個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア!   作:波間こうど

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今回も挿絵を入れられてません。
挿絵を入れたらまたご報告いたします。

さて、それはそれとして皆さん。

『曇らせ』好きですか?

6/30 挿絵を追加致しました!
本当の『曇らせ』は二度刺す。


★敵連合 舞

 

「さて、そろそろ通形先輩が壊理ちゃんのヒーローになるって意気込んでる頃かな? あの戦いは見ておきたいんだよね」

 

壊理ちゃんの部屋からあるものを回収してトガちゃんたちに手渡しておく。ここからはしばらく別行動だ。僕の仕事はここから原作とどれだけ乖離しているのかと言うことをしっかりと把握しておかないとってところだしね。

 

流石にここまで暴れておいて変わってないわけないし、道筋として僕が管理できるレベルにまで調整したいから原作で見ていたものをもう一度見ておきたい。

 

というわけで、来ちゃいました戦闘場。わざわざトゥワイスさんに乱波くんを作ってもらって、その乱波くんに壁削ってもらっていいところまで来てから乱波くんを消す。そして壁に開けた穴から中を眺めてみると、丁度戦闘がいいところまで進んだ感じだった。

 

………………いや、いつ見てもこの人バケモンだな。通形ミリオ。僕の、生身で勝てない相手。

 

大体No.1に一番近い男と言われるだけあって、強さが桁違いだ。なんでオバホくんと幹部3人まとめて潰しながら壊理ちゃん守れるんだよ。頭おかしいのかな……それをあの個性でやってるのが意味わからない。ただ1人、自分の身だけを守るのならこれ以上ない個性かもしれないけど……壊理ちゃんって自衛の術のない存在を隠しながら、守りながら、庇いながらヒーローしてるの意味わかんねぇ〜。

 

というか僕が意味わかんないのは彼の個性の練度なんかよりも、無個性状態で五分間。頭のおかしいオバホくんやその他からの銃弾なんかを避けきり、壊理ちゃんを守り切った。ワープも、透過もない、ただの生身でそこまでできるっていうことが理解できない。

 

個性が一番だってルールを逸脱してる。

 

「透過に未来予知にすら到達してそうな予測、それからワン・フォー・オール……これだけのものが揃ってたら、僕でも負け得たのかもね」

 

穴から彼を見ながらそう思う。銃弾で貫かれた彼には、もうその可能性はないわけだが。

 

「悲しいなぁ……彼が本当にNo.1になるだけの素質があったら僕を止められたのに」

 

物語上、それはあり得ないことなんだけど。

 

でも、思わずにはいられない。そこまでして、最強に『成った』彼の目の前で、大切なものを壊した時に、彼がどんな顔をしてくれたのかってことが頭から離れない。彼の大事なものを、犯して、侵して、壊して、潰して、崩して、苦しめて、貶めて、ぐちゃぐちゃになったそれを見下す様を見せてやったときに、彼がヒーローという存在を取るのか、それとも僕と同じ獣に堕ちるのか、とても興味がある。

 

……とことんまでヴィラン染みてきたなぁ。

 

骨の髄まで汚れている感覚が抜け落ちないね。きっと理由はこの前のアレなんだろうけど……まぁ、嫌なものだったけど、それなりの収穫はあったしね。許してあげるとしよう。

 

頭を痛めた甲斐があるってもんだよ。

 

「お、出久くん達来た」

 

ここからはヒーローとして出久くんたちが、ヴィランとしてオバホくんが戦うって形になるわけだけど……

 

「な〜んかつまんないなぁ……」

 

いや、原作通りある程度動いてくれるのなら僕としては願ったりなわけなんだけど……動きが予測しやすいし、好きなように動かしてあげられるからね。でもなぁ……全部そのままはそれはそれでつまらないというか……う〜ん……ワガママかな?

 

うさぎさんの人形を抱きしめながら乱波くんが掘り進めた洞窟の中でゆっくりと寝転がる。

 

今の僕の現状としてはパーティの前だ。

 

この後でとびきり暴れるわけで、そのために今はわざわざ準備をして、算段をつけて、しっかりと計画を整えて、邪魔な要素は消して必要なものは用意してから来たわけだ。いうならばケーキも料理も準備して、おしゃれな服装に着替えて、いつでもダンスを踊れる準備まで終わった状態で小一時間ほど時間を潰せ、と言われてる状態に等しい。

 

わかりやすく言うと修学旅行の前みたいな? 共感性薄いだろうか。少なくとも僕は修学旅行前ドキドキするタイプじゃなかったんだよね。寧ろ行きたくなかったなぁ……学校の奴らと足並み合わせるだけでも地獄なのになんで同じ部屋で寝るんだよ意味わからんだろ。普通に1人で寝かせてほしいんだけど?

