個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア!   作:波間こうど

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難産。イメージがなかなか降ってこなかった‥‥林間合宿での出来事は決めてるのに。
本日は曇らせはないです、よろしくお願いします!


教師の重りって意味あるの?

 

 

「よし! こっからセメントス先生を倒す作戦を考えないとね!」

「ちょっ、ごめん‥‥俺そこまで一気にテンション上げれねぇ‥‥」

「鋭次郎なんでそんなに疲れてんの?」

「お前‥‥ほんとにいつか刺されるぞ‥‥」

 

いや、少し弄りすぎたかなとは思ってるんだけどね? そこまで面白い反応する切島くんが悪いと思ってるんだ‥‥面白すぎるでしょ反応の全部がさ! 僕が太ももに手を当てたときとか体ビクッ! って痙攣させてから硬化使ってんじゃないかってくらいに体カチカチになってたもんね。流石に面白いがすぎるだろ。反応が出久くんくらい童貞。

 

「僕なんか悪いことしたかな? 鋭次郎がいい匂いするっていうから嗅がせてあげただけじゃん」

「いや! 言ったけど! あんなに近づく必要なかっただろ!」

「男同士だよ!?」

「だとしても! ダメだろ! 男女ならアウト、男同士ならセーフとかじゃないって! 距離感考えろよ!」

「童貞みたいなこと言わないでくれない?」

「童貞だよ!」

 

彼の言うことはもっともだ、わざわざ香水を嗅がせるのに首筋まで見せてあげる必要ないもんね。顔を髪の毛くらい真っ赤にした切島くんは可愛かったね。あと童貞なんだ? いらないカミングアウトだったな‥‥流石に本誌に掲載されなさそう。

 

なんか、こう、なんて言うのかな? 上鳴くんとかみたいな反応する子じゃなくて、いつもは僕のことを男として扱ってるんだけど、僕からアクションをかけたときにいい反応をくれる子が好きなんだよね、切島くん然り、出久くん然り‥‥いい反応してくれるよ本当に。

 

「さて、それじゃあ改めてセメントス先生と戦う作戦を考えよっか」

「おぉ‥‥つってもセメントス先生の個性激強だろ。なんか作戦あんのか?」

「いや‥‥あの人に戦闘で勝つイメージが湧かないんだよね‥‥だから条件の一つになってる逃げる方が優先かな‥‥」

「二人がかりでも厳しいか?」

「いや、他の先生たちなら或いはなんとかなるのかも。でもセメントス先生、マイク先生に関して言うと個性を使うのに体を動かす必要がないんだよね。だから実質重りがハンデになってないわけ」

 

そう、この試験において大事なのは自分の有利を押し付けること、それから相手の不利を利用すること。この二つができていて、尚且つ教師の採点基準に引っ掛かればしっかりと合格することができる。

 

条件達成ができれば合格は貰えるとは思う、それは原作のお茶子ちゃんと青山くんを見てもわかることだ。まぁ、寝てた瀬呂くんは負けてたってことにしてここは一つ手を打ってほしい。

 

「だから、重りをハンデとして利用するのなら肉弾戦に持ち込みたいところだけど‥‥あの先生相手に迂闊に姿を見せたら‥‥」

「速攻で捕獲されるか」

「そ、だから見つからずに逃げることが大前提。と言っても僕たちがヒーローであっちがヴィランである以上、なんらかの方法での足止めは必要‥‥ってなわけで、僕が囮になろうかな」

 

だから鋭次郎は走ってゲート通過してね、と言うと切島くんは苦い顔で唇を噛んだ。え? なに? どういう顔?

 

「俺は足手纏いってってことかよ」

「いや、そんなこと言ってないよ? ただ、それが一番合格の確率が高いってだけ」

 

そう言ってみせるもなかなか切島くんは納得してくれないようだ。まぁ、友達をおいて逃げるヒーローになれなんて言われたら正義感の塊みたいな切島くんは困るか‥‥とはいえ切島くんを連れておくメリットはあんまりないんだよね‥‥切島くんの個性じゃ相性が悪すぎるし。となると、切島くんを僕が有効活用するしかないわけだど‥‥

 

ん? というかこの試験逃げの一手しか使えない? ‥‥そう考えたら先生相手に逃げを選択するのは悪手か? 逃げしか使えないって僕らが考えた上で逃げを選択するのをあっちは読んでくる? もし読んできたら合格しても逃げだけに囚われた動きは減点対象か‥‥?

