個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア!   作:波間こうど

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んこにゃ様からファンアートが届きました! 掲載の許可を貰ったので掲載させてもらっております‥‥! 人生初のファンアートでめちゃくちゃ舞い上がっちゃった‥‥

皆さんの感想や評価すごいですね。指が進む進む。もっとたくさん評価して‥‥(承認欲求モンスター)

私の作品が皆様の評価に値するのかと言われると難しいお話なのですが、皆様のお仕事や学校、ストレスを少しでも緩和できたらと思います、存分にニチャりましょう。


お食事会と蠢く悪意

 

体育祭の次の日。僕は疲れた体に鞭を打ってベッドから起き上がり、休めば? 寝てれば? という家族の言葉を振り切って電車に乗り、耳郎ちゃんたちとの約束を果たしにきていた。

 

今日参加したのは結局お茶子ちゃん以外の女子メンツ+僕だ。お茶子ちゃんは原作通りお父さんとお母さんが遠路はるばる三重からやってきてくれたようで、そのおもてなしをするらしい。そっちを優先するのは当然だよね。

 

ところで、僕以外の男子も何人か誘おうかと思ったんだけどみんな来れないようだった。暇? って聞いたら何人かは予定があって何人かには「お前と二人? 俺のことを歪めるつもりか!?」という言葉を返されたので既読スルーしている。ちなみにその手の返事を返したのが上鳴くんと峰田くんね。そもそもかっちゃんと出久くんは誘ってない。あの怪我で来られたら困る子と絶対に来ない子だしね。

 

あの二人は呼ばれなかったってことの方がいい反応してくれそうだったし。いや、これが本音だけど? 文句ある?

 

「豪邸だ‥‥」

「八百万グループと同じ名前だったし、百ちゃんの普段の言動からなんとなく予測はしてたけど‥‥ねぇ?」

 

僕たちは家の庭が森のようになっているヤオモモ宅に到着した。具体的にはヤオモモちゃん以外のみんなで最寄駅に待ち合わせしてから、集まったという感じだ。みんなの私服が見れて個人的には眼福である。

 

駅から数分歩くと閑静な住宅街が開けて、一軒の豪邸が現れた。いや、豪邸というのも何か違うかもしれない。宮殿とか? そういう名前の方が個人的にはしっくりくるんだけど、この家何?

 

代表してインターホン(何故かボタンはライオンの口の中に施されていた。カメラはおそらくライオンの目、セレブの考えることはよくわからん)を押して声をかける。

 

「すいませーん、百ちゃんいますか?」

『舞妓さん! 皆さん! お待ちしておりました! 中に入ってください!』

 

インターホンを鳴らすと元気なヤオモモちゃんの声が聞こえた。あらやだ、大変元気がよろしくていいと思います。ところで中に入ったとしてもこの道をどう進んだら家に辿り着くの? これ。地図とかある? 館内マップみたいなの。美術館じゃないしないか。

 

「中に入ってだってさ、行こっか」

「‥‥ユズ、やっぱりアンタ私服おかしいって。なんでスカートじゃないの?」

「腰細すぎ‥‥折れそう‥‥」

「ワンピースとかの方が似合うって、あとキャップも可愛いけど今度は麦わら帽子被りなよ」

「みんなして急になに???」

 

家の中に進もうとみんなに声をかけると、なにやらいきなり私服へのディスが飛んできた。いやいや、私服は結構気を遣ってるんだよ? みんなと同じような服装にならないように、且つ僕の見た目が映えるようにって。スカートとか履いたら本気の女装男子じゃん。堀越先生の性癖が疑われるよ。ちなみに僕はムチムチが性癖だと思ってます。

 

「でも譲葉ちゃんのスカート姿は見てみたいわね‥‥きっと似合うわ」

「うーん‥‥スカート履いたことあるんだけどね? 出久くんが僕からしばらく距離を取るレベルだったんだよね‥‥」

「え? そんなに似合わなかったの?」

「ううん、似合いすぎて僕のことが本気で女子に見えてきて話せなくなったから」

「緑谷‥‥‥」

 

