個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア!   作:波間こうど

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伏線回収の鬼って呼んでくれていいよ。


★ビルボードチャート

 

 

『神野以降初めてのビルボードチャート!! その意味の大きさは誰もが知るところであります!! これまで発表の場にヒーローが登壇することはありませんでしたが!! 今回は名を連ねるヒーローたちがその場に足を運んでいます!!』

 

はい! どうも皆さんこんにちは! 十一月も下旬に差し掛かり! 寒くなってきましたね! 舞妓譲葉です!

 

果たして、今。僕はどこにいるでしょうか〜!!

 

正解は〜! なんと! 東京は! テレビ局にまで来ています!! 今の時期にテレビ局に来る理由なんて一つしかないよね〜。

 

今頃みんなは僕がいないことに騒ついているんだろうなぁ〜。わざわざ隠して出てきたし。あ、敵連合のみんなは知ってるけどね。

 

そう。何故か?

 

その答えは、すぐにわかる。……というか、わかるよね。

 

『No.10! ランキングはダウンしたものの未だ衰え知らず! 具足ヒーローヨロイムシャ!! No.9! “キレイにツルツル!”CMでお馴染み! 洗濯ヒーロー! ウォッシュ!!』

「上位三名を除けば斯様な番付、全て時運による誤差」

「ワシャシャシャシャ!!」

 

ここまで、声が聞こえてきたら馬鹿でもわかるよ。

 

『そして! 本来なら票を与えるわけにはいかないが! その圧倒的知名度と、票数の過半数近くを占めるその圧倒的得票率!! 仮免試験満点という素質、そして、たった一件ではあるが!! その、たった一件の事件解決という実績をもって!! 異例も異例!! 高校一年生にしてビルボードチャートにランクイン!!』

 

手を振りながら僕が登場する、会場が騒めきで、揺れる。

 

『No.8ヒーロー!! あまりにも速すぎる!! ホークスを追い越した男! ヒーロー! ユズ!!』

「どうも〜」

 

このためにたくさん伏線を振り撒いてきたからね。僕のことを、みんなが、認めてしまうように、僕のことを、完全に、好きになるように動いてきた。体育祭でしこたま活躍して、ネットで弔くんとの戦いを拡散して、ステイン先輩事件のときの弔くんとの対立を拡散して、神野の、オールマイトの最後の一撃のサポートを見せつけて、僕たちの文化祭を拡散する。ライブも、ミスコンも、ジェントルとの戦いでさえ、僕が、ここに来るための布石だ。

 

それだけで十分なのだ。これで、目立つ。今、世間が求めているのは眩いまでのあの、No.1のような背中、輝きなのだから。

 

だから、だからこそ。僕という光り輝く才能、ヒーローの金の卵は。欲しいよね?

 

……というか、敵連合ではNo.2なのにヒーローとしてはNo.8なのなんかムカつくな……

 

『No.7! 大躍進! 成長の止まらぬ期待の男!! シンリンカムイ!!』

 

解説のお姉さんの声を聞きながら肩幅に足を開いて周りを見る。見たことのあるヒーローの皆々様から、見たことのないヒーローの顔まで。正直どうでもいい顔もいくつかあるけど、まぁ、曖昧な笑顔でお茶を濁しておこう。

 

『No.6! シールドヒーロー! クラスト!!』

『No.5!! 勝気なバニーはランクアップ! ラビットヒーロー! ミルコ!!』

『No.4!! ミステリアスな忍は解決数と支持率も鰻登り!! 忍者ヒーロー! エッジショット!!』

『そして活動休止中にも関わらずNo.3! 支持率は今期No.2! ファイバーヒーロー!ベストジーニスト!!』

『No.2! マイペースに! しかし猛々しく!! 破竹の勢いで今二番手へ! ウィングヒーロー! ホークス!!』

『そして! 暫定一位から改めて正真正銘No.1の座へ!! 長かった!! フレイムヒーロー! エンデヴァー!!』

 

みんながドッと盛り上がる。それを聞きながら拍手をしておいた。まぁ、エンデヴァーとは関わりもあるしね、一応拍手くらいはしておかないとね。不仲説とか出るのが一番めんどくさいって前世で知ってるからね。

