個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア! 作:波間こうど
お待たせ。GWは楽しみにしててね。
出久side
「舞妓いつもやり過ぎなんだよなぁ……」
「あいつ試験から摘み出されたんだけど」
みんながどこか呆れたように笑っているのに釣られて僕の頬も緩んでしまう。ゆずくんは賢いし、先を見通せる力があるのにたまに暴走してしまうことがある。それをこのたったの数カ月でみんなも共通認識として持つようになったようだ。
自分でできると思ったら何でもしちゃうからな‥‥人のことを率先して助けるのはいいところだと思うし、僕はそういうところももちろん尊敬しているけど時折自分のことを軽んじているところが見えるのは頂けない。
「あンの野郎……ッ」
かっちゃんの眉が虫の居所が悪いことを示すように(いつものことと言ってしまえばそれまでの話だけど)歪められる。僕は二歩ほどかっちゃんから離れた。
ゆずくんが掻き回した試験が改めて取り行われるようになるのに大体20分の時間があった。20分の間、試験官の皆さんが再度持ち場についたり、ゆずくんが動かした瓦礫などを元の位置に戻すのにかかった。それが終わってから試験が再開されることになる。
試験は救助訓練と同じようにすることを心がけた。瓦礫に潰されそうになっている人、泣いている子ども、どんな被害者も助けるように動いた。
『目線を合わせて、相手のことをしっかり観察して、適切な対応をするんだよ。ヒーローの基本基本』
いつだかにそう言っていたゆずくんのセリフを思い出す。できるだけ安心させられるように、彼のように人を助けられるように動く。
周りを見れば何人かは試験官であるHUCから注意を受けていたが、僕はそんな風に注意を受けることもなく、試験は順調に進んだ。
そんなときだった。
爆発音が奥で響く。そちらに目を向けるとNo.10ヒーロー「ギャングオルカ」がサイドキックを引き連れて僕たちを、瓦礫の街を睨みつけていた。その視線はギロリと品定めするように動き、僕たちを威圧する。
「マジかよ……!」
「ギャングオルカ相手とか聞いてねぇって……!」
周りの人がそんな声を漏らすのが聞こえる。彼らはヒーローをなんだと思っているのだろうか? ヒーローなんだったら相手が誰でも、ギャングオルカでも、それこそオールマイトやエンデヴァーだろうと関係なんてない。最善を尽くし、立ち向かう以外の道はないはずなのに。
『ヒーローって段々とカッコ悪くなっていってない? 質が下がってるって言うか‥‥もちろんカッコいいヒーローはカッコいいままなのはそうなんだけどさ、オールマイトやエンデヴァーが未だにチャートに残り続けてるのって後進が育ってないからじゃん。そう思わない?』
ゆずくんの声がする。彼のことを、僕はヒーローノートに12冊分書き留めている。これはオールマイトに次ぐ記録で、彼という存在がどれほど僕に大きな影響を与えているのかということの示唆でもある。
『だから、僕たちがヒーローになるときはさ! チャートの1位と2位を独占しよーよ! ヒーローの質は……』
「僕たちが底上げする、だよね」
心の中でニコニコでグーサインを出してくれるゆずくんの言葉に被せて何度も何度も口にした言葉を復唱する。彼が僕に言ってくれた言葉はよく覚えている。もちろん全部じゃないけど、僕のことを救ってくれた最高のヒーローが、僕に向けてくれた言葉は、ほとんど全部、覚えているんだ。
「ごめん、峰田くんあとお願いしてもいい?」
「え!? ちょ、緑谷どこ行く気だよ!」
峰田くんに比較的マシな怪我をしたお婆さんを預けてからギャングオルカの方に向かって足を向けた。炎と風、氷が吹き荒れるその戦場はよく見えないがとてつもない規模で戦闘が行われているようだ。
「たぶん轟くんたちが戦ってる、サポートしてくる!」
「轟がいるなら別に行かなくてもいいんじゃ……他にも向こうの方に行った受験者はたくさんいただろ! 絶対こっちで救助に回った方がいいって!」
確かに峰田くんの言う通りなんだろう。それが、この試験を受ける上で最善手であろうことはわかっている。あっちにはサポートを含めてたくさんの受験者がいて、轟くんがいる。それならそっちは任せて先に被災者を救助する方が先だという考えは理にかなっている。
