個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア!   作:波間こうど

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お待たせしました!


★仮免一次試験! 1.5次事件!

 

「ずばりこの場にいる受験者1540人一斉に勝ち抜けの演習を行なってもらいます」

 

眠くて眠くて仕方ない、とでもいうような声で目良さんが口を開いた。人手不足すぎるだろヒーロー公安委員会。手伝ってあげようか? 僕ヴィランだけども。でもたぶん下手な役員より仕事できるよ? え? ヴィランはダメ? それはそう。

 

今現在、僕たちは会場と思われるコンテナの中にギュウギュウ詰めに押し込まれていた。こんなにギュウギュウだとちょっと動くだけで人と当たるんだよねぇ〜‥‥右側は何にも感じないのに左側は今ヤオモモちゃんの柔らかさを感じます。‥‥耳郎ちゃん‥‥! 胸が‥‥!

 

ざわつく試験会場を見渡しながら適当に話を聞く。まぁ、僕の知識が正しければここで言われる試験内容っていうのは‥‥

 

「先着100人通過のスピード勝負を試験内容とします」

 

ほらね? 原作とは言い方が少し違うけど言ってる内容としては大差ない。結局のところ原作通り的を2人当てられた人から勝ち抜けのゲームでしょ? みんなが苦戦するやつね。三つ目を当てるのが大変なんだとかなんとかってやつ。

 

でもこれさぁ、普通に効率悪くない? って思っちゃうんだよなぁ〜。ステインの影響でヒーローの立ち居振る舞いが重要視される現代において、100人に絞る必要性がほとんどないと思うんだよ。それこそ原作で口が悪くて落とされたかっちゃんとかさぁ〜、一次試験は突破できる実力があっても落とされたわけじゃん? そんな人日頃の行いで見れるし、面接でもすれば良いと思うんだよね。

 

100/1500にする必要性なくない? 落とされた1400人の中に絶対にかっちゃんよりはヒーローの素質ある子いると思うんだよね〜‥‥そういうことまで考慮できていないのだろうか‥‥それができないのに果たしてヒーローを選出することができるような素養があるのだろうか?

 

「大変そうだね、ゆずくん‥‥」

「そうだね〜」

 

出久くんの言葉に適当な言葉を返しておく。実際に大変だと僕は思ってないしね。この試験はどれだけ倍率が上がろうと僕には障害にもならない。

 

なんなら予定では一抜けさせてもらうつもりだ。A組のみんなが僕抜きでも戦える力をつけるためにね。このままだと僕が強いだけのチームになっちゃうし。そんなのは僕のメインプラン的には困るのだ。

 

僕が抜けた後でも僕と戦えるくらいに強くなって欲しいんだよね。今のみんなじゃ僕一人に瞬殺されちゃうし‥‥僕の後ろには弔くんが控えてるんだよ? 僕一人に負けるみんながどうやって日本を救うのさ。僕がいなくてもなんとかなるくらいには強くなってもらわないとね。

 

「各々苦手な地形好きな地形あると思います。自分を活かして頑張ってください」

 

展開された箱の外には膨大なお金が注ぎ込まれてそうなフィールドが広がっていた。なんならよくわからん塔とかあんだけど、あれなんに使うの? 後どっからお金出てるの?

 

「さて、んじゃみんな。先に言っとくけど僕たちは今回不利だからね? 雄英なんて目立つ学校。その上僕たちは体育祭で個性割れてるからさ、出る杭は打たれると思う。だから数人のチームで動こう」

 

手を叩いてみんなの注目を惹きつけてからそう口にする。その言葉にリーダー面すんな、と言わんばかりに無視してかっちゃんが飛び出していくけど、そっちは切島くんと上鳴くんがついていくし問題ないな。精々士傑の人をぶち殺して強くなってくださいな。

 

「僕は一人でいいから他のメンバーで弱点を補い合ってよ」

「何言ってんの! ユズもチーム組めば‥‥」

「やってみたいことがあってさ、それにみんなと一緒にいると多分巻き込んじゃうんだよね」

 