僕の言葉にここにいない出久くんにみんなからの憐れみの視線が集まった。いや、幼馴染で親友の僕の冗談半分の女装に対して「ごめん、僕ゆずくんと話せなくなるからしばらく距離を置いてもらっていい???」ってガチトーンで言ってくるあの子はあの子でおかしいと思うんだよね。あの一件以来流石に女の子に見られるのはまずいなって思うようになったもん。元から好き好んで着てたわけじゃないけど着てって言われても着なくなった。親は何故だか残念がっていたけど中学生まで着せ替え人形になってあげてたことの方が優しいと思うの。

 

「だから僕が履くと本気で女子に見られてたぶんお婿の行き先がなくなるから勘弁してくれる? 僕好きな性別は女の子なんだ、女の子扱いされるのもあんまり好きじゃないしね」

「それはないと思うけどなぁ‥‥」

 

ボソリと呟いた葉隠ちゃんの言葉に首を傾げながら僕たちは森の中を歩いた。なんで門から家までに数分歩かないといけないんだよ、それはもう庭じゃなくて公園なんだよ。

 

 

  × × ×

 

 

森を歩いてから三時間。僕たちはヤオモモちゃん宅で少しだけ遊んでから、キッチンに通された。二時間ほどの時間をかけてご飯を作り上げてからみんなのいるダイニング(この家に幾つあるのってくらいにこの手の部屋があるのは何かの冗談なんだろうか)まで映画や漫画でしか見たことがないような手押しの配膳台を使ってお料理を持っていく。途中でメイドと執事さんとすれ違ったので挨拶しておいた。ドアを開けたらみんなの待ちくたびれました! みたいな顔が見える。

 

「やっと来ました!」

「待ちくたびれたよ〜!」

「うわ‥‥いい匂い‥‥」

「お待ちどうさま!」

 

みんなの前にお料理を配膳する。みんながお望みのものを作ったが、このチョイスがなかなかバラバラで僕的にはどれを食べても問題ないようにまとめるのに苦労した。唐揚げとポテトとか割とジャンキーなものからカルパッチョとかパスタとか洋風なものをチョイスした子がいたので、どれを摘んでも味がばらつかないように細心の注意を払った。最早プロのシェフじゃん。

 

ちなみに普段はガチのシェフが働いているキッチンでガチのシェフが使っている食材を使わせてもらったので味にはいつも以上に自信がある。高級食材とかになってくると僕は買えないしね。ヤオモモちゃんの実家パワーだから買えたでしょこれ、みたいなのもいくつかあったもん。本気でシェフ目指してやろうかな。

 

「うっわぁ〜!! すっごい美味しそう!!」

「唐揚げが輝いてる‥‥!」

「カルパッチョとか家庭で出てくるの!?」

「ふふ〜ん。もっと褒めてくれていいよ!」

 

みんなの反応もなかなか悪くないようだ。うんうん、僕ってば料理が上手だからね。最高の出来栄えだと自負してるよ。これだけ美味しそうに出来たらインスタ映えも間違いなしだ。てなわけでみんなと集まってお料理を囲んで写真をパシャリ。インスタではなくてA組のグループに貼り付けておいた。これで今日来なかった男子は後悔するといい。

 

「そら、おあがりよ!」

 

みんなが「いただきまーす」と手を合わせてからご飯をつまみ出す。もぐもぐと口にご飯を運ぶ様はまるで雛鳥のようで可愛らしい。うんうん。みんな可愛いね‥‥これが曇りに変わる瞬間がすごく綺麗なんだよなぁ。だからしっかりとみんなの脳みそに僕との記憶を色濃く植え付けてね♡

 

「むぐ‥‥舞妓くん食べないの?」

「僕は味見したし、きっとみんな食べ切らないから残ったの食べるよ」

「出来立てが美味しいのにー! こんなに美味しかったらなくなっちゃうぞー?」

「ふふ、今はみんなの美味しく食べてる顔でお腹いっぱいかな。それとほどほどにしておいた方がいいと思うよ?」

 

机に頬杖をつきながらそう言ってあげるとなぜか僕の目の前に座るヤオモモちゃんと芦戸ちゃんが顔を背けた。なに? どういう反応? 耳まで赤い‥‥照れているのだろうか。可愛いね、いっぱい食べるところがみっともないと思ったりしたのかな?

