個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア!   作:波間こうど

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なんとなんと、私の作品の舞妓譲葉をファンアートで描いてくれた人がいます‥‥! ファンアート、つまりファンだと言ってくれる人がいることがどこかむず痒い反面、この人や他にも私の作品を応援してくれる人のために頑張ろうと思える‥‥これがモチベーションの正しい在り方なんだろうなと思いました。これからも頑張りますね!


個人トーナメント決勝戦、曇らせと日常へ

 

「ちなみに僕が告白されたのって嘘だよ」

「あ゛?」

 

舞台に辿り着くなりかっちゃんにジャブを入れておく。フフフ、障害物競走のときに言った嘘をこのまま残しておくとやらかす気がするから先に嘘だよって切り捨てておくことにしよう。後が怖いからね。

 

あと、原作通り常闇くんはかっちゃんに負けたらしい。相性が最悪だし仕方ないだろう。実際僕と常闇くんがやることになってたらほとんど負けてたと思う。上鳴くんに使ったみたいな技をしてもダークシャドウが舞台まで常闇くん連れて戻ってくるだろうし、対策も打たれているだろう。勝てるヴィジョンが正直一番湧いていなかった相手なのだ。かっちゃんが勝ってくれて助かったぜ。あの相性で負けたらとんだ間抜けだけどね。

 

「爆豪と同じで告られたことないよ」

「ふざけんなテメェボケゴラァ! 俺はあるわ一緒にすんじゃねぇ!!」

「お前が? あはは、冗談は休み休み言うものだよ」

 

右足をプラプラと動かしながらかっちゃんを弄る。うんうん、かっちゃんは多分自分からいじる側になると加減をミスっちゃうと思うから弄られる側にいたらどう? そしたらみんな怒ったりとかいじめにならないギリギリ見極めてくれるでしょ、君はまだガキ過ぎるよ。だからいじめしちゃうわけだし‥‥ねぇ?

 

「‥‥‥おい、女男」

 

僕がそんなことを考えているとかっちゃんが深刻そうな顔をして僕を睨んでいた。なに? プロポーズ? ごめんだけど断るよ?

 

「お前さっきの黒いやつなンだよ」

「あぁ‥‥アレね‥‥」

 

さて、どう説明したものか。ぶっちゃけた話、僕自身、黒閃が何故出たのかと言うあたりの話はあまりよくわかっていない。できると思ったからやったら出来た以上の説明ができないのだ。

 

大体、黒閃は打撃と呪力の誤差が限りなく0に近いときに発動するブーストのようなものだ。この世界で呪力というものが存在するのかは怪しいし、個性として認識していたものを術式として拡張して使っていたが‥‥それにしても僕自身が呪力をしっかりと把握しているわけではない。なんとなくなんか体の中を流れてるな、みたいなイメージをしているが実際に流れているかどうかもわかっていない。

 

つまり、本当に出来ると思ってやってみたら出来た、くらいのラッキーパンチなのである。こんなのをいきなりメインプランに捩じ込んださっきまでの僕はとち狂ってたのか?

 

一応僕なりに考えた仮説というものもあるにはあるが‥‥これには不確定要素が多すぎる。ここで答えを出すべきではない。まぁ、僕にとって必殺技とも言えるものになるだろうから、調べることは急務なんだけどね‥‥調べないと始まらないし。

 

「なんかやったら出来たみたいな‥‥なんなのかさっぱりわからん」

「馬鹿にしてんのか‥‥?」

「マジで言ってんの。馬鹿にするときはもっとわかりやすく馬鹿にするよ」

 

グッと拳を握る。もう一度出してみろ、と言われたら出来る気がする。‥‥実際はなんかポンポン出されてたせいでイメージが湧きづらいかもしれないが、『黒閃を狙って出せる術師は存在しない』ので、僕のこの感覚はゾーンに入っているが故にできる気がする、みたいなやつなのかもしれない。「続けて出すなら連続かその日のうち」ってななみんも言ってたもんね。それかな?

