個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア! 作:波間こうど
様々な要因によって遅れてしまい申し訳ありませんでした‥‥ごめんなさいです‥‥
しばらくして、泣く演技が終わった頃(泣く演技と言っても僕レベルの演者スキルを持っているとしっかりと涙も流せるし、顔も赤くなるし嗚咽も出る)になって、生徒の誰かが息を大きく吸い込んだ音が聞こえた。あ、息止めてなくてよかったのに‥‥それともトラウマ刺激されて過呼吸になったのかな‥‥? くぅぅ〜! みんなの曇り顔を見るのが楽しみだぜ!
「‥‥落ち着いた? 舞妓キャッツ」
「えぇ‥‥無礼な言葉を口にしてしまい申し訳ありません‥‥」
「ううん、いいよ。心配の気持ちはすごく伝わったから」
ラグドールは慈愛に満ちた瞳を僕に向けながらそう言うと、僕の頬を優しく指で撫でた。
「舞妓キャッツは大変な思いをしたんだね‥‥でも安心して! あちきは個性がなくなったってプロヒーロー! 卵のみんなよりもよっぽどお姉さんなんだよ? 迫害なんてお茶の子さいさいにゃ!」
腕を曲げて力瘤を見せつけながらそう強がる彼女はまさにヒーローと言った顔もちだ。いやぁ‥‥この人が一番ヒーローしてるよ‥‥だってこの人は今、明確なまでの『被差別者』なんだぜ? これでよく笑顔でいられるよ‥‥まぁ、メンタルが参ってる(ことになってる)僕のためではあると思うけど。いやぁ、強がる様は美しいねぇ‥‥どっかで叩き落としてやるからねぇ‥‥
「‥‥この力、必ずお返しします。なので、方法を見つけるまで、貸してください」
「ふふ、返してくれるって言ってくれるだけでもすごく嬉しいよ。よぉ〜し! 舞妓キャッツは今からあちきの一番弟子! その力の使い方を手取り足取り教えてあげるね!」
「お手柔らかにお願いします‥‥ラグドールさん」
「ん? なんにゃ?」
僕の頭を撫でる優しいラグドールさんに感極まったような声色を作り抱きしめてみる。耳元で「ありがとうございます‥‥」と呟くと、彼女が「ん‥‥っ」と少し色っぽい肯定の言葉を返してくれたのが聞こえた。これでみんなのメンタルも少しは持ち直したかな? いい話風にするとみんななんとなくぼんやりでも納得してくれるよね〜‥‥‥ところでなんでそんなにえっちな声出したの? もしかして耳弱いの?
「‥‥‥そういえば、どうして今日ここに来たんですか? こんな時間ですし‥‥日にちを改めても良かったんじゃないかなとも思うんですが‥‥」
僕が泣き腫らして赤くなった目を相澤先生に向ける。すると彼も少し表情を曇らせながら口を開いた。いや、今回は生徒の、出久くんや青山くん向けの曇らせだったからあんまり過去を知らない貴方には効いてないのかな? そんな微妙な曇らせ顔はお腹に微妙でーす。67点! 単位はあげるけど勉強は続けてください!
「俺はそうしたほうがいいと思ったんだがな。プッシーキャッツの皆様たっての希望だったんだよ」
「‥‥‥‥なんで?」
「それはこれから説明してもらうさ。‥‥爆豪には後で切島か飯田から言っておいてやれ。あと、お前いつまでラグドールに抱きついてんだ、離れろ」
迷惑だろーが、というような顔をしながらジロリと睨んできた相澤先生に従ってラグドールから離れる。あ、柔らかくて気持ちよかったです。ありがとうございます‥‥こんなこと言ったら引かれるかな?
