個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア!   作:波間こうど

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今回は早いね。いつもこのぐらいにしろ? はい。


★ビッグ3襲来!

 

 

 

「ご迷惑おかけしました!!」

「デクくんオツトメごくろうさま!」

「オツトメって……てか何息巻いてんの?」

 

謹慎から3日が経ち、かっちゃんよりも一足早く出久くんが復活した。フンスフンスと鼻を鳴らしている様は耳郎ちゃんの言う通り息巻いているという言葉がばっちりと当てはまるほどである。元気だね〜。興奮した馬みたい。

 

「元気なのはいいけど、空回りしないでね?」

「う゛……ゆずくん手厳しいよ……」

「そりゃもちろん。爆豪と喧嘩した馬鹿にはそれくらい言っておかないとね」

「お前もよく爆豪と言い争ってるじゃねぇか」

 

僕が出久くんをいじっていると、轟くんが真顔でそんな言葉を口にした。いや、あの子いつでもいい顔してくれるから……って、そんな話をしたいわけじゃないんだった。

 

「いやね? 焦凍、あれは喧嘩じゃなくて躾だから……」

「そっちの方が危ない思想だぞ舞妓くん!」

 

うんうん、みんなも平常運転に戻ってきたね。神野の一件以来どこかぎこちなさも感じていたけれど、それも幾分かマシになったかな? いいことだね。

 

その後、相澤先生が入ってきてみんなが席に着く。今回のホームルームは重要なお話があるということを知っているので、大人しく席に着くと、間も空けずに彼が口を開いた。

 

「はい、緑谷も帰ってきたところで、本格的にインターンの話をしていこう。入っておいで」

 

ホームルーム中に相澤先生がそう言うと、見知った三つの顔が入ってきた。

 

「職場体験とどういう違いがあるのか、直に経験している人間から話してもらう。多忙な中、都合を合わせてきてくれたんだ、心して聞くように。現雄英生の中でもトップに君臨する3年生3名……通称、ビッグ3の皆さんだ」

 

その登場に周りがざわつくのがわかった。みんながビッグ3のみんなについて話している隙に僕はその個性を『サーチ』を使って見てみることにする。ほら、こんなに使い勝手のいい個性あったら使うでしょ? 原作と齟齬がないかを確認しないとね。

 

……あぁ、なるほど。3人とも1人いれば僕を除いたみんなを瞬殺できるだけの力があるな……というか下手なヒーローたちよりもよっぽど強いでしょ。ランキングに載るのはほとんど確定って言ってもいいような人たちじゃん。

 

特に通形先輩がやばい。ちょっとあの顔からは想像できないほどの戦闘力を秘めてるよ……下手なヒーローより圧倒的に強すぎる。相澤先生に『No.1に一番近い男』だとか言われるわけだ。そりゃ(この後)負けるよ。

 

「じゃあ手短に自己紹介よろしいか? 天喰から」

 

直後、ギンッ! という音が聞こえそうなほどの目力が僕たちのことを襲った。確か原作では覇王色の覇気よろしくビリビリ! みたいなエフェクトが出ていたような記憶があるけど、そういうのが出てもおかしくないと言えるほどの眼力である。正直用意してないとおトイレ漏らしちゃうところだった。

 

「ダメだ、ミリオ……波動さん……どれだけジャガイモに見ようとしても依然首から下が人間で人間にしか見えない……!」

 

ボソボソと弱気な言葉を繰り返す天喰先輩を見ながら何人かがえぇ、という顔をするのがわかった。まぁ、気持ちはわかるけどそんな顔するのやめたげてよ……

 

「雄英……ヒーロー科のトップ……ですよね?」

 

尾白くんが困惑したような表情で口にする。そんな顔してあげるなよ……先輩が可哀想だろ? いや、黒板の方に振り返ってしまったからもう顔も見えないけども。

 

「彼はノミの心臓の「天喰環」で、私は「波動ねじれ」今日はインターンについて皆にお話してほしいと頼まれてきました」

 

天喰先輩の話を受け継いで波動先輩がそう口を開いた。まぁ、そのあとは轟くんの火傷のことや、障子くんのマスクのことなど、仲良くなっても聞くにはちょっと時間かからない? みたいなことをズバズバと聞いていく時間になるんだけどね。ちょっとノンデリカシーにも程がないかな?

