個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア! 作:波間こうど
★ついてる? そういうことですよ。
皆さん今回文字数が少なくてごめんなさい‥‥いつもよりもボリューム足りないかも‥‥だけどその分致死量の可愛さをくれてやります。
それではどうぞ!
「県内最多店舗数を誇るナウでヤングな最先端! 木椰区ショッピングモール!」
「ナウでヤングって表現古くない? 三奈ちゃんいつの時代の人?」
結局、僕たちはかっちゃんと轟くんを除いた18人揃ってショッピングモールにまで来ていた。まぁ、原作通りの展開である。わいわいとみんなが仲良く話しているのを見ながら周りを見渡すと種類豊富なお店の数々がズラリと並んでいて圧巻である。
‥‥‥なんかいいな‥‥こう、みんなで買い物とか、めっちゃ青春してる感じがある。やっぱりこういうのは楽しんでなんぼだよね! その分が後の曇らせに響いてくるからさ!
「目的バラけてっし! 時間決めて自由行動すっか!」
切島くんがそう言い出したのを聞いてみんながまばらに動き出す。さて、僕も買いたいものがあるので動くとするか。
あと、出久くんと離れなくちゃいけないんだよね。
「ユズは今日何が買いたいの?」
「ん? ん〜‥‥パジャマと水着と‥‥あ、おっきいバッグ欲しい。キャリーバッグとか」
「まぁ、なら一緒に行動しませんか? 私たちもキャリーバッグを見に行くんです」
「百ちゃんが買うようなキャリーバッグある?」
「あ、私もバッグ欲しい!」
声をかけてくれた耳郎ちゃんとヤオモモちゃんの提案に乗らせてもらってそのままキャリーバッグを買いに行くことにする。僕が乗ったあたりで葉隠ちゃんも乗ってきたな‥‥ここ最近でよく見る組み合わせだな?
うちにもあるんだけど、父親のだからね。せっかくならオシャレしたいって若者心である。あと水着とパジャマはあるけど欲しい。服とかなんぼあっても困らんからね。
さて、この後の展開はどうなるか未知数だ。原作よりも大幅に変わった今の時空では果たしてどんな風に話が捻じ曲がるのだろうか、その辺りがすごく気になるね。
× × ×
「‥‥‥どう、かな?」
「ねぇ! こっちはどう!?」
「こういうのはあまり得意ではないのですが‥‥」
さて、やぁ、みんな。僕だよ。ところでいきなりの質問になって申し訳ないな、とは思うんだけどみんなはハーレムものとか好きだった? 僕は結構好きだったんだよね。それは今世でも同じで、やっぱり流行るものは流行る理由があるし、人気になる理由があると思ってるんだ。ただまぁ、贅沢な話をさせて貰うのならさっき数十分前に買いたいものに水着を挙げたバカを引っ叩いてやりたい。役得だけど大変な思いなんだよって。
今。僕は、耳郎ちゃんと葉隠ちゃんとヤオモモちゃんと水着売り場に来ていた。そう、水着売り場である。意味わかる? この四人でいて水着売り場に来ているのだ。大事なことなので再三の確認をさせてもらってます。
いやね? 男性用の水着を見に行ったらね? 店員さんにね? 「女性用の水着はこちらになりますよ」って言われたんだよね。僕が男だということを説明しようとしてもその前にあれよあれよと女性用の水着売り場にまでドナドナされてしまったのだ。
そこで可愛らしいフリルの水着を見つけて「透ちゃんに似合いそうだね」なんて言ってしまったが運の尽き、そのまま三人にこれはどう? あれはどう? 似合う? なんて聞かれ、試着室と水着売り場を往復する三人の水着をひたすら採点していく機械となってしまったのである。
