個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア!   作:波間こうど

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君は舞妓譲葉をどう考えている? 愉快犯?

彼は、なんなんだろうか。


★舞妓譲葉 : オリジン

 

 

 

「え!? 何? 二人で喧嘩して謹慎!?」

 

わかりやすいくらい驚いてあげる。一応僕は昨日二人が外に出てたの知らないって体にしておかないといけないからね。むしろ知ってたら何でだよってなるし……そうなったら後が面倒だからね。

 

「え!? 謹慎!?」

「馬鹿じゃん!」

「ナンセンス!」

「愚の骨頂〜!」

「黙れやお前らァ!!」

 

みんながここぞとばかりにいびるのを聞いてかっちゃんが肉食動物かと思うほどの剣幕で吠え立てた。こっわ。そこまで犬歯を剥き出しにして怒らなくても良くない? 悪いの君たちじゃん。

 

というか昨日あんなにいい顔してくれた君が今こんな風にガオガオしてると思うと何だか趣を感じるね。コレがジャパニーズ侘び寂びというやつだろうか……エセ外国人みたいなこと言っちゃった。僕前世も今世も日本生まれ日本育ちだったわ。

 

ズキズキと昨日の夜から痛む頭を押さえながら歩く。昨日、かっちゃんたちの喧嘩を見てる最中は気にならなかった(多分曇らせに夢中で意識が痛みを追い越してた)んだけど何やら頭痛が酷いんだよね〜……。

 

「えぇ、それ仲直りしたの?」

「う、うーん……仲直りというか……言語化が難しい……」

「それでは君たちはコレからの始業式は欠席だな!」

 

やいのやいのといつものメンツで絡んでいるのを見ながら身支度を整える。始業式だもんね。僕的には始業式よりもこの後の曇らせの方が楽しみというか……曇らせが起きるかどうかが楽しみというか……ね?

 

「……出久くん、怪我、大丈夫?」

「う……だ、大丈夫! 個性でした怪我はないから!」

「そういうこと聞いてるんじゃないんだよなぁ……」

 

少しムスッとしたまま彼に対応する。一応メインプラン的には少し不穏な空気とか一瞬垂れ流してあげるべきなんだよねぇ〜。舞妓譲葉という存在の不安定さみたいなものを提示できたらベスト。そしたらこの漫画の読者の皆さんが勝手に邪推してくれるでしょ。漫画的なメタ読み思考である。

 

ちなみにめちゃくちゃ豆知識だけどメタ読みとかメタ認知ってときのメタって『高次の』って意味なんだよ。覚えてると役に立つかもしれない豆知識である。

 

まぁ、この僕という異物がいる『僕のヒーローアカデミア』という漫画が存在するのならって話にはなるんだけどね。まぁ、別の世界線だって言われたらそうかもだし、もしかしたらそんな考えはいらないかもしれないけど、一応物語である以上はそういう部分も考えて動いておきたい。自分が最高の『曇らせ』を摂取するためならどんな条件だって呑まないとね。

 

「……仲直りしたならまぁ、良かったのかな?」

「……まぁね」

 

少し微笑む出久くんの背中を叩いてからみんなと一緒に寮を出る。

 

昨日の夜から酷く、鈍く響く頭痛が、段々と鐘を鳴らすように響いていた。

 

 

  × × ×

 

 

「A組は仮免落ちが二人も出たんだってー!? A組はB組よりも優秀なはずなのになんでだろうねー!!」

「うわっ、B組物間! 相変わらず気が触れてやがる」

 

二学期の始業式のためにグラウンドに向かっている僕たちを待ち構えていたのはB組の子達だった。というか物間くんだけが待ってて他の子達はたまたまみたいだけど。

 

頭が痛いときに嫌なものに会ってしまった……テンションについていけないよ……どんなテンション?

 

しんどい時にテンション高い人と会ったらしんどくなるの僕だけなのかな? 朝眠いのにテレビ番組でバカみたいにテンション高いお姉さんとかいると殺意湧くアレに近いものがある。え? そんなことない?

 

まぁ、そういう理由でしんどいときに会いたくなかったんだよね……物間くん……普通に面倒だし……

 

そのとき、僕の頭にビーン! と電撃が走った。もしかして、曇らせを摂取して痛み止めにすれば良いのでは? 冴えてる……あまりにも冴えてるぜ僕……!

