個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア!   作:波間こうど

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おまたせ。
今日は曇らせはないけど可愛いから許して。


★文化祭序章!

 

文化祭。

 

それは、学生による学生のためのお祭りである。それはどの時代のどの学校にしてもそうで、ここ、国立雄英高等学校もその限りではない。どんな学生だろうと、おおよそ一番楽しみにしているイベントである。それが文化祭だ。

 

「文化祭があります」

「ガッポォォォォォォイ!!!」

「学校っぽいの略? いつ示し合わせたの?」

 

ギャーギャーと騒ぐみんなを見ながらクルクルとペンを回す。お、四連。

 

ペンを回しながら話を聞いていると、切島くんがガタンと席を立ちながら相澤先生に文句を言う姿が見えた。

 

「良いんですか! こんなヴィラン隆盛の時期に!」

「今のヒーロー科主体の動きに苛立ちを考えている人間も少なからずいる……他科主体の学祭はその息抜きになるんだよ」

 

相澤先生が寝袋に入りながら説明してくれているのを聞きつつ、みんながざわつくのを聞いてみる。他科に申し訳なさを抱えている人も一定数いるようだ。感じなくて良いのに。

 

大体、ヒーロー科はヒーロー科で頑張ってるのにそれについてとやかく言われる筋合いはないし、文句言ってるのは大方普通科……つまりヒーロー科に入れなかった有象無象のモブだ。脳も個性もイマイチで努力もできやしないのに文句ばっかり一人前で嫌になるぜ。

 

好んで雄英の普通科なんて入らないだろ。ヒーロー科に入りたがったハズだ。ヒーロー科の倍率が300倍だってところから20人……正確には一クラス18人だから36人かな? それが300倍ってことは10000人以上が受けるわけで、さらに心操くんの発言から普通科も併願できることは確定。ってことはほとんどの普通科の学生はヒーロー科を落とされた所謂“劣等生”でしょ?

 

心操くんみたいに試験に個性がヒットしなかった子はともかく、僕が証明したように無個性でも頑張ればポイントは集められるんだからさぁ……

 

ほんと、劣等感から来る八つ当たりは醜いねえ……民度が低いよ、民度が。頭使えよカス共が。

 

「ぬるいわ上鳴!! おっパブ!!!!」

 

お、気がついたら峰田くんが吊るされていた。……おい、おっパブはダメだろ。高校生がして良いと思ってんのか……? というか、その場合普通に君客じゃなくて店員だよ? お前のおっぱいに誰が興奮するんだ?

 

ちなみにA組女子はレベルが高いのと、頂点みたいな人が一人いるので、そこらのお店入るよりは当たりだけどね。何モモとは言わないけど。

 

「腕相撲大会!」

「熱いね」

「ビックリハウス!」

「何するのそれ」

「ダンスー!」

「三奈ちゃん上手だもんね」

「ふれあいどうぶつえん」

「僕たまに甲司がすごく可愛く見えるんだよね。やっぱり大型犬とか飼ってよ、え? ダメ? 寮では許されてない? あ、そこなんだ……?」

「暗黒学徒の宴」

「それは本当に何するの???」

「僕のキラメキショウ」

「あ、優雅の方がまだわかるわ」

「……コントとか?」

「……誰がするの?」

 

みんなの言ったものに適当にツッコミを入れながら時間を潰す。まさに非合理的な会だね。相澤先生寝てるけど……いや、聞き耳は立ててるな。

 

「ゆずくんは何かないの?」

「ん? ん〜……」

 

背もたれにもたれるようにして考えるふりをする。いや、まぁ、考えてはいるけど。

 

この後なんやかんやあって他の学科のストレス解消に貢献したいとかなんとか言い出すんだよね? で、寮でぐだぐだやってバンドになると……なら、ここで提案してあげようか。案外、僕も楽しみにしてたし。

 

「……うん! 決めた!」

 

ガタン、と席を立って振り返る。後ろにいる耳郎ちゃんに指を向けた。最近、僕と目を合わせると申し訳なさそうな顔するからね。やっぱり上がり下がりあるから曇らせは映えるわけで、つまんない仏頂面続けられても僕が良い顔を摂取できない。

 

と、いうことで。

 

「響香ちゃん、バンドやろーぜ」

「……………………………………へ?」

 

少し、空いて。濁流と間違うほどの爆音。

 