 

「透ちゃん、そんなに頬張らなくても料理は逃げないよ?」

「んぐんぐ‥‥やっぱりさぁ、舞妓くん私のお婿さんにならない?」

「透ちゃんが望むなら?」

 

僕がそう返すとイヤホンジャックで殴られた。言わずもがな横に座っている耳郎ちゃんからの攻撃である。耳郎ちゃんはこういう自由に座る形式の席の時は何かと僕の右側に座ることが多い。とりあえず明日病院に行く用の軽い義足はつけているものの階段とかを上るのはなかなか不便な体なので支えてもらうのは正直助かる。いやぁ、そのときに耳郎ちゃんの良い感じに曇った顔が横にあるのが良いんだよね。健康にいい。癌にはまだ効かないけど鎮痛剤程度の効力はあるでしょ。

 

「ユズは普段の言動を顧みた方がいいと思う」

「失礼な。僕ほど真摯に生きてる人間もいないよ?」

「舞妓それ本気で言ってるの?」

「自覚がないって怖いわね‥‥」

 

至極真面目に返したつもりの僕の言葉に対して芦戸ちゃんと梅雨ちゃんがポテトをつまみながらそんな言葉を口にする。

 

僕は曇らせに関していうのならあり得ないくらいに真面目に真摯に生きてると思うけどなぁ、それもこれも全部僕のためだから他の人に対してかと言われると誤魔化すしかないんだけども。真摯に生きてはねぇだろふざけんな。

 

「舞妓さん。カルパッチョなんですが爽やかなこの風味はレモンだけじゃないですわよね?」

「お、百ちゃん味覚が繊細だね? 柑橘系のソースを使ってるけどレモンだけじゃなくて‥‥」

「まぁ‥‥あの短時間でそこまで作り込まれているんですの?」

「いや、食べたい料理は聞いてたからソースは自分の家で作ってきたよ」

「セレブの会話だ‥‥」

 

葉隠ちゃんがムグムグと口の中にご飯をかきこみながらそう口にする。僕の家は普通の一般家庭だよ? ヤオモモちゃんの家みたいなヤバい家じゃない。普通の家に講堂はない。あと家の庭が公園の広さじゃない。

 

「そういえば譲葉ちゃんは何故こんなにも美味しいお料理が作れるようになったのかしら」

 

ふむ、梅雨ちゃんの発言につい唸ってしまう。正直なことを言うと曇らせの後の団欒でメンタルの回復をするのにみんなでの食事というのはとても効率がいいかなって思ったのと、雄英の入試で誰が落ちてもいいようにみんなの趣味やみんなの役割に取って代われそうなものは率先して身につけたと言うことなんだけど‥‥ここで砂藤くんの持っていたスキルを奪ったなんて話をしたとしても誰も共感してくれないだろうしなぁ‥‥

 

ちなみに耳郎ちゃんの楽器のスキルや勉強のスキルだったり芦戸ちゃんのダンスのスキルだったりも身につけてあります。一般教養的にえっちなのもいけるので峰田くんの代わりもできるよ。いや、僕の見た目でえっちなこと言い続けてたらたぶんモブおじに襲われるのでしないけども。

 

「ん〜、ヒーローとして炊き出しとかする機会があるかなって思ってさ、あと僕の作った料理を美味しそうに食べてくれる子が好きなんだよね。たくさん作ってあげたくなる」

 

空気が少しだけ張り詰めた気がした。周りを見てみるがみんな気にせずに僕の話を聞いてくれているので気のせいかも知れない。

 

「じゃあ舞妓の好きなタイプはご飯をいっぱい食べる子?」

「少食よりは嬉しいかな? ご飯を美味しく食べられるのは余裕のある子だからね」

 