 

「さてはまたテメーだけ落ちたな?」

「フフフ! 残念ながらこちらは全員合格! 水があいたねA組!!」

「……すまねぇみんな、俺のせいで」

「いや、あっちが突っかかってるだけだから!」

 

切島くんと物間くんたちがワイワイ言っているのを聞いて前に出る。なんか轟くんがガチ凹みしてるな……僕のお父さんみたいだったよ、が効いているのだろうか。あれ適当に曇るかなって思って言った言葉だから気にしないでもろて。

 

まぁ、利用させて貰うけど。

 

「朝からマウント取りご苦労様。言いたいこと済んだなら消えてよ」

「! ……なんだい? 負け惜しみかい? 負け犬の声は響かないなぁ!」

「だよね? 僕もそう思うよ。だって君の声響いてこないもん」

 

物間くんの強気の煽りに返事をする。するとようやく笑顔いっぱい! という顔に少しだけ翳りが見えた。お、良いじゃん良いじゃん。少し痛みが和らいできたかも?

 

いや、めっちゃ気のせいだわ。すごい痛むわ。

 

「僕たちが負け犬? ふふん、強がるのはよしたまえ。僕たちは全員仮免合格! 君たちは二人不合格者が出てる、この差を見てもまだ君たちの方が上だと?」

「あ〜、ごめんごめん。言い方悪かったね? 満点未満の有象無象の声は聞こえないって言ってんだよ。ヒーローの素質のない負け犬くんには仮免全国一位合格者の声が聞こえなかったのかにゃ〜?」

 

ヘラヘラと馬鹿にするように笑えば物間くんの顔がさらに雲行きの怪しいものになるのが見えた。アハハ、良い顔するじゃ〜ん!

 

「つーか、落ちたのは焦凍と爆豪だけど……雄英の体育祭1位とベスト4だぜ? トーナメントに残れもしなかった有象無象がキャンキャン吠えるなよ……あ、負け犬だからあってるのか。とんだワンちゃんもいたもんだね?」

「さっきから聞いていれば……!」

「先に喧嘩を売ったのはそっちだろ」

 

物間くんが足を進めるのを見て更に前に出る。彼が拳を握り振り上げるのが見えた。その時の顔も。

 

いや〜。無様なやつほど曇り顔より怒り顔の方が似合うよね。特に自分が言い負かされた上で恥の上塗りが如く手を上げようとしてるときとか。あまりにも無様すぎてテンションあがっちゃうな……テーマパークに来たみたいだぜ! ちょっと頭痛も和らいできたわ!

 

「物間! シャレにならんってば!」

 

その物間くんの暴走を拳藤ちゃんが止める。止めなくても良かったが、まぁ、僕もこんなところで喧嘩して謹慎をもらいたくはない。大体喧嘩で謹慎て、馬鹿のすることだよね〜(幼馴染二人から目を背けながら)いや、僕もかっちゃんの取り巻きボコボコにして謹慎くらったことあるけども。あれは曇らせに必要なピースだったから許して欲しいんだよね〜……謹慎してた間も黙々と曇らせの種を蒔いてたんだから。具体的にいうと勉強してただけだけど。

 

「ごめん、A組! ちょっと浮かれちゃってて……!」

「む、なら仕方ないか……あ! 一佳ちゃん合格おめでと! そっちはそっちで大変だったみたいだね?」

「譲葉もね。そういえば怪我の調子は?」

「ピンピンしてるよ! あ、前も言ったけどCM可愛かったよ!」

「その話やめてってば……!」

 

拳藤ちゃんを褒める。まぁ、物間くんの情報……もとい、B組の情報を手に入れるために拳藤ちゃんとは定期的に連絡を交換しているのだ。あと、曇らせるための種蒔きが主な理由だね。ほら、土壌を育てるところから農業って始まるんだよ?

 

できる限りニコニコと伝わるような笑顔で褒めてあげる。そのタイミングで背中に刺すような視線が絡みつくのがわかった。すかさずに頭を下げてみる。すると僕の頭の上を見慣れたイヤホンジャックが通過した。そして続いて蹴り上げが飛んでくるのでそれを転がって避けてから足を踏みつけられそうになるのでギュッと体を丸めるようにして回避する。

 

なんでこんなに怒涛に攻められてるんだ……?