 

だからまぁ、今のこの時間って言うなれば虚無の時間に等しいんだよね。とはいえここからどこかに行くわけにもいかないし……いや、出られるんだけど出たら出たでこっちの状況をよくわかってないのに帰ってくるわけにもいかないじゃん? それでいいタイミング逃してたら嫌だし。

 

塩梅が難しいなぁ……なんて考えていたらドゴン!! という音と共に物凄い揺れが僕の体を襲った。おそらく出久くんが天井を突き抜けた音だろう。派手だなぁ……

 

「この辺りの話って面白いんだけど、途中でこんがらがっちゃうよね。まぁ、後半の最終決戦の方が3倍くらいはこんがらがるけど」

 

あの辺り誰が何してて何がどうなってるのかをしっかりと把握できないんだよなぁ……誰と誰が今戦ってるんだっけ? ってなってた。

 

コレは僕の頭が悪かったのか、はたまたみんなわかってなかったのか……今となっては真相は闇の中だ、大体僕友達いなかったからそういうの話す相手も居なかったしね。

 

そろそろ幕引きも近いだろうか? チラリと穴から中を見てみると完全体になったオバホくんと出久くん。それから出久くんに背負われた壊理ちゃんが決死の戦いを繰り広げているところだった。

 

その戦闘は圧巻の一言で、グラフィックだけ見て素晴らしいなんて言っていたアニメの世界なんて少しもアテにならないほどの戦いだ。衝撃も音も全部、五感で感じることができるというのはどうやら大分違うようだ。

 

「治崎ぃぃぃぃ!!!!」

「緑谷ァァァァァァ!!」

 

その必死の顔で殴り合う感じ、たまらなく美しいよね。

 

その顔をすぐに曇らせてあげるから、覚悟してろよ。

 

その直後、治崎の手が出久くんの背後に迫った。どう見ても当たってしまう。不可視の一撃。しかも背後にいるのは壊理ちゃんなので最初に犠牲になるのは壊理ちゃんだ。

 

このままだと負けちゃうけど……原作であったっけ? こんな展開。ないよなぁ……イレギュラーかな?

 

「しょうがないなぁ〜……」

 

拍手を一度打ち鳴らす。それに合わせて2人の位置が入れ替わった。

 

「!」

「なッ!? 舞ぃぃぃぃぃィィィィ!!!」

 

「あはは、無様な叫び声ありがとね。じゃあ、堕ちていいよ。翔べないゴクドーくん」

 

彼の叫び続ける頬に出久くんの拳がぶち当たった。振り絞るように右手をそのまま振り切って地面に治崎を落下させる。その動作はまるでバスケのドリブルのようで、だけどどう考えても人が死ぬのに十分な衝撃を伴っているように見えた。なんだあれ、バケモンじゃん。あんなので殴られたら死ぬわ。

 

地面にぶち込まれたオバホくんの衝撃で僕の掘り進めた穴が揺れる。多分そろそろここも危ないかな……?

 

「脱出するかぁ〜……え、掘ってきた穴戻るの? めんどくさいんだけど……乱波くんこんな穴開けるなよなぁ〜」

 

面倒だと思いながら走って戻っていく。個性で転移してもいいんだけど、今『サーチ』使えないからどこに出るのかわかったものじゃないしね。

 

「使いづらいな……『サーチ』に慣れちゃった弊害だなぁ……気をつけないと……」

 

崩れゆく竪穴の砂埃を手で払いながら。僕は元来た道を引き返した。

 

 

  × × ×

 

 

「あ、ゆずくん」

「舞妓どこ行ってたんだよ! 探したぜ? 見つからなかったんだが!?」

「ちょっと野暮用でね〜」

 

2人と合流する。横穴から出てすぐだったからすぐに見つかった。まぁ、いきなり乱波くんだけ貸してって言って消えたら何事かと思うよね。わかるわかる。でも一応あの戦いは原作ファンとして見ておかないとかなって思ってさ。

 

「は〜、疲れた」

 

体を地面に倒して青空を眺める。物語がハッピーエンドに終わったとでも言うような青空だ。そんな青空を見ながらさっきのことを思い出して息を吐いた。めっちゃ疲れたわ、出久くんも何で最後油断するかなぁ〜……

 

声にならない声を出しながら体を伸ばす。するとひょこっと僕のことを上から見下ろしている可愛らしい瞳が手に入った。トガちゃんである。

 

「ゆずくんおいでおいで」

「んぁ〜……」

 

 

【挿絵表示】

 

 

トガちゃんに誘われてゆらゆらと幽鬼のように歩いてその太ももにダイブする。僕も男なのでこの魔力には抗い難いものがある。無理だよ、これに勝てる男がいるなら連れて来て欲しいかもしれない。これが……女子の、可愛い女の子の太もも……このままだと僕の中の気持ち悪いオタクが産声を上げてしまうかもしれない……

 

「あ〜……」

「羨ましいぞ舞妓……トガちゃん……俺もしてくれ……」

「仁くんはいつかね」

 

なんてサラッとトゥワイスくんが流されてるのを聞きながらケラケラと笑う。ごめんね、なんて言っておきながらその柔らかさを堪能すると、ぐぬぬとした顔のトゥワイスさんの顔が段々とニヤニヤとしたものに変わっていった。なに???

 

「あ〜……ありがとう、ヒミコちゃん」

「ゆずくんならいいよ」

「え、やだなぁ……そんなことばっかり言ってたら勘違いしちゃうぜ?」

「何を?」

「え〜? そんなの僕に言わすの?」

「男の子から言って欲しいです」

 

…………。

 

「何のことかなぁ……」

「わかってるくせに」

「本当に何のこと〜?」

「……私から言った方がいい?」

 

………………………………。

 

「やっぱりわかんないかも!」

「ヘタレです」

「男らしくないな舞妓! 本当に女々しいぜ!」

「うるさいやい!」

 

うが〜!! と両手を暴れさせるとトガちゃんに両手を押さえられてしまった。う〜ん……ここで僕がどんな行動取っても子どもの癇癪みたいになっちゃうな……どうしよう……負け戦では?

