個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア! 作:波間こうど
んこにゃ様が“本気”
日付は林間合宿から二日が経った朝。面会に来た切島と轟は緑谷の病室に向かった。二日間、気絶と痛みによる覚醒を繰り返していた緑谷は今朝随分と良くなった様で比較的楽に目が覚めたという。
そんな病み上がりも甚だしい緑谷に、切島は『舞妓譲葉の救出案』を提案した。内容は先日、耳郎と葉隠たちに提案したものと同じだ。あの後、蛙吹や麗日、飯田などに厳しく止められもしたのだが、彼らの決意は変わらなかった。
「どうする。緑谷、行くか?」
「‥‥‥うん、行くよ。ゆずくんが今、苦しんでるかもしれないから」
病院の一室で、ギプスが外され、ボロボロの手を握りしめながら緑谷は切島の言葉にそう返答した。その目には絶望を飼い慣らす猛獣の光が宿る。それはともすれば『怒り』と形容してもいいような色をしていた。
「メンバーは俺と切島、耳郎と葉隠、発信機の受信機を用意してくれている八百万。それからお前と爆豪だ」
「かっちゃんが?」
「あぁ、俺も連れてけってよ」
緑谷は彼の心境を察することはできない。だが、そのカケラであるのなら理解できる。彼にとっても舞妓譲葉という存在は特別な存在であるのだ。
「そっか‥‥うん、わかった」
「出発はお前が退院した今日の夕方。病院の前で待ってるから」
「ありがとう。切島くん」
切島たちが病室を出た後、医師から両手の腱がぐちゃぐちゃになっているという説明を受ける。もちろん、その自覚自体は持ち合わせていた。しかし、緑谷は舞妓を助けるためなら自分は簡単にこの両手を捨てるだろうなという確信めいた実感を持っていた。両の拳を握りしめながら考える。
それは昔からずっと側に居てくれるただ一人の親友のこと。彼に、話していないことがある。
ずっとずっと、言わなくちゃいけないと思っていた、彼にだけは、言わなくちゃいけないと思っていた。しかし、その度に口がもつれ、足がすくむ。
『僕のことを裏切ったんだ』
そんな風に捉えられるかもしれない。いや、そんな風に捉えられて然るべきだ。今現在、一年以上の月日を自身は隠し事をしているのだから、お互いに隠し事はなしね、といったあの日のことが脳をよぎる。
‥‥‥それさえ舞妓が仕掛けたトラップだということは生涯気づくことがなさそうだが。
「‥‥もし、ゆずくんに裏切ったんだ、なんて言われたら僕どうなるんだろ」
右手を見つめてそんな言葉をこぼす。考えたくもない。もし、そんなことになったら緑谷出久という存在は精神面で深刻なダメージを受けることは確定事項だからだ。
それでも、彼は自分の秘密について、彼に話さないといけない。そうじゃなければ対等な関係にはなれないから、いつだって前を行ってるはずなのに、横で笑ってくれていた彼の、その優しさに応えることができないから。
今回の林間合宿襲撃事件で助けた洸汰くんが書いてくれた手紙を読む。そこにはお礼と謝罪が子供の拙い字で書かれていた、必死に、その想いを伝えようとしていた。今の自分の心境もそれと同じ形をしていることに緑谷は気づく。
「‥‥‥ゆずくん、絶対に助けるから」
緑谷はその決意を固めるとベッドから降りた。病衣から私服に着替えて病院から出る。するとそこには切島、轟、爆豪、耳郎と葉隠、そして八百万が立っていた。そのみんなの瞳は怒りに燃えていた。クラスメイトである彼を助けるために、その怒りの炎を絶やさずに宿し続けていた。
「‥‥待て」
緑谷が合流したその時、後ろから声が響く。
そこには今回の救出について強く否定の言葉を繰り返していた飯田がいた。
「なんで‥‥! 俺と一緒に特赦を受けた君たちが! 俺の私的な暴走を止めてくれた君たちが! なんで‥‥!」
「君の怪我する姿を見て! 床に伏せる兄の姿と重ねた!」
「そりゃ舞妓くんのことは心配さ! 当然だろう! 僕だって彼に助けられ続けている! ずっと! 前を進む彼は僕にとって憧れるヒーローの一人で!! 大事な友人だ!!」
