個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア!   作:波間こうど

29 / 83
★林間合宿から神野区へ暗躍する影。

 

「みんななんでそんなに顔色悪いの? 寝れなかった?」

「‥‥‥いや、別に‥‥」

「響香ちゃん顔死んでるよ‥‥? 平気‥‥?」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥うん、平気」

 

さて、A組男子を曇らせたその次の日。つまり合宿三日目である。今日は敵連合としてしっかりお仕事をしなくちゃいけないので適度に手を抜きながら午前中を過ごす。

 

‥‥‥こんなに雑な訓練で黒閃のコツ掴み始めてるのもしかして僕ヤバいやつなのかな‥‥あれって狙って出せる術師いないんじゃないの? もう既に十発中一発くらいは出せるぞ?

 

「ちなみに今晩はクラス対抗肝試し大会を開催するからね!」

「‥‥‥怖いのやだなぁ‥‥」

「ありゃ? 響香ちゃん怖いの苦手なんだ?」

「え‥‥‥‥うん」

「そっか! なら、僕が守ってあげるね!」

「‥‥‥‥うん、ありがと」

 

ピクシーボブが嬉しそうにそんな提案をしてくれる。それを聞きながらまぁ、だろうね。なんて考えていると耳郎ちゃんが弱音を吐くのが聞こえたのでそれに声をかけてみた。

 

なんだか女子のみんながよそよそしいのでアプローチをかけてみてるんだけど、理由はわからないもののみんな曇った顔を見せてくれる。とくに耳郎ちゃん。なに? なんで耳郎ちゃんはこんなに僕にご褒美くれてるの? 本当になんで?

 

‥‥‥まぁ、なんとなく予想はできてるんだけどさ。なんで盗聴とかするかなぁ‥‥盗聴するなら僕に聞きにきてよ‥‥全部話してあげるじゃん! なんで盗聴で曇るの? 美味しくないで〜す! なんで勝手に曇るんですかぁ〜? 鮮度が足りないんですけどぉ〜?

 

晩ご飯を作る最中に出久くんと轟くんの会話も確認したので洸汰くんと原作通り会話はしているようだ。秘密基地の場所もおおよそ予想がついてるけど‥‥あの子は残しておかないと出久くんが主人公として活躍してたんだよってのが日本崩壊後にわからなくなっちゃうからね。

 

まず、僕が目立ちすぎだし。主人公としての株を取り戻させてあげないと、カッコつかないでしょ? そろそろさ。

 

あと、多分僕があまりにも目立ちすぎなんだよね。少しヘイト管理しなきゃ‥‥

 

訓練が終わり、晩ご飯を食べるといつの間にか肝を試す時間になってしまった。もうこんな時間かぁ〜‥‥時間が経つのは早いなぁ‥‥とうとうこんな時間になっちゃった‥‥なんか楽しい時間が過ぎていく残念な感じと今から起こることのドキドキ感が高まって一人だけテンションおかしくなっちゃうぜ‥‥‥

 

さて、原作では5人補習がいたため出久くんが余るという展開があったが、今回は全員揃っているからそういう展開はない。なんならくじ引き自体が20人いることが前提で作られているから誰と一緒になるのかはほとんどランダムだ。

 

でも、僕こういう時の引きはいつだって抜群に良いんだよね。

 

「あ、出久くん」

「ってことは僕のペアはゆずくん?」

「9だからそうかな?」

 

よしよし、上等な滑り出しだ! できれば後半出発組がよかったんだよね! その頃にはもう全部めちゃくちゃになってるからさ!

 

「‥‥響香ちゃん? 透ちゃん? 怖い?」

「‥‥‥うん」

「ちょっとね」

「もしどうしても助けが必要だったら呼んでね? すぐ飛んでいくからさ!」

 

‥‥‥おそらく盗聴したであろう耳郎ちゃんが弱々しくて可愛いね‥‥というか耳郎ちゃんだけじゃなくてこの感じは女子みんな聞いたな? どうやってだろ‥‥まぁ、耳郎ちゃんはイヤホンジャック使えば良いか。それをヤオモモちゃんがスピーカーにしたとか? あり得るな‥‥それなら作戦指揮、考案は芦戸ちゃんかな?

 

うん、僕におこぼれ程度の曇らせしか供給しないのはムカつくけど、曇らせを発生させる素質があるのは良いことだね。芦戸ちゃんが作った曇らせもいつかたくさん見せてね♡

 

何組か出発するのを見ながら体を動かす。‥‥どうでもいいけど夜の森ってちょっと不気味だよね‥‥

 

「出久くん、怖くない?」

「はは‥‥僕的には当たり前のように裾を握ってくるゆずくんが怖いかな」

「緑谷、それまんじゅう怖い的なアレか?」

「おい‥‥アイツまじで女子じゃないの‥‥?」

「鋭次郎、僕のちんちん二日とも見なかったのか?」

「お前の方なんて見られるわけがないだろ!」

 

うんうん、これがこの合宿最後の馬鹿話だとも知らずにみんなテンション高いね‥‥怖いの誤魔化してるのかな? 可愛いね♡

 

どうせここから‥‥最高に曇るのにね♡

 

ズズズッ‥‥と広場の真ん中に黒い霧が出現する、そして、そこから現れた巨大な磁石がピクシーボブを引き寄せてその頭を叩きつけた。血が舞い、ピクシーボブがなす術もなく崩れ落ちる。