だけど、そういうわけにもいかない。
さっきのあの拍手の姿が目に焼き付いて離れない。
もっというのならずっと、ずっと前。そう思えてしまうけどつい最近の出来事、ずっと僕の心の内側に巣食っているトラウマ。
『みんな、生きてね。大好き』
敵連合に連れ去られる瞬間のゆずくんが目に浮かぶ。
もう、誰も、失いたくない。そのためには力がいる。そのためには足りないものが多すぎる、もっと強くならなくてはいけない。
ずっと考えている。ゆずくんを守れるだけの強さが欲しい。ヒーローでいられるだけの力が欲しい。
「ずっとゆずくんにおんぶに抱っこじゃ格好つかないから……!」
そんな答えになっているのかもわからない言葉を口にして走り出した。フルカウルは随分と身について来ていて、常時8%までなら全身に纏うのに溜めもいらないし、副作用もない。動き回るのに十分な力がある。
足を地面に叩きつけるようにして跳躍する。強くなる、人を助ける。そのための経験を、今すぐに、最短で積める方法があるのなら僕はどんな修羅場にだって飛び込んでいける。
ゆずくんが脳裏で薄く微笑んだ気がした。
× × ×
「いやぁ〜、みんな頑張ってたね。偉い偉い」
「高みの見物決め込みやがってこの野郎!」
上鳴くんに肩を組まれそのままヘッドロックに移行される。ぐぇっ、と情けない声が出てしまった。なにさ、そんなに絞めつけられたら死んじゃうぞ? いや、それで曇るならいいんだけどさ。
試験が終わったあと、僕はみんなと合流した。普通に原作と大差ないような動きに見えたけど、念には念を入れてみんなにさりげなく聞き込み調査を行う。まぁ、聞いてみた内容もある程度は問題なさそうだ。記憶が間違っていればそれまでなので疑われる前に止めておかないとね。
「まぁ、大体みんな受かるんじゃない? ……何人かダメそうな子もいるけど」
「…………」
「焦凍、仲が悪いのは別にいいけどヒーローとしての活動中に私生活の不仲を持ち込んじゃダメだよ? 君のそれで助けられなかった人はどんな顔すればいいのさ」
轟くんの胸を小突いてからそう言う。轟くん自体も今回の出来事を悪いと思っているのかどこか暗い雰囲気を滲ませてはいるものの、その目にはどこか光があった。まぁ、ヒーローとして一皮剥けたって考えていいのかな? 原作通り夜嵐くんと喧嘩してたみたいだし、ちゃんと試験には落ちてくれるでしょ。そうなるように見てたわけだし。大体みんな原作通りの動きだった気がするなぁ‥‥強いていうのなら出久くんが原作よりも早くギャングオルカに突っ込んでいって、原作よりもダメージ与えてたことくらいって感じだ。こっちはこっちで心境の変化があったのかな? 切羽詰まった顔をしていたような気がする。
「舞妓〜……オイラ受かるかなぁ……?」
「ん? 受かる受かる。大丈夫だって! さっき大体みんな受かるって言ったろ?」
「大体? 受からないやつがいんのか?」
チラリと轟くんを見てから瀬呂くんが尋ねた。これはあれかな? 轟くんの喧嘩自体は詳しく知らないけどなんかやらかしたらしいこと自体は理解してて、じゃあ轟が落ちたとして他に落ちる奴がいるのか? って質問なのかな? 言葉の裏を読みすぎて気持ち悪いことになってるんだけどそんなところだろう。
……もしかしてこれ曇らせチャンスなのでは?
「あ〜……多分不合格は二人、かなぁ……」
「二人?」
耳郎ちゃんが僕の右隣から顔を出して訪ねてくる。うん、近すぎだね。女の子の汗の匂いって何で嫌な匂いじゃないのだろうか。僕が女性耐性なかったらこの場で押し倒してるからね! もしくは思いっきり距離取ってる。ここで不様な反応をしたらその時点で童貞くさく見えちゃうから……やはりね、僕のようなスマートな男がね、いいんだよね。
なんか悲しくなってきたな……
「そ、二人だよ。まずはヴィランの目の前で大喧嘩した焦凍。これは大幅減点だろうね。夜嵐くんもそうだけどそれが一番悪手じゃん? どんなヒーローだってチームアップする機会なんてあり得るんだからさ、仲が悪くても任務に持ち込んじゃダメ」
さっきも言ったけどね、と言いながら轟くんの背中を叩く。無論、僕はこの展開を知っていたけど、わざと失望してるみたいな顔をしてみせる。そっちの方が彼には効くからね、仕方ないね。