「本当は舞妓キャッツの言う通り、日にちを改めてってことにするつもりだったんだけどね‥‥」
「それは被害が出てない場合! 私たちは君たちのことを守らなくちゃいけないヒーローという立場にありながら、舞妓キャッツを誘拐され、あまつさえ脳無に改造される一歩手前くらいにまで危険に晒してしまった!」
「なら、最初は揃っての謝罪が正しいだろうということだ」
「あちきが退院したらみんなに謝罪をするって言うのは決まってたんだにゃ! 退院許可が下りてからすぐに準備したら今になったってことにゃ!」
「本当に、申し訳ない‥‥ッ!」
ふむふむ‥‥これは僕が捕まっちゃって、脳無に改造されかけたからこその対応ってことだね。いや、そうなることは知ってたんだけどね。こちとらドクターと繋がってプッシーキャッツの皆様が病院内でお話ししてる内容は全部知ってるわけだし、通話なんかもハッキングしているから今日来るのは事前に知ってたわけだけど‥‥細かいところのすり合わせはしてないから大幅にズレてないかの確認は大事だよね。
まぁ、原作ではビルボードチャートが終わってからってことになる予定だったんだけど、かっちゃんは『スカウト』だったのに対して僕は『改造』だからね。そりゃ謝罪しなくちゃいけないレベルってものが違ったのかもしれない。いや、ラグドールの個性が僕に移動したってのが大きいんだろうけど。
「‥‥‥謝罪なんて、僕が先走ったからの行動だったんですから責めてくれたっていいのに‥‥」
「お前一人にそこまでの責任があるわけないだろうが、アホか」
相澤先生が僕の頭にチョップを叩き込みながらそう口にする。‥‥まぁ、ヒーロー側としては生徒の責任なんかにされたら立つ瀬マジでないか。
「舞妓キャッツは本当に悪くないよ、君は君として、ヒーローの鑑みたいな行動をしたわけだし」
「ただ、次からは避難誘導は聞いてよね。君は一応まだ『仮免』も持ってない一学生なんだから」
あ、そんな感じで原作に向けて話を修正していくわけね‥‥こっからどうやって修正を図るのかと思ってたんだよね。ふむふむ、なるほどね?
「‥‥‥‥‥今回の出来事についてはもう、謝らないです。だから、皆さんのこともまとめて救えるような、立派なヒーローになります!」
僕が関与しているから細かいところ自体は変わっているだろうけど、それでも大きな流れは変わらないようになっていることは僕は今までの流れでしっかりと理解している。僕がどれだけ派手に動いても僕が干渉することができる運命は結局のところ決まりきった一つのエンディングに向かって収束していくのだ。それでもこれが確定したことってわけじゃないから常日頃から確認しておく必要があるけどね。
その後、少しだけプッシーキャッツの皆さんと会話をしてからもう夜も遅いということで皆さんが帰宅する。まぁ、学校側としては夜の十時くらいまで生徒を強制的に起こさせるのはちょっとどうかと思ってるだろうしね。プッシーキャッツの皆さんがここに来たいっていうのはラグドールのことも考えての行動だろうから止めるに止められなかったんだろうけど。
「ゆずくん、大丈夫?」
「ん、大丈夫だよ。ありがと」
心配して駆け寄ってきてくれた出久くんに問題ないということを告げてあげる。まぁ、あれ全部お芝居だからメンタル的な不調は何にもないんだよね。ぶっちゃけた話をするならだけど。
「部屋も隣だし、何かあったら聞くから、すぐに言ってね?」
「心配しすぎだって! みんなもごめんね? いきなり泣いてびっくりしたでしょ」
みんなに向けてニヘラと笑いながら言ってみると、そこに反応してくれたのは切島くんだ、誰よりも早く反応を返してくれる。
「ほんとだぜ! いつも笑顔なんだからよ、泣いてたら調子狂うわ。舞妓には笑顔のが似合ってるぜ?」
「みんな! 鋭次郎が告白してきた!」
「そういうところはよくないと思うけどな!」
ゲジゲジと何やら耳郎ちゃんや葉隠ちゃんにいじられる切島くんを遠目で可哀想に眺める男子組を見つつ、ゆっくりとソファから立ち上がった。この後は梅雨ちゃんとの蟠り解消会があるだろうからそこに僕はいちゃいけないからね。もうカメラはセットしてあるから、僕としては一刻も早く退散してカメラの映像確認したいんだわ。