 

「!?」

「なんで‥‥! 万全を期したはずだろ‥‥! なんでヴィランがいるんだよ‥‥!」

 

峰田くんが悲痛の声を上げた。その声を聞いてすぐに手を叩いてピクシーボブを回収する。今はヒーローだからね、僕。

 

「やだ、取られちゃった‥‥これがあの子の個性ね?」

「ご機嫌麗しゅう! 我らは敵連合開闢行動隊!!」

 

驚いたマグ姉の声をかき消すようにスピナーくんが大きい声を張り上げた。そんなに声上げなくても聞こえてるってのに‥‥

 

どうでもいいけど開闢行動隊って名前だっさいよね! 絶妙に。なんかこう、グッとくるものがあるのは認めるけどなんか外してる感‥‥わかる?

 

「マンダレイ! 僕、知ってます!」

 

お、出久くんの生「知ってます!」だ。いいね、洸汰くんの場所、僕もなんとなくしかわからないからいけないんだよね‥‥それに、彼にとってのヒーローは僕じゃない。

 

「ゆずくん! 後お願い!」

「わかった! みんなは下がれ! マンダレイ! テレパスで応援を! 僕は他の生徒を回収します! 僕の個性が一番『回収』に便利だ!」

 

飯田くんに後を任せて森の中へと走り出す。うん、普通に止められるよね? でもそんな余裕ないでしょ。これは僕の独断の行動、そうみんなに覚えてもらわないといけないわけ。

 

さて、それじゃあ物語を進めるとしますか。

 

 

  × × ×

 

 

森の中を進むこと数分。一応この森の中も調べ上げてあるんだよね。とりあえず出会った子たちは回収するってのが目的って言って出てきたんだけど‥‥本当の理由はそれじゃない。

 

僕は今回、誘拐される人になるつもりである。言うなればかっちゃんの位置に収まるつもりなのだ。

 

かっちゃんはその凶暴性から敵連合にスカウトされるわけだけど僕的にはヴィランの適性があるやつよりないはずのやつをヴィランにできた方が世間は荒れるんじゃないかって思うんだよね。

 

だってかっちゃんがヴィランになったら「確かに」じゃん? でも僕とか出久くんがなってみ? それこそ“ヒーロー社会”ひいては“超人社会”の脆弱性が暴けるってものだろう?

 

この話を弔くんに提案すると速攻で食いついてきてくれた。まだ、ヒーローを裏切るつもりはないけど、僕が本気で止めようとしたら誰も奪われない自信がある。だから、僕が自ら捕まろうってわけね。

 

僕がスパイってこと自体には触れてないかもしれないけど(僕が演技指導してない敵連合のみんながまともな演技できるとは思えないため、特にスピナーくん)適当なやつを人質にとって僕を誘拐しろとは作戦で告げてるはずだ。資料とか僕が懇切丁寧に作ったしね。

 

そんなことを考えて走っていると遠くの方でマスキュラーと出久くんが殴り合う音に隠れて木が薙ぎ倒される音が聞こえてきた。薙ぎ倒されるってより切り倒される? 違和感を持って音の方を見るとムーンフィッシュが大暴れをしている。

 

ん? つかあの歯の軌道的に僕当たらない‥‥?

 

「ちょっ! 危なっ!!」

 

ムーンフィッシュの歯が飛んでくる。ショートカットしてるのと走ってる甲斐があってかっちゃんと轟くんのペアよりも早くムーンフィッシュと会敵した。

 

「にくめぇぇぇぇぇぇぇん!!!」

「わっ!」

 

個性を使って避けながらうまいこと距離感を測る。うーん‥‥僕を生きたまま連れて来いって言われたの忘れてるな?

 

「お前敵連合の一人か!」

「肉面!! 肉面!! にくめぇぇぇぇぇぇん!!!!」

 

‥‥どーしよ、会話が成り立たないんだが?

 

「‥‥‥なるほど、言うこと聞かないわけね」

 

暴れるように僕を襲うムーンフィッシュの歯を避けながらボソリと口にする。幸い、今ここには他の生徒はいない、多分原作的には常闇くん、障子くんが怪我した後で、かっちゃんと轟くんと出会う前なんだろう。複製腕が5本ほど落ちてるし。僕のことをわからずに攻撃してくるところから肉面が見たくて仕方がないように見える。禁断症状だろあれもう。

 

‥‥‥言うこと聞けない駒はいらないか。うん。処分しよう。どうせ原作での出番もここまでだしね。

 

なら、どうせ今日は使う予定ないし、漫画的にも奥の手チラつかせておいた方がいいだろうし、使っておくか。早めに終わらせたいし、まだしなくちゃいけない仕事があるからね。

 

僕は両手の指を絡めて、まるで神に願うように手を組む。そして体の内側に在る、流れを外側に押し広げるように内側に巡るドス黒いそれの流れを外へと押し広げて、外殻を作りあげるようなイメージで口を開いた。

 

闇が満ちる。そこは廃れた教会。

 

神も仏もない、全てが荒んだ、僕の城。

 

「領域展開【全天曇下(ぜんてんどんか)】」

 

 

【挿絵表示】

 

 

さて、悪い子にはお仕置きしないと、だよね?