「……お父さんみたいだったぞ」
「……ッ! ……わる……、かった、次から気をつける」
轟くんが唇を噛み締めるようにして震える声を前に出した。ふぉ〜!! いい顔するよね! やっぱり轟一家は曇らせ適性が高すぎて良くないと思うなぁ……何だろ、DNAから違うのかな? デオキシリボ核酸からたぶんもう別物なんだろうなぁ……生まれたときから完全に曇らせの空の下に生まれてるんだろう。いや〜……いいものを見れたよ。今口の中噛んで必死に誤魔化してるからね、僕。
まぁ、モノローグで過去の父親に自分がなってた、みたいなこと言ってたし自覚はしてたと思うけど、自覚をしているのといきなり言われるのは話が違うからねぇ〜。ほんといい顔だよ。ここまで計算してチャート組んでる僕も僕だと思うけど、そんな機会を提供する君たちが悪いと思うの。
「さっきも言ったけど、ヒーローなんだから。まずはヴィランの退治が最優先だ。私情を常に優先するヒーローなんてヒーローじゃない。今回の失敗は次に活かせるようにしなよ?」
「……あぁ、悪い」
轟くんの目が強い意志を秘めたものへと変わる。一人を虐めすぎるのは良くないかなぁ‥‥そろそろ二人目の話をしておくとしようか。
「で、二人目は……あ、発表だ」
僕の言葉にみんなが注目している最中にぴたりと話を止める。目良さんが舞台の上に上がったからだ。原作ではみんながざわつきながら結果を待っている描写が描かれていて、『合格開示前の時間』が一番嫌だよね、という話をしているところなんだけど……今回はみんなその話をしていない。
これはする時間がなかったっていうよりはあれだな? 僕のことを信頼しきっているから僕に合格だろって言われた時点で受かってるの確定だと思ってるな? はは〜ん? みんな心をだいぶ開いてくれてるなぁ……いいね、結構深くまで踏み込めてる。あとひと押しが欲しいところだね。
『皆さん長いことお疲れ様でした、これより発表を行います……』
目良さんが採点方式をペラペラとお話してくれているのを聞き流しながら周りを見渡す。まぁ、みんなは目良さんの方に視線を向けてるみたいだけど、僕がそうする必要性はないからね。内容も把握してるし、結果も知ってるから。ここで少し見つけておかないといけない子がいるんだよなぁ……
あ、いた。
トガちゃんを見つけるなりトントンと手の甲を叩くジェスチャーを見せてあげる。このジェスチャーはスピナーくんが考案した敵連合内での会話を成り立たせるためのもので、所謂ハンドサイン的な奴だ。
意味は『後で連絡して』もしくは『後で連絡する』である。この後サラッとフケちゃうからね彼女。その前に少しだけお話ししておきたい。
トガちゃんがこくりと頷くのを確認してからゆっくりと前を向いた。ちょうどそれに合わせて電光掲示板がパッと映り変わる。
「……舞妓譲葉みっけ」
いや、あれで落ちたら暴れてここでヴィランであることを宣言しちゃうまであるけどね! 僕が一番強くて、一番カッコよかったでしょ!
「あったぁ〜!!」
「やった!!」
「オイラ仮免取れたぁ!!」
みんなが楽しそうな声を上げるのを聞きながらサラッと周りを見渡す。
これが仮免の試験だっていうことは周りでは何人もの人が試験に落ちて、悔しい顔をしているだろう。その顔が見たいのである。
うんうん、モブにしてはいい顔してる人もチラホラいるね。でもやっぱりA組に勝ってる人はいないなぁ〜……もっといい顔して欲しいところではあるけど……そういうことを押し付けるのはなかなか難しいかな? その子の背景を知っている、笑顔なんかを知ってるからこそ曇り顔が輝くことなんて周知の事実だし。もっといい顔して欲しいっていうのも僕が背景を知ればいいだけの話だしね。
まぁ、今回に関してだけ言えば曇り顔を見たいなら横を見ればいいだけの話だ。
「ねぇ‥‥!」
アハハ! すっごい良い顔してる! やっぱり君は最高だよ! そうだよ! 君の名前なんてあるわけないじゃん! 君の性格を矯正しないと、その暴言を、口の悪さを矯正しないとヒーローになんてなれるわけがなくない? 人をいじめて、それが当たり前だと言うみたいな声で、自分の自尊心を守るために! 被災者に暴言を吐くお前みたいな奴が!! まともにヒーローになんてなれるわけがないだろ!! 馬鹿も休み休み言って欲しいところだよね!!