うーん、女の子と買い物にくるとこうなっちゃうんだよね‥‥母親とかと来ると毎回こう。僕と父親が振り回されて結局買いたいものを母親だけが選ぶことになるのである。大体は父親の「こっちかな」が選択されるんだけども、一応と言った体で僕の意見も参考程度に聞かれるのだ。ちなみに父親が選んだ方しか選ばれないのは母親と父親がいまだに仲良しだからである。ぺっ、イチャイチャしやがって‥‥でも二人がイチャイチャしてくれないと僕が生まれなかったわけだからそこは感謝である。
話が逸れたので戻すと、三人が水着を着て見せてくれるのだが、正直どれも抜群に似合っている、としかいえない。だってこの三人漫画のヒロインレベルの美貌だよ? 一人見えてないけど‥‥でも僕レベルになると相手の顔とか体を服と重ねられるんだよね。だから葉隠ちゃんの水着もバッチリ似合ってるかどうかで判定してます。これ最早僕しか出来ない離れ技でしょ。
「これはどうかな!?」
「ん〜‥‥もうちょっと明るい色の方が透ちゃんには合うんじゃない? さっきの赤のワンピース寄りのやつがいいと思う」
「ユズ、これどうかな」
「むむ‥‥響香ちゃんに似合ってはいる‥‥ただ、真っ黒過ぎるかな? 響香ちゃんにもっと似合うのはこっちかなって思うんだけどどう?」
「舞妓さん‥‥これは少し恥ずかしいです‥‥」
「百ちゃんもっといつも際どい服着てない‥‥? コスチュームは別? そっか‥‥でも百ちゃんはスタイルがいいからビキニタイプのがいいと思うなぁ‥‥恥ずかしいなら‥‥あ、パレオ巻くとかどう?」
このやりとりをかれこれ三十分近く続けております。そろそろ喉が渇いて参りました。いやね? 眼福だし、正直たくさんみんなの可愛い水着姿を見られるのは役得でもあるんだよ? たださ、そろそろ好きでもない男の子の意見を求め続け始めた三人に申し訳ない気持ちが出てきてるんだよね、三割くらい。後の七割は僕の買い物今日終わるかな? である。
今日の買い物はこの後どうせお釈迦になるんだよなぁ‥‥
「ねぇ! ゆずちゃんこっちは!? さっきのより可愛い?」
「お、それ可愛いじゃん! 透ちゃんの天真爛漫さが出てるし! 透明の透ちゃんをさらに目立たせる完璧な色合い! ‥‥これが天使の再臨?」
「‥‥‥‥‥えへ」
「むっ」
「まぁ‥‥」
さて、僕としてはスタコラ逃げてもいいんだけど役得な場面を見せてもらっている身としてみんなの買い物のサポート、ともすれば水着ヴィジュアル判定機となっている今の状況すらも完璧にこなしてみせないとなと思っているわけである。男の子の性だね。性欲ではないので悪しからず。いや、そりゃちょっとはあるけども。ここに峰田くんがいなくてよかったよね。
「舞妓さん! これはどうでしょう!」
「ふむ‥‥パレオを巻くことで淑女さがグッと増したな‥‥めっちゃいいと思う! どうせそんなにセクシーなの着てパレオ巻いてってしてるならギャップ狙わない? 麦わら帽子とかどう? ‥‥最高じゃん! これが現世に降り立った女神‥‥」
「‥‥‥ふふ、お上手ですわね?」
「むむっ」
大体、男の僕を女子水着試着コーナー前で待機させるのもおかしな話だと思わない? 通報されてないのが不思議なくらいなんだよね。いや、僕は可愛いけども、それはそれじゃん? 流石に男の子ってわかるビジュアルしてると思うんだけど‥‥? ‥‥いや、流石に女子水着のコーナーに誘導された時点で自覚してるけど。僕が美少女にしか見えないってことはさ。
「ユズ! これは?」
「‥‥‥なるほど、僕がさっき渡した水着に自分なりにアレンジしたんだ。さっきよりも可愛らしさが前に出てるんだけどどこか魅惑なセクシーさがある‥‥満点だ‥‥これは天が作り上げた聖女‥‥」
「何言ってんの!」
「あぶな!」
照れ隠しか‥‥? イヤホンジャック振り回すのやめてよね! というかこれで三人とも水着決まった? どれにするか決めた? あ、みんな最後のにするんだ? 可愛いと思うけど‥‥え? 僕の意見丸呑みでいいの? 本当に? それはそれで怖いんだけど、ねぇ?