 

「仕方ない。よっし、作戦を変更しようか。いい? よく聞いてね‥‥?」

 

切島くんに向かってちょいちょいと手を振りながらしゃがみ込む。そこで僕は変更する作戦を伝えた。男らしくねぇ、という声が聞こえてくるかと思ったけど彼は思ったより乗り気である。うーん‥‥これは作戦が気に入ったのか、それとも僕が男らしいと認定しなくてもいい女の子だと思われているのかどっちだろうか‥‥後者だったら性癖破壊してやろうか‥‥

 

いや、もしかしたら手遅れかもしれないけど。

 

 

  × × ×

 

 

「おや、君から顔を出してくるとは思わなかったよ」

 

試験開始からしばらく経ったあと、街中を悠々と闊歩するセメントス先生を発見し、こちらも堂々と顔を見せてあげる。すると先生からは驚いたようなコメントが届いた。

 

「君なら奇襲をすると思っていたからね。目の前に呼び出してカフスをつけた方が早いだろう?」

「それを一番警戒してた貴方を相手に? カフスを付けられるくらいに近づいたらその時点で‥‥違いますか?」

「随分高く評価してくれているね」

「僕と相性の悪い先生といって真っ先に思いついたのはイレイザーヘッドです。その次は貴方だった。警戒しないわけがないでしょう?」

 

いつものようにニコニコしているがその顔色には覇気がある。まず、先生が話したように、先生をこっちに呼び出してカフスをつける。という案も思いついたんだけど‥‥明らかにそれを一番に警戒している先生相手にそれが行えると思わなかったのだ。

 

相澤先生が見せたように、ヒーローなんて大体どんな人でも格闘戦に秀でている。そんな相手を呼び出してカフス付けます。なんて苦労するのが目に見えている。下手をすればカフスをつけるよりも早く拘束されることなんて考えなくても分かることだろう?

 

「うん。その判断は正しい。だけどどうするんだい? 僕相手に目の前に出てきて、まさか一対一で勝負でもするつもりかい?」

「ハハ、そのまさかですよ。僕と踊ってくれますか?」

「生憎今日の仕事は君たちを全力で叩き潰すことでね、さっさと脱出ゲートまで向かっているであろう切島くんを追いかけないといけないから、早速叩き潰させてもらう」

 

僕の時間稼ぎの言葉も全く聞くつもりがないのか速攻で地面に手をついた先生に向かって拾った小石を投げつける。その小石が先生が操ったコンクリートに埋まるか埋まらないかのタイミングで手を叩いた。

 

「ん!」

 

セメントス先生をコンクリートに埋めてから駆け出して蹴りを打ち込む。流石の先生でもコンクリートに埋まった状態なら多少動きが遅くなる‥‥

 

「と思ったんだけどね!」

 

蹴りが当たるよりも早くこちらに向かって伸びてきたコンクリートに対応するように手を叩く。そこでさっき先生がいた場所に飛ばされた小石と自分の位置を入れ替えた。

 

「コンクリートに僕を埋めて動きを取れなくしようとしたのはいい判断だ、だけど僕は触れてさえいれば自由に個性を発動できるんだよね」

「チート個性じゃないですか‥‥!」

 

その話をしながらも伸びてくるコンクリートの波から逃げようと後ろを向くと後ろからも波が伸びてきていた。原作で見た通り全方位から波が畳み掛けてきてるじゃん。

 

「こんの!」

 

前後左右をコンクリートの波で閉じられてしまったのでそのままドーム状になって閉じられてしまう前に上に向かって小石を投げ飛ばす。そこで個性を使って僕と小石の位置を入れ替えた。空に浮かび上がってからすぐさまにビルの中を見る。そこには当たり前だけどデスクなどが用意されていた。

 

すかさずに手を叩いてビルの中のデスクと自分の位置を入れ替える。ビルの中に逃げ込んだからといって休まずにビルの中を走り反対側の窓を開けて地面に向かって飛び降りた。瞬間、ビルがまるでアイスが溶けるように崩れていく。コンクリートでできた建物を当たり前のように溶かすってなに???

 

「ハンデつけるとかいうのならセメントス先生と森とかでやらせてほしかったよ!」

 

文句を言いながら走る。走るのやめたらその瞬間に餌食になっちゃうからね、コンクリートから逃げつつ、時折石を使って距離を稼いだりビルの中に避難しながら走るもなかなかコンクリートの波は諦めてくれない。というかセメントス先生は歩いてるだけなのになんでこんなに走ってる僕との差が広がらないんだよ!