 

ズバズバと質問を矢継ぎ早に投げ掛ける彼女に少しだけ苛立ったように相澤先生が「合理性に欠くね?」と髪を逆立たせた。う〜ん、怒ってますね〜……でもお願いしたのは先生なんだからこの程度で怒るのは度量が狭いと思うの……

 

「イレイザーヘッド! 安心してください! 大トリは俺なんだよね!!」

 

通形先輩が焦りを含んだ顔色で相澤先生を宥め、耳に手を置くようにして体を傾けつつ、声を張り上げた。これはあれだろうか、酷すぎるコールアンドレスポンスのアレか? この手の話の振りが盛り上がらないのはちょっと可哀想なので乗ってあげることにしよう。

 

「前途ーー!!?」

「多難ーー!!!」

「おおっと! 返ってくるとは思わなかった!!」

 

お気に召したのか大爆笑する彼にまた波動先輩たちと同じようにみんながザワつくのがわかった。まぁ、みんな変だからなぁ……

 

「なんで今のわかったの……?」

「アイツもアイツでどっか抜けてるよな……」

「風物詩……」

 

あ、これ通形先輩について言ってるんじゃなくて僕についてみんな話してるんじゃない? 不名誉な目にあってるのもしかして僕では? は? キレそう。マグ姉が死んだことよりも不快指数が高いです! ブチ切れてここらへん一帯を更地にしてやろうか? しないけどさぁ。

 

「まぁ、何が何やらって顔してるよね。必修ってわけでもないインターンの説明に、突如現れた3年生だ。そりゃわけもないよね……1年から仮免取得だよね……ふむ、今年の1年生はすごく、元気があるよね……」

 

ぶつぶつと呟く彼はとても面白いことを考えていそうな顔をしている。いや、この後の展開がわかっている身としてはまぁ、そんな顔もするよね、って感じではあるんだけどね。

 

「よし! 君たちまとめて俺と戦ってみようよ!」

「えっ、えぇ〜!!?」

 

ほらね? と僕は思うが、他のみんなは本当に驚いた顔をしていた。まぁ、そりゃいきなり先輩に「俺と君たち全員で殴り合いしよっか!」って言われたら困惑の声は出るだろうけど。

 

「俺たちの経験をその身で経験した方が合理的でしょう!? どうでしょうね、イレイザーヘッド!」

「……好きにしな」

 

相澤先生がため息交じりに了承したのを聞いてから、僕たちは体育館γへと足を向けた。

 

 

  × × ×

 

 

「あの、マジっすか」

「マジだよね!!!」

 

果てしなく元気な彼が伸脚をするのを見ながら体を伸ばしていく。戦闘になるならストレッチくらいはしておいた方がいいに決まってるからね。

 

「ミリオ……やめた方がいい、形式的にこういう具合でとても有意義ですと語るだけで充分だ。皆が皆上昇志向に満ち満ちているわけじゃない、立ち直れない子が出てきてはいけない」

 

ものすごく遠い壁と向き合うようにして天喰先輩がボソボソとそう口にした。う〜ん……ヒーロー科としてはそこそこに舐めた発言なんだよなぁ……ステイン先輩とかが真っ先に切り掛かりそうなタイプというか……ヒーローとはなんぞや? の問いに答えをまだ持ってなさそうというか……難しいけどそんな感じがする。

 

ついでに波動先輩が「ヒーローを諦めて問題を起こした子がいる」という話を口にした。……まぁ、この手のお話はステイン先輩然り、ジェントル然り、他にもこの世界に転生してからよく聞く話である。

 

「待って下さい。我々はハンデありとはいえプロとも戦っています」

「そしてヴィランとの戦いも経験しています! そんな心配をされるほど、俺ら雑魚に見えますか?」

「うん、いつどっから来てもいいよね。一番手は誰だ!?」

 