 

 

  × × ×

 

 

ムーンフィッシュをズタボロの肉袋にして地面に転がす。返り血でべちゃべちゃだよ‥‥とりあえずめんどくさいから歯が全部ぶっ飛ぶくらいに壊してあげたんだけど‥‥死んでないよね? 多分ギリギリ生きてるんじゃないかなぁ〜‥‥って思ってるんだけど‥‥脈計りたくねぇ‥‥血でドロドロなんだよね‥‥あ、なんかに似てると思ったらあれか。カラスに破かれたゴミ袋か。

 

「汚いなぁ‥‥」

 

靴についた汚れを倒れたムーンフィッシュで拭いてから身を翻す。

 

それじゃあ、向かおうか。目的の場所にね。

 

少し走って弔くんに渡した資料に記した目的の場所にまで駆けつける。そこにいたのはさっきまでそこらに漂っていた毒ガスを浴びて気絶してる耳郎ちゃんと葉隠ちゃん。完全に伸びてるね‥‥そして、それを足蹴にして完全にヴィランのヴィジュアルを確立させている荼毘くんにトゥワイスさん、そしてマグ姉にスピナーくんである。うん、ある程度わかってたけどあれやっぱりコピーだったんだ? あそこに本物送りつけるメリットないもんね。

 

「血塗れだな? 舞妓譲葉」

「‥‥‥ヴィランだね?」

「見てわかんだろ」

「確認だろーが、焦るなよ」

「焦ってんのはお前だろ?」

 

さてさて、このやりとりを誰かに見てて欲しいんだけど‥‥まだここには誰も来てないか。僕が一番乗りってことね。

 

「その血の量じゃ随分と手荒いのにやられたな? ‥‥マスキュラーかムーンフィッシュ辺りか? それか俺仕様の脳無」

「マゾみたいな格好してる奴なら死なない程度に潰してきたよ。手荒い? アレが? あんなに弱いのに? 一撃も貰わなかったぞ」

「やだ‥‥ムーンフィッシュを倒してきたの‥‥? しかも無傷で‥‥?」

「安心しろよ、次はお前らの番だよヴィラン」

「それ全部返り血かよ、本当にヒーローか?」

 

適当な会話をして時間を稼ぐ。お互いに人に見られてる状態が嬉しいからね。いや、性癖の話ではなくてね?

 

あっちは僕を連れて行くところを人に見せたい。理由としてはみんなに完全敗北を植え付けるため、それからヒーローの卵が盗まれるところをしっかりと印象付けるためだろう。そっちの方がスムーズに記者会見まで進むもんね。荼毘くん的には轟くんだったら嬉しいんだろうなぁ。僕は出久くんとかっちゃんだとすごく嬉しいです♡

 

次に僕が時間を稼ぎたい理由‥‥そんなの決まってるだろ。僕が誘拐されるとかみんな余裕で曇ってくれるだろ? そのために今までせっせこせっせこ好感度上げてたんだぞ?

 

「おっと、変な真似すんなよ? コイツらの命がここで消えるぜ?」

「人質ね‥‥せこい真似するよ」

「お前が大人しく俺たちについてくるっていうのなら、コイツらに用はねぇから解放してやってもいい」

 

あ! 嫁入り前の女の子の顔を足蹴にしたなぁ〜!? 葉隠ちゃんの可愛い顔に傷がついたらどうしてくれるんだよ! ぶちのめすぞ!?

 

まぁ、顔に傷ができてももらってあげるけども。女の子の顔に傷あったら可哀想だからね♡

 

「お前を連れて来いってうちのリーダーはご所望でね」

「‥‥‥死柄木か」

「出来れば無傷でって話だが‥‥お前は人質さえとれば簡単に来てくれるって言ってたぜ?」

 

荼毘くんがそんなことを言うが、まぁ、元からそう言う話だったんだよね。台本通り行ってる現状を考えると僕は今から誘拐されるわけだし。

 

他の子を殺したりしてもいいんだけどそれは僕がやめておくように言ってある。被害者は僕だけの方が僕がヴィラン堕ちしたときに『雄英襲撃事件を二度自身を犠牲にして守り抜いた男がヴィラン堕ち!』って騒がれて美味しいでしょってね。

 

「それともここでやり合うか? お前一人で勝てるか?」

「お前ら相手に? 勝てるよ」

「そうか、なら、言い方を変える。他のお荷物を守りながら勝てるか?」

 

荼毘くんが指を差した先に障子くんに背負われたボロボロの出久くん、そしてそれと一緒にいるかっちゃん、轟くん、お茶子ちゃん、常闇くん、梅雨ちゃんが見える。

 

うん、これも荼毘くんに弔くんが仕込んだセリフだろう。まぁ、そんなこと言われなくても僕的には今すぐに誘拐してもらっても構わないんだけど‥‥そういうわけにもいかない。一応理由がないとね。

 

これで目撃者が揃ったわけだ。お茶子ちゃんと梅雨ちゃんが少し怪我してるところを見る感じトガちゃんたちも来てるんだろうし、そろそろ潮時かな?

