピンチであるっていう状況補正。その全てがうまく噛み合った今だから、できるんじゃないかという気がしている。



 

左手についたままの氷を無視して左手を引く。半身の状態にして何がきても対応できるように、この拳がねじ込めるようにする。目の前の情報の一つも落とさないように、取りこぼさないように、目を開く。USJ編で、概念を入れ替えた時の感覚。

 

それを思い出す、それを使う。集中する。



 

僕が心の底から叶えたい夢のために、僕が心の内側の奥底から求めている曇らせというたった一つの目的のために、そのためだけに、力を求めろ。集中しろ。



 

涎が口の端から落ちるほどの‥‥‥



 

「何企んでるのかしらねぇが‥‥このまま終わらせる‥‥!」

 

 轟くんが個性を使った。氷が来る。合わせろ、自分の内側にある原点を、込めろ。氷と氷がぶつかる。

 

そして黒い稲妻が爆ぜた。





『なんだぁ!? 轟の氷結を舞妓がぶち破った!?』


『なんだあれ、舞妓の個性か?』

 

 会場がざわつくのがわかる。身体中の、五感が鋭くなって、全てを得たかのような、全能感。なるほど、これが‥‥‥



 

「核心か」

 

 左手をグッパと動かす。轟くんの氷と相殺するような形で弾け飛んでしまったようだ。棚から牡丹餅だね。なんかこんな感じでオリジンって意識するものだっけ? 漫画の中の世界であることを便利に使いすぎだけど‥‥まぁ、得るものはあったし、いいかな。

 



「ごめん焦凍。たぶん、手加減できない」



 

今の僕は多分誰の目から見ても異質に見えるだろう。黒い稲妻を走らせたかと思えば今までとは違う雰囲気を纏うようになった少年なんてどう考えても闇堕ちの伏線だし‥‥この異質さをメインプランに組み込めるように後でプラン見直さなきゃなぁ‥‥ジリっと後退する轟くんを見る。手を叩く、さっき僕が相殺して辺りに散らばった氷の一つと入れ替えた。



 

「なっ‥‥!」


「遅せぇ」



 

そして右腕で思いっきり轟くんの鳩尾を、さっき効かせたそこを殴りつける。



 

黒い稲妻は二度光る。

 



「‥‥‥!!」

 

 轟くんは白目を剥いた。ズルズルと倒れ込むのを抱き支えた。これ完全に気絶してるよね‥‥

 



「‥‥やりすぎたかも」



 

勝ったのに、会場がシーンとしてるんだけど。どうしよう‥‥よくよく考えたらアレだな? なんかピンチをひっくり返したのもそうだけど、今まで使ってた個性とは全然違う個性を使って轟くんをノしたんだもんね? 得体の知れなさがやばすぎてみんな触れづらいか。実際は個性じゃないんだけどもね。

 



「‥‥ミッドナイト先生、僕は焦凍をリカバリーガールのところに連れて行くので後お願いします」


『え、あ、勝者舞妓譲葉! 決勝進出!!』

 

 背中でそんな声を受けながら、僕は轟くんをおぶってステージを降りた。流石にこれは僕自らリカバリーガールのところにまで連れて行ってあげないとだよね‥‥


 

 

 

 × × ×




 

「‥‥‥君は何者だ?」

 

 さて、轟くんを背負ったままリカバリーガールのところに向かおうとしていると、なんか目の前にNo.2のヒーローが立ち塞がった。言うまでもなく最悪の父親ことエンデヴァーさんである。

 

炎を轟々と燃やしながら僕の前に立ち塞がるその顔には僕に対しての嫌悪、それから疑問が浮かんでいる。まぁ、息子をグーパンで気絶させた相手だし、しかも謎の黒い稲妻を発生させた存在だ。嫌悪感を抱くのは理解できるけど‥‥そんなに高校生でも肌で感じるくらいに出してこなくて良くない?




 

「舞妓譲葉。焦凍くんの同級生ですよ。お父様」


「‥‥‥」


「僕がここで嘘をつくわけないじゃないですか」

 

 エンデヴァーはジロリと僕を睨む。そこまで嫌悪感見せつけてこなくてもいいと思うんだけど‥‥泣いちゃうぞ?