 

まぁ、かっちゃん相手には使わないんだけどね。

 

「なんでもいいけどよぉ‥‥俺にもそれ使ってこいや‥‥!」

「使えたらね」

 

使われないで負ける、使われないで勝つ。どっちにしてもかっちゃんが曇ってくれる最高のプランニングである。手加減されて負けた手加減されたから勝ったって感じてくれるだろうからね。は? 天才か? 僕は。

 

まぁ、負けるつもりなんだけど。手加減されて負けたとなるとさぞかし曇ってくれるだろう。自尊心傷つけられたときの顔が一番可愛いからね、かっちゃんはさ。

 

「使えたらじゃなくて使えって言ってんだよわかんねぇのか‥‥ッ!」

「だから使えるかわかんないって言ってるでしょ? 頭弱いのかよ」

 

足を肩幅に開く。いつでも戦闘開始の合図と共にお互いにとびかかれるようにした。

 

『決勝戦だぞ!! 盛り上がっていけ!! START!!!!!!』

 

かっちゃんが個性を使わずに突っ込んでくる。初っ端からぶっ放してくるかと思ったけど、距離を詰めるのになんで個性使わないんだ? でもいつも通りならまずは右の大振り‥‥だよね。

 

「オラァッ!」

「あっぶね‥‥ッ!」

 

爆破が僕の目の前を通過する。ちょっと熱いし焦げ臭い。あの個性派手だし強いのなんとかならないかな‥‥強すぎない? なんで僕予測当たってるのにダメージ受けそうになってんのさ。

 

爆破の大きさも結構自由に変えられるんだっけか? じゃなきゃお茶子ちゃんのときみたいなでかい爆破出せないもんね。掌からだけって限定されてるのになんでこんなに強いんだ? この個性。かっちゃんに備わったセンスか、ヤダヤダ、母親と父親の個性が上手いこと混ざり合ってできた個性を才能マンが持ってるとか嫌でしかないよ。

 

「逃げてばっかだなクソが‥‥ッ」

「お前に隙がねぇんだろ」

 

こっちからも反撃したいが僕が個性を使って入れ替わってもその瞬間に爆破してきそうな凄みがある。目つきが吊り上がってるせいだろうか‥‥めちゃくちゃな眼力だぜ‥‥あれなんでヴィランじゃねぇの?

 

「堂々と戦えや‥‥ッ!」

「うるさいなぁ」

 

ジワジワと追い込まれる。もうすでに後ろは舞台の端だ。次の攻撃を避けるのは難しいだろう。かっちゃんの瞳が喜びで揺らぐ。やっと爆破を当てられるって顔してるぜ。わかりやすいな。

 

「あ゛ぁ!?」

「そう簡単に当たってやらないよ」

 

後ろに飛ぶ、もちろん足場はない。次に足をついたら失格だ。そうなる。

 

僕じゃなければだけど。

 

個性を発動させる。入れ替え先に指定したのはもちろんかっちゃんだ。かっちゃんは少し驚いたが、それもコンマ数秒で、爆破をうまく使ってこちらに戻ってこようとする。帰ってこようとした瞬間をカウンターで思いっきり殴りつけた。

 

「ガッ‥‥!」

「本日二度目の顔面パンチだけど気分はどう?」

「‥‥‥ッ! 最悪だわクソがァ‥‥ッ!」

 

ですよね。なんて思いながら追い打ちをかけるようにかっちゃんに蹴りを放つ。それを軽やかに避けるとかっちゃんは唇を切ったのか流した血を拳で拭った。そういう獰猛な狂犬みたいな顔が見たいんじゃなくて、もっと捨てられたチワワみたいな顔が見たいって言ってんだけどなぁ‥‥

 

「クソが‥‥ッ! ンで当たんねぇんだ‥‥ッ!」

「お前が今まで僕たちに振るってきた暴力、僕がただ何も考えずに受け続けてきたと思ってんのか?」

 

馬鹿なやつ、というニュアンスを隠すことなく鼻で笑ってやる。目の前の獰猛な獣の顔がピキッと音を立てて固まったのが見えた。

 

「お前の動きなんて目で追わなくても避けられるよ、なぁ? ガキ大将?」

「‥‥殺す」

 

そう言ったかっちゃんが両手を後ろに回して腰を落とした。あれは‥‥爆速ターボか。

 

「それはもう見たっての」

「グッ‥‥!」

 