 

「‥‥無理だね。わかった、僕が大人しくついていけばそこの二人を返してくれるんだな?」

「あぁ、これに興味はねぇからな」

「女の子の顔を足蹴にしてんじゃねぇよ」

「そりゃ悪い」

 

荼毘くんが足を離す、そしていまだにこちらに向かってくる出久くんたちに向かって焔を放った。それは轟くんの氷によって相殺されるものの周りの木々に飛び散って火事になる。あっついんだけど???

 

「僕のことを所望なんだろ? 死柄木は」

「あぁ、お前が来るなら他に興味はねぇってよ」

「わかった。その代わり、他のみんなには手を出さないで」

「は? なんでお前の言うことを聞かなくちゃいけないんだ?」

 

馬鹿にするようにスピナーくんがそう口にする。お、いいセリフだ。乗らせてもらおう。

 

僕の凶暴性を増して見せてあげないとね。堕ちる兆候としてさ。

 

「おいトカゲ、お前。僕の友達に手を出したら“殺す”ぞ?」

 

凄む。目に殺意を滲ませてスピナーくんを睨んだ。彼が二歩、三歩と後ろに下がっていく。

 

君にはこういうのが効くよね? 今はどうか知らないけど、原作ではステインのフォロワーだったんだから。こういうオーラの飛ばし方が一番ビビるよね?

 

「‥‥ヒーローのセリフじゃないな」

 

荼毘くんがそんなことを言いながらお腹を踏みつけていた葉隠ちゃんから足を下ろす。その頬を冷や汗が通ったの、僕が見逃すと思ってるんだろうか?

 

「待ってよ! ゆずくん!」

「うるせぇな‥‥敵連合開闢行動隊。目標の奪取に成功した、これより帰還する。今すぐに所定の位置に戻れ」

「‥‥‥ッ! 逃すかよ!」

 

轟くんの氷がこちらに飛んでくるもそれを荼毘くんが掻き消す。みんな頭に血が昇ってんなぁ‥‥見えてないだろ? 今足元にいる二人のこと。そのことに気づいたのかみんなの足が止まる。僕が人質を取られて今から連れていかれるのがわかったのだろう。

 

荼毘くんがそれでいい、というように僕の首を掴む。どうでもいいけど当たり前のように首を掴むなよ、弔くんといい君といい僕の首掴むの流行ってんの? 荼毘くんは帰ってくるトガちゃんやコンプレスさんを見てから僕に目を向けた。

 

「遺言があんなら残していけよ、もう会えないぜ?」

「‥‥‥‥じゃあ、少しだけ」

 

いや、別に余裕で会えるんだけどね。神野区事変が終わった後も余裕で会えるよ? まぁ、このみんなはまだ僕のことをよく知らないみたいだし、僕の作戦についても弔くんからはほんの少ししか聞かされていないだろうからそう思うのも無理はないか。

 

さて、どんな言葉がいいかな? どんな言葉が一番みんなが曇るかな? そうやって考え続けてきたんだ。このメインプラン、曇らせの山場の一つのためにね!

 

結果として、一番“曇る”ってわかってるこの言葉をくれてあげるよ。

 

「ねぇ、みんな‥‥生きてね。大好き」

 

笑え。ほら、今の状況で! ヴィランに連れて行かれるって場面で笑ってみせろ! あはは! 今の笑顔はみんなカッコつけた笑顔だと思ってるでしょ? 違うよ!

 

あぁ、A組のみんなはいいねぇ‥‥! 最高の曇り顔だねぇ!! 無様で滑稽だねぇ!! お前たち全員僕からしたら足手纏いだって言われて、その上で人質として身を差し出すその姿に! 男子も女子も曇るよね!! あぁ、その上で耳郎ちゃんと葉隠ちゃんたちなんてもう大変だよね!! 気絶して、人質に取られて!! 気の毒だね!? 耳郎ちゃんなんて昨日僕のトラウマ聞いたばっかりなのにね!! 安心してよ! 君は僕にトラウマ一つ作っただけだけど僕は君に幾つトラウマ植え付けたかわかったもんじゃないよ!! 本当にさ!! 起きたらどんな顔するのかな!? 見てみたいけど見れないや!! 次に会うときに見せてよ!! ね? ね!! 最高の曇り顔期待してるから!! そのときには僕、葉隠ちゃんの顔も見れるようにしておいてあげるね!! 『サーチ』が手に入ったんだ!! ラスボス先生に貰えないか聞いてみるよ!! 君の顔!! しっかり見られるようにしてあげるね!!

 

「返せよ!!」

「譲葉!!!」

 

まだ、最後まで諦めていない出久くんが障子くんに背負われたまま、吠えたのが見えた。そしてかっちゃんが吠えるのも聞こえる。それを聞きながら、黒い霧に覆われるいつもの感覚に襲われる。

 

その瞬間に、今まで諦めたりしなかった、何事もずっと、前を向き続けてきた出久くんの顔が無力感に歪むのが見えた。どうしようもない、どうすることもできない、届かない、その事実に顔が歪む、曇る、僕って親友に、何もできないって、曇るのが‥‥‥‥やっべ、興奮してきた‥‥最高すぎ‥‥‥

 

そしていつだって尊大で僕のことなんて大嫌いであろうかっちゃんが手を伸ばすのが見えた、あぁ、いいね。無様だなぁ? 爆豪‥‥

 

あ、そうそう、これは入れないとだよね? 今後のプランに差し支えるし。

 

「来んな、爆豪」

 