 

「……でも、いつかゆずくんから言ってくれたらそれでいいよ?」

「……………………考えておきマス」

 

しばし沈黙してから口から出たのはそんな言葉だった。あ〜……油断してたのだろうか……まさかトガちゃんに負けてしまうとは……残念ながら最近の僕は調子に乗ってしまっていたらしい。少し心を入れ替えることにしよう。うん、ダメダメだったからね、仕方ないね。

 

空を見上げるも半分……4分の3程度しか空が見えない。しかし見えている部分で鳥が飛んでいるのが見てとれた。……そろそろ時間かな。

 

「さて、と」

 

ゆっくりと体を起こす。トガちゃんの膝枕は寝やすさ抜群だったけど、名残惜しいものはいくらでもあるしね、仕方ないね。別に負けてしまったから居心地が悪くなったわけじゃない。断じて違うからね。

 

「行くの?」

「そろそろ始めよ〜か」

「早くないか? ノロマ!」

 

体を伸ばしてからゆっくりと瓦礫を登った。束の間の休息を楽しむヒーローたちへの少しだけ、ほんのささやかな優しさである。

 

瓦礫の山を登り切ると目の前にたくさんの人が見えた。ヒーロー、警察、拘束されるヤクザ、エトセトラエトセトラ……出久くんたちもいるのかな? それじゃあ人がいることが分かった上で仮面をつける。そして両手を大袈裟に広げてから声を張り上げた。

 

「やぁ! 皆さんこんにちは! 敵連合でーす!!」

 

物語の歯車が狂う音が聞こえた。

 

 

  × × ×

 

 

「やぁ! 皆さんこんにちは! 敵連合でーす!!」

 

拍手と同時ににこやかに笑う。今さっきオバホくんをぶっ飛ばしたばっかりだし、みんな疲れてるみたいだ。いやね、そのタイミングだからこそ顔見せをしたいのさ。このタイミングだから、みんなを曇らせる、体力も気力もないタイミングだからね。

 

「ふふ、いやいや、そんなに怯えないでくださいよ、ちょっと落とし物を回収しに来ただけですから」

 

拍手を一度打ち鳴らしてオバホくんの持っている消失弾と血清の位置を手元の瓦礫と入れ替えた。コレがあれば僕の目的の大きな一つの山を越えられる。とてもいいね、コレが欲しくて仕方なかったわけだし。壊理ちゃんに懐かれなくても最悪これさえ手に入れば作戦としては7割成功だったわけだしね。

 

「……その個性、ゆず、くん……?」

 

ボロボロの出久くんがよろけながらそう口にするのが聞こえた。うんうん、いい声だ。でもまだまだ序の口だよ? ここから、ちゃんと、曇らせてあげるから。

 

「ゆず……あー! オリジナルのことか!」

「オリジナル……?」

 

僕の言葉に違和感を覚えた相澤先生が言及してくる。そのタイミングでわざわざ仮面を外してあげた。このためだけに目を入れ替えてるんだから少しは驚いて欲しいね。カッコイイ目を持ってる子見つけるのに苦労したんだよ?

 

赤い、特徴的な瞳を持ってる人捕まえるのに苦労したんだから。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「俺の名前は舞。敵連合の舞だ! お前らのいうゆずのクローン体だよ」

「………………え?」

「聞こえなかった? 俺は舞妓譲葉じゃなくて、オリジナルの体を複製して作ったクローンさ! 三日間、お前らが来なかった間にオリジナルは細胞を抜き取られ、個性を研究されたんだぜ? ヒーローはいつも行動が遅いからなぁ……知らなかった? オリジナルはヒーローだから余計な心配させるつもりなかったのかな?」

 

みんなの顔が歪んでいくのがわかる。あぁ、いいね。それじゃあ仕上げだ。

 

「その個性と細胞を移植する技術を以て作られたのが俺だよ。つまるところまぁ、覚えとけばいいのはお前たちの敵ってことだな。俺のボスは弔くんだけだ」

「は? え?」

 

このときのために種を埋めてきたんだよね! わざわざあの事件について話さないで、あの事件の後、敵連合として姿を見せない! そうすれば、コレができる! 君たちが守りきれなかった存在として!! 見せつけられる!!

 

絶望の象徴だ!

 

 

「お前らはオリジナルを助け出したつもりだったのかもしれないけど、手遅れだったんだよ!! あはは! 三日間も猶予くれてありがとうね! おかげで俺が生まれたわけだ! 感謝してるよ! ヒーロー共!」

「………………………………ぁ」

 

 