 

「ユズ、あんたやっぱりたらしこみすぎじゃない?」

「ゆずちゃんってもしかして閉じ込めておかないといけない人?」

「節操がない人はいけませんわよ?」

「僕のこと教育しようとしてる? 誰と仲良くしても良いじゃん!」

「それはそうだけど舞妓はめっちゃナンパなイメージあるなぁ」

「ナンパ!? こんなに硬派なのに! 電気とか実のがナンパじゃん! チャラついてるじゃん!!」

「なんで俺のことあげた!?」

「オイラ今なんかした!?」

「……譲葉いつも大変みたいだね」

「わかってくれる? 一佳ちゃん」

 

先程までのギスギスした雰囲気も消え去り、A組とB組を交えて談笑する。その最中、後ろから声がした。

 

「おーい、後ろ詰まってんだけど。カッコ悪ぃとこ見せてくれんなよ」

「あ! 人使! どう? 僕の送った肉体改造メニュー効いてる? 体バキバキ?」

「……マジの地獄なんだよ。なんだあのメニュー……つかこの流れで話しかけてくるか? 普通」

「僕が普通じゃないことなんて今に始まったことじゃないでしょ!」

 

心操くんも含めて歩きながらみんなで話す。原作では飯田くんがやんややんやと列を乱すなと言っていたが、何故だか今日は許してくれているらしい。許しているってよりちゃんと適度な距離感を保ちつつ歩いてるから別に良いって判断しているのかもしれないけど。

 

その後は人と話す。曇る顔を見る。人と話す。歩く。先生たちの話を聞く。そんな感じで二学期の初日は幕を閉じた。原作通りハウンドドッグ先生が吠えて喧嘩に注意しましょうと促される。

 

いや、だから喧嘩で謹慎受けたのなんてあの二人が初めてだっての。僕は痛む頭を押さえながらそう思った。

 

 

   × × ×

 

 

【敵連合side】

 

 

廃コンテナの中、荼毘、黒霧を除いた敵連合のメンバーと一人の男が対峙していた。

 

長身痩せ型の男だった。短く切り揃えた髪に整えられた眉、そこだけを見ればその辺りを歩いている青年だろう。ただ、その姿はあまりにも風変わりだった。

 

その理由は顔につけたペストマスクだ。大きな鳥の嘴のような形をしたそれが顔の下半分を覆っていて、表情を窺い知ることができない。

 

「話してみたら案外良い奴でよ! お前に会わせろってさ! 感じ悪いよな!」

「……いいね、とんだ大物を連れてきたな、トゥワイス」

 

死柄木が顔につけた手の下でニヤリと笑う。目の前にいる男の顔はいつだかに写真で見せてもらったことがある。一年ほど前だったか、譲葉が「ペストマスクて、いつの時代の人さ」と笑っていたのが印象的だった男。

 

「大物とは皮肉が効いてるな敵連合」

「何!? 大物って有名人!?」

「先生に写真を見せてもらったことがある、いわゆるスジ者さ、『死穢八斎會』の若頭」

 

マグネの言葉に目の前の人物の説明を付け加えた。死柄木の目は油断なく敵を見据えているが、その点連合のメンバーは呑気なものだ。Mr.コンプレスがトガにヤクザ者について説明しているのを聞きながら周囲に気配を巡らせるが、死柄木に人気は感じられない。尾行はひとまずなさそうだ。

 

「それで? 細々ライフの極道くんがなんでうちに?」

「AFOの消失が大きい。裏社会の全てを支配していた闇の帝王……都市伝説のように語られたそれを老人どもは皆恐れていた。そいつが監獄にぶち込まれた今、日向も日陰も支配者がいない」

 

自身の相棒ほどの精度はないが、死柄木も人心掌握や演技の指導をAFOから受けている。意思の宿る目くらいならすぐにわかった。今までに何度か見たことのある目。

 

アレは狂気を帯びた目だ。

 

「次は、誰が支配者になるのか」

「……ウチの先生を誰か知ってて言ってんならそりゃ……挑発でもしてんのか?」

 

死柄木が口を開く。

 

「次は、俺だ」

「計画はあるのか?」

 

死柄木の言葉にすぐさま若頭が返答する。その口からツラツラと述べられるのは「計画性のない目標は妄想である」という内容だった。つまるところ、死柄木たち敵連合への否定である。