通形先輩を煽るような……いや、違うな? 馬鹿にされたことに憤るような彼らの言葉についため息をついてしまった。無駄な自尊心だ。余計なプライドと言い換えてもいい。彼らのたかが高校1年生ぽっちのプライドなど捨てた方がいいだろうに……1人ではヴィランも捕まえられていないし、ましてやプロとはハンデ付きで戦っているのに自慢するような内容じゃない。

 

これはケツを叩いてあげた方がいいのか、どうすべきか……と考えていると出久くんが通形先輩に戦いを挑む一番槍に立候補した。

 

「僕が行きます!」

「あー、それなんだがな緑谷。少し待て……舞妓」

「んぇ?」

 

急に名前を呼ばれて振り返る。戦闘前に髪の毛結ぼうとしてたんだけど……何事かしら? と問いかけるように視線を向けてみると相澤先生はチョイチョイと指でこちらに来るように指示を出していた。

 

「なんですか?」

「お前はみんなと一緒に戦闘に参加するな」

「えぇ……なんでです?」

「お前がいると勝つ可能性があるからな。それは合理的じゃない」

 

相澤先生の言葉にピクリと何人かが反応する。具体的にはピリついてた切島くん、常闇くん、それから波動先輩と天喰先輩辺りかな?

 

「……イレイザーヘッド。そこの彼女がいるとミリオに勝てると?」

「可能性があるってだけだよ天喰。こいつが使えばこのクラスはトップヒーローも喰える」

 

めちゃくちゃ買ってくれてるなぁ……まぁ、でも実際彼の言っていることは正しい。常に場所を入れ替えてどこからどんな個性が飛んでくるのかわからない状態にしてしまえば戦うも何もなく、どんなヒーローも……もちろんヴィランも刈り取れるという自負があるからね。勝てないのは残り火を使い切る前のオールマイトとラスボス先生くらいじゃないだろうか。あとはまぁ、僕とか弔くん? 

 

他のみんなをその辺りと戦う時に連れていくと足手纏いもいいところだし、出力が足りないのでその場合は僕だけで十分かなぁ……

 

「だからお前がやるなら他の全員がやられてからにしろ」

「えぇ〜……みんなとやりたかったんですけど……」

「あと、『サーチ』の結果を教えるのも禁止な。そこまで関与するのは合理的じゃない」

「全部ひっくるめて止めてくるじゃないですか!」

 

何もかも止めてくる相澤先生に抗議の視線を入れてみるも、その顔を見る感じ覆らなさそうだなぁ……

 

「あ〜、まぁ、揉んでもらいなよ。僕がすぐに出ることにだけはならないようにしてね?」

「なんだよ! 舞妓も俺らが負けると思ってんのかよ!」

 

切島くんがうがぁ! と吠えた。その言葉に僕は乾いた笑いを溢してから返事をする。

 

「あはは……多分だけど先輩、プロも含めてNo.1に一番近いよ。意味わかる? エンデヴァーに1番近い男ってわけ。だから、思う存分していいから、胸を借りるつもりで突っ込んでいきな」

 

僕の言葉を聞いて皆が生唾を飲むのがわかる。それを見てうんうんと頷いた。それを聞いた出久くんが改めてぐっと体を丸める。そしてその体をバチバチッ! と緑色の電撃が走った。

 

フルカウルだ。

 

「よっしゃ、それじゃあ先輩! ご指導!」

「よろしくお願いしまーす!!!!」

 

みんなの声が一つになって体育館に響き渡る。その声が響くのと、彼の服がストン、と落ちるのはほとんど同時だった。そこから一瞬空いて耳郎ちゃんの「あーーー!!!」という声が響く。ウケる。ちんちん見えたねぇ。

 

「今服が落ちたぞ!」

「あぁ失礼、調節が難しくてね……」

 

そう言いながらいそいそとズボンを上げる先輩の顔を出久くんの蹴りが捉えた。しかし、その脚はまるで煙でも蹴るかのように掻き消えていく。

 

「顔面かよ」

 

彼が真顔でそう言ったのが聞こえた。まぁ、その姿はすぐさま酸やレーザー、テープなどが貫通し、土埃の中に消えていくんだけどね。

 