かっちゃんがさっきからバンバン、バンバンと爆破させてくれているおかげで散らばった小石や瓦礫と自分を転移させる。かっちゃんが感知して追いかけてくるが‥‥飯田くんよりも早い個性の発動スピードがそれを許さない。意識が切り替わる瞬間に目の前に転移して鳩尾に蹴りをお見舞いしてやった。

 

『舞妓の蹴りが炸裂だぁー!! 入試主席舞妓と次席の爆豪の間にはこんなにでかい壁があるのか!?』

『個性の扱いもそうだが、移動場所なんかも細かく見て爆豪が嫌がる場所にしてるな‥‥戦闘センスだけを見れば爆豪の方が圧倒的だが、爆豪について調べ上げてるからどんな攻撃も意に介してない』

 

「降参したら? 勝てないと思うよ」

「‥‥‥ッ! テメェこそ、黒いの出さずによぉ‥‥ッ、俺に勝てると思ってんのか!?」

「だからポンポン出せるもんじゃないんだってば」

 

いや、正直初手の顔面パンチもさっきの鳩尾キックもやろうと思えば黒閃にできたんだろうけど‥‥それで勝ってもいい曇りにはなってくれないでしょ? 僕はいい曇り顔にしてあげたいの。

 

「それにお前こそ使ってないじゃん。お茶子ちゃんに使ってたやつ」

「あ゛‥‥?」

「まぁ、瓦礫には使えても僕には使えないか、臆病者が」

「‥‥‥ッ!!」

「お前まだ勘違いしてるでしょ? チャレンジャーはお前だぞ?」

 

くいっくいっと手のひらでかっちゃんのことを煽る。ここまで馬鹿にしてきたらかっちゃんは必ず大技を使ってくると踏んでの煽りだ。具体的には『榴弾砲着弾(ハウザー・インパクト)』を引き出したい。ちなみに僕のプランニングではアレを生身で耐え切るところから始めないといけないわけだけども、耐えられるかな?

 

「上等だコラ‥‥殺してやるよ‥‥」

「やってみろよ」

 

かっちゃんが両手の爆破を利用して飛び上がった。遥か上空とまでは言わないけど、それでもまぁまぁな高度にまで上がる。そこでかっちゃんが回転するのを見ながら腰を下ろして手を開いた。いつでもかかってこいやと言うように笑ってやる。

 

榴弾砲着弾(ハウザー・インパクト)!!!!!」

 

かっちゃんが僕に向かって回転を加えて飛び込んでくる。衝撃が僕のことを思いっきり貫いた。痛い通り越して最早辛いんだけど‥‥吹っ飛ばされるも不義遊戯を使って飛ばされた僕とかっちゃんの近くの小石の位置を入れ替える。服が爆ぜて邪魔だったからジャージを破り捨てた。これで本日二着目がダメになりましたね。

 

両手に甚大な被害を受けたということを演出するために手をだらんと垂らしておく。使えませんよ〜、というアピールだ。これが後々効いてくるからね。

 

「‥‥ゲホッ、痛いじゃん」

「女男ぉ‥‥!」

 

かっちゃんが立ち上がる。あんな大技を使った後だから腕が弾けるほど痛いだろう。それに僕が何度か殴ったり蹴ったりしてるし、今日全体を通しての疲れもあって今にも倒れてしまいそうなくらいだと思う。僕もそうだし。

 

それでも、かっちゃんなら立ち上がってくるって思ってた。二人して舞台の真ん中へと移動しながらかっちゃんは右手を振り上げて、僕は地面を踏み締める。

 

右足を振り上げる、顎にクリーンヒットすれば、勝てる。そんなタイミングで、ガタが来た義足がパキン! と音を立てて壊れた。僕の振り上げた足は宙を切り、かっちゃんの爆破が先に僕に届く。完璧な計算だ。

 

顔に爆破が直撃する、流石にこれを直撃で喰らうのはなかなかクるな。

 

「‥‥うッ!」

「‥‥‥‥‥は?」

 

これでちゃんと気絶できる。VTRは後で確認できるらしいし、かっちゃんの曇らせ顔は全国中継されてるだろうから僕の家で録画されている方でもバッチリ確認できるだろう。やったぜ、これで恥を晒さずにかっちゃんの曇りに曇った顔が見れる。

 

僕は安心してゆっくりと体を暗闇に投げ出した。

 

 

  × × ×

 

僕が気絶していたのはほんの数分のことだったらしい。起きたらリカバリーガールに送り出されてあれよあれよという間に表彰式だった。右足は義足がぶっ壊れているので今はなく、松葉杖である。これ歩きにくくない?