「それで? ユズは選ばないの?」
「今の今まで僕のことを拘束してたのによく言うよ! 全く‥‥ん〜、パンツ系がいいかな」
「‥‥‥あ〜」
「そういえば舞妓さんは男性だからこっちのコーナーではないんですものね‥‥」
「ゆずちゃん完全に上も着る前提で話を進めてたよ‥‥」
「しまいには泣くからいつでも泣いていいって言ってね」
失礼極まりないことを口にする三人に対してプンプンと怒るふりをして男性用の水着売り場へと足を運んだ。
‥‥僕がレディースのものを使う理由がここに詰まってるな。種類が少ないんだよね。なんかこうしておけばいいだろ、みたいな安っぽさが透けて見えるというか‥‥黒、紺、赤! みたいな‥‥小学生はドラゴン描かれた絵の具買うよね? みたいな‥‥なんていうの? そういうなんか無骨がかっこいいよね? こういうのが好きだよね? みたいなのあるじゃん? 好きだけど違うんだよなぁ‥‥って思うじゃん? それなんだよね‥‥レディースサイズ合うし、女子ものの方がレパートリー多くて可愛いんだよなぁ‥‥
ただ、今回買いに来たのが服じゃなくて水着ってところが問題なんだよね。僕が女の子の水着なんて履いたらはみ出るか浮き出る。ナニがとは言わないけども。そこは大問題だ。
いや、水着なんていっそのこといらないか? どうせ水着を使うイベントの前には全部有耶無耶になるし‥‥今回は全部ひっくり返すから着てる暇なんてないよね。
「なんか男の子のコーナーにいるとちょっと居心地悪いね!」
「わかる。ちょっと居づらいよね」
「そうですか? 私は気になりませんが」
「君たちさっき僕のことを女子着替えコーナー前に置き去りにしておいてよく言えるね?」
適当に長ズボン系の水着を見繕いながら文句を言う。流石に水辺でも大丈夫な義足を履いてるからって見せびらかしたらみんなが曇って訓練にならなくなるからね。誰がって? 僕がだけど。みんなが曇ってるのに集中できるわけないだろ。
試着しようとすると僕があまりにも女子すぎて店員さんにパーカーを支給されました。はは、そろそろ泣けてきたね。
「ゆずちゃん可愛い!」
「それはありがたく受け取っていいやつ?」
「ユズ、写真撮るからこっち来て」
「売り物って写真撮っていいの? あ、買うからいい? すいません‥‥ありがとうございます‥‥」
店員さんがカメラを持ってくれて僕たち四人をカメラに映してくれた。うーん、両手に花のはずなんだけど片方は柔らかさを感じないのはなぜかしら‥‥当たってない‥‥!? 馬鹿な! この至近距離で‥‥!?
そんな馬鹿なことを考えていると店員さんから「皆さまとても可愛らしいですよ、これで海辺の殿方もイチコロです!」と応援されて無事に僕が死にました。海辺の女の子をイチコロにさせてくれ‥‥なんで僕は男をイチコロにしなくちゃいけないんだ‥‥!
「ま、まぁ! ユズなら女の子も魅了できるって!」
「そうそう! 男の子だけじゃないよ!」
「男の方を魅了することは否定しませんのね‥‥」
みんなが僕のことを慰めてくる(これは慰められてるのか?)のを聞きながらバッグコーナーに移動してみんなでキャリーバッグを探す。というかキャリーバッグをみんなで探して買うかぁ〜‥‥ってなる時点でそこそこのお金持ちなのが確定するんだよね。普通の家だとキャリーバッグなんてポンと買わないから。
四人ともそれぞれバッグを選んだぐらいだろうか、そこで全員の携帯が鳴る。携帯を開いてみるとそこには『デクくん死柄木と遭遇』という簡潔にまとめられたメッセージがお茶子ちゃんから届いていた。
どうやら弔くん来てたらしいな‥‥荷物は後で取りに来ると告げてからみんなで急いで出久くんたちの元へと走り出す。さて、どんな話があったのか僕に教えてよ、出久くん。
僕はその話が聞きたいんだ。
ちなみに話を聞く前に警察に出久くんがドナドナされてしまったので話は聞けませんでした。急いでかっこよく駆けつけたのになんで僕に話す前に警察に話すんだ‥‥こうなったらもう解散らしいし、出久くんママにひっついて警察まで迎えに行ってやる‥‥! 事情聴取終わりホヤホヤの話を僕に聞かせろ!!