個性『透過』。

 

この世界の個性の中でも中々の当たり個性。その実際は、どんな攻撃個性もすり抜けるというもので、壁とか地面をすり抜けて移動したり、弾き出されるようにしてワープすることもできるという優れ物個性だ。僕がもし『不義遊戯』じゃない個性になるならこの個性ならまぁ、許せるかなって感じのつよつよ個性である。

 

この個性を天喰先輩辺りが「僻むべきは個性ではなくその技術」とかって言っていたような気がするけどとんでもない。この人は技術もすごいけど、何よりすごいのはその個性だ。

 

この個性の本質は透過を利用したワープ能力にこそあると思う。これがあるだけで普通にやりづらさは何倍にも跳ね上がる。

 

「まぁ、そんな個性があるなら……」

「まずは遠距離持ちだよね!!」

 

先輩がワープして現れて数秒。この戦闘が始まって数十秒ほどでみんながノックアウトされていく。その様は圧巻の一言だ。だって全員腹パンでKOだよ? 僕があの中にいたらまずはお腹と顔を殴られたりしないように警戒するね。弱点をみんな同じパターンでやられるとかどういうお笑いだよ。

 

みんなレベルが低くないですか? これじゃあ来るべき僕との戦闘のときに役に立つかわかんないんだけど?

 

「何したのかさっぱりわからねぇ!」

「無敵じゃないすか!」

「よせやい!」

 

先輩のことを見てみんながブーブーと文句を言う。その様はまるで分析するつもりがないようだ。やっぱり出久くんか僕がいないとこの子たちろくに戦えないのでは?

 

「何かからくりがあると思うよ!」

 

ほら、出久くんがたくさんの言葉で仮説を立てるのを聞いて腕組みしながらうんうんと頷いておく。

 

「相澤先生、あの子、僕が育てたんですよ」

「お前は親か」

 

出席簿でぽすんと叩かれたので様式美として「痛〜い」とだけ言っておく。そんなやり取りをしている間にも事態は進んでいた。みんなが刈り取られていくのを見ながらため息をつく。

 

「……あ、出久くんやられた」

 

腹パンを喰らって落ちていく彼を見ながら再度ため息をついた。あまりにも杜撰すぎる。戦闘になってない、指導対局にしてもお粗末だ。みんなの本当の力の50%だって出せていないだろう。

 

自分の実力を発揮することもできないままに負ける。それってつまる所鍛錬が足りてないってことだからね。みんなが悪いよ。

 

「Power!!!!」

 

お茶子ちゃんが手を触れるよりも早くその丸太のような拳が彼女のお腹に突き刺さった。反撃よりも体の反射の方が早く、彼女が顔を青ざめさせながら情けない声を出す。そのすぐ下では梅雨ちゃんがぐへぇ、と横たわっていた。いやぁ〜。いい顔するなぁ〜……なんというか、こう、苦しんでる顔っていいよね……よくない?

 

 

【挿絵表示】

 

 

それにしても……いいな。やっぱり、強い。言うまでもないことだけど、ルミリオンは強い。だからこそ、ここで僕と戦るということには大きな意味がある。

 

舞妓譲葉として、ではなくて、敵連合の『ユズ』として、カッコ悪いところは見せられないのだ。

 

「じゃあ、僕出てもいいですよね?」

「あぁ……やり過ぎるなよ?」

「先生って僕のこと問題児だと思ってる節ないですか?」

「思ってる節どころか問題児だろう、お前は」

「こんな優等生捕まえてなんて事言うんですか!」

 

ぷんぷん! と可愛らしく怒りながら先生の横を通り過ぎる。そしてお腹を押さえているみんなとすれ違った。

 

「舞妓……油断するなよ……」

「油断してたのみんなじゃん」

「ユズ……ちん……見ないようにね」

「響香ちゃんはどこを心配してるの?」

 

みんなが一様にしてお腹を押さえてすれ違う。う〜ん腹パン大名行列……なんかどの言葉使っても難しいな……女子まで綺麗にお腹押さえてるのなんかもうそういうネタにすら見えてくるんだけど。