 

表彰式が行われる会場に行くと目の前に表彰台があった。ブチギレかっちゃんがもう既に拘束されていて、3位の表彰台には轟くんと常闇くんが立っていて何やら談笑している。表彰台の前には一年生が整列している。

 

僕がやってきたことに気づいた誰かが声を上げた。すごい見られる。そんなに見るような価値が僕にあるか? と問われるとあるとしか言えないよね。普通に考えて決勝まで目立ちに目立ちまくって最後の最後に義足がぶっ壊れた奴なんて目立たない選択肢ないわ。

 

ゆっくりとその視線を享受しながら歩く。そしてミッドナイト先生の手を借りて2位の表彰台に登った。みんなよりも少し高い目線が心地いい。

 

「なんでこいつこんなに暴れてんの?」

「お前のせいじゃねぇのか」

「よし、思いっきり殴りつけたのは悪かったと思ってるから一旦焦凍が僕のことをどう思ってるのかについて話し合おうか」

「ダチだろ」

「君頭打った?」

 

かっちゃんが暴れてるのを見ながら僕の一段下の表彰台に立つ轟くんと話し合う。まぁ、一段下と言っても僕と轟くん(横には当然常闇くんもいる)の間には原作よりもガッツリと拘束されたかっちゃんがいるんだけどね。そこまでガッツリ拘束されるのヴィランのそれでは? ラスボス先生にしかしないのよ、この拘束。

 

「修羅‥‥悪鬼羅刹‥‥」

「ゲームでこんなのいなかった? 拘束される獣みたいなの」

「悪りぃ、ゲームしたことねぇ」

 

常闇くんの言葉に同意を求めるつもりで語りかけるも返ってきたのは寂しい言葉だった。悲しいなぁ‥‥僕の持ってるやつでいいならいくらでもやらせてあげるからね‥‥好きに使っていいから‥‥持っていきな‥‥

 

それにしてもいい顔してるぜかっちゃん。僕に元々あった足が、義足になったそれが、壊れただけの運勝ち、途中まで完全に試合を有利に進められていたから、さぞかし敗北感が強いだろう。黒閃をキメなかったのもいい感じに効いているはずだ。何言っても僕が黒閃を打たなかった、さらにいうのなら義足じゃなかったら敗色濃厚だったという事実はひっくり返らない。最高だぜ‥‥かっちゃん‥‥。これなら映像で見る曇り顔も最高のものになっていることだろう。家に帰るのが楽しみだぜ‥‥

 

「それでは表彰式に移ります! 今年の一年生の表彰式を担当するのはもちろんこの人!」

「メダルを持って!! 私が来た!!」

 

ミッドナイト先生の紹介がオールマイトの登場と被る。わなわなと震えるオールマイトにミッドナイト先生が片手を上げながらごめん! と謝っているのが印象的だ。オールマイトとミッドナイト親子くらい歳離れてなかった?

 

オールマイトは悠々と歩いて表彰台に移ると常闇くんと轟くんに銅メダルをかけた。ここは原作だと常闇くんだけの予定だったんだけど僕が飯田くんと轟くんに勝ってしまったものだから横に轟くんもいる。飯田くんは恐らく早退していることだろう。

 

「常闇少年、君の個性は強力だ。だがもう少し地力を鍛えるといいかもな!」

「勿体なきお言葉」

 

オールマイトが常闇くんのことを抱きしめて背中を叩く。そして次はその横にいた轟くんに目を向けた。

 

「轟少年おめでとう。顔つきが変わったな」

「‥‥緑谷にキッカケを貰って、舞妓に背中を押されました。俺は貴方みたいなヒーローになりたかった‥‥そのためにしなくちゃいけないことがあるって、気付かされました」

 

轟くんがメダルを握って呟いた。うんうん、原作では出久くんだけが話題にあがっていたけど、今回は僕のこともしっかりと話題にしてくれてるね、僕の想像通りに動いてくれてありがたい限りだよ。心に深く入り込めたかな?