 

「トゥワイス、意思確認してから連れて来い」

 

めんどくさそうな口調で死柄木がそう言うと、トゥワイスがマスクをしたまま「えっ」と声を上げた。それもそうだろう。声をかけるように指示を出したのは死柄木本人だからだ。少し酷いと思いたくもなる。

 

「俺には計画がある。お前たちを使ってみせよう」

「帰れ」

 

仲間になる気がないのならとんだ無駄足だ。死柄木は舌打ちを一つ漏らしてから若頭の帰宅を促した、そのときだった。

 

「お前たちは計画が杜撰だ。一級品の駒……ムーンフィッシュ、マスキュラー、ステイン、どれも駒として一級品だが、お前たちはその稚拙な計画性によって、これらを落としている」

 

ぶつぶつと呟くように、遮るように言葉が紡がれた。そして、彼らにとって地雷とも言える言葉が紡がれる。

 

「そして雄英のガキを誘拐したはいいものの奪還される……脳無にする前にアジトまでバレる始末だ。俺なら雄英のガキを奪い返されることなんてない」

 

その言葉がきっかけだった。全員の目が血走ったように見開かれ、個性を扱わんと腕を開く。廃工場の雰囲気が一瞬で変化し、全員の目が明確な殺意を持って見開かれたことを若頭はそのゾワリと飛び上がるほどに背筋を撫でる違和感で感じ取った。

 

「……貴方に忠告しておいてあげる。私たちは支配されたくないから、自由に、好きな人の側に居たいから集まってるの」

 

一番初めに前に出たのはマグネだった。いつもは皆のことをまとめる存在で、皆のことを嗜める長女的な存在である彼女が一番初めに動いたことに驚いたのか他の敵連合メンバーの動きが少し固まる。

 

『……私が女を名乗ってること、譲葉ちゃんはどう思ってるの?』

『んぇ?』

 

いつだかの記憶が蘇る。

 

手に持った巨大な磁石で若頭を引き寄せる。そのサングラスの奥には明確な怒りが浮かんでいた。

 

『ん〜……別になんとも? だってマグ姉はマグ姉じゃん! 男だろうと女だろうと僕はマグ姉が大好きだもん!』

 

「あの子が笑って暮らせる世界を作る! そのことを邪魔する人間は誰だろうとぶっとば----」

 

パンッ!! と弾けるような音が響いた。次いで大きな磁石が地面に落ちる音。

 

「マグ姉ぇぇぇ!?」

「先に手を出したのはお前らだ」

 

ドサリと倒れるマグネの下半身を視認するやいなやMr.コンプレスが飛び出した。左手を大きく突き出し、目の前の男の捕縛を試みる。しかし、それは予期せぬ事態によって防がれてしまった。

 

(個性が出ない……っ!?)

 

「触るなッ!」

 

若頭に触れていた左腕が吹き飛ばされる。文字通り消し飛んだ左肩を押さえながらMr.が蹲るその刹那のことだった。

 

「何してる……」

 

ついさっきまで壁に背をつけてなんの動作もしていなかった死柄木の手が目前にあった。本当に、一瞬。予備動作も、動きも何も見えない速さで、コンプレスが尻餅をつくその一瞬で距離を詰めた死柄木の手が若頭に触れかけたその瞬間、若頭が自身の部下を盾にしてその場を回避する。

 

「…………なるほど、そうしてりゃハナから幾分かわかりやすかったぜ」

 

廃コンテナを壊しながら突っ込んできたのは若頭と同じペストマスクをつけた連中だった。どうやら彼のお仲間らしい。

 

「どこから! 尾行はされてなかったはずだ!」

「大方どいつかの個性だろ」

 

トゥワイスの驚愕の声を死柄木が制する。塵となって死んだ若頭を守った組員の残骸を踏みつけながら、敵連合を背にするようにして死柄木が前に出た。

 

「……おい、なんだアイツ。速すぎる」

「個性は『崩壊』だって聞いたんだが……AFOの生徒だっていうのなら『超スピード』くらいもらっててもおかしくないか」

 

ペストマスクの連中が死柄木のことを高く評価するが『超スピード』なんて個性を死柄木は持っていない。感情のコントロールがうまくいかないとき、彼の身体能力の枷が少し外れるだけだが、今はその話は置いておこう。