歪んだ顔を遮るように黒いモヤが視界を覆った。最高じゃん、ほんと‥‥

 

あぁ〜、生きててよかった♡

 

 

  × × ×

 

 

 

「ゆず‥‥くん‥‥!」

 

黒いワープゲートが閉まる。そこに先ほどまで居たはずの親友はもう居ない。

 

届かなかった。いつだって、自分の危機には手を差し伸べてくれた。テストの範囲でわからないことがあったら教えてくれるなんていう小さいことから、いじめっ子のかっちゃんにいじめられるなんてそんなことまで、彼は僕のことを助けてくれたのに。僕の手は、No.1に、憧れに後押しされたこの手は届かなかった。

 

『出久くんは良いヒーローになるよ』

『結婚式の友人代表スピーチ僕に読ませてね!』

『無個性だからヒーローに成れないとか意味わかんない! 絶対に方法があるよ!』

『出久くん、雄英合格おめでとう! 誰から聞いたって? 引子さんから! ふふふ! 僕も合格したんだ! クラスメイトだと良いね!』

『腕怪我しすぎ‥‥心配すんだろ?』

『明日お昼作ってきてあげよっか。何が良い?』

『出久くん!』

『君がヒーローになったら、僕のこと救けてね』

 

「あぁ‥‥、」

 

実感する。理解する。腕の痛みなんて、忘れてしまう。そのくらい、深く、深い絶望が体を突き刺す。

 

「あぁぁ‥‥‥、」

 

障子くんの背中から降りて彼が連れて行かれた場所に手を伸ばす、ボロボロで赤黒く変色し、変な方向に曲がっている腕が虚空を切り裂いた。

 

「デクくん‥‥」

 

麗日さんが名前を呼んでくれる。その声に返事をする余裕がない、そうだ、僕は今、人生で一番大事なものを無くしたのだ。

 

「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ!!!!!!」

 

地面に崩れ落ちる、限界だった、頬を際限なく涙が流れた。こんな風に泣いたって何の意味もないことなんて分かり切っているのに、涙が止まってくれない。

 

その日、雄英高校ヒーロー科は、USJなど比較にならない。本当の意味での敗北を知る。

 

 

  × × ×

 

 

「さっさと歩け」

「人質の扱いが荒いなぁ‥‥」

 

黒霧さんにワープさせられていつものバーに辿り着く。いつの間にかコンプレスさんが圧縮していた手錠をつけられているせいで手が叩けない。つーか重い。手袋のようになって手が覆われた上で両手が動かせないように縛られている手錠のような拘束具だ。

 

僕みたいな掌が発動条件になっているタイプの個性は多いからそんな犯罪者に取付けるための拘束具も存在していて、それがこれである。原作ではかっちゃんがつけられてたね。あとお茶子ちゃんとか寝る前に手袋つけてるのはそういう理由っぽい。無意識に自分浮かせて落ちたりとかしたら大変だしね。かっちゃんなんて寝てる時に爆破させたら火事まっしぐらだろ。

 

帰ってこられたのは荼毘くん、マグネさん、トゥワイスさん、コンプレスさん、スピナーくんにトガちゃん、それから連れ帰ってきてくれた苦労人黒霧さん‥‥とまぁ、普通にいつものメンツというところだろう。新生敵連合って感じね。黒霧さんに関しては本当にいつもありがとね‥‥

 

バーに辿りつくなり弔くんが嬉しそうな顔で敵連合に笑いかけた。うーん‥‥懐いた犬‥‥

 

「よぉ、おかえり」

「あぁ」

「大変だったぜ! 余裕だったけどな!」

 

皆が僕に警戒をしながらも帰ってこられたことにホッとしているようだ。うんうん、警戒心を解かないのは優秀な証拠だね。僕が少し動くだけでスピナーくんが刀の柄を握りしめ、荼毘くんの手が僕の方に向く。下手打てば死ぬじゃん。

 

さて、ここに着いたらもう良いよね?

 

もう、ヒーローは見ていない。ここからはヴィランとして動こう。

 

「はぁ〜‥‥ねぇ、この手錠うざったいから外してくんない? 死柄木」

「お前は今の自分の状況がわかっていないのか?」

 

スピナーくんが呆れるようにそう言うも分かってないのは君なんだよね〜‥‥ほら、来た。

 

いつだか電話で次に死柄木とか言ったら殺すって息巻いてたもんね♡ だから来てくれると思ってたよ? ボス。

 

飛んできた弔くんの腕が僕の首を掴む。指を一本立てているみたいだけどその指下ろせば僕なんて秒で殺せるんだよね‥‥怖すぎだろ。でもそんなこと君にできるわけないけどさ。

 

「次に死柄木って呼んだら殺すって言ったよな?」

「‥‥‥は?」

 

弔くんの速すぎる移動に驚いた様子のスピナーくんが振り返る。いやね、僕以外誰も見えなかったんじゃないかな? 今の弔くんちょっと規格外レベルで速かったもんね。来るってわかってないと予測できないよね。これオールマイトくらい速くない?

 

壁ドンされた状態で凄まれる。ここだけ切り抜いたら完全に僕と弔くんのBLだなぁ‥‥いくら弔くんが相手でも貞操は売りたくないかも‥‥

 

‥‥‥いや、A組が曇ってくれるならやぶさかでもないか。もう覚悟だけ決めてやれば‥‥いや、決めたくないけどさ。できれば男の子でいた〜い!!