僕が余ったであろうお料理を自分の皿に移しながら笑う。それをフォークなんかで突いて口に運びながらみんなの質問に答えていく。なんか話の流れが僕への質問コーナー‥‥ともすれば尋問にも近しい形になっていった。

 

僕のことを知るというのはいい心構えだね。僕のことを知ってくれれば知ってくれるほど僕が寝返ったときにみんなが甘美な顔をしてくれると思うし。あ〜、裏切るの楽しみ。

 

「じゃあじゃあ舞妓の好きなタイプは?」

 

それを言い出したのは芦戸ちゃんだった。と言うか質問自体はみんなしてるけど恋愛系のを投げてくるのは芦戸ちゃんが多いかな? 理由は明白だろう。このぐらいの女の子はスイーツと恋愛とゴシップに目がないからね。

 

「ん〜‥‥そうだなぁ‥‥みんなみたいにご飯を美味しそうに食べてくれる子とか、僕と仲良くしてくれる女の子は好きになっちゃうかも」

「え」

「えぇ! じゃあ私たちと付き合ってもいいってこと?」

「ふふ、僕が釣り合わないだろうけどね。みんなはきっと素敵な旦那さんを捕まえるよ」

 

僕はそう言って、残っていたお料理を口に入れて親指で口の端を拭う。ごちそうさまでした、と手を合わせたときにみんなが異様に静かなことに気づいた。

 

「‥‥? みんなどうかした?」

「舞妓はいつか刺されると思う」

「というか私が刺すね」

「ウチも多分引っ叩く」

「みんななんか物騒だね?」

 

ふむ、怒らせているというよりはなんだか呆れられているニュアンスが強いかな‥‥? 呆れられるような会話した? 僕は何か選択を間違えましたか‥‥?

 

そんなこんなで会話をしながらみんなが手をつけられなかったお料理を摘みつつ会話を楽しんでいるとあらかたのお料理が平らげられてしまった。女子高生の胃袋舐めてたな‥‥すげぇ‥‥

 

「あ〜! もうダメだ! 食べられない!」

「こんなにお腹いっぱい食べたのは久しぶりですわ‥‥」

「舞妓くんが旦那さんになったらお嫁さんはスタイル維持大変だろうね‥‥」

「ケロッ‥‥幸せ太りしちゃいそう‥‥」

 

みんな楽しんでくれたようでご飯を満腹になるまで食べ切ってくれた。残った分を咀嚼しながらみんながどの料理が美味しかっただの話し始めたタイミングで立ち上がる。

 

「みんなお腹いっぱい?」

「うん! ごちそうさま!」

「とても美味しかったわ、ありがとう譲葉ちゃん」

 

うんうん、お礼を聞くのは悪くない。僕としてはお礼が聞きたいからお料理したわけじゃないんだけど、まぁ、それでもお礼を言われるのは心地いい。

 

「ところでなんだけど‥‥もう入らないよね?」

「うん〜‥‥これ以上は無理かな‥‥」

「ウチも限界かも‥‥」

「しばらくは大丈夫ですわ」

 

みんなが温かいお茶(これは僕が出したもの)を飲みながら一息つく。ここまで作戦通りだと面白いな‥‥

 

なんの作戦ってもちろん曇らせのだけど?

 

「それじゃあデザートは食べられないね」

「え?」

「待って、舞妓、ちょっと待って」

「今回のデザートはアップルパイとチーズタルトになります。お好みで自家製ジャムをどうぞ」

「ユズあんた鬼!?」

「非道ですわ‥‥!」

 

うわ! 思ったよりもいい顔でいい反応だな! ニヤニヤしちゃうぜ! 恨みがましい顔をしてるのもすごいゾクゾクしちゃうポイントだ。特にヤオモモちゃんと芦戸ちゃんが割と本気で僕のことを睨み付けている。くぅ〜! さっきまでの幸せ空気から一転して鬼を見る目をしてる‥‥! そんなに僕のことを興奮させるなよ! 曇らせ以外の顔もいけるじゃんって思っちゃうじゃんか!