 

あ、みんないい顔してるね〜! 俯いてるからよく見えないけど腹パンされて苦しそうな顔めちゃくちゃいいよ〜! 映える映える! 僕的にはもうちょっと痛めつけられてもいいんじゃないかってくらい! 本当にいい顔してるよねみんな! 最高だよ〜! はぁ〜……本当に……

 

「ありがとうございます」

「何が?」

 

ん? と首を傾げる先輩に向かってついつい漏らした言葉を謝罪する。あ〜、つい漏れ出たけどなんかそれっぽい言葉並べて誤魔化さないと……

 

「ほら、みんなに経験を伝えたかったんでしょう? これでみんなはもっと強くなる」

 

苦しいか……?

 

「なるほど……そういうことなら納得かな!」

 

明るくていいバカで助かった。なんでこれでいけるんだ……本当にヒーロー科はいい人が多くて助かるよ。今のがかっちゃんだったり物間くんだったりすると裏の裏まで読まれるところだよ? そういう狡さも、小賢しさも強さだと思うんだけどね。

 

まぁ、あの2人……というか物間くんはさておいてかっちゃんも普通に負けるだろうけどね! 物間くん? 触って個性使えたらいいね?(笑)

 

「それじゃあやりましょうか」

「君は他の子とは違うのかな?」

 

通形先輩の言葉にう〜んと唸る。まぁ、そうだなぁ。ここで隠すのもおかしな話だと思うし話しておくとしようかな。格付けの話である。

 

「僕がこの学年のNo.1ですから」

「それはそれは……うん! 君が一番やばそうだね!」

 

先輩はそう言うとハハハハハ! と大口を開けて笑った。余裕か? 言っとくけどそっちがチャレンジャーだぞ?

 

通形先輩がグッと構えるのが見えた、それと同時に拍手を鳴らす。さっき脱ぎ捨てたジャージと先輩の場所を入れ替えて蹴りを顔に叩き込む。もちろん透過されてしまうので蹴りは顔をすり抜けた。

 

「君も顔面かよ」

「明確な弱点ですからね」

 

先輩が拳を振るうより先に体を捻ってさっきとは逆の足で回転蹴りをお見舞いする。体が2人とも宙に浮いた状態だ。この蹴りも、無論彼の拳もすり抜ける。

 

「……!」

「カウンターを狩る練習をしてるのは先輩だけじゃないですよッ」

 

片手を地面についてブレイクダンスをする要領で蹴りをお見舞いするも彼には届かない。透過されて透かされてしまう。激強個性じゃん。あ〜やだやだ。

 

「う〜ん、決定打がないなぁ」

「驚いた! まさか俺の手が読まれるなんてね!」

 

先輩が地面に着地するなり五歩ほど後ろに飛び退いて距離をとった。そしてまたファイティングポーズを取り、語りかけてくる。原作を読んでたときも思ってたけどすごいお喋りで明るい人だよね。

 

だからこそ曇る顔が映えるわけだが。

 

「ヒーローたるもの予測が大事、でしょ?」

「……! はは、いいね。サーが好きそうだ!」

 

その言葉を最後にズッと地面に沈んでいく先輩を見てから、彼が完全に沈んだことを確認してから動く。さっきの戦いを見た上で、彼なら後ろを取ることは警戒されていると踏んで前から来るだろう。なら、こっちから後ろになってやればいい。

 

二歩ほど前に進む、予想通り彼が飛び出したのはさっきまでの僕の目の前だった。つまり、今の僕の後ろというわけである。

 

「!」

「ッラ!」

「む……!」

 

一瞬僕がいなくて固まった先輩の脇腹に、後ろから蹴りを捩じ込む。これは予想外だったのか透過されず、脇腹に突き刺さった。

 

……は? 硬ッ! 岩じゃないんだぞ!?