 

続いてオールマイトが僕の前にやってきた。その顔にはどこか影が差している。まぁ、負け方も負け方だしね。ただうーん‥‥もうちょっとこう、なんて言うのかな? 前に押し出した曇りだと嬉しいなぁ‥‥月並みな感想だけどね。

 

「舞妓少年‥‥義足の件はその‥‥残念だったな。だが、君が言った通り、間違いなく君は台風の目だったよ」

「ありがとうございます。そう言ってもらえて嬉しいです。ただ、僕じゃなくて、僕たち、ですよ」

 

オールマイトが僕に銀メダルをかけてくれる。首にかかってみると案外重い、その重みが悪くない。

 

「‥‥僕はまだ、憧れの背を追いかけています。大きな背中です、きっと彼なら怪我を言い訳にしないから。だから‥‥少し、悔しいですね」

 

儚げに言ってみせる。そしてオールマイトに向けてはにかんだ。どうよ? これが美少女顔の有効活用ってやつだ。存外いけるんじゃないか?

 

「なに、君のような将来有望な生徒は必ず、誰かを救う。必ずね!」

 

オールマイトがグッと親指を立ててかっちゃんの方へ行こうとするのでムッとする。おいおい、それじゃあ釣り合いが取れていないじゃないか。

 

「ん」

「‥‥舞妓少年?」

 

松葉杖を脇で固定して腕を広げる。何逃げようとしてるんだ? 僕にとってのNo.1ヒーローは貴方だぜ? 頑張ったんだからハグの一つでもしてもらわないとね? というか轟くんと常闇くんにはしてたじゃん。というムスッとした顔で腕を広げるとオールマイトが冷や汗をかいた。その顔が見たかったんだよね。

 

「僕にはしてくれないんですか?」

「くっ‥‥! 有耶無耶にできると思っていたのに‥‥!」

 

あんまりそういうこと口に出すものじゃないですよ。

 

ブツブツとこれ週刊誌にすっぱ抜かれるかな‥‥や、緑谷少年が後で怖いんだよなぁ‥‥と言いながらオールマイトが渋々と抱きしめてくれる。僕はその背中に手を回しながら満足気に微笑んだ。擬音で表すのならむふーだろうか。吹っ切るってこれでいいかな?

 

「頑張った甲斐がありました」

「そ、そうか‥‥それはよかった。よく頑張ったな」

 

オールマイトが最後に二度背中を叩いて僕への抱擁を外す。チラリと観客席を見るとA組のメンツと目が合う。なんか羨ましそうな顔してる子が何人かいるね。出久くんとか。反対になんか絶望した顔した女子もいるけどね。というか耳郎ちゃんがめちゃくちゃに曇った顔してる‥‥! なんで!? ねぇ! なんでその顔を僕の近くで見せてくれないの!! 僕を! 困らせて楽しいか!?!?

 

「オールマイトぉ‥‥! こんなの意味ねぇよ‥‥! 俺が取らなくちゃいけないのは完膚なきまでの1位だ! あんな、女男に手加減されての1位じゃねぇんだよッ!」

 

すごい顔になりながらかっちゃんが喚く。うんうん、轟くんには使ったのに君には使わなかった黒閃がいい感じに響いているようだ。義足が壊れたから勝てたということも理解しているのだろう。

 

「相対評価に晒され続ける現代で絶対評価を持ち続けられる人間は少ない、君のその信念はきっと大きな意味になる」

 

かっちゃんの口に金メダルをかけてオールマイトが笑う。まぁ、傲慢も突き詰めれば信念のある人間に見えなくもない‥‥のかな? そうだとしても自分の心の弱さのためにいじめをしたって事実は変わらないけども。いじめっ子め曇らせて成敗してやるぞ!♡

 

「ご覧いただいた通り! ここにいる誰もがここに立つ可能性があった! 次代のヒーローの芽は確実に伸びている! てな感じでみなさんご唱和ください! せーの!」

 

「お疲れ様でしたー!!!!」

 

会場はPuls Ultraと叫ぶがオールマイトはお疲れ様と叫んだらしく、みんなに弄られていた。なんかこういうところで弄られるような愛嬌があるからNo. 1なんだろうなって思ってしまう。エンデヴァーは絶対にしないじゃんこんなの。弄られたら燃やしそう、そこら辺はかっちゃんと似てるかな?