あ〜〜〜〜!!!! 今出久くんの心が折れる音がしたよ!? か細すぎる声と一緒に聞こえてきたんだけど!! 最高すぎない!? 最高の音だったんだけど!! あり得ない興奮する!! 嘘でしょ!? 君みたいないつだって自分の意思を曲げない、ヒーローになるために全力を尽くすような君みたいな少年が、僕って存在が、舞妓譲葉って存在が、負けた、壊れた証明でもあるクローンがいるって知るだけでここまでいい顔してくれるの!? 嘘でしょ! この後のプランにも支障出るんじゃないかってくらいにいい顔してくれるじゃん!! これ、僕の許容量超えてるんだけど、無理無理! これ以上これを受容できるだけの容器がないよ!! これ以上のものとか見せられたら容量パンクして口から出てきちゃうから!! 脳みそとか破裂しちゃうから!! だけどここで見ないのは無理だからみんなの顔も見るね!! 楽しみにしてたんだ!! ……え! 相澤先生もそんな顔してくれるんだ! そこまで入れ込んでくれたら最高だよ!! 貴方が救えなかった、守り通せなかった生徒は勝手にクローン作られてるみたいですよ!! いいですよね! 貴方は最後の最後でいつも大事なものを守り通せない! その無力さをなんとかする方が生徒を育てるよりも合理的なんじゃないですかね〜? 合理性を履き違え過ぎだと思うんですけど〜! 貴方みたいな優秀な個性を持っていても、何も救えてないですよ!! 悲しいですね! ヒーロー!! それからお茶子ちゃんと梅雨ちゃんも最高〜〜!! 美少女二人の曇り顔本当にダイヤモンドくらい輝いてるよ〜!! 曇らないのがお茶子ちゃんのダメなところだったけど、流石にこのレベルだったら曇ってくれるか!! これからもこのレベルの曇らせをたくさん用意してあげるからね!! その度に壊れるほど、曇ってくれるよね!? ねぇ! お茶子ちゃん!! 梅雨ちゃん開いた口が塞がらないよねぇ! ねぇねぇ! 君がみんなを止めて、ルールに準じている間に!! 君の学友はクローン作られてるんだよ? ヒーローってなんだろうね! ルールって何が大事なんだろうね!! 何も守れない、何も救えないルールを一生懸命守ってた君はどれだけ滑稽だったんだろうね!! 助けに来ても手遅れだったから保身って意味だと正しかったのかもしれないけどね!! そんなの関係ないよね!? プロに任せるべきとか言ってたけど、任せた結果これなんだから大変だぁ〜! 君たちが行った方がまだ救いがあったんじゃない!? まぁ、どの道僕は元からこっち側(・・・・)なんだけどね!!

 

君たちが今少女を救って!! 悪の組織をとっちめて!! はい、ハッピーエンドってしたくても! そうしてもいいけど!! 残念でした!! 君たちの過去は消えない!!

 

舞妓譲葉が誘拐されて!! 結果として!!

 

君たちの大事な大事な存在がクローンなんてものを作られてしまったという過去は変えられないんだ!! コレからは舞妓譲葉が敵に一人いると思って動かなくちゃいけないけど!! 君たちは僕を、俺を! 倒せるのかな!? 攻撃できるのかな!? それがすごく楽しみだよ!!

 

……コレが全部嘘だってネタバラシする瞬間もきっと、これ以上いい顔を見せてくれるんだろうなぁ……楽しみだなぁ……

 

「舞……お姉ちゃん……」

 

僕が興奮した顔を隠すように両手で顔を覆い隠しているとそんな小さな声が聞こえた。じゅるりと涎を手で払って、個性を使った反動で体に熱が籠ってしんどそうにしている壊理ちゃんを見つめる。

 

「あぁ、壊理ちゃん可哀想に……すぐに助けるね……?」

 

顔を収めてからゆっくりと足を動かす、前に前に、瓦礫の山を降りるようにして動いていく僕のことを見てみんながようやく正気に戻ったのか動き出した。

 

「させるか! 敵連合舞! 拘束する!」

「……ヒミコちゃん」

「はいです!」

 

飛び出してきたヒーローをトガちゃんが無力化する。鮮やかにナイフを首に押し当てて掻き切るその姿はまるで妖精だ。血が僕に降りかかるがまぁ、コレも演出だね。

 

今更死人が1人や2人増えても誤差でしょ。

 

「お前ら、一度見捨てた癖に都合がいいときだけ救うフリするなよ」

 

手を伸ばす。その瞬間右から影が飛び出してきたのがわかった。壊理ちゃんに向かって伸ばした腕が蹴り上げられる。ギロリと見るとそこにいたのは出久くんだ。

 

「なんだ、お前。俺のことを蹴れるのか」

「…………ッ!」

「オリジナルの親友なんだって? ハハ、いいぜ。ヤり合おうか! なぁ、デク!!」

「……ッ! お前を拘束するッ!」

 

手を打つ。出久くんとの立ち位置を入れ替えて蹴りを放つもその蹴りを彼は受け止めると掴んで投げ飛ばした。両手を空けて距離を取らせることは愚策だろと手を叩いて彼のすぐ側の瓦礫と僕の位置を入れ替える。

 

すると、移動した瞬間に目の前に拳が迫っていた。

 

「へぇ!」

 

拳が僕の頬を殴りつける。そのまま瓦礫の上を転がった。跳ねるようにして立ち上がり殴られた右の頬を摩る。口の中が切れていたのでペッ! と唾液混じりの血を吐いた。

 

「今、入れ替わる場所を予測したな! やるじゃん! 木偶の坊じゃないってわけだ! お前は大した力のない問題児だって聞いてたんだけどなぁ!」

「ゆずくんの顔でこれ以上喋るな……ッ!」

 

出久くんの顔が歪む。いやいや、これ以上僕に尊さを運ぶなよ! 受容できないって!