 

ヒーロー公安委員会の会長がペラペラと今回のビルボードについて語る。まぁ、そういうこともあるよね、というのが正直なところだよね。

 

平和の象徴。アイコンたるオールマイトがいなくなった。そのことだけが取り沙汰されていることへの遺憾の意。ちゃんと伝えてよね。それすら僕が噛み砕いてあげるから。

 

「それではお一人ずつコメントを!」

 

マイクがヨロイムシャに渡る。そしてその次はウォッシュ、そして……僕だ。

 

「あ〜……テステス。雄英のみんな見てる〜? 隠しててごめんね!」

 

カリカリとマイクのヘッドを指で引っ掻いてからマイクに話しかける。するとマイクに伝えた声が会場に響き渡った。

 

「事件をろくすっぽ解決していない僕がここに立つのは分不相応だと思う人も多いと思います。ですが、少しだけ、時間をください。チャンネルはそのまま! ってやつですね」

 

前に出る。会場にいるのはマスコミと、ヒーローたち。その顔が逆光の中で、よく見える。ハハ、見たことある面も幾人かいるね。全員、高一に負ける程度の有象無象だ。正直眼中にないね。

 

……さて、ヒーローになろうか。

 

平和の、象徴に、なろう。

 

「今は、ヒーロー飽和社会だとか呼ばれています。それでもここまでヴィランの犯罪が減らないのは何故か? オールマイトの引退した今、なぜここまで、たくさんのヒーローがいて、こんなことになっているのか。わかりますか? はい、シンリンカムイ!」

「…………それほどまでにオールマイトの存在は重かったのだろう」

「それもありますが! 残念!」

 

シンリンカムイに向けていたマイクを僕の方に向けてからくるりと足を回す。そして少し低い声を出した。

 

「舐められてるんですよ、根本的に」

 

会場が、騒つく。

 

「僕みたいな学生が、高校一年生、仮免を取ったばっかりの子供がここに来ることになった。意味がわかりますか?」

「事件の解決数は一桁、というか一件だ。ただ、僕を支持する声が多かったのは何故? みんなみんなオールマイトに頼りすぎだったんだ」

「今のヒーローはダメなんだよ。今のヒーローに比べれば僕の方が遥かに期待するに足ると世の中の人は考えてるんだ」

 

静寂。そして蚊の鳴く程度の声が騒めくのが聞こえる。そりゃ高一がこんなところでこんな啖呵切ったらそんな顔になるわな。いいよいいよ、みんな僕のことを一瞬嫌いになっていいよ。

 

それすら織り込み済みだから。

 

さて、落として、それから上げるのが真骨頂だからね。

 

「…………って、捉えられてもおかしくない」

 

マイクに再び声を入れる。言葉が、響く。

 

「何顔を下げてるんですか? 顔を下げていい状況ではないでしょう?」

 

僕の言葉にヒーローたちが顔を上げる。わかるよ、その顔。その顔が、どこか畏敬すらも抱えた、畏怖すらも内包した感情だってことも。僕には、わかるんだよ。

 

「ここが、頂だ。ただの学生がここを、その一角を獲った。実力じゃない、運さ、そんなことわかってる、そして、そんなことはどうだっていい」

 

拳を握り込む。力強く、声を前に押し出す。

 

「ほら、面をあげましょう! 雄英の先輩にはすごい人がたくさんいて! 僕のクラスメイトもすごい子がたくさんいるんです! それに僕よりもすごいヒーローだって山ほどいるんです!」

 

さぁ、最高の伏線だ。曇らせのための種蒔きさ。

 

「ここからだぜ? 敵連合!」

 

だって、ここまで平和の象徴を模した、

 

「この前も言ったろう。死ぬほどバズったし、みんなも見たはずだ! だから、敢えてここで! 声を高らかに! 宣言しよう!!」

 

そんな輝かんばかりのヒーローの卵が、

 

 

「次は、君たちだ!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

本当はヴィランだって知ったら、この国は最高の顔を見せてくれるだろう?