 

「そうだな……このまま戦力を削り合うのも不毛だし、一時互いに頭を冷やそう。ちょうど互いに死体も一つ、腕一本はまけてくれ」

「テメェ! 殺してやる!」

「弔くん、私刺せるよ、刺すね」

 

若頭……オーバーホールの提案に対してトゥワイスとトガが激昂した。その後ろでスピナーも今すぐにでも飛び掛からんと刀の柄を握っている。

 

「…………ダメだ」

「なんで!」

「賢明な判断だ、手だらけ男」

「すぐにとは言わないがなるべく早く考えてくれ。冷静になったら話し合おう」

 

廃コンテナを出ていくペストマスクを付けた連中の背中に殺意と怨念の籠った視線が突き刺さる。自身たちの目的のために踏みとどまる、リーダーたる死柄木弔の人望故に足を止める。

 

仲間が死んでも、『彼』のために。世界を壊すために、冷静になるのだ。

 

「色良い返事を待ってるよ」

 

一瞬の激戦の後には上半身が消し飛んだマグネ、左腕が消し飛んだコンプレスを含んだ敵連合のメンバーだけが残された。

 

耳に突き刺さる静かさが、風の音を拾った。

 

 

  × × ×

 

 

弔くんから通知が来た。それは朝早くのことだった。来い、と一言だけ書かれたその文面的に何か起こったことは想像に難くない。だから、学校を抜ける許可を貰って外に出た。こういうとき寮生活は面倒だと思う。

 

というか「来い」って……切羽詰まってるとしても酷すぎるでしょ、碇ゲンドウじゃん。なに? デカいお母さんの魂が宿ったロボットとか乗せられる?

 

ちなみに外出理由はドクターとの定期検診をうっかり忘れていたってことにしました。ドクターにも許可をもらってます。完璧すぎるね。いやぁ〜、アドリブにも強くて困っちゃうよ僕。

 

まぁ! 定期検診云々関係なく頭痛が酷いので薬をもらおうと話をつけてたら弔くんからなんか良い感じに連絡があっただけなんだけどね! ガハハ! 本当に痛いので勘弁していただきたい。

 

病院に向かい、処方箋を貰ってから病院横の路地裏でしばらく待っていると、黒霧さんが迎えに来てくれた。その顔は分かりやすく沈んでいる。

 

この時期に落ち込むような事件と言えばあれくらいなものだろう。

 

「接触したの? 早かったね」

 

死穢八斎會。この世界においては極稀にしか存在しない絶滅危惧種の天然記念物の筋者である。

 

それでいて弔くんの個性の原型がいて、さらに僕の計画的にもとても重要な壊理ちゃんがいる場所でもある。

 

「なんか想像より早いけど……まぁ、そういうイレギュラーくらいはあるか」

 

一応原作では2人の喧嘩の後、というかBIG3と出会ってからだったと記憶しているんだけど……まぁ、その辺りはズレても数日なら誤差のうちかな? もしくは原作はあそこで描写していただけで本来はこの日程が正しいのかもしれないしね。出久くんの謹慎がまだ解けてないし、BIG3にも会っていないがその辺りは誤差だろう。

 

黒霧さんに通されたのは寂れた以前までのアジトよりもボロい掃き溜めみたいな小屋だ。普通に不衛生の塊みたいな場所だが僕がこの前そこそこお掃除したので見た目ほど汚くないんだよね。

 

「やっほ〜。急に呼び出してどうしたのさ。僕、こう見えて忙しいんだけど?」

「…………」

 

僕がやってくるなり、いきなり前からトガちゃんが抱きついてきた。その顔には泣いた跡。え! 可愛い! ぺろぺろしてあげたい!!