 

「いいだろ? 一度救わなかったんだから、その子俺に懐いてくれてるんだ。俺より年齢で見たらお姉さんかもしれないけど、可愛いじゃん。俺、あの子と暮らしたいんだよ!」

「喋るなって言ってるだろ!」

「目標や夢は語るものだろーが!」

 

飛び出してきた出久くんと自分の位置を入れ替える。何度も、何度も入れ替えて彼の攻撃に触れないように、翻弄する。その都度、彼は必死になって僕に向かってくるが、ここでもう一度暴れてやるとしよう。

 

「お前らはオリジナルがどれだけ強いか知らないだろ! おんぶにだっこだもんな! アイツが本気を出せばこんなことだって出来るんだぜ!?」

 

両手を打ち鳴らす。そして全員の位置をぐちゃぐちゃに変えてやる。『四方八方ごちゃ混ぜ』(シャッフル・スクランブル)だ。

 

「さぁ! 混沌の中で踊ろうぜ!!」

 

目の前に来たナイトアイの腹にトガちゃんのナイフをぶち込みながら僕は高らかに宣言した。

 

混沌の宴が、始まる。

 

 

  × × ×

 

 

【出久side】

 

 

それは唐突に現れた。

 

「敵連合でーす!」

 

明るい声色、立ち居振る舞い。その全てが僕の知っている舞妓譲葉。僕の親友の彼だった。個性だって物を入れ替える『不義遊戯』。しかし、それは違うと言うことがすぐにわかることになる。

 

その仮面の下の瞳が青色ではなく、赤色に輝いていたから。

 

「俺の名前は舞。敵連合の舞だ! お前らのいうゆずのクローン体だよ」

 

その言葉がこの場のどれだけの人に刺さっていたのかはわからない。しかし、少なくとも、僕と、僕の横にいた相澤先生、麗日さん、梅雨ちゃんは固まってしまった。それほどの衝撃だ、それほどのダメージだ。頭が揺れて、動悸が早くなる。そんな僕らを見て彼は嗤った。

 

そして、彼は、壊理ちゃんを奪い取ろうと動き出した。口にする言葉は声色も、話し方もゆずくんそのものなのに、一人称が違うだけなのに、それなのに彼の言葉は全部全部僕たちの心にゆずくんとの相違点を叩きつけ続けた。

 

それがわかったから、僕はすぐに切り替えて動くことができた。100%を使ったばかりの体だったから、オールマイトのような速さで迫ることができて、だから、壊理ちゃんに伸びた手を蹴り上げられた。

 

だけど、彼の冷ややかな目だけは治崎のどんな攻撃よりも響いてしまった。

 

「なんだお前、俺のこと蹴れるのか」

「……ッ!」

 

しばしの戦闘、『不義遊戯』を自由自在に扱って僕のことを翻弄するが、こちらもゆずくんのことならヒーローノートにまとめ続けたのだ、彼の癖も、動きもわかっている。その動きの通りだからとてもやり易いが、それでも練度の差なのか、攻撃は当たらない。

 

その最中、彼の口角が歪んだ。

 

「お前らはオリジナルがどれだけ強いか知らないだろ! おんぶにだっこだもんな! アイツが本気を出せばこんなことだって出来るんだぜ!?」

 

彼が手を叩く、すると僕の視界が、いや、僕たちの視界が大きく入れ替わった。この場のヒーローと、瓦礫の場所がランダムに入れ替わる。こんな技、僕は知らない、だから、当然他のみんなも知らない。

 

それ故に遅れをとった。

 

「混沌の中で踊ろうぜ!」

 

ナイトアイのお腹にナイフを突き立てる彼のことを止められなかったのだ。

 

「……ッ! お前ッ!」

「なんだよせんせー、除籍処分ですかぁ?」

 

彼がそのナイフを引き抜き手を叩く。しかし、相澤先生が個性を使っている今、彼の個性は使えない。

 

「チッ! これだから弔くんが認めたヒーローは嫌なんだよッ! 便利個性が!」

「今だ! 畳み掛けろ!」

 

その言葉に警察官の人たちやヒーローの皆さんが飛びかかる。それに僕が参加しようと足を踏み出したとき、僕の肩が刃物で切り裂かれた。

 

「い゛ッ!」

「出久くんは足止めしておくように言われているのです」

「トガヒミコ!」

 

僕以外にも数人のヒーロー、麗日さんや梅雨ちゃん、ねじれ先輩たちが足止めを喰らっている。さっきまではタイツの人を含めて数人しか居なかったのに今は5人以上の人間が僕らの足止めに手を貸している。トゥワイスという黒いラバーマスクの男の個性だろう。

 

「覚悟しろ!」

「囲め! イレイザーの視界は塞ぐな! 個性を使われる前に捕えろ!」

 

そう言って約十数名のヒーローたちが彼を囲んだ、多勢に無勢だ。僕たちの誰もがやったと思った。

 

「あ、ダメだよ! それ使ったら!」

 

トガヒミコの言葉の意味はわからなかった。だけど、彼が何かをしでかそうとしているのはわかった。彼が、ナイトアイの身体を持ち上げて投げつけ、相澤先生の視界を一瞬だけ、遮った。

 

それだけで十分だった。

 

 

「領域展開」

 

 

聞こえてきたのはその言葉、そして一瞬で黒いドームのようなものが出来上がって、十秒にも満たないうちにドームが解けた。

 

そこは、地獄絵図だった。

 

血の海、むせ返るほどの鉄の匂い、そして目を焼く光景だ。

 

「アハハハハハハハハハッ!! 俺一人もろくに捕まえられねぇ〜のかよ!!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

血塗れの、白が見えなくなった髪を振りまきながら、空に吠えるように彼は笑った。スーツの手元は赤く染まり、身体中が血で汚れている。たった十秒にも満たない時間で、彼はヒーローと警官、その数二十名以上を虐殺した。