× × ×
A組が揃って買い物に来てから、たった十数分しか経っていないのだが、緑谷はこの広いショッピングモールで一人になってしまっていた。理由はみんなが個別に買いたいものを買いに行き、最後まで残った麗日が虫除けを買いに走り去って行ったからである。みんなで来たのに僕一人‥‥、とポツリと呟いた緑谷の背中にはどこか哀愁すら漂っている気がした。
「おー! すげぇー! 雄英の人じゃんサインくれよ!」
「へ!?」
そんな緑谷に声がかかる。雄英高校体育祭といえば最早日本を挙げてのお祭りだ、忘れずに覚えている人も多くいるだろうし、その注目度は今なお冷めない。とはいえ、今までも声をかけられることこそ多かったが、こんな風に肩を組んでくる人間なんていなかった。自分よりも少し背が高い年上の男性の手がゆっくりと首元へと伸びる。
「爆豪がよかったんだが‥‥まぁ、お前でもいい。しかし、運命じみたもんを感じるよなぁ‥‥久しぶり」
「‥‥‥!?」
ゾワリ、とそんな擬音で表すのが正しいであろう感覚が体を襲った。
それは警鐘、本物の悪意が見せる純粋な、いっそのこと汚れがないと言っていいほどの、殺意。
「お前とは会うのがこれで三回目か、ユズにおんぶに抱っこのヒーローの卵‥‥」
純粋が故に、色濃く滲む、本物の殺意だ。
「お茶でもしよーぜ? 緑谷出久」
「死柄木弔‥‥!」
緑谷の言葉を聞いて死柄木は笑う。にこやかなその顔にはどこにもイラつきも怒りも見えやしない。しかし、それでも確かな殺意が緑谷の体を突き刺していた。その波動は首を通して体に伝わってくる。
「落ち着いて旧知の友人のように振る舞うべきだ、今すぐにユズと同じ首にされたくないだろ?」
「‥‥‥! こんな人混みでやったらすぐにヒーローが来て捕まるぞ‥‥!」
「捕まらないさ。もし捕まるとしてもその前に5、60人は道連れにできるよ。それにパニックに乗じて逃げるなんて造作もないね。お前みたいなヒーローを殺した後に動けるんだからさ」
だから話をしよーぜ。と死柄木は笑いかける。ここでやり合うつもりはない。たまたま見つけたから話がしたいだけだというのだ。
「ツレが買い物してる間暇でさ。少しだけ昔話をして欲しいんだよ」
「‥‥‥昔話?」
「そうそう。昔話。お前、ユズと幼馴染なんだろ? あんなに強いヒーローの過去について知りたいわけ」
「‥‥‥そんなこと知ってなんになる」
「邪険に扱うなよ。別に悪くしようってわけじゃない。ただ気になるだけさ」
近くのベンチにまったりと座りながら、まるで世間話でもしているように話す二人の様子は家族連れでごった返す休日のショッピングモールをして違和感がない。この状況下においても死柄木を睨む緑谷に死柄木はため息をついた。
「俺はユズにヴィランの素質があると思ってる」
「そんなわけがないだろ‥‥ッ!」
「おいおい落ち着けよ。死にたいのか?」
手で首を締め付ける。キュッと、まるで動物でも殺そうとするように、まるでそれが当たり前のことであるかのように絞めつけようとするその手に命を握られた緑谷は怯んでしまう。
「俺がそう思うってだけだ。別に言わなくてもいいぜ? そのときはここを地獄にしてからヒーロー到着前に逃げてやるよ。お前とユズの関係を聞けば大人しく帰るさ」
死柄木は簡単だろ? と言うと首を絞める手を緩める、それを合図に口を閉じた。無言のうちに話せ、と催促してくるようだ。
「‥‥僕たちは、同じ保育園に通ってた。そこからの付き合いだ。昔からなんでもできるゆずくんと何にもできない僕は比較されてきた」
「でも、僕もゆずくんも無個性だってわかってからは何もできなかった僕と同じ位置にまでなんでもできたゆずくんが落ちてきた。そこからは今まで以上に一緒に遊んだり、行動を共にするようになった」