指をポキポキと鳴らしながら言ってみる。まぁ、やりたい事に巻き込んじゃうというのは本当だが、さっきの「一番乗りで上がっちゃってみんなの結束とか、僕がいないところでも強くなる」っていう条件を満たして欲しいのもマジな話だ。だから嘘はついてないよね。片方言ってないだけで。

 

嘘をつきたいときは本当のことも適度に混ぜましょう。そうすることで信じてもらいやすくなりますからね。

 

「今回は僕がしたいことをさせて欲しい。強くなりたいんだ」

 

適当なことを言いながらみんなに向き合う。それからゆっくりと視線を出久くんに向けた。彼が多分一番僕が強くなりたいと言ってる理由をでっち上げてくれそうだからね。無個性云々とかラグドール云々とか自分の中で適当に理由付けしてみんなに共有してくれるでしょ。

 

「それに! みんななら合格すると思ってるしね!」

 

さて、これ以上一緒にいると引き止められそうな気がしないでもない。さっさと離れちゃいましょう。

 

「じゃあ、出久くん。後で会お」

「‥‥‥! うん、また後でね、ゆずくん」

 

二人で拳をぶつけ合う。僕の考えの一端くらいは読み取ってくれたかな?

 

さてさてやりたい事できるかな? 楽しくなってきたね! なんてことを考えながら僕は右足で地面を強く踏みつけた。

 

 

  × × ×

 

 

試験開始を告げる声が響いたのを聞きながら体を伸ばした。ストレッチって大事だと思わない? これするだけで随分と体が動くようになるんだよね。めちゃくちゃ主観かもしれないけど。

 

そういえば最近コスチュームを新調した。というのも、義足になったから右足を動かしやすくするために右足の裾を短くしたのだ。まぁ、とっておきの改造もしてあるしね。それをお披露目するためにも裾が長いのは少し困る。お披露目する機会はないかもしれないけど。

 

そのおかげもあって右足は膝丈程度、左足は長ズボンの丈、というモデルがランウェイで着てそうな奇天烈な服装になってしまった。なんかバランスが悪いということでジャケットを脱いで羽衣みたいな薄い布を羽織ることにしている。これはこれで見た目が天女みたいで悪くないね。

 

いや、誰が女子だよ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「それで、そちらの皆さんは僕に何か用でしょうか?」

 

後ろを振り返るとこちらを警戒したようににじり寄ってくるたくさんの人々が見えた。うん、多分他校の生徒だね。ひぃ、ふぅ、みぃ‥‥よくわからんけどたぶん50人くらいかな? あ、『サーチ』使えば良いのか。

 

‥‥‥56人だね。なんか隠れてる奴もいるから合わせてって感じだけど。

 

「1人相手に雁首揃えて‥‥恥ずかしくないの?」

 

僕の言葉に諸先輩方は返事をしてくれない。睨みつける眼光が少し鋭くなった程度だ。煽られてる自覚あるけど返さないってのは賢い選択だね、うん。

 

ぐ〜っと腕を伸ばす。ストレッチの最後の動作をしながらさっきの出久くんとの会話を思い出した。

 

「うんうん、やりたい事に巻き込みたくなかったんだよね」

 

やりたかった事、それは簡単だ。

 

蹂躙というやつである。

 

こんなのしてるところ見られたらヒーローとしての威厳とか、今までのリーダー的な立ち位置とか少し揺らぐもんね? でも後から回想でこんなところもあったよってしてくれたら「ヴィランとしての舞妓譲葉」が顔を見せてくれそうな気がするでしょ?