 

そして走り続けるととうとうゴールゲートとは反対側の壁にまで辿り着いてしまう。ここから逃げるのは厳しいだろうなぁ‥‥ジリジリギリギリ壁に付かないくらいの場所で先生を待つ。すると歩いてきた先生が威圧感すら感じる笑顔で口を開いた。

 

「どういうつもりだい? 君ならもっとその個性を有効活用できるはずだ。僕が君のことを捕まえられるチャンスは5回あった。その5回全て見逃したけど‥‥見逃してなかったら君はそこでゲームオーバーだったよ?」

「やっぱり見逃してくれてたんですね。先生ってば優しいなぁ‥‥」

 

まぁ、そのタイミングで捕まえてきそうならそのタイミングで違う作戦に切り替えてただけなんだけど‥‥本命の作戦が今のところ上手くいっているし、よしとしよう。先生もそこを不気味だと思ったんだろうしね。

 

「‥‥切島くんは全く現れない上にゴールにまで到達もしていない。隙を伺っているのかな?」

「え゛、鋭次郎ゴールについてないんですか?」

「ゴールの前にコンクリートで壁を作っておいたからね。壊れたらすぐにわかる」

「やっぱり化け物個性じゃないですか!」

 

僕が悲鳴をあげると先生も流石にこれが演技だとは思わなかったらしく、作戦が不発に終わったと見るや僕のことを拘束しようとコンクリートを操作し始めた。ま、先生がこの演技を見破れるのなら僕が敵連合側の人間だってことも見破れるだろうけどね。

 

「それじゃあ、舞妓くんを捕獲して、切島くんを捕まえに行こうかな」

「もう勝った気でいるんです?」

 

手を叩く。そして僕とセメントス先生の操るコンクリートの中に突き刺さったままの標識と場所を入れ替えた。そして蹴りを繰り出す。

 

「そういう攻撃はもう見たよ」

「んぎッ!」

 

コンクリートに右足を取られたタイミングで左足を思いっきり振って靴を飛ばす。その靴はセメントス先生に向かって飛んでいくけど、それを先生は軽々と躱した。そこで手を叩く。

 

「また同じような個性の使い方‥‥君の個性は汎用性が売りだろう‥‥ッ!?」

「実はそうなんですよね!」

 

場所を入れ替えられたと思った先生がすかさずに僕が飛ばした靴の方に振り返りざまに裏拳を放つ。しかし、そこにいたのは僕ではなく、全身を硬化させて待機していた切島くんだった。無造作に振るった拳は硬くなった切島くんの皮膚に打ち付けられ、痛みを生む。

 

そしてもちろん。この程度で終わりではない。

 

「鋭次郎! 貫け!」

「ウォォォォァァァァァァ!!!!!」

 

切島くんの拳が背後からセメントス先生のことを貫く。流石のセメントス先生でも完全に不意を突かれた形の拳は効いたようでぐっと苦悶の表情を浮かべ、一瞬隙ができた。その隙を見逃さずにさらに切島くんの手が先生にカフスを取り付け地面に先生のことを押し倒すという追い討ちをかける。

 

「‥‥‥なるほど、最初からこうすることが目的だったのか」

「回りくどかったけど、正直、これしか思いつかなかったんですよね」

 

そう、今回の試験で一番警戒されていたのは十中八九僕である。そんなことわかりきっていたし、切島くんもそれには反対意見はなかった。セメントス先生の個性に対して切島くんから打てる手がほとんどないからだ。だから今回の試験は脱出に焦点を当てて動くのが恐らく前提として組まれている試験だった。

 

だけど、さっき先生が言った通り、コンクリートをゲート前に敷かれていたりすると結局そこに追いつかれれば不利な状況に追い込まれてしまう。なら、時間稼ぎは必須。

 

とはいえどっちの方が時間稼ぎに向いているのかと問われれば切島くんよりも明らかに僕だろう。そのことは先生も理解していたから切島くんがゲートの前の壁をぶち抜く様子がないことに作戦を感じつつも僕を追いかけることしかできなかったのだ。見えている僕を完全に放置して見逃すことのほうが怖いだろうからね。どこから不意打ちされるかわかんないし。

 

だから、僕を追いかけることしかできなかった先生と一方的な追いかけっこをして、常に僕と他のものの位置を入れ替えるということを脳にまで刷り込んだのだ。そうすることで先生は視界内にいない切島くんとの入れ替えを思いつかないと思ったからね。