「それじゃあ僕はちょっと早めに寝るね? 疲れちゃってさ」
「あ、うん。一人で行ける?」
「さっきから出久くん子ども扱いしすぎじゃない? 余裕だってば!」
何やら心配そうな顔をして僕のことを見てくる出久くんに向かって大丈夫大丈夫と告げてから階段を登る。ついでに設置したカメラを回収することも忘れない。いや〜、こういう時僕の個性は便利だよね。『不義遊戯』で回収できるし、『サーチ』でみんなの場所をしっかりと把握できるから僕の行動が怪しく思われないかを把握できるしね。
「あ、梅雨ちゃんが出てきた」
部屋から梅雨ちゃんが出てきたことを確認してから自室に入る。ここから仲直りという名の掘り下げが入るんだけど‥‥原作よりも多いメンバーで行ってるんだよね。どーするんだろ‥‥というかかっちゃん寝ちゃってるけど? ‥‥まぁ、多分寝れてないと思うけど。
「さて、と」
部屋に入ってすぐにドアの鍵を閉めた。電気を消してカーテンを閉じ、完璧に寝てますよ〜という体勢を整える。
そしてすかさずにカメラのデータをパソコンにアップロードして、有線のヘッドフォンをパソコンと接続し、マウスを右手に持ちながら椅子に深く腰をかけ、息を深く吸い込んだ。
「この楽しみのためにわざわざ高いカメラを買ったと言っても過言ではないんだよね」
そう、これから始まるのは僕と言う人間が“この物語”の世界に産み落とされた理由でもある。
『僕が貴方を被差別者にした!!』
その、慟哭が耳に突き刺さる。演技の練習は万全だ、これならよっぽど心理を読むことに長けた個性を持っている人以外には僕のこれはバレないだろう。
「‥‥‥あはっ」
最高の曇らせだった。雲梯だ。最高の、極上の、至上の、曇らせの楽園だった。
「あはは」
その顔が見たくて仕方なかったんだ。口を押さえる。そうしないと口から全部が零れ落ちてしまうと思ったから。そうしないと、笑い声で横の部屋の出久くんたちを起こしてしまうかもしれないって思ったから。梅雨ちゃんとの仲直りからまだ帰ってきてないかなとか、そんなことを考えるほどの余裕がない。
それほどの極上だった。
「え〜!! なんでそんな顔してるの!? みんな僕の後ろでそんな顔してたの!? 出久くんと青山くんの顔が最高すぎてびっくりしちゃうんだけど! そうだよね! 君たちからしたら僕のこの独白は『ズルをして個性を手に入れた』っていう負い目があるからこそそんなに輝く顔ができるよね! 君たちがそうやって手に入れた個性は持っていて当たり前の、持っていないと人権がほとんど剥奪されるような物だもんね! 持ってなかった時のことを思い出さないのかな? 君たちが異常者なんだよ? こうやって苦しい思いをして泣き崩れるのが普通なんだよ! 君たちは何とも思わないよね? 疑問にも思わないよね? だって、オールマイトとラスボス先生から個性を譲渡されたんだから、個性が移動するなんて超常現象が起こった結果、移動する前に個性を持っていた誰かが無個性になるなんてことにまで配慮が及ばないよね? そういうところがダメなんだよ〜? 他のみんなも可愛い顔してるね? 無個性であるってことがどれだけの重荷なのか、無個性であるってことがどれだけ差別される要因になり得るのか、そういうことをしっかりと理解してくれたのならそれでいいんだよ? これも実用的な種まきだからさ、みんなは後で気づいてね? あの時の泣き声は悲鳴は、全部SOSだったんだって、自分が手を伸ばせば助けられたのかもしれないってさ♡ はぁ〜♡ 可愛いね♡ 耳郎ちゃんとか吐きそうになってるじゃん♡ あっ、この『サーチ』って画面越しでも使えるのか‥‥葉隠ちゃんの顔がよく見えて大変良いと思います♡ すっごい良いね、個人的には好きだなぁ〜♡ 可愛いね♡ 曇ってる顔も泣いてる顔も同情してる顔も哀れんでる顔も全部描写されたその顔の全てをさらに深いものにしてあげるから覚悟しててよね♡♡♡」
自分でもびっくりしちゃうくらいの早口で捲し立ててしまう。このスピード下手したら高速詠唱までない?