 

四方八方ごちゃ混ぜ(シャッフル・スクランブル)!」

 

一度の拍手でたくさんの位置を入れ替える。これは東堂葵もしてなかった事だけど、東堂なら上手に使えそうだな、と思っていたら使える様になった術式の拡張である。

 

この技は、一応自分の部屋なんかで試したりしたけど、何と何を入れ替える、というような指定が多分できない。だけどその代わり、誰も彼もが予想できない位置に人を入れ替えることができる。それは僕も同じだ。僕がどこの誰と入れ替わるのかはわからない。

 

ただ、まぁ。覚悟のできている僕と覚悟のできていない受験者諸君では対応するまでの速度が違いすぎる。

 

それだけあれば十分だ。あとは混乱の最中に定期的に個性を発動してあげながら三つ目のランプがついていない子から積極的に潰していけばいい。僕より早く誰も合格させず、僕が合格するのだ。脱落者は2人でいいんだけど‥‥1人相手に大人数で喧嘩売ってきたんだからボコボコにされる覚悟はできてるって事だよね?

 

僕弱い者いじめされるの嫌いなんだよね。

 

『一人目の通過者が出ました。え? 見間違いじゃない? 1人で56人脱落させて通過しました!』

 

この後大幅に記録更新されるし、まぁ、いいかな。夜嵐くんが120人かなんか脱落させるし。僕はしばらく休憩室のソファでゆっくりさせてもらお。

 

「ちくしょぉ‥‥お前1年じゃねぇかよぉ‥‥俺たち3年にはもう後がねぇのによぉ‥‥」

 

3年生らしい彼から泣き言が聞こえて足を止める。振り返ると泣きそうな顔をしていた。曇った表情と言っていいのだろうか? あんまり好みの顔じゃないなぁ‥‥モブじゃ興奮できないんだよね。

 

「‥‥ヒーロー志望なのになりふり構わず大人数で年下に飛びかかるような人はヒーローに向いてませんよ」

 

できるだけ蔑むような目を向けながらそう言ってみる。するとモブにしてはいい顔をしながら涙を流してくれた。まぁ、ヒーロー科で3年間過ごしてるってことはそれなりに頑張ってた事だろうしね。それにしてもまぁ‥‥頑張ってその程度かよって感じはするけど。

 

「‥‥‥」

 

足を動かす。控え室に行く途中の瓦礫の山で。ドンパチやってるのを見るとなんか気分爽快だな‥‥派手なアクション見てるみたい。ダメなところは主人公が誰かわからない事かなぁ‥‥

 

『2人目通過しました! うぉ!? 次もすごい! 120人脱落させて通過だぁ!!』

 

お、夜嵐くんも通過したみたいだな、うんうん。いい事だね。これで後はA組のみんながちゃんと通過してくれたら文句ないかな。そこで士傑とか傑物学園の人が何人落ちようが正直知ったこっちゃないしね。

 

その後も何人か通過した旨を知らせる放送を聞きながら控え室へと歩く最中。後ろに気配を感じた。ゆっくりと振り返るとそこには誰もいない。

 

だけど僕はそこに誰かがいるのを知っている。

 

「‥‥‥ヒミコちゃん」

「バレちゃいました!」

 

後ろから抱きつくようにして僕に頬ずりする彼女の頭を撫でてあげる。う〜ん。おっぱいが大きいお姉さんに変身した状態で僕に抱きついてくるのやめて欲しいなぁ〜‥‥すっごいこう、ダメなことしてる気分になるから!

 

なんて思っていると彼女がどろりと個性を解除した。裸の状態で後ろから抱きついてくるのはもっとダメだと思います!!

 

「カメラがない場所だからってはしゃぎすぎじゃない?」

「ゆずくんと会うの久しぶりだから許して欲しいのです!」

 

スリスリ〜、と頬を押し付けてくる様はさながら数年会えなかったペットがご主人様に甘えてくるようである。あのほら、SNSで流れてくるやつね。え? 流れてこない? 君たちのSNS政治とかアフィしか流れてこないの? 治安世紀末?