「それからお互いに個性が遅れて発現したからヒーローを目指した。二人で憧れたオールマイトのような最高のヒーローになるために」
事細かに話したりせず、あらましだけをサラッと話す。それは緑谷にとって自分の人生の中でも最も重要な記憶。自身の記憶に色濃く刻まれる身近なヒーローとの思い出をこんな異常な状況であっても楽しそうに語る。
それを聞いた、死柄木の顔が曇っていくのにも気付かずに。
「そうか‥‥」
話し切った辺りで違和感を覚える。ゾッとする。体が硬直する。首を絞められていない、添えられているだけの今の状況においても悪寒が体を支配し、体が痙攣する。
「そうか、お前が鬱陶しいのも、ユズがヒーローなんてものに憧れたのも‥‥全部、オールマイトか」
それは心の奥底から湧き上がってくるような、そんな恐怖だった。首を絞められているそんなことすらも忘れてしまうほどの、どうしようもない恐怖。
「デクくん?」
「‥‥ツレがいたのか、ごめんごめん」
恐怖と息苦しさに喘いでいると、二人の前に麗日が現れる。「やっぱり出久くんと一緒に買い物しよ。いや、全然ちゃうし、身近なヒーローやからすごいなって思ってるだけで全然恋愛感情とかやないし、全然そんなことないし‥‥」というちょっとした乙女チックな感情がどこかにいってしまうほどの衝撃が彼女を襲う。
「弔くん〜! 買い物終わりました〜! 帰りましょ〜!」
「トガ、注目されるからやめろ」
「荼毘くんはクールですね。これくらいじゃバレたりしないのです」
麗日の後ろを二人の若い男女が通る。それを目に止めた死柄木は立ち上がるとスッと麗日の横を通り過ぎた。
「じゃあ行くわ。‥‥追ってきたらどうなるかわかるよな?」
「ゲホッ! ゲホッ! ‥‥待て! 死柄木! ‥‥『AFO』の目的はなんだ‥‥!」
「‥‥知らないな。それより気をつけておけよ? 次会うときは本当に殺すから」
人混みに紛れていく三人の人影を見ながら、息を整える緑谷。その後ろ姿が不意に彼の親友と重なった。飄々として、どこか掴めない、彼と。
その意味を彼は最悪の形で知ることになるのだが、それはまだ先の話である。
× × ×
「え!? B組補習いるの? まぁ、試験難しかったもんな‥‥そういうこともあるって‥‥なぁ? 物間」
「‥‥‥‥」
「お前は対等でいたいのかも知れないけど、お前以外のB組はともかくお前は僕たちの誰にも勝ってないよ」
夏休みに入り、林間合宿が開始するその日。僕たちはバスに乗り込むために集まっていた。行く場所が変わったということは終業式に伝えられているので、そのことについてはみんな周知である。
そこで拳藤ちゃんに話を聞いて上から目線で叩き潰す。気持ちい〜! しかも物間くんがすっごい嫌そうな顔してる! そうだよね! B組の方が優れてるって言いたいのに! そのB組の足を引っ張ってるのが自分だもんね! 可哀想だね! でもこれ以上言うのはやめておくね!
同じ土俵だと思われたくないし!
「譲葉、その程度にしてあげてくれない? あんまりいじめないであげてよ」
「え? 一佳ちゃんは僕がいじめをする人間だと思ってるの? 心外なんだけど‥‥」
物間くんの後ろに立った拳藤ちゃんがそんな風に宥めてくるけど僕がいじめなんてするわけないだろ? いじめを行ってるのはかっちゃんだけだよ?
「僕は売られた喧嘩買ってるだけ。物間はまだ謝ってもないし」
「ごめんって! あたしからも言っとくから!」
「‥‥‥一佳ちゃんが言うなら見逃してやるか」
「A組のみんなもほんとごめんね!」
僕がそう言って腕組みをすると後ろからチョップが飛んできた。ちょっ、痛いんだけど? なに? 何事?