 

「え〜? 僕なりにみんなはデザート欲しいかなって配慮だったんだけどなぁ‥‥さらに言うのなら食べ過ぎると良くないよ? って言ったよ?」

「言ってたけどそういうのは聞いてないじゃん!」

「酷いわ譲葉ちゃん‥‥」

「サイテー!」

「下劣ですわ!」

「鬼!」

「悪魔!」

「女男!!」

「今爆豪と同じ悪口言った子いない?」

 

ここまで責められるとは‥‥食べ物の恨みは恐ろしいと言うが三度の飯よりもスイーツが好きな女子高生には少し酷だったかな? まぁ、それはそれとしていい顔だから目の前で食べるんだけどね!

 

「まぁ、僕はお腹まだ空いてるし、食べるんだけどね。出来立てが一番美味しいからさ」

「あんたさっきまでウチらの食べてるところでお腹いっぱいだって言ったじゃん!」

「消化が早くてさ」

 

キッチンから持ってきたアップルパイとチーズタルトをわざわざ熱々の状態で持ってくる。まぁ、持ってくると言うかできたものの場所を把握しておいて手元の空になったお皿と位置を入れ替えただけなんだけどね。この焼きたての匂い、パン生地の香ばしい薫りとチーズの鼻につく匂いにみんなは顔を顰める。

 

「美味しそう‥‥だけど‥‥今じゃない‥‥!」

「舞妓くん今私たちのこと敵に回したよ‥‥!」

「ひどいですわ‥‥こんなのヒーローの所業じゃありません‥‥!」

 

散々な言われようだ。僕ほどヒーローに向いてる人もいないだろうに‥‥まぁ、とんでもないブラックジョークなんだけどね。僕が一番ヴィランでしょ。みんなのこと殺しはしないけど怪我くらいならいくらでもして欲しいと思ってるもんね。何故なら僕が貰えるからね‥‥ふふ、いい顔してくれるんだろうなぁ、響香ちゃんみたいにさ。

 

僕が悦に入ってうんうんと頷いている間にも女子メンツにはやいやいと言われるのでここで反撃に出ようと思う。今日はみんなと親睦を深めるついでに種を蒔きさりとて可愛らしい表情差分を回収するつもりで来てるからね!

 

「百ちゃん。フォークとお皿、それからナイフを出してくれる? できれば全員分」

「何故? そんなことをしたら皆さんの前にこのデザートが並ぶことになってしまいます、そんなの酷すぎますわ‥‥!」

「そっかぁ‥‥カロリーを個性で消費すれば食べられるかなって思ったんだけど」

「やりますわ」

「ヤオモモ!?」

 

僕の言葉にヤオモモちゃんが寝返ってくれた。ふふふ、おそらくこの中で一番僕のお料理に心奪われてるのは彼女だからね。舌が一番肥えてるはずなのに何故かヤオモモちゃんが一番お料理の食いつきがいいんだよなぁ‥‥やっぱり個性上いっぱい食べていっぱい鍛えないとだからかな?

 

「できるだけアップルパイとチーズタルトが映える見た目の装飾を施したりできる? 細かいものの方が個性でカロリー燃やせるでしょ?」

「素晴らしいアイデアです!」

「裏切り者〜!!」

 

みんながギャーギャーと笑っているのを見ながら笑ってしまう。食べ物の恨みは恐ろしいと言うが本気でムスッとした顔をしてる子もチラホラいるんだよね‥‥芦戸ちゃんとか。

 

「三奈ちゃんそんな顔してどうしたの?」

「‥‥舞妓って性格悪いよね」

「失礼な。ちょっとした冗談じゃん」

 

流石に女子高生四人を怒らせるわけにはいかない。スイーツの恨みは末代まで呪われるからね。僕は子供を作る気がないので僕の家系は僕が末代だろうけど。

 