「ハァァァァァァァァ!?!?!?!?」

「え! 告白!? 告白!?」

「嘘でしょ!!」

「舞妓お前マジかよ!!」

「アァァァァァァァァ!!」

「うるさいなぁ、みんな」

 

チラリとみんなの顔を見るとすごい良い顔をしていた。ヤッベェ〜、絶望っていうか焦りみたいな顔してる。もし告白だとしたら成功するわけないのにそんなことするわけないだろ。こんなとこで告白って……僕がいくら可愛くてもあり得ないって。

 

僕がモテるわけないんだから。

 

「え!? でも! 前に言ったときはユズやらないって……!」

「なんか響香ちゃん、最近沈んでるし。それに、折角の文化祭だぜ? やるでしょ、バンド」

「でも……!」

「バンド以外のメンバーでダンスとかどう?」

「俺も同じこと考えてた」

「マジ? 焦凍そんなこと考えてたの? その顔でホストみたいな芸当身につけたら犯罪だぜ?」

「そうなのか?」

「うん。女の子をたぶらかす悪い男になっちゃう」

 

ワイワイとお話が進んでいく。気がつけば誰かが「他の科のガス抜きに」と楽しめるものを作ろうと言い出す。ちゃんと原作通り進んでくれて何よりだ。ある程度の道を定めてあげると原作に沿ってくれるみたいだね。再確認。

 

「僕は楽器なんでもいいけど……まぁ、ギター? ドラムとキーボード、ツインギターとベース……ボーカルとコーラス? まぁ、基本的にバンドの編成としてありがちだけど……いや、ちょっと多いかも? まぁ、それくらいなら許容範囲内かな……?」

 

まぁ、言っても大体のメンバーは決まってるんだけど……

 

「寮に帰ってから楽器のメンバーを決めようか。僕と響香ちゃんはほとんど確定。後楽器経験あるのは……百ちゃんと踏陰と爆豪だっけ?」

「え!? 爆豪!? 意外!!」

「お母様が音楽教室に通わせてた記憶があるけど……どうだっけかな」

「爆豪が楽器とか出来んのかよ、壊さね〜?」

「んだと出来るわ!!」

 

ギャイギャイと盛り上がるみんなを見ながら話を進める。結果としてまとまった話はドラムがかっちゃん、僕がリードギター、バッキングギターが常闇くん、ベースボーカル耳郎ちゃんの、キーボードヤオモモちゃんという形になった。すまない……上鳴くんのお仕事を奪ってしまってすまない……。めちゃくちゃ弾くから許して欲しい……

 

「それじゃあ、煌びやかなバンドパーティー空間をみんなにお届けしようか!」

 

パンパンと手を叩いてみんなの意識を文化祭に向ける。さて、暗いお話に向かう前に最後の楽しい出来事だ。みんなで楽しく過ごそうよ。

 

破滅の前にね。

 

 

  × × ×

 

 

やぁ、みんな。僕だよ。舞妓譲葉だよ。

 

みんなは人生で絶望したことある? ちなみに僕はあるよ。前世は結構常に絶望してたけど……あ、今世は今です。

 

「ゆず! 一緒に出て欲しいんだ! この通り!!」

 

僕は今拳藤ちゃんに頭を下げられていた。理由? 何に出て欲しいかって? 決まってるだろう。それは──

 

「私一人じゃ流石にとてもじゃないけど出れないから! ゆずも一緒に出てよ! ミスコン!」

 

ミスコンである。

 

ちなみにこの際のミスコンとはミスター・コンテスト。雄英高校1番のイケメン、ナイスガイを決める戦いではなく、雄英高校1番の美女、美少女を決めるミス・コンテストだ。

 

OK、みんなの言いたいことはわかる。大いにわかるとも、だけどあえて言わせてほしい。

 

僕男なんだけども???

 

「…………………………あ〜…………………………」

 

人生で多分、もう今後放つことのない絶望的なまでの伸ばし声を出しながら僕は頭をフル回転させていた。本来なら断れる。断れるのだ。だって、僕男だし。出ることでメリット一つもないし。あと、はちゃめちゃに可愛いけど僕ってば男だしね。

 

だけど言われた場所がよくない。どこか? そう、教室である。わざわざ彼女は教室にまで足を運んで僕にお願いしているのだ。是非ともやめて欲しいね。断りにくくなるじゃんか。……さて、みんなの反応は?