 

凶悪で、極悪のヴィランの姿だった。

 

「さぁ、雑魚は消えた! こっからはメインがシノギを削る時間だ! 思う存分、自分の全てを持って、殺し合おうぜ!! なぁ! 9代目ぇ!!」

 

ドキリと心臓が痛むのがわかった。彼の、顔の造形がほとんどそのままの彼の口から、僕が、ゆずくんに、親友に隠している言葉が出たからだろうか。

 

「暴れすぎだよッ!」

 

巨大化したリューキュウの腕が伸びる。彼を捕獲しようとしたところで彼の腕が奔り、位置を入れ替えた。リューキュウの足元へと移動した彼は右の拳を握りしめ、その脇腹を殴りつける。

 

黒い稲妻が光った。

 

「…………ッ!!」

「いいね! 調子が上がってきたぜオバサン!」

 

ゆずくんなら絶対に吐かない、暴言を吐きながら。彼がリューキュウの自分の何倍にもなる体を殴り飛ばした。そしてヘラヘラと笑う。

 

「つまらねぇ! 張り合いがねぇ! なんだこれ、ヒーロー全部雑魚ばっかりじゃん! No.1じゃないと張り合いないか!? ……全員殺せば来るのかな……?」

 

血塗れに咲く、花のように、その美麗な顔を歪ませる彼は、まさに、“悪の象徴”にすら見えた。

 

 

  × × ×

 

 

う〜ん。なんだろ……ちょっと派手に暴れすぎて、逃げるタイミング見失ったな……どうしようかな。なんか、このまま全員殺しちゃえ、みたいな雰囲気が出てしまってる……物語上、というか曇らせのメインプラン的にそれは大変不味いんだけども……どうしようかなぁ……本来の目的としてここでは僕(クローンとしての舞の存在)のことを匂わせて、必殺技と領域の存在を匂わせてあげればそれでいいんだけど……なんだろ、ちょっと想像以上にやり過ぎてしまった感じがある。なんか想像より殺しちゃったし。

 

さて、どうしたものか……

 

と考えているとさっきぶん殴って吹っ飛ばしたリューキュウが僕のことを捕らえようと手を伸ばしてきた。ヒョイっと避けるとその指が右足を掠る。おぉ、困る困る。右足が露出する。ちょっと血が出た。いや〜、用意周到な男なので義足じゃなくてちゃんと治してから来てるんですよね〜。僕ってば頭いいよね〜。

 

ん? あぁ、なるほど、つまりこうすればいいのか! 僕はいいアイデアを思いつくと、わざわざリューキュウを煽るように身体を動かした。

 

それでは、突発的に、それでいて撤退を行わなければいけなくしましょう! そしてちゃんと曇り顔を回収するまでがミッションです!

 

「トップ10ヒーローが随分と無様だなぁ! さっさと降りたらど〜だい? オバサン!」

「地位なんて関係ない……ッ! お前のことを捕まえられたらそれでいい!」

「年齢は触れられたくなかったかぁ? 毛穴開いてんぜ!」

 

煽りながら彼女の腕を避ける。そして、目的の場所にまで誘導した。それは壊理ちゃんの近く、救急車だ。彼女の腕の大振りで瓦礫が飛ぶ、それを拍手で救急車にぶつけた。このとき、拍手を隠しておくことでリューキュウの流れ弾が当たった、と言うように偽装しましょう。

 

「ッ! 壊理ちゃん!」

 

その反動で救急車が倒れるところ、ベッドに乗せられた壊理ちゃんを抱き上げて飛び出しましょう。そこで、右足を車に潰させます。想像を絶する痛みですが、いつだかに味わったことがありますね? 耐えましょう♡

 

「んぎッ! んがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

大声をあげましょう。その分彼らが曇ってくれます。リフレインするだろ? ほら、いい顔を見せてよ!

 

……………………あ♡

 

最高すぎ!! 同じく右足を怪我した彼のことを思い出してるだろ!? 僕のことを思い出してるだろ!? それが、最高に! 唆るんだよ!! 君たちのその顔が!! あぁ、欲を言うのなら耳郎ちゃんが欲しかったなぁ!! 耳郎ちゃんなら吐いてくれたんじゃない!? トラウマだもんね!! でも出久くんだけでも十分! いや、十二分なくらいに!! 最高に!! 興奮したよ!! あぁ、痛みがあるから誤魔化して叫べる!! いい曇り顔だ!! 泣きそうだね!? 辛いよね!? ほらほら、トガちゃんとトゥワイスさんもなんて顔してるんだよ!! 興奮しちゃうじゃないか!! 最高に! クるじゃないか!! やっべ、これ本当にやばいぞ!! 涎垂れてきた、涙もでてきた!! クッソ、痛いの治れ! 今いいところなんだよ!!

 

「右足ッ! 俺の、右足がッ! また(・・)!」

 

ほら、またって単語を出したら、君は、君たちは! 合理的な判断ができなくて動けないよね!? そうなると思ってたよ! だからこれで正解さ、ここまでしたら“舞妓譲葉”に縁のない、ヴィランとしての“ユズ”や“舞”に縁のある二人は動けるよな!!