 

「それで、ちゃんとミッションはクリアした?」

「うん、言われた通り出久くんの血ゲットしたよ!」

 

チャプチャプと小瓶を動かす彼女を見てニヤリと笑う。弔くんも酷いよね。僕の親友から血を摂るなんてさぁ〜‥‥敵連合のみんなじゃなかったら殺しちゃってるところだよ。

 

「あんまり引っ付くとバレちゃうから、あんまり引っ付かないようにね? 特に人目があるとこはダメだよ?」

「もうちょっとだけ〜‥‥ゆずくんは次いつ帰ってくるの?」

「もうちょっと先かなぁ〜‥‥あ、でも弔くんが今考えてるヤマには関わるつもりだよ」

 

トガちゃんと人から見られたらイチャイチャしているようにも見える体勢で控え室に辿り着く。まぁ、人が来たら離れてくれるでしょ、なんて思いながら頭を撫で続けてるんだけど夜嵐くんこれ見たらえげつない誤解しそうだよね〜

 

さてさて、みんなはどうなったのかな?

 

「あ、ゆずくん今他の子のこと考えたでしょ」

「君僕の彼女なの???」

 

少し機嫌を悪くしたトガちゃんにつねられながら僕たちは控え室へと足を進めた。

 

というか夜嵐くんのが先にクリアしたのに僕に追いついたってことは全力で僕のところにまで来たでしょ。もうすぐ夜嵐くん来るから離れて? え? ダメ? そっかぁ‥‥

 

 

  × × ×

 

 

「どうせ一番最初に上がったの舞妓だろ!!」

 

そう言って控え室にズンズンと突っ込んできたのは峰田くんだった。その後に何人かのA組のメンツの顔が見える。キッショ、なんでわかんだよ。

 

「オイラたち大変だったんだぞ!」

「ごめんて、そんな怒んないでよ」

 

ぷんぷんと突っ込んでくる峰田くんの頭を押さえつける。それでも腕を回して攻撃してこようとする峰田くんから視線を逸らして後ろにいるみんなに目を向けた。

 

「みんなお疲れ様、疲れた?」

「疲れたよ〜! なんで舞妓1人で行っちゃうの!」

「そりゃあ‥‥このままだとよくないなって思って?」

「なんだよ、ダメなのかよ」

 

う〜ん。君たち今足手纏いなんだよって言っちゃった方がいいのかな‥‥溝生んじゃいそうでダメかな? どういう言葉を伝えてあげればいいんだろ‥‥でも足手纏いの役立たずなのは事実なんだよね‥‥

 

「ゆずくんはゆずくんで必殺技を編み出したみたいだし‥‥無差別系統だったんじゃない?」

 

お、ここで出久くんからの助け舟だ。ありがたく乗らせてもらうとしようか。

 

「そうなんだよね〜‥‥無差別に人を入れ替えるやつでさ。いきなりされたらみんなの目の前に敵が出てきたりしそうで‥‥咄嗟に個性出すと怪我したりしちゃいそうじゃん?」

 

適当な言葉を言い繕うとなんとか納得してくれた様だ。みんながそれなら仕方ないという風な顔をしてくれた。実際は邪魔だったのとみんなに強くなって欲しかっただけなんだけどね〜。

 

その後はみんなとお話ししながら情報収集に徹した。みんながどんな動きがあったのか、どういう風に試験を突破したのかということを僕の原作知識と照らし合わせるためである。大まかな流れは大体原作と一緒かな。強いて言うならヒミコちゃんが出久くんに大した反応を見せなかったことくらいだろうか。

 

そうして時間を潰していると急に画面に目を向けるように指示を受ける。そして画面に写されたのはさっきまで居た試験会場だ。

 

ドーン! と派手に爆破される街を見ながら誰かが「なぜ」と溢した。まぁ、救助の訓練を行うっていうのはわかる。きっと神野事変のことを考えると正しい判断なんだと思う。わかりやすく危ない状況に置かれたときの判断を見ようとしてるみたいだし。

 

そうは思うけど‥‥どう考えても他に方法あっただろ。無尽蔵にお金が湧いてくるわけじゃないでしょ? あの建造物をぶち壊す意味がわからない。

 

「ヒーロー委員会は金が有り余ってんの?」

「そんなことないと思うけど‥‥お金は常にカツカツなはずだよ」

 

だよね〜、なんならオールマイトが事実上の引退を宣言したばっかりだ。スポンサーだって幾つか降りたという話を聞く。それなのにこんな避難場所にも観光スポットにもなりそうなものをぶち壊すとは‥‥随分と余裕だね? 強気と言い換えた方がいいのかな?