 

「ユズ出るなら優勝じゃない?」

「いや、去年優勝は絢爛崎先輩だろ? 舞妓にあの眩さはないぜ?」

「それに準グランプリはねじれ先輩だとか、拳藤も出るなら層も厚い」

「でも舞妓なら普通に良いとこまでいけるんじゃね?」

「ゆずくんなら優勝できるよ! というか全力でプロデュースするよ! ゆずくんの魅力はなんといってもその可愛らしさだからそこを活かしていくような調整が必要……やっぱり服装は可愛い系が良いのかな? 水色のドレスとか相性良さそう? 個性を使って着替えられるのなら演出として変身が使える……それならいろんな衣装を制限時間内に見せられる……? そうすればいろんなゆずくんの魅力が魅せられるから…………」

 

なんか周りは肯定的なんだけど……君たち忘れてない? これ、ミスだから男は出れないんだよ? え? 最近は色んなことに配慮して性別関係ない? それは垣根を越えてない? 多様性と不自由を履き違えてるだろ。あと出久くん元気いいね。アイマスでもしてろ。

 

できることなら否定して上手いこと断って欲しかったんだけどなんかみんなそれなりにウキウキで背中押してくる雰囲気なの何? 本当に性癖歪めてやろうかこの野郎共。

 

「友達に勝手に申し込まれて出ることになってさ! 他の誰も一緒に出てくれないし、一年一人は心細いから……ゆずも出てくれたら嬉しいなって」

 

いや、原作では貴方一年生一人なのに姉御肌全開で出てなかった? これも僕が甘やかし続けたの原因だろうか……? ここ最近ずっとチャットしてるもんね。姉御肌から妹肌になってしまったのだろうか? それにしてもみたいなところあるけど。

 

いや、正直出たくないんだよ? 出たくないに決まってるじゃん。無理無理、勝っても地獄だし負けても地獄じゃねぇーか。

 

ただ、僕の今後の目的のために出ても良いって気持ちが少しだけある。それを踏まえたらギリギリ、本当に、刹那的なギリギリだよ? ……………………出ても良いのか?

 

僕の人気は高めておきたいし……仕方ないか。サブプランだ。

 

「はぁ〜……友達の頼みは断れないしね。いいよ」

「……! ホント!?」

「嘘つかないって、もぉ〜……ジュースでも奢ってよね?」

 

やれやれと拳藤ちゃんの背中を叩きながら教室を出る。拳藤ちゃんをB組に送り届けてからトイレに行くとだけ連絡を入れて、屋上へと足を進めた。

 

屋上、本来は開放されてないんだけどね。僕レベルになると簡単に開けられるから……いやまぁ、開けたというか普通に屋上にある植木鉢(先生の誰かが私物で育ててるやつ)と僕の場所を入れ替えただけなんだけどね。

 

「……文化祭かぁ」

 

夏の暑さも身を潜め出したし、そろそろだとは思ってたんだよね。もうすぐ、動く。物語が動いて、僕の物語が始まる。

 

なんだか感慨深い気さえしてくる。物語が動けば、僕も暴れられる。僕のこの命をかけて、曇らせを見られる。その瞬間が、たまらないだろうと思える。

 

屋上に来たのは再確認だ。僕を認識する。魂の輪郭を、再認識する。

 

何度もこの作業を、繰り返して、僕はぼくを定義づける。

 

 

さもないと壊れてしまうから。

 

 

「…………すごいな、僕は」

 

フェンス越しに見える地面は遠くて。きっと、今から曇らせをする未来の方が近くて。

 

「あぁ……寂しくなるね」

 

声に出たのは、的外れとも言えるような、そんな言葉だった。物語が終盤に向かっていくのがわかってるから、ふいに口をついたのだ。

 

漫画的にはもちろん、まだまだ早い。だけど、ストーリーをなぞるとすると、僕は文化祭と、対抗戦と────

 

「どんな物語も、終わりは寂しいなぁ」

 

拳を握る。照った太陽にかざしてみた。照らされた拳を飲み込むように、雲が光を遮る。

 

『お前みたいな奴は死んだ方がいい!』

 

翳る景色に、瞳が曇って。

 

「…………次は、僕だ」

 

いつだかの記憶が見えた気がした。

 

 

  × × ×

 