 

「おい! 舞! 死ぬなよ! 死んでもいいぜ!」

「ゆずくん!」

 

トガちゃんがもう僕の名前を呼んでるけど、多分そんなこと他の人は気づけてないね。派手に暴れ回りすぎて原作よりも気絶してる人も多いし、それに雄英組はそれどころじゃなさそうだし♡ 本当にいい顔だよ、マジで唆るぜ……! 興奮するからやめてくんないかなぁ!! 追い討ち? 僕を殺す気?

 

「ヒミコちゃん……トゥワイスさん……ごめん、ヘマ、した」

「何気にしてんだよお前馬鹿か! 天才かよ! それどころじゃないだろ! もっと余裕持てよ!!」

「いいから、逃げよ? もう十分だよ。あとは弔くんがなんとかしてくれるから……!」

「あはは、本当に情けないよ……それじゃあ……帰ろうか……」

 

敢えて二人の目の前で足が痛むようなフリをしてあげることで二人の曇らせ顔を摂取することも忘れない。いやね……これができる男ってやつなんですよ……あ、足に響くので優しくしてね、優しく。

 

壊理ちゃんを連れて帰ろうとする。いや、一応壊理ちゃんを連れて帰るつもりはないんだけどね。流石に壊理ちゃんの事情を知ってる出久くんがそんなことを許すわけないし、壊理ちゃん連れて帰っても面倒見れないし、友好関係は作ったから多分ヒーロー側に置いておく方が面白いものが見られるしね。

 

だから、ほら、来てよ。

 

君だけが、ここで、主人公をする資格があるんだ。そうでしょ?

 

───僕のヒーロー。

 

「壊理ちゃんを返せ!!」

 

飛んできた出久くんがトガちゃんとトゥワイスさんの腕を潜り抜けて僕から壊理ちゃんを奪っていく。うんうん、その様は正にヒーローだね。本当に彼女がそれを望んでいるのかと言うことはさておいてさ。

 

「あ゛〜〜クソ、これだからヒーローは……一番嫌な時に来やがる」

 

僕の言葉に出久くんが顔を顰める。いいね、多分僕の顔でヒーローの否定の言葉を聞かされるのが嫌なんだろ? これから嫌でもたくさん聞かされることになるから覚悟しておいた方がいいよ♡

 

「……トゥワイスさん、隙を見て俺を増やせ。こっからは逃亡戦だ、後ろにイレイザーヘッドがいる以上俺らは個性を使えない、黒霧さんを呼ぶのは難しいし……」

「なるほど! 増やしたお前で帰るってそういうことな! わかりにくいんだよ! 教師になれるぜ!」

「それ逆なの……?」

 

トガちゃんが僕のことを支えながらそう口にする。いや、まぁ、トガちゃんの中でわかりにくい授業をする=教師の像ができているんだったらなんか申し訳ないなぁ……義務教育も終えてないとかだっけ? 俺でよければ勉強教えようか? 結構できる方だよ?

 

「それじゃあ、さっさとズラかるか!」

「逃すと思うか?」

「……今の貴方が手負いとはいえ俺二人相手に死者をこれ以上増やさないでいけると思うか?」

 

先生の瞬きの隙をつき、トゥワイスさんが増やした僕は当然のように無傷だ。この個性ならダメージを受けることなくみんなの命だって刈り取れる。

 

「…………」

「逃した方が賢明じゃない?」

「……お前の個性はつくづく嫌な個性だな」

「はは、失礼だなぁ。それに関してはオリジナルに言えよ」

 

出久くんから壊理ちゃんを取り返そうとチラリと見るといつの間にか壊理ちゃんを連れて物陰に隠れているようだ。いいね、流石は出久くん。これで僕は個性を使って手元に呼べない。あのノート何冊使ったらここまで僕のことを分析できるんだろうね? 怖いよ。

 

「……お前のことはA組が必ず捕える。舞妓も意気込んでくれるだろうよ」

「オリジナルかぁ〜、産みの親みてぇなもんだし会えたら可愛がってもらわなきゃなぁ。あ、右足お揃いだねって言っといて」

 

周りを見渡す。今回はカメラとかそういう特殊なセットは用意してない。まだ僕のマイナスイメージをこの世界の世間に撒き散らすのは早いからね。

 

「それじゃあ、またな? ヒーロー共。次は俺と弔くんで挨拶に来てやるから」

 

最後の捨て台詞を吐いて退散しようとしたそのとき、瓦礫から出久くんが飛び出した。僕の背後だったので首を回すようにして彼を見る。

 

「……ッ! 君を! 必ず救ってみせる!」

 

その声は、とても希望に満ちた声だった。

 

 

『ゆずくんのことは絶対に僕が助けるね!』

 

 

…………あぁ、明るくて、綺麗だ。綺麗で、尊い、そんな緑色の瞳だ。

 

君が僕にとって、最高のヒーローだよ。

 

 

「いつか、俺を殺してくれよ、緑谷出久」

 

 

手を叩いて現アジトに置いてある爆弾と僕たちの場所を入れ替える。まぁ、爆弾って言っても閃光弾みたいなものでそんなに威力が高いものじゃないけどね。

 

アジトに着くなりソファに腰をかけた。足がない感覚久々だなぁ〜と思いながら培養液に入れてある脳無の一体と“概念”を交換する。

 

これで僕の右足は怪我をしていたわけではなく、元から義足だった、という事象に切り替わった。

 

「あ〜〜疲れた」

「お疲れ様、ゆずくん」

「全く派手な仕事するよなお前! いつも通りだぜ! 最悪だな!」

「二人とも僕が指導しただけあっていい演技だったよ」

 