 

「この試験、多分僕たちは逃げ切ることよりもカフスをつけることがクリア条件だった。逃げるだけなら僕がいるから余裕でクリアできるだろうから。僕が見られていたのは相性の悪い個性に対してどう立ち回るか、鋭次郎が見られていたのは‥‥まぁ、持久戦かな?」

 

コンクリートから解放された右足を地面につけてケンケンで靴を取りに行く。靴を足にはめてからトントンと足の爪先で地面を叩いてからセメントス先生に目を向けた。

 

「だから敢えて先生を誘導するように動きました。まぁ、先生を倒す方法はあと何種類か思いつきましたが‥‥鋭次郎の協力がないとどれもできていないと思います」

「‥‥さっき君が言った課題なら切島くんの課題は解決してないと思うけど?」

「得意を押し付けるのが戦闘の重要なところでしょ? 鋭次郎の個性と不意打ちへの適性を引き出した‥‥長期戦や消耗戦が苦手だからと短期戦に持ち込んだのはいい作戦だと思いますが?」

 

僕の言葉に先生がクスリと笑う。

 

「‥‥うん、よく出来ました。合格だね」

 

セメントス先生のそんな言葉だけが空気を揺らした。どうやら合格らしい。

 

「俺も合格でいいんすか!?」

「しっかりと作戦を成功させたのは君の忍耐力あってのことだろう? それに、最後の打撃からのカフスを押し付けるまでの流れは君の実力だしね」

「マジすか! あざす!」

 

うんうん、切島くんを有効活用できて嬉しい限りである。僕たちの合格を知らせるファンファーレを聴きながら僕はゆっくりと腰を下ろした。

 

 

  × × ×

 

 

「林間合宿だぁ〜!!!」

「花火! カレー! 肝試しー!」

「もう合宿行けるつもりじゃん」

「だって全員試験合格だぜ!? ここから赤点出て‥‥なんてことないって!」

「その自信はどこからきてんの‥‥?」

 

わいわいと騒ぐみんなを見ながら体を伸ばす。うーん‥‥なんか当たり前のようにみんな合格しちゃったな。切島くんは僕がいたから合格するのは当たり前なんだけど、もう一組のクリアできなかった組であるところの芦戸ちゃん上鳴くんペアもなんかクリアしてるんだよね‥‥え? なんでクリアしたの? 頭使う系だったよね? 僕が勉強教えたとはいえそう簡単に頭ってよくなるものだっけ? 元が天才だからなんとかなったのかな‥‥? かぁ〜‥‥これだから地頭のいいやつは。

 

「予鈴が鳴ったら席につけ」

 

予鈴が鳴ると相澤先生が教室に入ってくる。それとほとんど同時にみんなが席についた。日にちが過ぎていくにつれてみんなの相澤先生の機嫌をとる術が洗練されていくな‥‥? 最早達人の域まである。

 

「早速試験の結果について話していくんだが‥‥筆記の赤点はゼロ。ましてやこのクラスの平均点は進学科に勝るとも劣らない成績だった。舞妓、お前また何かしたか?」

「みんなの頑張りですね」

 

勉強は教えたけどそれだけで進学科の勉強を軸に生きている奴らの成績に追いつけるはずないだろ、みんなが頑張ったからだよ、と褒めておき、それよりも大事なことがあるんじゃないの? と先生に視線を向けた。すると先生もすぐに僕ではなくてみんなに視線を戻す。

 

「そして‥‥」

 

みんなの喉がゴクリと鳴る。珍しく勿体ぶるように相澤先生が口を開いた。

 

「実技の赤点もゼロだ」

「よっしゃァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

クラスを巻き込んでの雄叫びが上がった。まぁ、テンションは上がるよね。わかるわかる。

 

しかし‥‥瀬呂くんも合格か、聞いてた話じゃ原作とあんまり変わらないような結末を辿ったんじゃないの?

 

「しかし、瀬呂、それから麗日と青山は赤点ギリギリだぞ。赤点が40点だとすると麗日45点、青山43点、瀬呂40点だ」

「ギリギリじゃないすか!」

 

ゲーン! という顔で瀬呂くんが頭を抱える。まぁ、気持ちはわかる。でもなんで少しとはいえ瀬呂くんの点数が上がったんだ?