 

 

会場が沸き上がる。拍手が会場を包み込む。この後に話さなくちゃいけないホークスたち可哀想だな……なんかごめん……でもこれはしておきたかったんだ……メインプランの結構な節目なんだ……

 

「ハハハ!! 君! いいね!!」

 

バサリ! と翼をはためかせてホークスが笑った。手を叩きながら僕に近づくと片手を差し出す。それを見てすぐにマイクを渡して欲しいと言外に伝えられているのがわかった。

 

「はい、どうぞ!」

「あ、握手のつもりだったんだけど……」

 

どうやら読み違えたらしい。

 

「それは後ほど、裏でどうです?」

「ユーモアもあるときた! いいね!」

 

マイクを受け取って空まで飛び上がったホークスが腕を組みながら語り始める。これは、僕の知っている展開だ。

 

「えーと……支持率だけで言うと未来への期待が乗っかって過半数の票をしめたユズが1位、2位が応援ブーストのかかったベストジーニストさん。3位が俺で4位がエッジショットさん、5位がエンデヴァーさん……以下略」

 

バサリと羽が舞う。

 

「支持率って、俺は今一番大事な数字だと思ってるんですけど。過ぎたこと引きずってる場合ですか? やる事変えなくていいんですか? 象徴はもういない。新芽が伸びてきていても、まだ若い」

 

その速く、逞しい翼が、踊る。

 

「節目のこの日に、俺より成果の出てない人たちがなァにを安牌切ってんですか! ユズに全部負けてるっすよ!」

 

あ、そのセリフ嬉しい……普通に使いやすい。そうだよ。ここにいるヒーローは、全員僕に一つの要素で負けてるんだ。……最高に唆る一言だ。

 

10代でのトップ10入りの先駆者。僕の先輩。通称“速すぎる男”。

 

「…………不遜だなぁ」

「お前が言うな」

 

二つ先のミルコにニヤニヤ笑いながらそう言われてしまった。ウケる。僕から言わせて貰えば貴女が言うなですけどね。

 

「俺は以上です! さぁ、お次どうぞ。支持率ユズ以下No.1」

「僕あそこまで不遜じゃないですけど」

「ありゃ生意気って言うんだよ」

 

僕がミルコを見るとミルコはケタケタと面白そうに笑いながらそう言った。……ミルコって26歳とかだっけ? 僕より10歳も離れてるのか……とてもそうは見えないけど……僕の一番の天敵だからそう見えてるのかな……?

 

どんな状態でも「曇らせ」が効かなさそうな、文字通り曇らない女(これは僕の命名)。お茶子ちゃんの上位互換。僕の天敵。それがこのミルコ、本名兎山ルミ。

 

さて、どうやって曇らせようかな。

 

僕が現物のミルコを見て作戦を立てていると、エンデヴァーが息を吸った音が聞こえた。

 

その呼気は、澄んでいて。

 

「若輩にこうと煽られた以上。多くは語らん」

 

たぶん、この瞬間だけは、僕のことも人々が忘れた。そう思えるほどの、澄んだ、夏の日差し、海辺で肌を焼くような圧。

 

 

「俺を見ていてくれ」

 

 

……おぉ、知ってたから反応できたけど。知らなかったら他のヒーローたちみたいに反応できなかったろうなぁ。

 

僕とホークスだけが彼の言葉に手を打っている。そんな間抜けな状況を残して、ビルボードチャート発表の場は幕を閉じた。

 

 

  × × ×

 

 

「お、ユズくんこんにちは! エンデヴァーにお話があってさ! 君も聞いてく?」

「その前にまずなんで胸ぐら掴まれてるかの説明が欲しいかもです!」

「アハハ! さっきのでエンデヴァーさんちょっと怒らせてさ!」

 

エンデヴァーの控室のドアを開けるとホークスが胸ぐらを掴まれて宙に浮いていた。まぁ、彼の個性から考えたら宙に浮くのなんて慣れたものなんだろうけどね。

 

「……舞妓くん」

「今はユズですよ。お父さん」

「……今はエンデヴァーだ」

「失礼、お久しぶりです。エンデヴァーさん」

 