 

彼の腹筋のあまりの硬さに蹴りを捩じ込んだ左足をプラプラと振りながら地面に着地した先輩を見つめる。彼は蹴りをぶち込まれた脇腹を摩ることすらなく、振り返って僕のことをじっと見つめた。

 

「……君、いいね! うん! まさか一撃入れられるなんて思ってもみなかった!」

「あはは、それはみんなのこと舐めすぎでしょ……可愛いお友達たちへの腹パンのお礼はこんなもんじゃないですよ?」

 

お互いに構えを取りながらゆっくりと近づく。おそらく透過を利用したワープを連打しても僕に読まれることを理解したのであろう先輩との距離がゆっくり近づき……お互いの間合いに入る。

 

そしてそのタイミングで……

 

「そこまで!」

 

相澤先生からの待ったが入った。

 

「んぇ」

「え」

 

僕と通形先輩の間抜けな声が響く。そしてそのすぐ後に「え〜!」というA組のみんなの声がこだました。みんなやっぱり声揃えるの好きね〜……

 

「なんでだよ先生!」

「ここからが本番だろ!」

「これ以上戦ると次の授業に差し支えるからな。それは合理的じゃない」

 

相澤先生が有無を言わさないように前に出る。そして僕と先輩を一瞥ずつしてからため息をついた。

 

「お前ら、本気でやるつもりだったろ」

「そりゃあ胸を借りるつもりですからね」

「いや〜、すごいですねイレイザー! 彼めちゃくちゃ強いですよ!」

 

アハハハハ!! とアメコミみたいな笑い方をしながら上半身裸の先輩に頭を撫でられる。その撫で方は完全にいとことか、小さい子にするやつで僕の髪はぐしゃぐしゃになってしまった。おい、この髪の毛にどれだけ力を注いでると思ってるんだこの野郎。

 

「はぁ……通形、次の授業が始まるまでに終わらせろ」

「任せてくださいよイレイザーヘッド!」

 

通形先輩がつらつらと個性の説明、そしてインターンの説明をしていく中で、内容も知っているものだったので、僕たちは先生のことを「〇〇先生」って呼ぶけど、3年生にもなって実践が増えてくるとやっぱり先生よりもヒーローとしての側面が強く押し出されることになってヒーロー名で呼んじゃうんだなぁ……なんてことを思って時間を潰していた。

 

「ので! 怖くてもやるべきだと思うよ1年生!」

 

その言葉で締めくくられたインターンへの勧めにみんながパチパチと手を打った。みんなの背中も後押しされたようだ。お腹を押さえていた手は離れているし、顔は明るくなっている。う〜ん残念。

 

「話し方もプロっぽい」

「3コマで済む話を2話半も……」

 

あ、ここヒロアカでは珍しくメタっぽい要素が入るところだ。ヤオモモちゃんが拍手しながらそんなことを見えにくい左下の方で言っていたのが印象に残ってたんだよね〜……珍しいメタ要素で僕の立ち位置もしっかりと把握できた。

 

僕レベルになるとぼ〜っとしてるように見えて結構考えてるからね。少なくともここが『僕のヒーローアカデミア』からは完全に独立した世界であることはわかったかな? 原作とは違う……いや、それは僕がいる時点でそうなんだけど、そういうことじゃなくて……そう、僕がちゃんとキャラとして生きることを許されてる世界線だってことが把握できた。

 

つまる所、これは僕を見てる読者がいるってことがわかる。それがわかれば十分だ、僕の今後の動きが変わってくるしね。まぁ、一応見られていることを考慮して動いてはいるけど、今までよりももっと敵連合の幹部ということがバレないように多めの保険を打って動こうとか、もうそろそろ大人しくしないとなぁ、とかね。

 

あまりに目立ちすぎたらそんなキャラ動かしにくくてしょうがなくなっちゃうからね。

 

死穢八斎會編は敵連合の方で動こうかな。暗躍って感じでヒーロー側にあんまり出過ぎないようにしよう。

 

そろそろ裏の顔としての僕も動かさないとだしね。

 

そうやってメインプランを少し修正するように頭の中で考えているとガッシリといきなり肩を組まれて前のめりに倒れそうになってしまった。どうやら少し考えすぎて周りが疎かになっていたらしい。僕と肩を組んだのは切島くんだ。