 

「え!? ヒミコちゃんどうしたの!? 何!? 弔くんに泣かされた!? よ〜し! 僕がお仕置きするからちょっと待っててね!」

「……」

 

首を横に振る彼女が顔を服に押し付けてくる。服がめっちゃ汚れてるんだけど……これをご褒美と思えるほど図太い変態性は持ち合わせてないで〜す。

 

それはそれとして顔はめちゃくちゃ可愛いので是非とももっと見せてほしい。

 

「なになに、どうしたのさ……え? 本当になんかあった? マグ姉。なんか知ってる?」

 

辺りを見渡してみる。まぁ、予想通りというかなんというか、マグ姉はいない。なんでいないの? なんて口にしながらも、正直理由なんて分かりきっていた。

 

死んだんでしょ? オーバーホールにやられてさ。まぁ、漫画の展開としては強大な敵の噛ませにされたっていうのがわかりやすいかもしれない。どういう意図で堀越先生が殺したのかは全くわかんないんだけども。

 

その後のシーンで語られることもほぼないマグ姉は可哀想だけど、仕方ないよね。ホリー先生が悪いよ、ホリー先生が。

 

「……譲葉、マグネは死んだよ」

「…………は? マグ姉が死んだ?」

「……あぁ」

 

弔くんが僕の言葉に陰鬱とした返事をした。わかってるのにどうしようもなくわざとらしいという意見はさておいて、なかなかに良いリアクションが取れたんじゃないか?

 

「相手の個性は不明だ、こちらから仕掛けた形になる……俺たちヴィランがこんなことを言うのもおかしな話だがアイツは悪くないよ」

 

そう言うと彼はボリボリと乱雑に首を掻いた。その姿はイラついているのが一目でわかるほどだった。リーダー、ボスという性質上我慢しているのだろう。みんなにストレスが伝播しないように出来る限りの気を使っているのが目に見える。

 

まぁ、僕はマグ姉が死ぬことは知っていたんだけどね。だけど知っていたからと言ってここで落ち込まないと彼女の死に悲しんでいないように見えるだろう。メインプラン通りここでしっかりと演技を見せることにしよう。

 

「いやいやいや、なにこれ。なんでみんな沈んだ顔してるの? ドッキリ?」

「…………譲葉」

「ねぇ、トゥワイスさん、僕マグ姉とパンケーキ食べにいく約束してるんだよ」

「…………」

「荼毘くん、スピナーくん。2人とも今回は食事当番だよね? この前僕とマグ姉が腕を振るったんだから、美味しいの作ってよね?」

「舞妓……」

 

みんなの顔はそれぞれ苦痛に歪んでいる。いい曇り顔〜。まぁ、そうなるように原作以上に仲良くなれるようにした訳だし? 僕というツナギがいる分関係値は強固なものになっているだろうから、いい曇り顔を見せてくれると思ったよ。

 

でもまだ、まだこんなもんじゃないでしょ? みんなの本気の曇り顔はこの何倍も素晴らしいものなんだってことを僕は知ってるからね。僕のことをしっかりと満足させられるような顔、してみせてね?

 

「………………なんで黙ってるのさ、ねぇ。ねぇ! ……ヒミコちゃん?」

 

わざわざ顔を歪めさせながら抱きついてきているトガちゃんに声をかけてみる。すると今にも溢れそうな涙を蓄えたトガちゃんと目が合った。

 

うわ〜! 可愛い! 曇り泣き顔可愛いね! そんな顔されちゃったら僕も全力で君のこと可愛がりたくなるじゃんか!! 今人が他にいなかったら君のことを押し倒してもうお見せできないあれそれしてたよ!! なんでそんなに僕に刺さるような顔する訳!? ハァ〜……もうたまんないから是非やめてほしいんだけど!! 君のことめちゃくちゃにしちゃうところだよ本当にもう!! なんでそんな顔して柔らかいもの押し付けてくる訳!? 酷いと思わないの? 僕だって男なんですけど〜!! かっちゃんじゃないんだからチューしちゃうぞ!!!

 

……という気持ちをぐっと押し殺す。そしてできるだけ顔を歪ませながら顔を下に向けた。

 

「……………………ハハ」

「……ゆずくん?」

 

わざとらしく俯いてから乾いた笑いを溢す。

 

トガちゃんが怯えるように僕の顔を下から覗き込む。その顔に目を合わせずに笑ったまま顔を上げた。

 

「弔くん、次、()も連れて行ってよ。天然記念物の絶滅危惧種ヤクザに引導を渡してやる……端的に言うとそうだなぁ……」

 

僕はわざと一拍置いて、低く唸るように呟いた。

 

 

 

 

「殺してやる」

 

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

みんなが僕から距離をとった。まるで警戒するように離れると、得物まで持ち出す。僕のことをケガさせるためってよりも自分の体を、命を守るために取り出したって感じ? うーん、防衛本能!