 

「ミッドナイトの個性を理解して口と鼻を塞ぐようにテープを貼った判断は良かった、ただ、その後の動きがおざなり過ぎる。一度距離をとって態勢を立て直すなりなんなり方法があっただろ」

 

あ、一応は峰田くんを助けたり咄嗟に個性について最適な対応をしたりはしたのね‥‥その後峰田くんを庇って寝ちゃってからは原作通りと‥‥なるほど、まぁ、その辺りの対応で部分点をもぎ取ったって形なんだろうね。少し優しい対応な気がするな‥‥

 

「一週間の強化合宿だ、大荷物になるから前々から準備しておけよ」

 

相澤先生がそうとだけ言って教室を出ていく。ホームルームってなんだかんだ言って短いよね‥‥いや、不満とかないんだけどさ。

 

「色々いるもんあるなぁ‥‥水着とかねぇわ」

「あ〜‥‥服とか新調しよっかな。折角みんなとお泊まりなわけだし」

「‥‥‥!」

 

上鳴くんの発言に付け加えるように僕が言葉を発するとピリッとした空気が教室内に漂った。主に男子である。

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥緑谷、舞妓とお泊まりしたことは?」

「あるよ?」

「‥‥なんか妙な動きはしなかったか?」

「ひどくない???」

 

僕が何をしたっていうのさ、なんて言いながらそんなことを言う上鳴くんにビシッと指を差す。すると上鳴くんではなく切島くんが何言ってんだコイツみたいな顔で僕の方に目を向けてきた。

 

「お前もう色々諦めて人の性癖を壊さないように生きた方がいいって‥‥」

「僕が何したって言うんだ!」

「お前は! 自分の可愛さを自覚しろ! ほとんど女子なんだよ!」

「はぁ!? 言ってくれたなこの野郎戦争だ!!」

 

僕がガタンと立ち上がって切島くんに詰め寄ろうとすると何かを思い出したように轟くんが口を開いた。

 

「舞妓、人の布団にまた入るなよ」

「‥‥‥また?」

「ゆずくん正座。轟くんその話詳しく聞かせてもらえるかな?」

 

‥‥‥いやね? 悪いとは思ってるんだよ? 確かに轟くんのお家にお泊まりした時に轟くんが布団めっちゃ離すから轟くんの布団にお邪魔するって悪戯したけどさ、今言わなくてもよくない?

 

「いや、舞妓が家に泊まった時に俺の布団に潜り込んできたって話だ」

「ゆずくん? そんなことしてたの?」

「寝ぼけてたんだよ! 僕は悪くない!」

「そんなの実質‥‥」

 

僕が苦し紛れの抵抗をすると出久くんからまたやってる‥‥みたいな目を向けられた。それが親友に向ける目か? あと轟くんに向ける視線が完全に被害者に向けるものなんだけど‥‥僕が何したって言うんだ?

 

あと、おいコラ峰田くん。実質なんだよ言ってみろ。ここでそんなこと言ったら君のこと今からボッコボコに殴るけどね!

 

なんてそんなことを正座しながら考えていると頭の上にずしりと柔らかいものが乗っかった。この感触‥‥! いつも背中で感じてるやつか‥‥!? おっもいんだけど!

 

「ねぇ、明日休みだしテスト合格祝いってことも兼ねてさ! A組みんなで買い物行かない!?」

「透ちゃん。僕今正座してるの見えない? 足攣るからぜひ体重かけないで欲しい。あと、何がとは言わないけどその‥‥」

「乗せてるんだよ?」

「流石にそれはダメでしょ!?」

 

男として見られてなさ過ぎない? 頭の上におっぱい乗せても僕相手なら大丈夫だと思ってるわけ? あり得なくない? この女わからせてやろうか‥‥

 

「でも買い物はありだな! そういうの何気に初じゃね?」

「爆豪も来いよ!」

「行くかよそんなかったりぃの」

「轟くんは?」

「悪りぃ、休日は見舞いがある」

 

なんだか順調に決まっていってるみたいで何よりだね。ところで葉隠ちゃんはいつまで乗せてるの? そろそろ足が痺れてきたんだけど‥‥ねぇ? あ、出久くん僕に正座させたこと忘れてるな? ちょっと? 僕いつまでこのままいればいいの? もしもーし?