 

「お前やっぱすげぇよ! 俺たちが何もできなかった先輩相手に勝負になってた!」

「あんなに綺麗に読めるんだってくらいに綺麗に思考読んでたよな」

「緑谷もすげぇと思ったけど実行してちゃんと思った通りにできてるのがすげぇわ」

 

ゾロゾロとみんなが集まってきて僕のことを褒めてくれる。なんか照れ臭いなぁ……僕は元から通形先輩のこと知ってたからなぁ……なんとか誤魔化さなくちゃ……あぁ、そうだ。

 

「みんなとの戦いを見てデータはあったからね。それにほら、今の僕って“目”がいいからさ」

 

自分の目を指さしながらそう言ってあげると、何人かが顔を逸らしたのがわかった。え〜! もう結構時間経つのにこの能力手に入ったことを思い出したら脳無にされかけた記憶が思い出されるんだ〜? みんな曇ったいい顔してくれるね〜! 久しぶりの供給ありがてぇ〜!! みんなの曇り顔好き好き大好き♡

 

「先輩の『透過』って個性自体はすぐにわかったんだけど、対応に時間がかかっちゃったなぁ……その割に僕の個性には対応しそうな顔してたし……やり合ってたら負けてたかな! こっちからは決定打ないし!」

「それでもやりあえるのがすげぇよ……」

「私たち瞬殺だったもんねぇ」

 

みんながゾロゾロと集まってくる。土煙に塗れたせいでみんな汚れてるからできることなら近づかないで欲しいんだけどなぁ。まぁ、それは切島くんがひっついてきた時点で諦めているんだけどね。

 

「やっぱりインターンは見て学べる人のところがいいなぁ」

「エンデヴァー事務所はステインの一件で剥奪されたままで、まだ教育権ないから別の場所だしね」

「どこしようかな……」

「それって指名なかった私でもいけるかな?」

 

みんなとザワザワと話しながら更衣室を目指す。そして男女で分かれて更衣室に辿り着いてから着替える最中、携帯が光っているのを確認した。

 

内容は、非通知の着信だ。

 

「ごめんみんな! 先に戻っててくれる? ちょっと病院からお電話あってさ」

「え、大丈夫なの?」

「平気平気! 多分次の検診の話だからさ!」

 

心配をしてきた出久くんに安心するように言ってから外に出る。小型の盗聴防止機はいつでも携帯してるのでスイッチを入れてから折り返しの電話を入れた。

 

「や、弔くん。一応授業中だからね?」

『知るか、なんで俺が雄英のカリキュラムに気を遣わなくちゃいけないんだよ』

 

ケッ、と唾でも吐くように弔くんが口にするのを聞いて苦笑してしまう。まぁ、気が立ってるのは間違いないけど、僕に当たらないでよね。

 

「それで? かけてきたのはそういう理由?」

『まぁな……死穢八斎會との会合が決まった。この日をドクターとの検診の日にしてあるから出てこい』

「ん、了解」

 

さてさて、今回はアドリブが多めになるからね。そろそろ楽しくなってくるなぁ……思わぬ収穫もあったことだし。

 

『……どうした? テンション高いな』

「いやね〜……うん。お葬式だからね。派手にやろうと思って」

『……利用価値はあるからな。壊しすぎるなよ?』

「わかってるって! 当たり前でしょ?」

 

弔くんにやんわり止められながらもやることは変わらない。さて、原作を大幅に改変する戦いを始めようか! 僕は誰もいない廊下でニヤリと口角を歪めながら呟いた。

 





お待たせ。曇らせが足りないという声がたくさん聞こえてくる今日この頃。次のお話は曇らせ多めで動くのでよろしくお願いします。

さて、皆さんにたくさんのお話を提供してきましたが、それもこれも皆さんのおかげなので、感謝をすることを忘れてはいけないなぁ、などと愚考しています。は? 皆さんは愚かじゃないが?

ともあれ、皆様の評価が、感想が、力になります。このまま頑張り続けますので、応援のほど、よろしくお願いします。

映画編を入れるかどうかのアンケートをさせてください!

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