 

……確かに結構真面目に演技したけどそこまで飛び跳ねた反応しなくても良くない? 傷ついちゃうぜ。

 

「譲葉。お前の言い分もわかるが、落ち着け。お前の殺気は俺たちには毒だ」

「……うん、ごめんね」

 

ふぅ、と息を漏らして体の力を抜く。わざとらしくそうしてあげることで敵連合のみんなもほっと得物を納めてくれた。

 

まぁ、誰が死のうと、みんなが曇ってくれるなら率先して殺すんだけどね〜。マグ姉が死んで悲しくないかと言われると嘘になるんだけど……彼女が死ぬことによってデメリットが発生するわけでもないし、僕からすればみんなの曇らせ顔を見ることのほうが優先される事柄だ。

 

曇らせのためならマグ姉が死のうが誰が死のうが良いよ。

 

 

自分の歪みを再認識する。

 

 

もちろん、絶対に死んで欲しいってわけじゃない。仮免試験でみんなが原作よりも高い点数を取ったように、ほんの少しのすれ違い、間違いで彼女が生き残る可能性だってあると思ってた、それならそれで良いとも思ってた。だけど僕がその場に乗り込んでまで助ける必要性は思いつかなかったかな。

 

いくら漫画の中だといっても、この世界で生きてきて16年もの年月が経っている。なのに、この世界の登場人物にキャラクターとしての魅力以上のものを感じない。他の人間なら感じるんだろうね。それでも僕には感じない。

 

再確認する。頭の中のモヤが引いていく気がする。昨日の記憶がクリアになる。

 

だから、展開として、キャラクターが死ぬのは創作物として仕方ないと思えるし、そのキャラクターが死のうが、僕の『曇らせ』に影響がないなら、もとい、曇らせられるのなら別にそれでいい。

 

『こいつが一番ヴィランだろ』

 

いつだか荼毘くんがそう言っていたのを思い出す。あのときは弔くんも同意してたんだっけ?

 

二人は本当に見る目があるよ。そうさ、僕こそが本物のヴィランだ。

 

「…………」

「ゆずくん、泣いてるの……?」

 

涙を溢すと、トガちゃんが僕の背中を撫でてくれる。それに甘えるように体を丸めながら、嗚咽を漏らした。空気が沈んでいくのがわかる。

 

『曇らせ』のためなら、僕の目的のためなら、どこまでだって堕ちてあげる。

 

仲間が死んでも嘘泣きしてみんなの曇り顔を見るし、誰かが曇ってくれるのなら大切な人も手にかけるよ。

 

それがたとえ、友人の死だとしても、僕の死だとしても、別に構いやしないのだ。快楽だけを優先して、そのためにだけ生きているのだから。

 

ズキズキと痛んでいた頭の中はいつの間にかクリアになった。あぁ、思い出したよ。思い出したくなかったんだけどな。あぁ、そうだ。そうだったや。

 

『絶対に、絶対に曇らせてやる……!』

 

あの日、そう決めたんだった。

 

「……弔くん」

「……あぁ」

「壊そうね」

「…………あぁ」

「殺そうね」

「……………………あぁ」

 

彼の瞳を見つめながら、僕は呟いた。

 

最低で、最悪なヴィラン。

 

世にも悍ましい化け物。

 

それが僕。舞妓譲葉なのである。

 

あぁ、そうさ、それこそが、これこそが僕のオリジンだ。





いつも応援ありがとうございまぁぁぁぁす!!!!!!
皆さんが楽しんで読んでくれて、評価をくれて、感想をくれて、お気に入り登録してくれるだけで跳ね上がるほど嬉しいんですよ僕は……これから先も頑張ります! なので是非とも☆10、☆9評価、お気に入りとあと……(強欲)あ、ここすきしてくれると「こういうのが好きなら増やすかぁ」ってなるのでしたかと得ですよ!!

まぁ、それはともかくとして! なんならこの辺りはしなくてもいいですけど!! んこにゃさんのTwitterはフォローしておいて損はないですよ!! 是非ともよろしくお願いします!!

ちなみに、譲葉の『底』はここではないです。まだ、半分くらい。ここからもっと深くまで落ちるので、ご愛読のほどよろしくお願いします!!

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