「ちゃんと冷めても美味しいものにしてるし、持って帰れるように袋も準備してあるよ」

「ならいいけどさぁ‥‥」

「流石にちょっと意地悪だと思うわ譲葉ちゃん」

「ふふ、ごめんね。キュートアグレッションってやつだよ」

「キュートアグレッション?」

 

可愛らしいイントネーションで葉隠ちゃんが僕の言葉を復唱した。高校一年生だと知らないかな? 経験はあると思うけど。

 

「可愛い子や好きな子に意地悪したくなる現象のことですね」

「そうそう、百ちゃん詳しいね。みんなも小学校とか中学校でされた経験あるでしょ?」

 

残った食器を片付けながら僕がヤオモモちゃんの言葉に補足を入れるとみんながまたムスッとした顔をした。はて、難しい話すぎただろうか。

 

「ユズはさ‥‥ほんと‥‥」

「なんで響香ちゃんは呆れてるの?」

 

それじゃあみんなで食べられるようになるまでしばらくの間はお話ししようか、なんて言うと僕の横でお皿を出してくれていたヤオモモちゃんが少し赤らめた顔で僕の袖を引いた。え? 可愛い顔すぎてびっくりしちゃったな。

 

「‥‥私は少し食べてもよろしいでしょうか?」

「‥‥え? あ、うん。食べな?」

 

どうやらこのクラスの女子で一番食い意地が張っているのはヤオモモちゃんらしい。僕は彼女がパァッと顔を輝かせながらアップルパイに手を伸ばすのを見て、目の前にいた芦戸ちゃんたちと目を合わせて微笑みながら許可を出した。

 

こんな日常も素敵だよね。曇らせに必要な養分となってくれたまえ。

 

‥‥ところでさっきから携帯がひっきりなしに鳴り続けててチラリと画面を見たら『呪呪呪』というメッセージが峰田くんから個別で来ていたのでそっと電源をオフにしました。

 

 

  × × ×

 

 

日付は譲葉たちがお食事会をしている日の一日前、つまり体育祭の日のことだ。敵連合のアジトでは死柄木弔と黒霧が雄英高校の体育祭をテレビで眺めていた。理由は今後も計画上狙うことになるヒーローの卵たちの分析と、それから彼らの大事な仲間である舞妓譲葉の晴れ舞台だからである。

 

予選を当たり前のように突破した譲葉の姿を興奮した面持ちで眺める死柄木をどこか温かい目で見つめる黒霧の様子は先日USJを襲った凶悪ヴィラン集団だとは思えないほどの穏やかさであった。

 

決勝戦の結末の瞬間までは。

 

『は?』

「あ?」

 

テレビの先の爆豪勝己とテレビを見ていた死柄木弔が声を上げるのはほとんど同時だった。

 

『優勝は1年A組! 爆豪勝己!!!!』

 

テレビから今回の大会の優勝者の名前が流れる。例年ならここで会場が割れんばかりの歓声で湧き上がるのだが、今回はそうは行かなかった。

 

それは最後、幕切れが相手の義足の故障による敗北というなんとも言えないものだったからだ。

 

しばらくの間呆然としながら立ち尽くした死柄木は、ぼすんと音をてながらバーカウンターの席に座り込んだ。そして血走った目で自分の掌を見つめる。正確にはその五指‥‥

 

結果的に舞妓譲葉の右足を奪った、その五指だ。

 

「‥‥‥死柄木弔、舞妓譲葉が負けたのは貴方のせいではありませんよ」

 

死柄木のあまりの呆然っぷりに心中を察した黒霧が声をかける。するとさっきまでは後悔の念を滲ませていた瞳が理不尽な怒りを込めて黒霧に向けられた。

 

「じゃあアイツの足は誰が奪ったんだ?」

「‥‥元々、作戦上仕方なかったことではないですか。舞妓譲葉も死柄木弔が自分の足を奪ったとは思っていませんよ」

「譲葉がどう思うかじゃない、俺がどう思うかだ」

 

グッと握りしめた拳をバーカウンターに叩きつける。握りしめた指の隙間から彼に出会ってから何度目かの血を流す。

 