 

あぁ、あとオールマイトは間違えてることがある。

 

育っているのはヒーローの芽だけじゃない。僕たちのような、ヴィランも芽を伸ばしているんだよってことを知っておいてほしいな。そう思いながら手の中にある重たい銀メダルを握りしめた。

 

 

  × × ×

 

 

「ユズ」

「ん? どうかした? 響香ちゃん」

 

明日、明後日と休みであるということを相澤先生が教えてくれ、本日は解散という運びになったのち、耳郎ちゃんから声をかけられた。その顔は大きく曇っていて、僕は声を上げるのを全力で我慢する。さっき表彰式の時にもっと近くで見せてとは言ったけど供給過多だってば!

 

「‥‥ごめんね、ウチのせいで優勝できなくて」

「なんの話? 優勝?」

 

優勝‥‥あぁ、義足が壊れたから優勝できなかったってことは耳郎ちゃんの足を治したから優勝できなかったと同義に思ったわけね。なるほどなるほど、責任感が強いヒーローの卵らしい思考だ。

 

つまりあれか? 僕がかっちゃんを曇らせるためにした策略が耳郎ちゃんのことも曇らせたわけ? 一石二鳥とはこのことだと思うんだよね、もっと僕のこと崇めていいよ、本当に。最高すぎる。

 

「‥‥ユズの足があれば、きっと優勝してたのに」

「そんなことないよ、あれは僕が爆豪のことを煽りすぎたってだけ、もし義足じゃなくても勝ててたかどうかは五分じゃないかな」

 

これは嘘だ。本気でやり合ったら多分かっちゃんだろうとボコボコにできる自信がある。それは今までの戦闘経験の差とかそういうのではなく、僕はかっちゃんという存在のことを知りすぎてるのだ、それに見せていない隠し技もあるにはある。使ったらかっちゃん死んじゃうだろうなってズル技もあるし、確実に殺せるような技もある。ただ、使ってないだけだ。

 

「でも、0から五分にまで持って行けたじゃん‥‥」

「それだって僕がもっと対策すればよかっただけだよ」

「でも‥‥」

「でももだってもないよ、響香ちゃんは何も悪くない。僕が勝手に負けたんだ」

 

耳郎ちゃんが本当に泣き出す一歩手前という感じで顔を歪める。あぁ〜! やっぱり今日で理解したよ!! 君の顔はいつか僕の癌にだって届く!! 僕のことを癒せるなんらかの特効作用が出てるんじゃないの!? 僕のことをこんなに歪めて楽しいの!? 僕がこんなに我慢してるのに君は我慢しないで泣き出しそうでさぁ〜!! 僕が今一瞬でも声を上げたら全て壊しちゃうからあげてないだけで、今一瞬でも油断したら声出ちゃうくらいなんだよ!! 最高だよ君って子はさぁ〜!! 歪め甲斐があるよね!!

 

「‥‥はぁ〜、あっ、響香ちゃん。明日か明後日どっちか暇?」

「‥‥‥へ?」

 

我慢してたものの溢れ出した涙を頬を指で撫でることで抑えてあげながら聞いてみる。どうだろうか?

 

「暇だけど‥‥」

「そうなんだ。どうかな? この前言ってたご飯でも作ってあげようかと思ってさ、泣かせちゃったお詫び」

「‥‥どこで?」

「え? どこって‥‥僕の家かな?」

「!?」

 

まぁ、耳郎ちゃんを家に上げるくらいなら家族も文句は言わないだろう。大体小中学校で何度出久くんを家にあげたかわからないし。まずもってご飯を作るならキッチンがいるし。いきなり耳郎ちゃんの家の台所でお料理するほどのメンタルは僕にないよ。

 

「どうかな?」

「それ‥‥う、うん! ウチでよかったら‥‥」

「ウチでよかったらって返事としておかしくない?」

 

はて、何かおかしいことしただろうか? 僕としては曇り顔から一度持ち上げてあげるための発言だったんだけど‥‥下手をすると責任を感じて笑ったり、怒ったりっていう至って普通の高校一年生の表情を見せてくれなくなるだろうからね。それはギャップを求めている僕としては困ることなのだ。ギャップがあるからこそ曇り顔は美しいからね。もちろん、ずっと曇り顔が続くのも可愛いけど。