 

「え、合わせをしてみよう?」

「そう。いきなりだけど、とりあえず遊んでみて音を合わせたい」

「僕は構わないけど……踏陰とか百ちゃんには厳しいものがない?」

 

寮に帰ってすぐに出されたのはそんな提案だった。曲を作るにあたって、みんなで音を共有したいという。

 

「構わない。どんな曲を合わせるのか興味がある」

「お二人が軸ですから好きなようにしてみて欲しいですわ!」

 

なんか二人は賛成らしいので、ドラムとギター、ベースのアンプと楽器を揃えてエフェクターに繋ぐ。ギターの音をチューニングをしながら爆豪をドラムに座らせる頃には寮のみんなが僕たちの演奏を見るために集まっていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「……みんな暇なの?」

「いや、こんな風に合わせるってなったら気になるって!」

「楽しみ〜!!」

「見せもんじゃねぇぞ!!」

「ま、とりあえず合わせるだけだし……響香ちゃん。とりあえず爆豪に叩かせて入る感じでいい?」

 

ネックを握る。爆豪がなんでテメェの言うことを聞かないといけないんだ? あぁん? みたいな顔で見てきているがそれを無視し、響香ちゃんの承諾を得た。それじゃあ、いつかぶりのセッションを始めるとしよう。

 

「ワン! ツー! ワン! ツー! スリー! フォー!」

 

ギターの弦を弾く。空気が塗り替わる。ドラムのテンポに合わせてまずは小手調べ……単音を鳴らさずにバッキング、つまりリズムを取る想像しやすい腕を振って弦をジャカジャカ鳴らす奏法で様子を見る。一応スケールだけ響香ちゃんの弾くベースに合わせておけば問題ない。即興だけど割と様になってるんじゃないか?

 

楽しそうな響香ちゃんの顔が見える。……ちょっと意地悪してあげよう。コードを展開して、音を複雑化する。カッコいいけど、ベースは困るよね? え、あ、この程度なら余裕で乗ってくるんだ……この子、高校生の技術じゃないでしょ。なら……

 

僕と耳郎ちゃんが爆豪の音の上で踊る。いつの間にかみんなの口はあんぐりと開いて、驚いているようだった。驚かせちゃったかな? 部屋王したときみたいな楽しむ! みたいなのじゃなくて、結構ガチでやってるし、エフェクターとか今思いっきり踏んだし……あ、ディレイ変えよっと。

 

「ユズ!」

 

セッションを楽しんでいるとふいに耳郎ちゃんから名前を呼ばれた。手元から目を上げると満面の笑みの顔が見えて。

 

「ソロ! かっこいいの聞かせてよ!」

「……アハハ! まっかせてよ!」

 

高音、フレットに指を乗せる。ただの単音を弾くだけだったら面白くない。だったらチョーキング、それから、タッピング。音数を増やすだけじゃ物足りない、耳に残るフレーズを入れて……最後は元のコードに戻る。アドリブできるけど得意じゃないんだよなぁ、ほら、ちょっとミスった。

 

「…………すげぇ」

 

誰かが呟いたのが聞こえた。まぁね。これには結構時間かけたから、褒めてもらわなきゃ困るよ。

 

ギターも、勉強も、料理も、なんでもできなくちゃいけないんだよね。なんで? そりゃあ曇らせのためだけど?

 

なんでもできる、なんでもできた、それでも「個性」重視の世の中に溶け込めなかった悲劇の少年。それってすごくロマンチックだと思わない?

 

ゆっくりとテンポを落として、ジャーンと、音を鳴らすことで曲を止める。ふぅ、と息を少しだけ吐いてから感動した様子の響香ちゃんとハイタッチした。

 

「ユズ! やっぱりすごいよ!」

「ん〜……僕としてはギソロもうちょっとこだわりたかったんだけど……あ、爆豪ドラムもたついてなかった?」

「いきなりテンポ変えたお前のせいだわ死ね!!」

「死ね???」

「舞妓お前マジでなんでもできんだな!」

「すげぇカッケェ!! 耳郎もマジでやべぇ!」

「すごいな……この曲を合わせるのか……?」

「ここから煮詰めたやつね。さっきのは少し遊んだだけだし」

 

僕たちを褒めてくれるクラスメイトたちを見ながらギターをスタンドに立てかけるとドーン! と僕の体に突っ込んでくる影があった。まぁ、葉隠ちゃんである。

 