「ゆずちゃん? すごい仲良いみたいだね? なんで?」
「透ちゃん‥‥? なんでって‥‥いやまぁ、友達だし‥‥」
「この前連絡先交換してたもんね? でもそんなに時間経ってなくない? そんなに仲良くなれる時間あった?」
「響香ちゃんなんか怒ってる?」
「別に」
「明らかに怒ってる時の反応じゃん!」
「うっさい!」
イヤホンジャックを避けながらバスに逃げ込む。なに? なにが君たちをそこまで怒らせてるの‥‥?
「ゆずくん大変だね‥‥」
「なんでだろうね‥‥あ、出久くん‥‥僕窓際の席がいいんだけどいい?」
「乗り物酔いするもんね。はい、こっち」
「ありがとう〜‥‥」
出久くんに案内されて席に座る。窓から見える景色はまだ都会だけど幾分かマシになるだろう。長時間バスとかキツいよね。絶対に吐きそうになっちゃう。
「へぇ〜! 舞妓乗り物酔いするんだ!」
「バスとかがキツいんだよね〜‥‥電車とか新幹線とかはそんなこともないんだけど‥‥短時間ならともかく長時間乗るのはキツイなぁ」
「舞妓弱点とかないと思ってた!」
「三奈ちゃんが僕のことをどう思ってるのかは後で審議するとして‥‥長時間は酔うでしょ、むしろなんで酔わないの?」
「乗り物酔いは三半規管に影響があると聞いたことがあるぞ!」
「なら僕三半規管弱いのかな‥‥」
「でもUSJ行くときのバスはあんまり問題なくなかったか?」
「短い距離はいけるんだよね‥‥」
「ゆずくんしんどかったら全然肩とか貸すから寝てくれていいからね」
「いつもありがとう〜‥‥」
「‥‥‥肩を貸すのが」
「いつも‥‥‥?」
みんながバスに乗り込んで来て僕のもう既に弱った姿を物珍しそうに見て、何やらわいわいと盛り上がっているので適当に届いた言葉に返事しながら頭を出久くんの肩に乗せる。もう既にメンタル的にしんどいところあるよね。
みんながバスに乗り込んだのを確認するとバスが動き出す。その後しばらくしてから相澤先生がチラリと後ろを見ながら口を開いた。
「一時間後に一度止まるが、そのあとはしばらく‥‥」
そしてみんなのテンションの上がり具合を見て絶句し、その先の言葉を口にするのをやめる。ウケるぜ‥‥言いたいことははっきり言いなさいよ‥‥
そうして一時間。バスは進んでいく。だんだんと景色も都会の喧騒を離れて静かで落ち着いた山道へと続いていった。もうじき、林間合宿が始まる。
「うっ‥‥出久くん、ちょっとごめん‥‥」
「よしよし、無理しなくていいからね‥‥」
「緑谷がお母さんみたいになってる‥‥」
「弱ってるゆずちゃん新鮮だ‥‥」
‥‥‥もうすぐ林間合宿始まるんだぞ? なんでお前らそんなに僕の弱ってるところ観察してる暇あるの? ちょっと? なんで? こっちは吐きそうなんだよ! やめて! おい、面白いもの見たみたいに頬ツンツンしてるやつ誰だよ! 余裕ないんだよ! ちょっと! ちょっ、ほんとにやめて! 勘弁して!!
この地獄は僕がバスから降りるまでの一時間の間続いた。
んこにゃ様毎回ありがとうございます‥‥これ見て目が死なないやつはいない。皆さんも感想たくさん聞かせてあげてください‥‥
皆さんの感想や評価で喜んで、助かる命はここに二つほどありますので、いつも助けられてます。ありがとうございます。
その分のお返しとしてのこの話でした! ハッピーバレンタイン!
あ、バレンタインといえばバレンタインデーのお話をTwitterにアップしましたので良ければぜひ!
映画編を入れるかどうかのアンケートをさせてください!
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アンケート結果が多い方で!