一応横の部屋にも声が聞こえない程度の大きさだったと思うけど‥‥と思ってサーチを使ってチラチラと周りを見てみる。まず、出久くんたちはまだ部屋にも帰っていなかったようでほっと息をついた。まだみんな部屋にも戻ってないのかな?
「‥‥あはは、酷い顔〜」
周りを見渡した目線を画面に戻す途中で鏡が目に入る。ヘッドフォンを外して、椅子から立ち上がると、ゆっくりと鏡の前に移動した。両頬に手を当てて笑ってしまう。愉悦に溺れた僕の顔可愛いなぁ〜‥‥え? 酷い顔だけどこんなに背徳的な顔することある? こんなの見る人が見たら発情しちゃうんじゃないの? ねぇ。
「はぁ〜‥‥罪な顔だ‥‥よし、もっかい見直そ」
夜はまだまだたっぷりあるからね。と椅子に座り直す。ヘッドフォンをする前にさっきヤオモモちゃんが僕のことを拘束するついでに作った猿轡を口にしておこう。これでさっきみたいに高速詠唱をすることがなくなるだろうからね。
あれ、僕の個性が『魔術』とかだったら多分この寮消し飛んでるか、何かしら呼んじゃってると思うの。
× × ×
次の日、寝ぼけまなこを擦りながら登校する。何やら僕の寝惚けた姿に何人かが目を逸らしたけど、それについて嫌がらせをすることができるほどの体力もなかった。
あの後、結局何回もリピート再生をする中で気がつけば夜が明けてしまっていたのだ。これあれだね、かっちゃんの泣き顔ビデオ以来だよね。まぁ〜た飯田くんに怒られちゃうなぁ‥‥
学校が始まってすぐにHRが始まる。相澤先生は相変わらずチャイムと同時に教室に入ってきて、いつもならそこから時間を無駄にすることなく即座に話し始めるが‥‥今日はまず軽く頭を下げた謝罪から始まった。
「‥‥先日はドタバタさせてすまなかった。さて、今日からは本格的に林間合宿で取れなかった『仮免』の習得へと向かっていく。これを取ることでお前たちは卵から晴れてセミプロになるわけだな」
相澤先生がそういうと、誰かがゴクリと喉を鳴らしたのが聞こえた。まぁ、ここからは資格を持つ身になるってことだもんね。緊張の一つでもするか。
「それにあたって‥‥諸君たちには最低でも一人二つ『必殺技』を開発してもらう」
「学校っぽくてそれでいてヒーローっぽいやつきたぁぁぁぁ!!」
あ、それ久しぶりだね。みんな仲良しだなぁ‥‥無理に元気になろうとしてるようにも見えるけど。それと僕少し寝不足なので声のボリューム落としてくれるとありがたいかも‥‥え? ダメ? そっか‥‥
ゾロゾロとたくさんの先生方が教室に入ってくる。ここ最近は必殺技を持たないヒーローは絶滅危惧種だとかなんとか説明しながら僕たちのことを体育館へと促した。
「必殺技だって! ゆずくん!」
「あぁ、うん‥‥出久くん元気だね‥‥」
必殺技、必殺技ねぇ‥‥僕は『奥の手』以外はろくに必殺技ないんだよね‥‥というかいらないというか‥‥『奥の手』を使えば正直誰にでも勝てるだろうから作らなかったというか‥‥でも簡易領域なり極ノ番なり使えるようにしておいた方がいいのかな? でもこれからのプランに使うタイミングあるかな‥‥
大体『不義遊戯』の極ノ番ってなに? 領域はめちゃくちゃ解釈広げたんだけどそれでも大変だったんだよ? 極ノ番の条件がわからなすぎて練ろうにも練れないんだけど‥‥
「ゆずくんの個性だと必殺技ってどんなのになるのかな‥‥」
「ん〜‥‥僕の個性ならそうだなぁ‥‥未だに概要がわかってない“黒閃”を上手に出せるようにするとかが手っ取り早いのかな?」