「だが! 君たちが助けに行くことで取り返しのつかない怪我をしたら‥‥!! 僕の心配はどうでもいいというのか!!」
それは飯田天哉という、緑谷に、轟に、舞妓譲葉に助けられた少年の、悲痛な叫びは病院の前に響き渡った。その熱情的な叫びを止めようと一歩前に出た緑谷の頬を殴り、彼は続ける。
「舞妓くんが心配なのはわかる‥‥痛いほどに、それでも、君たちまで居なくなったら‥‥!」
どこか悲鳴のようなその叫びを受けて、緑谷は口を開く。
「‥‥僕が川で溺れた時に、ゆずくんは必ず飛び込んで助けてくれるんだ」
「ジャングルジムから怖くて降りられなくなったときも、いじめっ子に殴られてるときも、絶対に、自分から僕のとこに走ってきてくれるんだ」
「だから、僕が助けないと、ここで僕が助けられないのなら、それはきっと、ヒーローなんかじゃないんだよ」
殴られ、鼻血を出してもなお、緑谷の瞳は真っ直ぐだ。真っ直ぐ、彼の中の憧れのヒーローを見つめている。
「必ず助け出す。なにを代償にしても」
「‥‥緑谷はこう言ってるが、実際正面きってカチコムつもりはねぇよ。戦闘なしで助け出す」
「それが俺ら卵にできるギリルールに触れねぇ戦い方だろ!」
その重すぎる言葉は、その稚拙で幼稚な考え方が、飯田の心を動かす。
「そうか‥‥平行線か、なら、俺も連れて行け‥‥!」
助けられた少年少女は、支えられた少年少女は、彼を助けるために決意を固める。その決意が、後に『神野事変』と呼ばれるこの事件をあんな風に変えていくことになるとは、この時は誰も気づかなかった。
× × ×
その日は林間合宿襲撃から二日ほど経ったお昼のことだった。前日でしっかりと遊びまくって深夜に眠りについたのでたっぷりとお昼まで寝ていた僕はゆっくりと目を覚ます。
「んぅ‥‥うぅん‥‥‥?」
「おはよう! ゆずくん!」
「‥‥僕一人で寝てたよね?」
「うん! だから勝手にベッドに潜り込んだよ! ゆずくんのベッドふかふかだねぇ!」
「なんで???」
目を開けるとトガちゃんの顔があった。それも目の前に。
なんでこの子勝手に人の布団の中に入るかな‥‥というかなんかあったかい‥‥そう思って布団を捲ってみるとそこには暗闇に映える肌色と、その先で主張する‥‥‥‥‥‥
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??」
「きゃー! ゆずくん大胆!」
「大胆なのは君でしょ!? なんで服着てないの!?」
「え? ‥‥‥暑くて?」
「理由くらい判然としててよ!!」
ベッドから飛び降りて転げ落ちる様に距離を取る。大丈夫!? 僕やらかしてないよね!? いや酔ってもないのに手は出してないと‥‥思うけど! どうかな!? 記憶がない!! 自分の服を見るも乱れたところはない‥‥ないよね!? うん!!
僕がベッドから飛び降りると布団を申し訳程度に羽織りながらトガちゃんが僕に笑顔を向けてきた。朝日と相まって眩しい‥‥! なんなんだこの子は‥‥! 陽の人間じゃん! どう見ても!! ヴィランにいちゃいけない人間じゃんか!! こんなの見たら可愛すぎて告白するところだよ!! これで曇り顔も可愛かったら僕はトガちゃんと結婚しようと思います!!
「おい、すごい音したけどどうした?」
「弔くん! ヒミコちゃんが僕のベッドに潜り込んできたんだ‥‥!」
「‥‥なんだ、そんなことか。お前も俺にするだろ」
「僕は寝ぼけて! この子は服まで脱いでだよ!? 男女の倫理観の違いを躾けてよ! ボスの仕事でしょ!?」
「俺の仕事では絶対にないな。マグネにでも言っておくよ」
僕が喚いていると僕のお泊まりセットとして置いてあるいくつかの服の中からパーカーを取り出してそのまま着たトガちゃんがお腹が空きました、と部屋から出ていった。自由人がすぎるな‥‥あと普通にノーブラじゃない? 僕もうあの服着れないじゃん!