 

「それじゃあ明日とかでいいかな」

「はいはーい! それ私も参加しちゃダメ?」

 

僕が耳郎ちゃんとの約束を取り付けようとしていると葉隠ちゃんが声を上げた。

 

「え? 僕は別にいいけど‥‥一人呼ぶのも二人呼ぶのも変わらないしね」

「やったぁー!」

 

セラピーみたいなものだし別に何人いてもいいんだけどね。むしろ何人かいた方が気が紛れるかもしれない。

 

「え! 舞妓の家でご飯!? いいなぁー!」

「ケロッ‥‥譲葉ちゃんのご飯は美味しいものね」

「腕前はプロ級ですもの‥‥羨ましいですわ‥‥」

「ゆずくんのご飯今日ちょっと貰ったけど美味しかったもんね!」

 

僕が葉隠ちゃんに許可を出したら女子メンツがゾロゾロと集まってきた。なになに? 僕たった2回の餌付けでここまでみんなの心を奪っちゃったの? 最早すごくない? 自分の腕前が怖いんだけど。

 

「あー‥‥流石に僕の家に女子みんな上げるのはきついかもな‥‥いや、座れはするけど、窮屈だと思う」

「そっかぁー‥‥残念‥‥」

「大きいお部屋やみんなの分の食材を調理できるだけのキッチンを借りてもいいけど‥‥今から借りれるかな?」

「それなら私のお家はどうでしょう!」

 

ヤオモモちゃんが声を高らかにして言った。ふむ‥‥確かにヤオモモちゃんの家なら僕たちが上がっても問題ないだろう。講堂って普通の家にはないもんね。

 

いや、普通の家どころか前世今世通して講堂のある家になんて行ったことないよ。

 

「へぇ‥‥百ちゃんの家か、興味あるな」

「ヤオモモの家!? 行きたいー!」

「講堂を空けますわ!」

「講堂???」

 

まぁ、正直僕プラスみんなの分のご飯を作るとなると結構な量になるのだけど、構わない。曇らせのためには日常がいる。なんなら男子も呼んでいいくらいだ。何人かは帰っちゃってるみたいだし、今度になると思うけど。

 

それに近々期末試験だしね、そのときにはまたみんなで集まるだろうし‥‥今回は女の子に僕を植え付けることを目的に料理を振舞おうかな?下ネタじゃないよ。

 

「楽しみだね」

「はぁ‥‥」

「どうかした? なんか頭が痛そうだけど」

「アンタのせいなんだけど」

 

ジロリと耳郎ちゃんに睨まれる。そんなに睨まなくて良くない? 僕何か悪いことしたかな? みんなで集まれるのは楽しいじゃんか。

 

「まぁ‥‥ユズだしね」

「僕だから仕方ないみたいな雰囲気出さないでほしいなぁ‥‥」

 

やれやれと肩をすくめる耳郎ちゃんはヤオモモちゃんに呼ばれて僕の横から駆けていった。その顔には先ほどまでの憂いと悲しみを帯びたような色ではなくて喜びと楽しみの色を含んでいた。少しは気が晴れたかな?

 

こうして、大きなイベントごとから僕たちは少しずつ日常に戻っていく。この先の絶望と、最高の曇らせに向けて一歩ずつ。

 

「楽しみだなぁ」

 

明日、明後日のみんなの顔よりもきっと良いものになるいつかの日を夢見て僕は目を閉じた。

 





皆さんの感想を見て元気をもらうこと数日、モチベーションがぶち上がって字を書くことを続けております。いろんな意見を見るのもなかなか面白いですよね。私の作品を面白くないと言う人もいて勉強になるなぁと思います。楽しんでくれる皆さんを愛してるぜ‥‥感想も評価も糧にして書き続けるから‥‥

とりあえず体育祭編は終わりですね! 原作で言うと5巻分くらい進んだ感じになります。このペースで行くと今年中に完結まで持っていけるかな? 全力で走り抜けるので応援よろしくお願いします!

映画編を入れるかどうかのアンケートをさせてください!

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