 

 

  × × ×

 

 

「ご足労感謝するぜ? まず、よくここを探し当てたな。おめでとう」

 

場所は暗く、ジメジメしたバーの一室。そのドアを潜った2人に対して、死柄木弔は拍手を以て迎え入れた。

 

「‥‥随分な歓迎ぶりだな」

「仲間が増えるのはいいことだ、違うか?」

「そういうこと気にしてねぇタイプだと思ってた」

「ひでぇな‥‥俺は友達は大事にするタイプだぜ?」

 

人は見かけによらないだろ? なんて言いながらグラスに注がれた酒を呷る。そして再度その瞳を2人の人物に向けた。

 

「義燗、簡単な紹介を頼む」

 

彼がそう促すと義燗と呼ばれた男が口を開いた。前歯が一本ない口をニヤリとニヤつかせながら嬉しそうに商品を紹介する商人のように話し始める。

 

「こちらの女子高生。顔も名前もメディアが守ってくれちゃいるが、連続失血死事件の容疑者として追われてる」

「トガです! トガヒミコ! 生きにくいです! 生きやすい世の中になってほしいものです! だから、全部壊しにきました! 仲間に入れてよ弔くん!」

「いいねぇ、破綻者じゃねぇか。大歓迎だ、ようこそ、トガ」

 

トガの言葉を聞いてなお、死柄木は笑みを止めない。どこか不気味なほど上機嫌な彼は続いてトガの横に立っている男に目を向けた。そちらは義燗からの紹介をする間もなく自身の口を開く。

 

「今は荼毘で通してる。‥‥俺の目的のためにこの場所を利用したい」

「仲良しごっこをする気はないってか? いいね、我が強い奴は面白い。存分に利用しろよ。その分こっちの仕事も手伝ってもらうけどな」

 

ヘラヘラと笑いながらも彼は椅子から離れて立ち上がる。そしてトントンと二人の肩を叩いた。

 

「これから俺たちは仲間なんだ、助け合っていこうぜ?」

「弔くん雰囲気全然違うね! もっと怖い人かと思ってた!」

 

トガの言葉は正しい。原作での死柄木は二人のことを殺そうとして黒霧に止められている。

 

しかし、今の死柄木は違う。怒るようなことなんて何もない。ステインを踏み台にして知名度を上げたこともそうだが、何よりも彼の精神的な支柱となっているのは舞妓譲葉という友人の存在だろう。彼にとって命よりも大事なものであるといえるその関係は、彼の精神面を大きく成長させた。

 

「義燗。いい仕事をしてくれたな、黒霧から仲介料を貰ってくれ。また次回も頼む」

「はいよ。死柄木さんもまた何か案件があればうちを頼ってくれ。折角のお得意様だ、安くしとくぜ?」

「助かるよ。奢るぜ? 飲んでいくか?」

「奢るも何も元からお代はいただきませんよ」

 

ヘラヘラと笑いながら親指を立ててバーカウンターに向けるとそのカウンターに立つ黒霧からそんな返事が届いた。その返事に死柄木はジョークじゃねぇかなんて笑う。原作を知っている人間から見れば精神の成長した彼の姿と重なるだろう。

 

苛立ちはある。怒りもある。それを飲み込み、ボスとして立つ矜持を持っている。まさに頭に相応しい成長を、失敗からではなく友から学んだ。

 

それは、ヒーローにとっては最悪の成長であり、ヴィランにとっては道標としての成長であった。

 

「おい荼毘、お前飲める口か?」

「‥‥‥少しなら」

「なら付き合えよ。トガはまだ未成年だろ? ジュースなら大抵揃ってるから黒霧に出してもらえ」

「ご馳走になります!」

 

荼毘と肩を組みバーカウンターに腰掛け、トガにジュースを勧める姿はまるで気心の知れた友人のようで、懐に入る方法をよく心得ている詐欺師のようだった。そののらりくらりとした人心掌握術はどこかの誰かを思い出さずにはいられない。

 

「今日からここがお前らの敵連合だ。仲良くしよーぜ?」

 

悪意は笑う。その力を蓄え、順当に膨らみながら、光を嘲笑っている。

 

そして、悪意は狙っている。その希望を叩き折るその瞬間を、たった一つの瞬間を。

 

「面白い作戦があるんだ、乗ってくれよ」

 

悪意は、いつだってそこに蠢いている。

 

牙を研ぎ、崩壊を、その破壊の衝動を、ギリギリまで抑えながら‥‥‥

 

 





曇らせはないです!(事実)
そういえばTwitterの方でたくさんの方のフォローありがとうございます。あっちで投稿した、今日はないとか呟いてみたりしてるので良かったらぜひ覗いてみてください。
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