「おい、お前もさっさと降りてこいよ。もうみんな揃ってる。今日だろ」
「釈然としないけど‥‥はぁ〜い」
弔くんに急かされてさっさと歯を磨く、顔を洗ってからバーに降りると弔くんの言う通りみんながもう既に集まっていた。昨日も遅くまで遊んでたじゃん。なんでこんなに早く起きれるのさ。
「おはよう舞妓! もう昼だぜ!?」
「おはよ〜トゥワイスさん。今日も元気だね〜」
「譲葉ちゃん朝から大変だったわね。ヒミコちゃんは私から叱っておくから」
「本当? 助かるよマグ姉、お願いするね」
「おい舞妓。このステージがクリアできないぞ。どうやるんだ?」
「スピナーくんもしかして徹夜でやってたの‥‥? 眠くないわけ‥‥? あとで教えるね」
「舞妓譲葉。ミルクの準備ができていますよ」
「黒霧さん天才じゃん! ありがと〜!」
「お、舞妓起きたな。よく眠れたか?」
「バッチリだよ、コンプレスさんは? 体調完璧? 流石舞台に立つ人は違うね」
「‥‥‥おはよう」
「荼毘くんおはよ!」
集まったみんなと挨拶を交わしてから自分の定位置‥‥弔くんの座っている席の右側に座る。何故そこなのかと言われると難しいけど‥‥右側だと右手感ない? 僕が一応No.2だからね!
「‥‥‥‥」
「お、記者会見まであと五時間か〜‥‥じゃあそろそろヒーローの方は集まり始めてんのかな?」
「‥‥あぁ、そうかもな」
テレビから流れる音に僕が呟くとなんだか重々しく弔くんがそう口にした。なに? 今から誰か死ぬみたいな‥‥
そう思うとなんかみんなの雰囲気も暗いことに気づく。なに? お通夜? 誰か死んだ? ちょっと雲行き怪しいじゃん。‥‥いや、曇る分にはいいんだけど、理由を知らなきゃ味が薄れるというか‥‥ほら、お肉が入ってないことを知らないと美味しく食べられないヴィーガンみたいな感じというか‥‥宗教上の理由で食べられるお肉が限定されててどのお肉が入っているのかを理解してないとダメな信徒みたいだというか‥‥‥いや、これが適切な表現かはわかんないけど‥‥ほら、ね?
「ね、黒霧さん。なんでみんなこんなに暗いの?」
「‥‥恐らく舞妓譲葉と一時的に離れるからではないでしょうか」
「なるほど‥‥え? そんなこと?」
「そんなことって‥‥それがちょっと信じられないからみんなのテンションが下がってるのよ? 私もだけど」
「マグ姉‥‥」
なになに? つまりはあれか? 僕が敵連合から離れて雄英に帰るってことが納得できなくてみんなこんなことになってるの? なにそれ! うわ〜! みんな僕のこと好き過ぎでしょ! 笑えるね! キュンキュンしちゃうじゃんか〜! やめなぁ〜? なんで僕はなにもしてないのに勝手に曇ってくれるの? 曇り過ぎでしょ! はぁ〜♡ たまんないね! これだから適性の高い曇らせキャラはいいんだよ! 勝手に曇ってくれるからさ! 最高すぎだよ!! もう本当にみんな大好き!!
「ちゃんと帰ってくるよ?」
「そんなことはわかっているけど受け入れられねぇもんなのさ」
「そんなもん?」
「そんなもんさ」
コンプレスさんの言葉にそう返すとみんなの雰囲気がまた一層深くまで沈んでいく。う〜ん‥‥そんなに沈む? でもみんなの落ち込んだ顔は可愛いから嬉しいな♡ すっごい落ち込んでくれるじゃん可愛いね♡
「とは言っても“英雄”として一度雄英に帰還するのは決定事項だよ? まだしなくちゃいけない仕事があるしね」
「それも理解してるからまだこいつらはなんも言ってねぇんだよ」
弔くんが大人だな、と呟く。初めて雄英に行く時とか弔くんがめちゃくちゃ嫌そうだったもんね。USJの後とか行かせたくねぇ〜みたいな雰囲気滲ませてたし、それから比べると大人になったなぁって感じすらするや‥‥いや、仲間も増えたから大人ぶってるだけかな? 可愛いね♡
「みんな落ち込みすぎじゃない? そろそろ僕出るんだからさぁ、もうちょっとテンションあげてよ! ほら! テンションあげてこ〜!」
「‥‥‥」
「‥‥‥」
「‥‥‥無理だろ」
「なんかごめん」
みんなのテンションがダダ下がりしてるのを少し微笑みながら眺める。‥‥うそ、ちょっと邪悪な笑顔してるかもしれないから顔背けてる。黒霧さんと目が合うけど「やれやれ‥‥」みたいな顔で首振られたんだけど。なんだよ、恥ずかしいからこっち見んなよ。バーカウンターの方に顔背けてるのは僕だけどさ!