体育館に移動する最中、出久くんが語りかけてくる。君ずっと僕に話しかけてるね? メンタルケアのつもりなのかな? それとも負い目があるのかな? 後者だと曇らせに直結するから嬉しいんだけど‥‥
「お前の個性結局位置を入れ替えるだけじゃねぇんだよな?」
「うん、僕自身よくわかってないんだよね。個性としての汎用性が高いこと自体はいいことなんだけど‥‥まだわからないことが多いのは怖いや」
「そういや、昔無個性だったって言ってただろ? 溜め込む系の個性の可能性はないのか?」
「‥‥なるほど、溜め込む系ね」
轟くんが口にした言葉に考え込む仕草をしてみる。まぁ、そう考えるのが普通ではあるよね。10年以上溜め込んでから発現した個性っていうと中々に信ぴょう性が出てくるよね。というか、それが多分一番真相に近いと思われてるんじゃないだろうか。
実際はラスボス先生に個性をもらったことになってる、ただ個性を隠してただけの人なんだけどね。個性を隠してる必要性ってこの現代の超常社会においてはマジで意味のないことだからそんな考えにみんなは至らないんだろうけど。
僕が脳無にされかけた被害者だから『元からラスボス先生と繋がってて個性を譲り受けたスパイ』であるって考えはもっとないだろうし‥‥ここは轟くんの言葉に乗っておくほうが無難か。
「うん、そうかも。だったら何を溜め込んでいたのかによって僕の今後の個性の向き合い方が変わるなぁ‥‥」
「まぁ、それも全部これから調べていけばいいでしょ。時間はあるし」
耳郎ちゃんが僕の背中を叩きながらそんな風に言ってウインクしてくる。何それ可愛い。昨日あんなに泣きそうな顔で口元押さえてた子とは思えない‥‥ギャップで風邪ひいちゃいそうです〜。可愛くて素敵だね♡
口下手な子から明るい子まで僕が昨日出した弱い部分を見たからヒーローの血が疼いてめちゃくちゃフォローしてくれるな‥‥でも全部演技だってことに気づいてる子は一人もいなさそう。出久くんあたりは違和感とか持った方がいいと思うんだけど‥‥君は僕の何を見てたんだ?
そんなことを言ってるうちに体育館に辿り着いた。みんなとお話ししてたらあっという間ですね‥‥
「トレーニングの台所ランド‥‥略してTDL!!!」
「TDLはダメじゃないですか???」
ツッコミを入れるも完全に無視されてしまった。クッ‥‥これだから大人はダメなんだ‥‥人の言葉を無視して‥‥なんだっていうんだ‥‥そんな風に子どもの声を聞かないからいつも手が届かないんだぞ〜! やーいやーい! ヒーローとは名ばかりの存在〜! 差別を容認する人間〜! お金を貰って人助けする偽善者〜!!
心の中でそんなことを考えていると、いつのまにか説明は終わってしまったらしい。まぁ、適当に聞いていた感じ僕の頭にある原作知識と変わりない感じだったしいいかな。個性伸ばしはこの必殺技に繋げるためのカリキュラムで、これから二学期が始まるまでの十日間でしっかりと必殺技完成にまで漕ぎ着けろって話でしょ? はいはい、とりあえずいくつかの必殺技案を試してお茶を濁すとしますか。
と、その前に流石にこれ以上みんなに気を遣われるのは普通に面倒なので、ここで一度立ち直ったよ〜! これからはいつも通りみんなが望んでる“元気で明るい僕”だからね〜! ってことをアピールしておくことにする。
「よし、みんなちゅうもーく!」
手を叩いてみんなを呼ぶ。みんながなんだなんだ? と僕の方を見てくれたのを確認してからチラリと相澤先生に視線を飛ばした。どうやら僕の考えは理解していないだろうけど少しの間なら好きにさせてくれるらしい。いい先生だねぇ〜‥‥さっきの暴言は無かったことにしてあげるね!