「ぐぅえ……」

「ゆずちゃんかっこいい! すごい! カッコいいよ!!」

 

押し倒される形で尻をつく。いや、透明だからって顔近いよ。近い近い、顔引っ付きそうだから、やめてくんないかな……? 恥ずかしいが勝つから……いや、ここで顔を逸らしたら負けだから逸らさないけどさ。

 

「透ちゃん、近い、近いよ」

「え〜? カッコよかったもん!」

「そういう問題じゃないんだよなぁ……」

 

引き離すように葉隠ちゃんを手で押していると奥から殺気が届いた。

 

「ユズ……?」

「え? なになに、僕なんかした……?」

「……フンッ!」

「あっっぶな!!」

 

僕の側頭部目掛けてイヤホンジャックが振るわれる。咄嗟に手を叩いてかっちゃんがドラムの上に置いたドラムスティックと僕たちの場所を入れ替えた。

 

「何すんの!!」

「うっさい!」

「僕が悪いかなぁ!?」

 

ブンッ! と僕を追うように迫るイヤホンジャックを避けながら立ち回る。ちょ、みんな、ギターとかエフェクターとか気になるのはわかるけどそっち見てないで僕のこと助けてほしいかも!! 早く! 早く!!

 

 

  × × ×

 

 

「んぇ? 文化祭にエリちゃんを呼ぶ?」

「そうだ。基本的には通形に世話を任せることになるがな」

 

寮で文化祭の出し物のお話をしていると、相澤先生が出久くんと僕を呼び出してそう言った。いや、まぁ、原作通りの展開だ。そのうちそこから「桃がなってるよ!」の通形先輩と可愛いおべべのエリちゃんが出てくることだろう。原作展開知ってると進みを予想しやすくていいよね。

 

「まぁ、いいんじゃないですか? エリちゃんも楽しめるもの作るつもりですし」

「……まぁ、エリちゃんはお前たちのことを気に入っているみたいだから、先に声をかけておくって話だ」

「なるほど、まぁ……そうなりますよね」

 

そりゃ、エリちゃんには気に入られてるだろう。彼女がどこまで理解しているのかはわかんないけど、僕が舞である以上は、気に入られなくちゃおかしいって話だしね。むしろ好かれてなかったら僕は何してるんだって話になるし。僕は何がしたいんだよその場合、下手くそすぎるだろ。

 

「あ! エリちゃん!」

 

エリちゃんがやってくるとみんなの手が止まる。僕も常闇くんにギターを教える手を止めて、エリちゃんの方に歩いて行った。あ、草むらに桃がなってる。引っ叩いてやろうか。

 

「やぁ、エリちゃん。可愛いお洋服だね?」

「……! ゆずお兄ちゃん」

「はいは〜い。君のための譲葉お兄ちゃんだよ〜」

 

駆け寄って抱きついてくる彼女を抱き上げてあげる。すると彼女はすりすりと頬擦りをしてきた。どこまで僕のこと好きなんだ……? 可愛すぎる。もしかして産んでた? 僕の子供だったりする?

 

「この子は僕が育てた」

「育ててないよ!?」

「なんなら僕が産んだ」

「お前がそっち方向の冗談言うとオイラ困るんだけど」

「実はしばらく僕に近づかないで」

 

エリちゃんを抱き上げながら峰田くんから距離を取る。何故だか興奮した様子の峰田くんが葉隠ちゃんに殴られるのが見えた。あぁ、背後から一撃……

 

「ちょっと文化祭の前に雄英の雰囲気を知ってもらおうかと思ってね!」

「あ〜……なるほどね。出久くん、一緒に行ってきたら?」

 

エリちゃんを地面に下ろしてあげてから出久くんを手招きして行ってくるように指示を出した。出久くん的には自分よりも僕の方がいいんじゃないか? と思ってるみたいだけど、そこは適当なことを言って誤魔化すことにしよう。

 

「楽器隊が今抜けるのはちょっと致命的だし……僕が抜けたら響香ちゃんの仕事量がすごいことになっちゃうからね」

 

適当なこと言ってるけど結構いけるか? なんか納得してくれる雰囲気が出てるな? いけるか? 僕が仕事するのは分かりきってると思うし……ワンチャンない? いけない? どうだ? いけるか?