二人のことを褒めると二人の顔がにこやかに変わった。まぁ、すぐ治るって知ってても友人の足が飛んだらびっくりするし曇るよね。わかるわかる。治るからって骨折した人見て笑わないし、そこら辺は普通の感性だよね二人とも。

 

というか、敵連合のみんなだけど。素質はヒーローなんだよなぁ……みんな、捻じ曲げられただけで。

 

「それじゃあ、しばらくしたら弔くんたちもお仕事終えると思うから、それまでにご飯でも作ろうか」

「やったぁ! 今日は何作るの?」

 

トガちゃんが僕に抱きついてくる。う〜ん。この感覚、最近は壊理ちゃんに抱きつかれてたけど柔らかさが違うぞ……こっちはこっちでいいね……あっちは子供特有の体温の高さがとてもグッドでした……ロリコンではないが???

 

「ハンバーグとかどう? 二人も手伝ってね」

「やったー!♡ ゆずくんのハンバーグ好き〜!」

「俺に手伝えるか? 任せろ!」

 

3人揃ってキッチンに向かう、その最中で写った自分の顔を見て、忘れていたことを思い出した。

 

「あ、忘れてたな」

 

もう一度手を叩いて、培養液の脳無と目を入れ替える。いや〜、こっちの目じゃないとサーチできなくて困るぜ。

 

弔くんたちも僕たちがかき回した後だから少し原作より遅れるかもだけど、ちゃんとオーバーホールの腕をちょん切ってカッコよくヴィランの狼煙を上げてくれるかな? 一応スピナーくんに動画頼んだけどどうだろ……してくれるかなぁ、運転中で余裕ないか?

 

「ゆずくん早く早く!」

「ひき肉ともも肉って何が違うんだ? 一緒ってことだよな!」

「それは明らかに違うでしょ」

 

馬鹿なことを言うトゥワイスさんにチャチャを入れてから足をキッチンに向ける。義足が床を踏み締める音がした。

 

 

  × × ×

 

 

「トガから連絡だ。あいつがまた無茶をしたらしい」

「おじさん困るなぁ……」

「いつものことじゃないか」

 

俺の言葉にコンプレスと荼毘が呆れたように口を開いた。その反応は正しい、俺もそう思う。

 

「あいつが自分を大事にしないのはいつものことだ。だから俺らが優しくしてやらなくちゃなぁ……」

 

ガンッ! とオーバーホールが拘束された棺桶のような拘束具を蹴り飛ばした。スナッチとかいうヒーローは砂の一粒一粒に『崩壊』を伝播させて殺してしまったからもうヒーローは居ない。

 

「……殺しに来たのか」

「まさか。俺がそんなに優しいと思うか?」

 

ヘラヘラとしながら手でナイフを弄ぶ。この男は今状況がわかっていないらしい。

 

「俺、お前のこと嫌いなんだよ」

「俺も」

 

パンッ! という音がしてコンプレスがオーバーホールの左腕を消し飛ばした。まぁ、今でこそ腕が生えてるが腕を吹き飛ばされたのは事実だからな。それなりに気にしていたらしい。

 

「大体、個性が存在する現代がダメだから人間を無個性に戻すだのって考えを持ってるのはともかくとして、そのために個性に頼るのがナンセンスだ。あとな……」

 

あいつのもう片方の腕を『崩壊』で潰した。そして伝播しそうなところをナイフで切り取る。

 

「無個性でも俺らのところに突っ込んでくる間抜けもいるんだ。結局人は中身だぜ」

 

遠くから聞こえてくるサイレンの音を聞いてさっさと撤収に取り掛かる。あぁ、これだけは言わなくちゃいけなかったか。

 

「お前はそれで両手のない無個性マンだ! これからしゃぶる指もなく! 俺らが、俺たち敵連合が! 世界を変えていくのを見てろ! 頑張ろうな!!」

 

お前の罪は二つ。一つは俺らの仲間を殺したこと。

 

二つ目は───

 

アイツを泣かせたこと。それだけで、十分だ。

 

「帰るぞ、スピナー車回せ」

「おい、こいつの足潰さなくていいのか」

「あ?」

「あいつの足を潰したんだろ?」

「あぁ……そういう……いいぞ荼毘、燃やせ」

 

荼毘の言葉を聞いて指示を出す。あいつが足を怪我したのはコイツのとこのガキを庇ったからって話だし、言いたいことはわかるから許可くらいはくれてやろう。最初はあんなに舐めた口を利いてきたコイツも今となっては従順な犬のように許可を求めてくる。そういう風に調教したのは紛れもなく譲葉だ、アイツやっぱこえぇな。

 

助手席に乗り込む俺の後ろで炎が轟々と燃える音が聞こえた。

 

「出せ」

「なんでも良いがサイドミラーが見えないから足下ろせ」

 

燃え盛る火をバックにトラックは闇に消えた。





どうでしたでしょうか。楽しんでもらえましたでしょうか?
んこにゃさんの絵があったらさらにやばいものだったのですがサイバー攻撃のせいかまだ挿絵が上げられず申し訳ないです。

それはそれとして、一つの山場を終えましたので皆様に感謝をお伝えします。ありがとうございます。ここまで来られたのも皆さんのお気に入り登録、10や9に始まり数多の高評価、さらに感想がたくさん届いたからです。

皆さんの応援が、僕をここまで連れてきました。これからも頑張ります。
今までありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

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