「仕方ないじゃん。作戦に必要なんだよ?」
「わかってるよ」
黒霧さんの用意してくれたミルクを飲んでからぴょんっと椅子から降りる。そしてゆっくりと体を伸ばしてからテレビをつけた。ニュースは雄英高校林間合宿襲撃事件のことでもちきりで、どのチャンネルつけても基本その話しかしてない。特に誘拐された僕についてはさまざまな議題が取り上げられていた。
どんだけ僕のこと取り上げてもお前たちの想像の上を行くことは間違いないけどね。だって、君たちがやいのやいの言ったところで「僕」が敵連合のNo.2であることなんて分かりようがないんだからさ。
そろそろ行くかな〜なんて思いながらテレビを消すと、袖を引かれる感覚がした。目を向けてみるとそこには涙目のトガちゃんがいる。今僕に気づかれないように後ろに来たの? やるね?
「‥‥‥‥ゆずくん、ヒーロー側じゃないとダメ? 私たちと一緒じゃダメ‥‥?」
「ヒミコちゃん‥‥」
「ヤだよ‥‥ゆずくんがいないとか、もう‥‥」
「‥‥僕の目的のために、まだ雄英には居たいかな」
「‥‥‥帰ってくる?」
「もちろん! 言ってるでしょ? 僕の本当の味方は君たちだし、僕の家族は君たちだけだ。断言するよ」
涙目で僕の裾を掴むトガちゃんと向き合う。裾を握る手を離させて、ゆっくりと手を握る。両手で僕はどこにもいかないって、証明する様に、その悲しげな瞳を見つめ返す。
「僕は弔くんの右腕で、みんなの仲間だ。その事実だけは変わらない。一週間‥‥二週間に一度は会える様にするし、どうせ全部終わった後はみんなで一緒に過ごす時間のほうが長いんだよ? だから少し我慢できる?」
「でも、ゆずくんがいなきゃつまんないです」
「そこまで? 嬉しいけど泣いてちゃダメだよ。折角の可愛いメイクが台無しになっちゃう」
「女の子を泣かせるなんて舞妓は罪な男だね〜」
「あはは。コンプレスさん? 今そういう感じじゃないでしょ」
コンプレスさんのおかげで陰鬱としたムードが和らぐ。うーん、これは流石に大人が過ぎるな‥‥流石は自らをおじさんと呼称するだけある。
「‥‥‥譲葉、お前にはもうこれだけ仲間がいるんだ。さっさと終わらせるぞ」
「はいはい。わかってるよ」
弔くんの言葉に短く返してから、トガちゃんを抱きしめる。これで許してほしいね。一応ドキドキしてるんだからね???
「‥‥‥嘘つかないでね」
「当たり前でしょ」
「約束して、嘘ついたら‥‥」
「お、なになに? いいよ。どうする?」
「ゆずくんと一緒に寝るから」
「ヒミコちゃんはもう少し自分のことを大事にしようか‥‥‥???」
どうなってんだこの子、流石に倫理観がぐっちゃぐちゃじゃね? ‥‥まぁ、まともに愛されてこなかったことや、彼女の性癖のことを考えると普通に甘えてきているだけの可能性が一番高いけどね。これむしろ父性とか求めてない? 僕はパパだった‥‥?
「トガ。安心しろ、譲葉は必ず帰ってくる」
「弔くん‥‥」
「大体譲葉の本当の居場所はここだけだ。ここ以外の場所なんてねぇよ。ここ以外で本音を言える場所なんてあるわけないだろ」
「そうなんだけどなんかムカつく言い方だな!」
それはまるで僕がコミュ障根暗陰キャみたいじゃん! いや、本当は卑屈なやつだっていうのは大体あってるのか‥‥? まぁ、曇らせが好きな奴なんて往往にして卑屈で変な奴しかいないと言われれば頭を縦に振るしかできなくなってしまうんだけどね‥‥僕含めて多分同志がいるならヤベェ奴しかいねぇのは本当にそうだし。
「それじゃあ、みんなまたね!」
「‥‥早く帰ってきてね」
「もちろん! ‥‥まぁ、潜伏は続けるけどね!」
「舞妓、俺がゲームをクリアするまでに帰れよ?」
「わかったってば。スピナーくんは僕のハイスコア抜くことだけを考えてなよ」
「おじさんも新しいマジック覚えておくから、トガちゃん泣かせる前に帰っておいでよ?」
「コンプレスさん‥‥あのさぁ‥‥後半いらなかったでしょ。意地悪だなぁ」
「譲葉ちゃん、いってらっしゃい。待ってるからね」
「マグ姉は安心感があるなぁ」
「さっさと帰ってこいよ! 遅くてもいいけどよ!」
「できるだけ早くは帰るよ。僕の居場所はここだからね」
「‥‥‥‥」
「なに? そんなに切ない顔しないでよ荼毘くん。全部壊すんだ。そのための下準備だよ?」
「いってらっしゃいませ、舞妓譲葉」
「うん、いつもありがとね。黒霧さん」
そして最後に、弔くんと目が合う。その目はどこか優しくて、しかし決意を滲んだ赫が、こびり付いた、そんな瞳をしていた。まるでチームメイトを戦場に送り出すみたいだな‥‥生まれてこの方その他のスポーツやってないんだけどね!