 

「‥‥そうだっけ? 手錠外してくれたら言い直してあげる」

「‥‥‥チッ」

 

弔くんが僕の手錠に五指で触れる。すると手錠は初めから存在していなかったのかと思うくらい簡単に消え去ってしまった。

 

「ん〜‥‥重かった‥‥ただいま、弔くん」

「おかえり、譲葉」

 

二人して笑い合い、グータッチをすると弔くんの後ろにいる敵連合のみんなが怒った顔、困惑した顔をしながら僕たちを見つめる。まぁ、その顔になるのは間違ってない。

 

「おい、どういうことか説明しろ」

「グルだったってことか!? 説明しとけよ! 聞かねぇけどな!!」

「死柄木ちゃん。流石にこれは困るわ、どういうことか説明して?」

「弔くん、私たちに嘘ついたの?」

 

うんうん、そりゃそうなるよね。その反応は正しい。一生懸命頑張って拉致ってきたヒーローの卵とかいうクソガキがまさかの友達だったりしたらみんな困るよね? そりゃ疑問が湧いて弔くんを疑ってもおかしくなんて一つもない。

 

「こいつは‥‥」

「いいよ、弔くん。僕が自分で言う」

 

さて、ここから僕の本気で台本を書いた読心術と、人心掌握術をお見せしよう。

 

みんなのことなんて隅々まで知ってるんだよ? みんながどんな風に考えて生きてきたのか、どんな風なことを考えているのかもわかってるんだ。だから、本気で台本を書き上げちゃえば‥‥僕がみんなの心を掴めないわけないね。

 

「トガヒミコ、本名、渡我 被身子」

「トゥワイス、本名は分倍河原 仁」

「Mr.コンプレス、本名は迫 圧紘」

「スピナー、本名は伊口 秀一」

「マグネ、本名は引石 健磁」

「荼毘、本名は‥‥そんな顔するなよ、いいよ。まだ内緒にしててあげる」

 

手を何度か叩いてみんなの注目を集める。なんだなんだ? みんなしてさっきまでの困惑した顔からガチの怒りになってるじゃん。本名まで知られたらびっくりするよね? 安心しなよ、悪いようにはしないから。

 

「ねぇ、君たちはなんで敵連合に来たの?」

 

誰も口を開かない。両手両足が自由になった僕を警戒していつでも個性を発動できるように、武器を使えるように身構えている奴ばかりだ。警戒心の強い猫ちゃんだぜ‥‥借りてきた猫か? じゃあ懐いてゴロゴロ声聞かせてよね♡

 

そっちの方が曇らせがいがあるからさ。

 

「生きていくの辛くない? 君たちは悪くないじゃん。悪いのは世の中だ、そうでしょ?」

「なんでいじめられなくちゃいけない? なんでこんな目に遭わなくちゃいけない? 自由に生きちゃいけない? 生まれたことが間違いだったのか?」

「僕たちはただ、生きてるだけだろ」

「ヒーローが助けるのはいつだって真っ当な人間だ! その癖に! 全部が救えたみたいな顔をしてる! 声を出せない者の声を聞いてないくせに! 当たり前に笑っている!」

「僕たちはこんなにも苦しいのに!! 生きづらいのに!!」

「それをヒーローは助けてくれないんだ! 普通の枠にハメて! そこから外れた僕たちのことは見て見ないふり!! 社会のクズ扱い!! ふざけンなよ!!」

 

両手を開いて歩く、この言葉の全てがみんなに刺さるよね? 運が悪かっただけ、生まれてきただけ、普通に生きてきただけ、自分を偽りたくなかっただけ、ただ、それだけなのに社会の圧力に捻じ曲げられてしまった被害者だもんね? まぁ、この世界も大概おかしいけど、被害者面するにはあまりにも酷いヴィランだとしても、この言葉は刺さるでしょ? みんなは肯定されたことないもんね。

 

涙目で叫ぶ。外には漏れてないだろうけど、みんなには届いているだろう? この怒りの声が。それだけで十分なんだよ。

 

それだけで十分なんだよ。

 

「僕は元無個性だ。ここで個性を手に入れるまでは無個性でいじめを受けてきた。差別を受けてきた」

 

身の丈を端折って話す。いじめ、差別、その辺りでスピナーくんが同情の顔色を浮かべたのがわかった。無個性の話で荼毘くんが構えていた手を下げる。

 

「僕は無個性でもヒーローになりたくてさぁ‥‥色々な技能を磨いたんだよね。勉強も頑張ったし、他にもたくさん頑張ったんだ‥‥でも認められなかった。その上、親友に、裏切られたんだ」

 

裏切られた、運が悪かった。その手の言葉はマグネさんに、トゥワイスさんに刺さるだろう。好きだろ? この手の話さぁ‥‥運がなかったり、上手くいかなかった君たちは何も悪くないって。同じだって言われてるみたいだろ?