 

「確かに……ゆずくんが抜けたらみんな困るもんね……! じゃあ、エリちゃん、今回は僕と一緒に回ろうか!」

 

嫌そうな(この場合の嫌そうは出久くんが嫌なわけじゃなくて、ただ単に僕がいないこと自体が嫌そうって意味)エリちゃんのことを出久くんと先輩がなんとか宥める。……お、駄々っ子の如く抗議の視線を向けてる……可愛いな……

 

仕方ないかな。

 

「エリちゃん」

「……ゆずお兄ちゃんも一緒がいい」

「え〜……僕のこと大好きじゃんか、照れる」

 

おちゃらけて、エリちゃんに微笑んでみせる。常闇くんからギターを借りて、肩にストラップをかけて持ってみる。そしてよく見えるようにジャーンと鳴らしてみせた。

 

「お兄ちゃん本気でカッケェところ見せてあげるから、今回はデク兄ちゃんと一緒に回れる?」

「…………文化祭の当日は、回ってくれる?」

「もちろん。僕でよかったらエスコートするよ、お姫様」

 

少しニヒルに笑って手を出してあげる。約束の小指を出して見せることで指切りをする。それで納得してくれたのかエリちゃんは振り返りながらも僕から離れて、通形先輩と出久くんに連れられて歩いていく。

 

「…………」

「頑張らないとね」

「うん……」

 

いつの間にか横にいた耳郎ちゃんに言葉を返す。うん、いいものを作ろう。ヒーローとしての舞妓譲葉、その一番かっこいいところを、山場を持ってきてあげたいのだ。

 

それがメインプランで、僕が常にヒーローとして、立ち回った、映像に残るように動いた理由なんだからね。

 

「ほらほら! A組、エリちゃんにいいもの見せられないなら終わりだぜ? テンション上げてこーよ!」

 

手を叩く。僕に意識を向けさせる。

 

ヒーローになる。

 

みんなちゃんと僕のことを意識してくれている。それがわかるとテンション上がるよね。僕の本気でみんなのことを、虜にしてあげる。

 

「つべこべ言わずにいいもん作るぞ!! わかったかお前ら!!」

「おー!!」

 

みんなの弾けんばかりの笑顔が見える。うんうん、その笑顔こそ曇らせるために丁度いい母体だよね。

 

曇らせて、落とすために、笑顔になってよ、みんな。

 

最高に、弾けんばかりの笑顔を、見せてよ。

 

ギターを常闇くんに返してあげて、ゆっくりとみんなの輪の中に入っていく。文化祭への準備は、まだ終わらない。

 

 

  × × ×

 

 

……そうして、数週間の時間が過ぎた。たった数週間でみんなの楽器のレベルは随分と向上し、人様に聞かせるに値するだけのクオリティを手に入れた。いや〜、僕の指導力は流石の一言だよね。まぁ、今回は耳郎ちゃんもすごいんだけどね。いや、ご都合主義だとか言われたらそれ以上ないんだけどさ。

 

「んぇ? ロープと食紅がない?」

「うん、エリちゃんにリンゴ飴作ろうと思って……ロープはホームセンターに買いに行こうかなって」

「あ、じゃあ僕行ってくるよ。僕の方が早いでしょ。落ち葉と適当に転移しながら行けばすぐ着くしね」

「でも、ゆずくんはこれから演奏があるじゃん」

「アハハ、演奏より舞台を支える出久くんの方が体力使うでしょ。気にしなくていいよ」

 

出久くんから外に買い物しに行く権利を貰い受ける。そしてさっさと雄英を出て……買い物を終わらせてから、一軒の喫茶店の前に辿り着いた。

 

誰が出てくるのかなんて、よく知ってる。分かりきってる。僕の今回の獲物、派手に活躍するための最後の布石。

 

「…………こんにちは、ヴィランのジェントル・クリミナルですね?」

「……君は?」

「ヒーロー、ユズだよ。……何がしたいのかは察しがつく……ウチに手ェ出すな!」

 

───僕たちの、文化祭が幕を開ける。





おまたせ致しました! 今課題などに追い込まれている波間です!
いつも応援のほどありがとうございます! 励みになっております!! レポートの合間に感想を見てニヤニヤする化け物になってるから……
これからもよろしくお願いします!!

映画編を入れるかどうかのアンケートをさせてください!

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