「ん」
「はは、うん!」
お互い言葉数を少なく、グータッチをする。そしてバーの扉を開けて外に出た。振り返ったりしない。名残惜しくなっちゃうからね。
‥‥‥みんないい顔してくれるなぁ‥‥たった二日の交流でこれとか、流石に適性が高過ぎるぜ‥‥曇らせの適性が高過ぎる‥‥あんなの僕に曇らせてくださいって言ってる様なもんじゃん! クッソ〜‥‥メインプラン練り直すか? 少なくともメインプランの見直しは必要だな‥‥もっといいプラン練ってやるから覚悟しろよ!
× × ×
「‥‥‥弔くん、毎回こんなのに耐えてたの?」
「まぁな」
舞妓の消えた、ここ数日に比べて幾分か静かになったバーでトガがそんな言葉を死柄木に投げかけた。
『こんなの』とは、舞妓譲葉が敵の陣地に単身潜入することだ。
舞妓の強さなんてものを皆は理解していない。戦ったことがあるわけではない。しかし、本気でやり合ったら勝てないであろうことは理解していた。それは個性の相性や彼個人の強さではない。それは、ひとえに彼の想いの強さと『もう自分は彼に手をあげることができない』という理由が故に。
「こんなのを何度もなんて弔ちゃん辛くなかったの?」
「最初はまぁ‥‥そのうち慣れるよマグネ」
「おっ、ボスの余裕ってやつか? 死柄木」
「揶揄うなよMr.」
微笑みながらそう口にする彼の顔は穏やかだ。腰掛けていた椅子からゆらりと立ち上がり、皆に目を向ける。
「辛いか? お前ら」
その顔は微笑んでいる中に狂気を孕んでいた。彼は机の上に置いていた新聞を手に取ると、それを握りしめてボロボロにしてしまう。それは跡形もなくなるほど、瞬時に、形を失い床に散った。
「少し離れるだけで“これ”だ。もし裏切られたら‥‥なんて考えたくもないだろ」
そう言うとゆっくりと手を伸ばす。まるで何かを掴もうとするかの様に。
「譲葉はその裏切りを受けた。だから、俺はあいつに目的を達成させてやりたい。ここしか居場所がないんだ、俺たちと同じで、なら、そのために全てを切り捨てるあいつを応援してやるのが親友って奴だろう?」
拳を作った彼は圧倒的な自信を漲らせた。それは言葉を力とし、伝播していく。皆の心にゆらりと焔のような希望が立つ。
「俺たちがあいつを裏切らない居場所になるんだ。あいつの居場所になる‥‥そのためにも‥‥」
死柄木は、宣言する。それは男の宣言で、友の宣言で、王の宣言だった。
「俺たちが世界を救う。再建するんだ、俺たちが生きやすいように」
彼は微笑う。その奥に破滅への衝動を滲ませて。
彼は嗤う。その瞳の奥にどろりと蕩ける『崩壊』を滲ませて。
本物の悪意は、そのときをいつまでも待っている。彼が、自分の横に居座るその瞬間を、獰猛な瞳をして、彼は嗤うのだ。
× × ×
「さて、ここだね」
僕がバーを抜けて辿り着いたのは脳無生産工場だ。なにしに来たのかと言われるとまぁ、普通に脳無作成のための液体に浸かってヒーローを待つためである。ここで今ラグドールが浸けられてるんだけど、ここで一緒に見つかれば脳無にしようとしてたんだってことがわかって一気に曇らせ街道を爆走できるかなって思ったんだよね。
どのドラム缶が空かな? と確認する様にひょいひょいっと上から覗く。するとその中の一つに裸の状態で沈められているラグドールがいた。‥‥どうでもいいかもしれないけどめちゃくちゃえっちだな。ヤバい、もしこれが一日猶予あるとか言われたら僕なにしてるかわからんぞ‥‥最近馬鹿みたいにトガちゃんに引っ付かれてて、それなりにその‥‥ね? やっぱり男の子だし‥‥ま、まぁ? 僕はほら、精神が成熟してるから我慢できるけど、全然我慢できない可能性とかあるよね!