「爆豪落ちたの!?」
「やっぱり暴言改めよ? 言葉って大事よ」
「黙ってろ、殺すぞ……!」
やいのやいのと盛り上がるみんなを見て涎が垂れそうになっていた口を拭って爆豪を指差す。そして煽るように口を開いた。
「ほら、これで焦凍と合わせて二人だろ?」
「……! 女男ォ……!」
「なんだよ、やるつもり? やめてよ。僕は合格してるからさ、資格没収になったらどうするのさ」
ギリッ! と歯噛みした爆豪を煽ると彼の指が大きく開かれた。その様を見て半身になっていつ飛び込んできてもいいようにする。今にも喧嘩が行われそうだ。……無論、そんなことにはならないのだけど。
『はい、えー、続きましてプリントを配ります。採点内容が記されていますので、お確かめください』
爆豪との一触即発が行われる前に目良さんが壇上でそうアナウンスを行った。その言葉を聞いて爆豪も落ち着いたのか指を開いていた手を引く。まぁ、ただでさえ落ちてるのにここで喧嘩なんかして悪目立ちしたら最悪だしね。そのくらいは分別つくでしょ。
その後、合格者一人一人が呼び出されてプリントが配られる。そこには採点内容が記されていた。みんなが何点だ何点だと盛り上がる。学生あるあるだよね、テストの点数とか資格の点数とかで盛り上がるやつ。僕結構そういうの好きだったりするので、是非ともみんな盛り上がって欲しいところである。
「俺ギリギリだ、66点」
「見て! 俺87点! やっぱり俺って優秀なのね!」
「待ってヤオモモ95点!」
みんなの点数を聞いている限り記憶の中の点数より少し高いかな? そこら辺はまぁ、僕が関わったからってのが理由だろうか。
「出久くんは何点だった?」
「僕、82点。減点内容は被災者を他の人に任せて戦闘に加わったところが大きいかな……それも戦闘向きの個性だからすごい減点ってわけでもないけど……」
まぁ、正直出久くんらしくないなって動きはいくつかあったよね。その辺りも僕の影響が強いだろうなぁ‥‥原作の点数から10点も高くなってるし。
出久くんについて色々考えていると出久くんがそういえば、というように出久くんが僕に目を向けた。
「ゆずくんは?」
「僕? 僕はこれ」
今の話の流れから僕の点数についてだろうと辺りをつけて彼に向けて僕がもらったプリントを見せてみる。できる限り可愛らしく舌出しウインクをして見せびらかす。ドヤ顔を見せつけてみた。
そりゃ、持ってる用紙が「100点」だったらいいでしょ。みんなが減点理由を書かれているところには何も書かれていない、文字通りの満点合格である。ちょっとくらい自慢したいのは許してほしい。
「ゆずくん満点!? すごいや!」
「試験の相性が良かったからねぇ〜……」
「舞妓満点!? すげぇな……!」
「まぁ、あんなことしたら満点以外ねぇよなぁ……」
みんなが僕の周りに集まってきて僕のことを褒めてくれるのを聞きながら運が良かった、たまたま、といった謙遜をみんなに向かって口にする。実際は謙遜すると嘘くさいけどね。
みんながわいわいとはしゃいでくれるのを収めてから目良さんのお話を聞く。まぁ、原作と同じく、50点未満は不合格の減点方式。これから学業と並行して仮免を取れるプロジェクトを行う。とかその辺りを報告してくれている。轟くんもかっちゃんもやる気に満ち溢れていたし、問題ないんじゃないかな? とりあえず心が折れたりはしてなさそう。ここで折れてたら大変なことになってるんだけどね! 僕のプランがガタガタになるから是非ともやめていただきたい。
× × ×
みんなと会場を出る。入場するときは緊張した面持ちだったみんなの顔には安堵が浮かび、その手には仮免のカードが納められていた。まぁ、諸事情により二人ほどそのカードを持っていないんだけど、その点についてはご愛嬌だ。
外に出ると、士傑や傑物高校なんかのネームドキャラが話しかけてきてくれて、交流が始まった。とはいっても原作通りの軽いもので、サラッとお話ししたり、試験中のこととか点数のこととか話したり、インターンのこととか話したり、それぞれが楽しそうに話してはいるものの、轟くんと夜嵐くんのお話以外は軽いもので、同級生ならするよね、みたいなお話ばかりだ。
一応僕たち以外は二年生以上になるから同級生ってわけじゃないんだけどね。
そんなみんなのお話の輪から外れて人に見られていないことを確認しながら外れる。そして角をいくつか曲がり、目的の場所へと移動した。
「や、ヒミコちゃん」
「ゆずくん! 待ってたよ!」
みんなが士傑の人とかと交流をしているその裏で、人気のない、少しだけみんなから離れた、それでいて防犯カメラから死角となっている路地でトガちゃんと待ち合わせた。ハイタッチをしようと手をあげて近づくとその手をするりと避けてハグされてしまう。ぐぇって変な声が出た。