 

僕的には貴方のことを泣かせたいんですけどね。個人的に曇らせたいキャラランキング第4位の男‥‥曇らせヒロインエンデヴァーをダビダンスまでに曇らせたいよね。というか、ダビダンスに紐つけて曇らせたい。なんかコツコツと伏線撒くみたいな。

 

「焦凍をリカバリーガールのところにまで運ぶので道、譲っていただけませんか?」

「‥‥焦凍は俺が連れて行こう」

「いいですよ。貴方に任せるとどんな目に遭わされるかわからないですし、僕は友人を虐待する親に預けるほど腐っていないので」

 

エンデヴァーの顔が苦虫を噛み潰したような顔に変化する。何その顔、可愛いね。いい年したおじさんが一番下の息子と同じ歳の男の子に口論で負かされるの可哀想だね?

 

「‥‥なんの話だ」

「焦凍から聞きました、貴方のしてきたこと」

「‥‥お前には関係ないだろう」

「僕は焦凍の友達です」

 

できるだけ強い口調でそう言い切る。ここで関係性を明白にしておきたいよね、この先荼毘と関係を持ってるってわかったときに轟くんと荼毘のどっちからもクソデカな感情の矢印を向けられるようにさ。

 

「焦凍は貴方の道具じゃない。オールマイトを超える存在になるかどうかを決めるのはコイツだ。貴方じゃない」

 

しらばっくれられる前に強い口調で言い返す。ギロリと睨む視線にはエンデヴァーが僕に向けた以上の嫌悪を乗せておいた。エンデヴァーが一歩後ずさる。

 

「個性はそんなに簡単なものじゃない。持って生まれた人間が、僻むな。焦凍をお前の自己満足に、自己陶酔に、自慰に巻き込むな」

 

個性を持っていたのに、No.2になれるほど強かったのに、それでもまだ慢心するなんてこともなく、ただ自分のことを重ねるための人形として轟くんたちを作った彼に対して、最大限の侮辱を向ける。無個性だったってことになっている僕が言うから響く言葉だよね?

 

いや、父親的な感情があったことも僕は知ってるんだけど、原作で判明しているだけの知識を使うとこうなるじゃん? なんでその知識知ってるの? みたいなの話しちゃうと後でコイツマジで何?みたいになるし‥‥

 

「No.2だろうがなんだろうが関係ないよ。僕は焦凍の友達で、僕は焦凍のことが好きなわけ。つっけんどんなやつだけど、大事な友人なの。そんな僕の友達に手を出すなんてこと、許さない」

 

ギロリと彼のことを睨む。そこで、輝いた。

 

うわ! 何その顔! 自分の息子と同じ歳くらいの友達に! そんなこと言われて! 自分の今までの二十数年を、オールマイトに負けたって、勝てないって理解してからの二十数年を、完全に否定されて萎れてる! 可愛い! このおじさん色気やばすぎだろ! 苦虫噛み潰したみたいな顔しやがって! 僕のことをそこまで興奮させたいか!? こう見えて結構疲れてるんだよ! 休憩したらこの後曇らせ第一位と勝負して曇らせないといけないんだよ! そんなときにこんなに噛み締めたい顔見せやがって! ずるい顔してんじゃねぇよ!! ガチムチ曇らせヒロインがよ!!

 

「‥‥ヒーローの意味、父親の意味、もう少しだけ考えてみてください。生意気を言って申し訳ございませんでした。失礼します」

 

頭を下げてエンデヴァーの横を通り過ぎる。手を出してくるかな? って思ったけど何もしてこなかった。ただ、立ち尽くすのみだ。こりゃ本格的に嫌われちゃったかな?

 

僕はいい曇らせ顔が見れたことに満足しながら轟くんをリカバリーガールのところにまで連れて行った。命に別状はないらしい、なんなら今にも目が覚めそうなくらいなんだとか。黒閃喰らったんじゃないの? 元気すぎない? エンデヴァーの虐待でガチガチに防御耐性ついたのかな?

 

リカバリーガールの出張保健室を出ると歓声がここまで聞こえた。もう一人の相手が決まったのだろう。

 

「‥‥さて、そろそろ行こうかな」

 

決勝戦が迫っていた。

 





皆さんとコミュニケーション取ったりする中で、私は段々と承認欲求モンスターとなってきつつあるんですけれど、そのせいか、お気に入りが外されたりすると悲しい気持ちもありますが、この後が面白いのに‥‥っていう傲慢な気持ちが湧き出ますね。カスか? 評価してくださる皆さんのお陰で満たされた承認欲求、それを解放して更なるものを作る無限ループ‥‥楽しんでいただけたら幸いです。

これからも走り抜けますよろしくお願いします!

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