「それじゃあまぁ‥‥服を脱ぎますか」
服を脱いで適当にゴミ箱にでも捨てておく。まぁ、この後ラスボス先生が全部吹き飛ばすのでどこに置いてても一緒なんだけどね。
「よし!! ‥‥廃工場で全裸になるってなかなか退廃的だな?」
普通に変態の出来上がりまであるぞ。しかも目の前に裸の女性‥‥な、なにが始まるんですか!? いやまぁ! そんなことしないけどさぁ!! ‥‥普通にサーチで無個性って見えてるのがよくないね。無個性にしたのは僕なのになんか罪悪感あるよ。元から無個性になるのは確定だったんだけど、それはそれとして相手の個性を奪ってその個性で無個性って診断してること自体がなんか残酷だなって‥‥興奮が冷めちゃう。
「はい、ドボーン!」
ラグドールの横、僕専用のハイエンド仕様のドラム缶に裸で飛び込む。うへ〜! 夏とはいえこんなに冷たい液体に体を浸すのは流石に寒いよ!! ‥‥‥この液体なんなんだろ? 一応僕のところのやつだけ成分が少し違うはずなんだけど‥‥ハイエンド仕様で外からでも見える異様な感じね。少し恥ずかしいけど‥‥これくらいなら全然許容範囲内だね!
というかまず、液体の中にいるのに呼吸できる時点で普通におかしいんだよね。個性由来のものであることは間違いないわけで‥‥これはラスボス先生のどの個性で作ったんだろうか。
「まぁ、これでみんなが助けに来た時に曇るのは確定でしょ。だってほら、僕は脳無にされかかってたって思ってくれるだろうし? しかも個性まで増やされてるんだよ? そんなの曇るしかないじゃん!」
狭いドラム缶程度の液の中で少し暴れる。いやね? そんなのえっちじゃんか。無理じゃない? 普通に考えて曇り顔を見られるってわかったら暴れるでしょ! 老若男女誰もがさぁ〜! これが外から透け透けで見られやすいとしても今は誰も覗いてないもんね!!
「‥‥‥原作なら来るのは出久くん、轟くん、切島くん、ヤオモモちゃん、飯田くん‥‥かな? 原作と齟齬がそこそこあるし、ここからはガチャかなぁ〜‥‥出久くんは確定、で、個性のことも考えてヤオモモちゃんも来るとして‥‥あとは誰だろ?」
言い出しっぺは切島くんの可能性が一番高いけどそれでも100%じゃないと思うんだよね‥‥‥原作は連れ去られたのがかっちゃんだから切島くんが提案したけど。誰が提案するのかな? そもそも誰も来ない可能性もある? まぁ、来なかったとしてもヒーローを曇らせられるからいいんだけどね。
「‥‥でもまぁ、来るでしょ。ヒーローなら。待ってるよ? みんな」
一人。ぶくぶくと液の中に沈みながらそんなことを口にする。誰が来ても、美味しいしね。さてさて、どの曇らせの花が来てくれるのかな‥‥なんて思いながらあと数時間後の展開を期待して僕は瞳を閉じた。
皆さん! んこにゃ様すごいよね‥‥なんだあの絵‥‥えっちだ‥‥
今後も二人三脚で頑張っていきたい所存ですので! よろしくお願いします!
感想欄! 評価に誤字報告! 全部見させてもらってます! ありがとうございます! 皆さんの名前も覚え始めて久しい‥‥ありがたい話ですよ本当に。感謝してます! 今後もよろしくお願いします!(強欲)
それからご報告ですが‥‥そろそろ特大のやつかましますので、覚悟だけ決めておいてくださいね♡
映画編を入れるかどうかのアンケートをさせてください!
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入れたのが見たい!
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本編だけ追いかけるのでOK!
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アンケート結果が多い方で!