 

「この被災現場で救助演習を行なってもらいます」

 

つまるところ要救助者の皆さんを被災現場から救出できればいいわけだ。‥‥正直言って僕の独壇場すぎないかな?

 

「‥‥なぁ、この試験」

「うん、そうだよね」

 

A組のみんながヒソヒソしながら僕に近づいてくる。多分、みんな今の僕と同じことを考えているのだろう。

 

「これ、舞妓だけでいいんじゃね?」

「だよな? 舞妓が個性使えば一発じゃん」

 

あんまり僕ばっかり頼ると後で大変なことになるよ、と言おうとしたけど口を閉じた。それは目の前でとても面白いことが起こっていたからだ。

 

「エンデヴァーの息子さん。俺はあんたらが嫌いだ」

「!?」

 

へぇ、やっぱりいい顔するね。曇り顔というよりも拒絶、否定。そういうニュアンスが顔に滲み出てる。認めたくないのだろう。まぁ、当時のエンデヴァーも轟くんも人のこと気にしないカス野郎だったと言われればそれまでだしね。

 

うん? 待てよ? 僕が下手にあの2人の元に突っ込んで行ったら大変なことになるのでは? 轟くん、夜嵐くん、かっちゃんのことを強化して合格させちゃうとこの後の仮免取得のための特別講習が無くなって強化入んなくなっちゃうのか‥‥

 

ちょっとはっちゃけてもいいかな? ここでみんなの強化を入れながらも、僕はみんなよりも数歩先にいるって状態にした方がみんな強くなってくれる?

 

憧れの感情でも、友情でも、なんでもいいから僕に向かって向けてくれる強い感情。A組のみんなのそれが段々と強まっていってるのは知ってるんだよね。ところどころ理解できない感情もあるけど‥‥それはそれだ。僕に強い感情を向けてくれるのならそれで十分。

 

それを強固にして、僕への感情を強めたら、裏切ったときの顔がもっといいものになるからね。

 

「それじゃあ、少し派手にしちゃおうかな?」

 

ちょ〜〜っとみんなよりも先に行ってることを見せてあげて、みんなの強さと意識を向上させる。それでいてみんなのことを邪魔せず、轟くんと夜嵐くんが喧嘩してかっちゃんが試験に落ちるような作戦‥‥‥ってなるともうこれしかないよね。

 

閃いた考えのまま、僕はニヤリと頬を緩めた。

 

『敵による大規模破壊が発生! 規模は〇〇市全域、建物倒壊により死傷者多数多数!』

 

その声を聴いてゆっくりと目を見開く、周りにはA組のみんなや他の学校の人もいるけど、正直あんまり関係ないんだよね〜。

 

「‥‥‥さて、やるか」

 

スタートの合図が行われる前に『サーチ』を発動する。この個性も個性伸ばしで見える数は増やしてあるから今回の避難者分くらいなら余裕だろう。目を凝らして光の点となっている要救助者を探し当てる。

 

「幸いなことに瓦礫が多くて入れ替えるものについては事欠かないね」

 

『スタート!』の音が聞こえた。でも、もう遅い。

 

僕の仕事は完了している。

 

手を叩く。1度目で救助レベルの高いお爺さんと瓦礫の場所を入れ替えた。2度目でおばあさん、3度目で赤ちゃん。4度目で‥‥

 

瓦礫に挟まれている要救助者と同じくらいのサイズの瓦礫を入れ替えることで倒壊が起きたりしないようにする。優しいクッションなんかもついでに入れ替えてあげることで優しく着地できるようにしつつ、入れ替えを繰り返す。手前から行うことで他の受験者が助けるよりも先に僕が救助を行う。

 

『サーチ』と『不義遊戯』を上手に使いこなせばこの程度のことなら造作もない。みんなとはレベルが違うのだ。ということを事実として叩きつける。

 

それにしてもめっちゃ拍手してるみたいでなんかカッコ悪いな‥‥

 

『しゅ、終了です‥‥記録は47秒‥‥え、これ、どうするの?』

 

目良さんの困惑した声が聞こえてくる。そんなの決まってない?