 

敵連合に所属することを決めたその日からこうしようってずっと思ってたんだよねぇ〜‥‥

 

「大丈夫、大丈夫だよ。僕は、弔くんはここにいる君たちを肯定する。世界をめちゃくちゃにしても、君たちのことは肯定する。君たちが好きなものは残そう、君たちがしたいことは手伝おう、君たちと共に生きるよ」

 

気がつけばもうみんな武器を下ろしていた、手を下ろしていた、ほら、虐げられて肯定されてこなかった猫ちゃんたちを懐かせるなんて簡単だよ、弱いところを、震えてる心に毛布みたいな温かい言葉をあげれば良い。

 

逆に、これさえ与えられたらヴィランは減る。皮肉なもんだよね。それがわかってない奴らがヒーローしてるせいでヴィランは年々増えていく一方なんだよ。

 

「暴れたい? 暴れろ!」

「奪いたい? 奪え!」

「欲しいものがある? 盗め!」

「殺したい? 殺せ!」

「好きな人がいる? 犯せ!」

「したいことがある? やっちゃえ!」

「壊したいものがある? 壊せ!!」

「復讐したい人がいる? 復讐しろ!!」

「僕たちは全部を肯定する!! 今まで虐げられてきた僕たちこそが!! 全部!! 全部を手に入れるときだろ!? この世は平等だ!!僕たちがこの社会を壊して!! 弱者のヒーローになろう!!」

 

トガちゃんを抱きしめる、その瞳から涙が溢れているのは見なかったことにしてあげる。彼女がナイフを落とした音が響いた。

 

「大丈夫だよ、ヒミコちゃん。君は何も間違ってない」

「え‥‥? あれ? なんで泣いてるの‥‥?」

「ふふ、泣いてても可愛いね。これからは好きに生きていいんだよ」

 

ヒミコちゃんが僕のことを抱きしめてくるので頭を撫でる、そしてゆっくりと手を離すように手を叩いて伝えてから大人組の頭も撫でる。警戒心はどこにいったのか、みんななされるがままだ。

 

「荼毘くん、君は悪くない。復讐しちゃおーぜ? 全部壊して、燃やしてやろう。あの家も、お父さんもさ」

「‥‥‥なんでんなこと知ってんだよ」

「え〜? ふふ、今度教えてあげるよ」

 

可愛い猫ちゃんたちだね♡ みんな曇らせてやるから覚悟しろよ? 他のメンバーとも簡単なコミュニケーションを取り、みんなとの距離感を掴む。いいね、もう既に何人かは心を開いてくれてる。後のみんなも鍵は開いたかな?

 

「あ、自己紹介が遅れたね? 僕は雄英高校ヒーロー科1年A組‥‥に潜入してるスパイ、敵連合No.2。作戦参謀。舞妓譲葉だよ。譲葉でもゆずでも好きに呼んでね! よろしく! みんな!」

 

あぁ、今最高に暗躍してるって感じがするぜ。僕はクスリと笑いながら名乗りをあげた。

 

‥‥‥後ろで「こわ」とか言った弔くんには後でお話があります。

 

 

  × × ×

 

 

「え‥‥‥?」

「ごめん、もっかい言ってよ、みんな」

 

震える声を抑える術を知らないように、耳郎と葉隠はそう口にした。

 

「‥‥‥舞妓がヴィランに誘拐された」

「緑谷‥‥それから耳郎と葉隠が入院。プッシーキャッツのピクシーボブが重体で意識不明、ラグドールが行方不明」

 

林間合宿三日目の夜から一日が過ぎた。吸い込んだ煙の量が少なかったのか、それとも別の何かが要因か、原作よりも随分と早く目を覚ました二人に対してA組のクラスメイトがお見舞いに来たのだ。緑谷は未だに怪我による痛みで悶絶し、気絶する、痛みによって起きる、ということを繰り返しているので今は声をかけることはできそうにない。

 

「え? じゃあユズは? 今どこにいるの?」

「‥‥‥」

「ゆずちゃんは連れて行かれた後どうなるの? まさか、死‥‥」

 

葉隠はそれ以上の言葉をグッと飲み込む。もし、そうなら自分を保つことができないと思ったからだ。

 

「‥‥‥じゃあ何? ウチは呑気に気絶して、また、ユズの足を引っ張って‥‥、ユズのことを危険に晒して‥‥! 挙げ句の果てに誘拐までされて! 自分はぐっすりベッドの上!?」

「耳郎‥‥」

 

上鳴が耳郎の名前を呼ぶ。彼女の悲痛なまでの叫びが静かな病室の空気を揺らした。鼻につくエタノールの香りは彼女の心の傷までは癒してはくれない。

 

「何がヒーローだ! 何が‥‥!」

 

布団を握りしめ、目尻に涙を溜めながら声を絞り出す。喉の奥が震え、彼女が必死に絞り出したその悲痛な叫びはA組の皆の心に突き刺さった。

 

「何が‥‥! 何がぁ‥‥!!」

「響香ちゃん‥‥」

 

涙が落ちる。シーツが濡れる。泣き声で揺れる体に呼応してチューブに繋がれた点滴の水滴が揺らぐ。

 

A組は何もできない。彼らにとってのヒーローは“彼”であって、今泣いている一人の女の子の背中を摩ってあげることも、涙を拭ってあげることも、ましてや止めてあげることなんてできやしなかった。その資格は、全ていまこの場にいない、誘拐された“彼”だけが持っていたものだから。

 