『ンで‥‥こんな結果認めるかァァァァァァ!!!! 女男は‥‥! 譲葉は‥‥!』

 

テレビの先で爆豪が慟哭する。それは全国中継で日本中の人に見られていることを忘れているような、何もかも忘れて、ただ、目の前の現実が認められないような子供の地団駄のように見えた。

 

「お前が譲葉を語るなよ‥‥」

 

ガッ! と死柄木がテレビに触れる。その血走った目は今目の前にいたらその男のことを殺しそうなほど見開かれ、手が届くのなら、許されるのならバラバラにしてやるのに、という衝動を隠そうともしていない。

 

目の前にいた黒霧をして、認識できないほどの速さ。バーカウンターからたったの数歩程度の距離だとしても、見えないほどの速さだった。

 

「死柄木弔、壊してはいけませんよ」

「わかってる‥‥」

 

テレビから手を離せばボリボリと首を掻き、歯軋りしながら彼はテレビの向こうにいるその少年を見やる。それは殺意に満ちた視線。

 

「俺の手で殺してやる」

『貴重な雄英体育祭1位だ、仲間に迎え入れたらどうだい? 強い個性だ』

「‥‥本気で言ってるのか? 先生」

 

蛇が蛙を睨むような、鋭い眼光がテレビ越しに注がれた。その先の人物はどこ吹く風と言うように受け流しつつ、笑う。

 

『随分と譲葉を気に入っているんだね。どうしてだい?』

「友達だから。何度も言わせないでくれ」

 

何度目かわからないその言葉に死柄木はそう返す。彼にとっては恩師であり、命の恩人であるAFOに対してすら少し苛立ちの棘を見せるほど、彼は舞妓譲葉という少年に入れ込んでいた。それはどこか病的なまでに。

 

AFOはこのことを嬉しく思うと同時に少しの危機感を覚える。それは自分が十数年かけて築き上げてきた関係値を、舞妓譲葉と言う少年はたった一年で構築したということだからだ。こと人心掌握術に長けたAFOをして僕以上の才がある、とAFOは断言してしまえる。

 

「ねぇ、AFO。手を組みませんか?」

 

その瞳を、意思のこもった、その齢14歳の少年が見せた瞳を、目のない彼はいまだに体で覚えているのだ。

 

今まで長く生きてきて数少ない同盟相手。それがまだ義務教育すら終えていない少年だったというから驚きだ。人心掌握術、思考の深さ、判断力、全てにおいて今まで出会ってきた人間で上位の人間。それがAFOから見た舞妓譲葉という存在であった。

 

『なら尚更、強く聡い仲間を集めなければね。君のこの先の作戦には必要だろう?』

「考えたのは譲葉だ、俺の作戦じゃねぇよ‥‥ただ、先生の言う通りだ。協力者がいる‥‥」

 

傲慢、そして子どものような思考。それらはまだ捨てきれていない。だが、着実にヴィランとしての意識が育ってきている彼はそう言う。その作戦の全てを信頼しているように、彼のことを一つも疑っていないように。

 

その純粋な子どもの、好きな友達との予定を確認するような瞳は。

 

「譲葉の作戦だから、必ず上手くいく‥‥まずは先輩と会わなくちゃな?」

 

『ヒーロー殺し、保須市に現る!』という見出しが載った新聞に向けられた。

 

悪意は、ゆっくりと形を変え、蠢いている。その魔の手は日常のすぐそばにまで近づいている。

 

 

 





完全オリジナルの内容になるとなかなか難しいですよね。休みじゃないと時間が割けないのもあって書くのが遅くなる‥‥

皆さんの感想、来るたび来るたびにウキウキで返事しているので朝起きて何十件とか、来てたりすると嬉しくてテンションがぶっ飛びますね。評価も皆さんが面白い! って思ってくれるように見えてなんだか照れ臭くて、それでいてすごく嬉しいです。

んこにゃ様のファンアートの出来も最高だったし‥‥私は恵まれていますよ‥‥本当に‥‥これからもよろしくお願いします!

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