 

後ろに振り返って、そうなると思ってましたという顔のA組を見ながらウインクして、

 

「僕抜きでもっかいしたらいいんじゃないですかね?」

 

僕はキメ顔でそう言った。

 

 

  × × ×

 

 

「‥‥‥舞妓」

「いやぁ〜、やり過ぎちゃいましたよね」

「やり過ぎだ」

 

僕はあの後要救助者の皆さんが所定の位置に戻るのを眺めていると役員さんに呼び出しをくらい、担当の教師のもとに送還されてしまった。「合格だとは思いますが‥‥試験はやり直しますので‥‥」って言われたんだけど。めちゃくちゃ気使われてんじゃん。

 

「たぶん前代未聞だぞ‥‥」

「あはは‥‥相性が良かったですから‥‥それに、僕にばっかり頼って、A組のみんなが強くなれないのは困りますし、この程度の試験、さっさと突破してもらわないと」

 

よいしょ、と相澤先生の横に座る。するとひょこりと横から顔を出してきたMs.ジョークが僕の顔をじっと見つめながら口を開いた。

 

「相澤、これがお前の言ってた『軸になる奴』か?」

 

お、なんか面白そうな話題が出てきたな。なんの話ですか? というように相澤先生に視線を移すと心底嫌そうな顔をした相澤先生が視線を遠くの試験会場に向けた。なんや、こっち見んか。

 

「相澤が君のことをクラスに影響を与えてる2人、その2人が与えた影響をいい方向のものにシフトさせる奴がいるって言っててさ! 君のことをベタ褒めしてたんだぜ?」

 

なぁ〜、相澤〜。と言いながら相澤先生の頬を突くMs.ジョークの言葉には心当たりがあった。

 

原作で言ってた「A組のクラスの中心でもまとめているわけでもないけど大事の渦中の中にはどちらかがいて影響を伝播させている」のかっちゃん、出久くんへのアレでしょ? アレを良い方向にシフトさせてる‥‥なるほど、相澤先生にはそんな風に見えてるんだ。

 

これはこれは、随分と僕に絆されてるんじゃないの? これなら僕が裏切ったときに先生もいい顔してくれるんじゃないか?

 

「相澤先生に褒められるのが他の先生に褒められるよりも嬉しいので、直接言ってもらうタイミングを楽しみにしてますね!」

「勘弁してくれ‥‥」

 

頬をMs.ジョークの反対側からフニフニと突く。それに抗議することもなく、相澤先生が天を仰いだ。

 

さ〜て、みんな。僕がいないってことは原作と同じような環境ができてるんだよ? みんなのレベルアップのチャンスなんだから、しっかりと成長してよね? あ、でもかっちゃん、轟くん、夜嵐くんは試験に落ちてね。まだ強化イベあるからさ。

 

上手くいくかなぁ〜、と思っていると夜嵐くんの風が轟くんの炎で浮かされるのが見えた。仲悪いのは順調に進行してるね。

 

それじゃあ、僕はみんなのことを観察しながら原作通りになるのか確認しようかな。『サーチ』がこういうときは便利個性すぎるぜ。

 

「期待してるよ、みんな」

 

僕は相澤先生にも聞こえないように、そう、小さく呟いた。





みんなの評価やお気に入り、感想がすごく嬉しくて仕方ない今日この頃。Xでもたくさん褒められて承認欲求満たされて仕方ないぜ‥‥
それにしてもなんかサラッとこんな雑な説明に絵をつけてくる、んこにゃさんイズ何???
これからも、そんなんこにゃさん共々頑張りますので応援よろしくお願いします!

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