「えへへ……一日に何回もゆずくんと会えるの幸せ〜……」
「ちょ、ヒミコちゃん。手短にしたいから、離して、離してってば!」
抱きついてくる彼女を何とか(これに三分ほどの時間を有した)離してから、今日わざわざ話しておきたかった内容を口にする。
「出久くん以外の血は取れた?」
「一応梅雨ちゃんと、レーザーを出す人のは取ったよ!」
「そっかそっか、いい仕事したね〜!」
トガちゃんの頭を撫でながらそう言うと、彼女はえへへ〜、とまんざらでもないような顔をして目を細めた。これ完全に父親への感情ですねぇ‥‥懐かれたらちゅうちゅう(これは血を吸われることの例えであって他の意味はないので勘違いしないように)されるかもしれないと危惧していたんだけどお父さんにはしないのか、それとも別の感情なのか今の所ちゅうちゅうはされていない。
「よし、それじゃあそろそろ弔くんから連絡があると思うからさ、例の件がそろそろ動き出しそうなんだよね」
「弔くんが言ってた面白い事件?」
「そうそう、その面白い事件」
目を合わせながらトガちゃんにそう言う。……トガちゃんとほぼ目線一緒なのなんか嫌だな……トガちゃんが嫌というか、こんなに可愛い女の子と同じくらいの身長だっていうのが嫌。
「それ、僕手伝えるか怪しいんだよねって伝えておいてくれる? 雄英で少しきな臭い動きがあってさ」
「えぇ〜! ゆずくんまた帰ってこないの〜!?」
驚愕に満ちた顔をするトガちゃんを見て困った顔をわざと浮かべる。ごめんってば、こっちにも一応色々プランがあるんだよね。これでも考えて動いてるんだよ? まぁ、僕が楽しくて、僕が気持ち良ければそれでいいんだけどね〜。
そのために何が起きようと、誰が怪我しようと、誰が死のうと、僕は楽しめるのだ。
「もし、どうしても僕が必要になったら言ってよ。すぐに助けに行ってあげるから」
「……約束だよ?」
トガちゃんが寂しそうな瞳を向けてくるので初めて出会ったときのように抱きしめてあげる。僕からこんな風な対応してあげるのは珍しいんだからしっかり味わってね?
「僕はヴィランで、どうしようもない存在だけど……君たちのヒーローだから」
彼女が納得してくれたのを見届けてから、僕たちは別れた。足を広場の方に向けると、僕のことを見つけた出久くんが近づいてくる。
「ゆずくん! どこ行ってたの?」
「ん〜? トイレだよ、トイレ」
軽く手を振ってそれ以上踏み込みにくい話題にしてあげる。そうすることで僕がこの場を離れていたことを上手く誤魔化されてくれるだろう。たぶん漫画的な表現としてはチマチマ僕いなくなってるはずだしね〜……後でこれが効いてくるのである。天才か?
「んじゃあ、さっさと帰ろうか。お腹すいたんだよね」
みんなをバスに誘導しながらそう言った。僕としては今日のメインイベントはこれじゃないのでさっさと帰ってカメラの調子を確認しちゃいたいんだよね。ちゃんと予想が正しければ面白いものが見られるからさ。
「ほら、みんな早く帰ってご飯食べるよ! 僕お腹すいてるの!」
今日のメインディッシュを食らうためにも今すぐに寮に帰りたい、それだけが僕の心を占めていた。
× × ×
寮に帰ってご飯を食べて、お風呂に入って、みんなが談話室に集まってお話をしているのを見ながら体を伸ばした。上鳴くんからチョコをもらって、芦戸ちゃんの髪を乾かしながらみんなと談笑を続ける。
しかし、そうやってみんなとお話しながらも、耳を澄ましているのは別の話だったりする。
この後、すぐに行われるであろう大喧嘩。爆豪勝己という人物の掘り下げのための名シーン。
「おい、後で表に出ろ」
最高の曇らせが見られる。そのシーンだ。
「テメェの“個性”の話だ」
その言葉を聞いて確信する。あぁ、今日は眠れないね。
お ま た せ。
さて、感謝を伝えます!!
いつも評価をしていただいている皆々様! ありがとうございます! お気に入りがとうとう10000件を超え、この作品がたくさんの方にとって面白いものとして共有されていて嬉しいです。コメント、評価、すごく励みになっています!! 皆さんがしてくれた☆10、☆9……様々な高評価マジで嬉しいです……もっとちょうだい!(承認欲求ヴィラン)
これからもできるだけ高い頻度で更新できるように頑張りますので応援よろしくお願いします!!
映画編を入れるかどうかのアンケートをさせてください!
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アンケート結果が多い方で!