‥‥‥その彼がこの場にいたらおそらくのたうち回りながらその顔の翳りを摂取し、大声を上げながら発狂したように飛び跳ねた挙句泣いている彼女の唇を奪っているのだろうが、まぁ、そんな彼の心の内側についてなんて、ここにいる誰も知る由もない。事実、こうやってA組が唇を噛み締め、拳を握りしめて慟哭する彼女を悔しさを噛み殺して目を逸らすまいと見つめている間、彼は敵連合の皆とトランプをしているのだが、そんなことは誰も知ることができない。

 

「ウチが足を奪って! ウチのせいで! トラウマ植え付けて! ウチが! ウチのせいじゃん! 何がヒーローだ! 何が! 何が!!」

 

涙が頬を伝う。彼女の切なる願いは、彼女の慟哭は、静謐に包まれた病室に鐘のように響いた。

 

誰も、その姿を、その痛々しすぎる姿を‥‥止めることはできない、慰めることも、できやしない。

 

「‥‥‥何がぁ‥‥!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

しかし、違う。手を差し伸ばすことはできない。背中を押すことはできない。涙を拭ってあげることも立ち上がらせてあげることもできやしない。

 

ただ、道を示してあげることはできる。それがヒーローだから。

 

「‥‥耳郎。舞妓を取り返しに行かないか?」

「切島!?」

 

クラスメイトの波を掻き分けて、切島が前に出る。そして、それに伴って怪我は軽微で済んだものの包帯を巻かれ、同じく入院している八百万が前に出た。

 

「こちらは敵連合の脳無に取り付けました、発信機の情報を受信している端末です。こちらで舞妓さんの居場所がわかるかもしれません」

「ヤオモモ‥‥?」

「八百万くん! それは‥‥!」

「もちろんヒーローには言ってあります」

 

八百万は悔しそうに、歯を噛み締める。泣いている耳郎と対するようにその受信機を握りしめた。

 

‥‥‥目元が赤い。彼女もたくさん後悔して泣いた後なのだろう。それ故に、固めた決意は強固だ。

 

「私たちが行っても何もできないでしょう。足手纏いになるかもしれません。それでも、行きます」

「そんなことをしたら‥‥!」

「飯田さん、わかっています。除籍処分を受けるかもしれません。でも、ここで何もしないでいる私たちがヒーローを名乗れますか?」

「百ちゃん、自分のしたいことのために個性を使うのは、ヒーローじゃないわ。ヴィランのやり方よ」

「蛙吹さん‥‥えぇ、それでも、ここでやめてしまえば私は私を許せません」

「俺も行く、戦闘はなしだ。舞妓のことを救い出す、そのことだけを考えて動く」

 

轟の発言に病室内がざわつく。これで切島、八百万、轟が参加することになる。クラスの中でも成績が上位のメンバーだ。リスクなんてわかっている。ただの日帰り旅行になる可能性の方が高いことだって理解してる。それでも、行くと宣言しているのだ。

 

それは、舞妓譲葉という一人の人間が、クラスメイトの心を動かしたということの証左でもあった。

 

「おい、ポニーテール、俺も連れてけ」

「爆豪さん!?」

 

こういう場所に滅多に姿を見せない爆豪が閉められた病室のドアを開いてそう言う。本来ならお見舞いにも顔を出さない男は、仮にも幼馴染である緑谷の入院など気にも止めず、切島に呼ばれたままここに足を運んでいた。

 

「クソ女男の場所わかってんだろ。俺も連れてけ」

「爆豪‥‥戦闘はなしだぞ」

「わーっとるわ‥‥!」

 

轟の言葉にギロリと爆豪が睨む。しかし、いつもの彼ならここで爆破の一つでも起こしているだろう、彼自身苛立ちはあるものの冷静のようだ。

 

「クソが‥‥‥!」

 

その口調は荒い、足ではイライラとビートを刻み、落ち着きがない。それは心配しているようにも見えた。

 

「すぐにでも行きてぇ‥‥だけど緑谷には声をかける。あいつが一番取り返しに行きたいだろうから‥‥‥だから、緑谷が起き次第声をかけて、その日に出発する。どうする。耳郎、やめとくか」

「ううん、行くよ。ウチがヒーローに成るために」

「私も行く! ずっとゆずちゃんに助けられてばっかりじゃヒーローになんてなれない!」

 

涙を拭う。彼女の顔つきはそこからただ、助けられるヒロインから、決意を持ったヒーローに変わる。

 

彼女たちの決意は、良くか悪くか、物語を大きく変えることになる。

 

そのことはまだ、誰も知らない。

 





どうでしたでしょうか? 神クオリティ挿絵に殺された? 2枚あったもんね? 私に裏切られた? ネタバラシだと思った方が大勢いましたからね! みんなの曇る顔が目に浮かぶようだぜ‥‥
みんな可愛いね♡ 曇れ曇れ♡ あと感想が山盛り来てて嬉しい‥‥みんな愛してるよ‥‥
今後も頑張ります! 林間合宿でこれなら神野区編はどうなっちゃうの〜!? って思いますか? 巻き込んで伏線にしていきます♡
皆さんの評価が、感想が、私の、ひいては絵を描いてくださっている、んこにゃ様の、活動力になります。応援が活力です! これからもよろしくお願いします!!

映画編を入れるかどうかのアンケートをさせてください!

  • 入れたのが見たい!
  • 本編だけ追いかけるのでOK!
  • アンケート結果が多い方で!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。