でもそんな風に僕に時間を与えることが、僕に種まきと水やりの時間を与えてたんだって後に気づいた時は僕に会いに来てね♡ その顔見せてね♡
「ねぇみんな! 僕のこと不幸な子だと思ってない? そんなつまんないこと考えて僕に同情するのやめてよね!」
腕を広げてみんなに元気だぞ、ってアピールする。というか、みんなは優しいから僕が落ち込んでるっていう風に考えてくれているのかもしれないけど、正直全然そんなことないんだよなぁ‥‥だって全部演技だし‥‥
「君たちはみんなすごいヒーローになれる素質がある。なんてったって雄英高校ヒーロー科だぜ?」
わざわざゆっくりと歩いて男子の肩を叩き女子の頭を撫でる。こういうムーブが一番元気なムードメーカーって感じするよね。いや、現実でやってたら痛すぎるんだけどそれはそれ。
「ねぇ、君たちはヒーローだろ? 過去に辛い思いをした人を救うのも仕事の一つだろうけど、これから辛い思いをするであろう人を救う方が大事なんじゃない?」
みんな誰一人漏らすことなくタッチしてあげてから手を叩く。みんなの目線を一身に受ける。ここだけ見たら完全に主人公のそれだけど‥‥ここから出久くんが怒涛の追い上げしてくれるし問題ないね。どうせオールマイトとの関係だのなんだのは僕以外のところでしっかりと描写されてるだろうし、僕が寝返ったらそこからはヒーローとして活躍するその主軸が彼になるのは確定だしね。
今だけは主人公させてもらうとしよう。
「‥‥この先、僕が苦しい思いをしたら、そん時救けてよ。そのために今は前を向いて、歩いて行ってよ。まず手始めに‥‥僕に追いついてよ」
ヘラヘラと笑いながら煽ってあげる。こういうときはこういう風に煽ってあげたらみんな乗ってくること知ってるからね。というか誰が乗ってくるのかなんてわかりやすいことこの上ない。
そう、昨日のことなんてな〜んにも知らない、今自分のメンタルを保つために必死なかっちゃんだ。
「何が追いついてよだボケが!! お前なんかより前に俺は居ンだよ! 勘違いしてんじゃねぇぞクソ女男が!!」
「爆豪、そんな言い方はねぇだろ‥‥でも、俺らも舞妓におんぶにだっこじゃダメだよな! やってやろーぜ!」
かっちゃんを諌めながら切島くんが上手に軌道修正してみんなのやる気を引き出してくれる。うんうん、いい子だね‥‥それでいいよ。これでみんなが前を向いたかな?
「さぁ! さっさと強くなって! 仮免なんて全員合格するんだぞ!」
拳を突き上げながらそう口にするとみんなが遅れながらおぉ! と返事をくれた。声揃えるの好きだね〜‥‥これで少しはみんな元気になってくれたかな? この種もきっと芽吹くからね。さてさて、あんな美味しい曇らせを見せてくれるみんなが、どんな顔をしてくれるのか、今から楽しみで仕方ないよ♡
僕のそんな気持ちはきっと知らないまま、みんなは覚悟が決まったような顔で自身の個性と向き合い、必殺技を作るために足を踏み出した。
どうも、お待たせいたしました。
え〜‥‥身内の不幸で全く筆が進まず、今回みたいな空きができてしまいました。申し訳ありません。
これからは前ほどじゃないにしてもできる限り頻度は上げていけたらな、という風に思っていますのでよろしくお願いします。
皆さんの感想や評価に励まされる毎日です。本当に、ありがとう。
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