おめでとうございますと手を叩く。その言葉に求めていたものではないからかエンデヴァーが眉を顰めた。おっと、これが曇らせヒロイン……いい顔してるぜ。

 

まぁ、彼からしたら轟くんのことも、その個性の要因も知っているオールマイトみたいな男が下から現れておめでとうとか言ってきたら引くよな。普通に得体の知れない存在だろうし……

 

「お、なんだ知り合い?」

「インターン先がエンデヴァーさんのところだったんですよ」

「なんだ! 俺めっちゃ迷ったんだよね〜。ツクヨミにするか君にするか! もう一人はショートくんに出してたんだけど……」

 

競争率が高かったならツクヨミで良かったよ! それにツクヨミが来てくれてすごく良かったしね。なんて彼が笑う。その言葉に合わせて僕はずいっと顔を近づけた。

 

「ツクヨミいいですよね! 彼は伸びますよ〜? ちゃんと警戒しておかないとあと3年もすれば並ばれますからね?」

「お〜、いいねぇ〜! まぁ、君には並ばれそうになってるわけだし。あり得る話だ」

 

エンデヴァーに降ろされたホークスがクスクスと笑う。何わろてんねん。

 

「君が良いインパクト残してくれたから話しやすかったよ」

「あれ言うためだけに来ましたからね。……辞退出来そうになかっただけですけど」

「まぁ、ビルボード側も君のことは絶対に呼びたいだろうからね〜。君って存在自体がアンチヴィラン! 平和の象徴の卵みたいなものだし!」

「……ユズは良いヒーローになるだろうな」

 

でしょ〜? なんてホークスがエンデヴァーの言葉に同調するのに合わせてそんなことないですよ〜とお茶を濁しておく。おい、僕今日のうちにどれだけお茶を濁さなくちゃいけないんだよ。濁り過ぎて最早ドロドロなんだよ、このお茶。飲めたもんじゃねぇよ。

 

「オールマイトがいなくなった日本……あれほどでなくてもリーダーのような存在は必要だと俺は考えてます」

 

エンデヴァーに目線を合わせて、微笑みながらホークスが言う。

 

「だから、安心しました。かっこよかったですよ」

 

ヘラヘラと笑うその顔は本心かどうかが見えない。チャラいという印象すら受けてしまう。

 

だけど僕たち、原作を知っている人間にはわかる。彼がこの位置に相応しい男だということを。

 

まぁ、僕としては曇らせがいのある男ってくらいしかイメージないんだけどね。個性とも相性がいいから負けるつもりもないし。

 

……この前荼毘くんから「ホークスが寝返ったぜ」なんて信用を一切してない声でヘラヘラしてるの聞いたから、少し親近感が湧いてるのかも知れない。もちろん嘘だけど。

 

「貴様のような人間が最も嫌いだ。話は終いだ、他の者へ謝罪してこい。ユズの用件はなんだ?」

「あ、こっから本題です」

「貴様の話は聞かん! 失せろ!」

 

流石に聞いてくれなさすぎるだろ、ウケる。

 

「チームアップのお願いです。俺の地元、今嫌な話増えてきてるんです。……脳無って覚えてます?」

 

ホークスの言葉にエンデヴァーが眉をピクリと動かす。

 

脳無。個性を複数ねじ込まれた廃人にして、ラスボス先生お手製の手駒。ハイエンドが絡んでくるのはこの辺りからだ。その一人一人がオールマイトやエンデヴァーだろうと手を焼く化け物たち。……まぁ、僕と彼らとは相性がいいので誰一人とて負けたりしないのだけどね。

 

「……あ、ユズくんもどう? 九州の方でなんだけど」

「僕は学校あるから無理ですけど?」

「……? あぁ、学生か!」

「高校一年生なんですよね。普通に」

「しっかりしてるし、ビルボードに載るからうっかり忘れそうになるけど……君高校生だもんね……」

 

そうそう。大人びているって評価はつけておいてよね。……それは暗い過去に起因するものだって知らせたときにみんなの顔がさらに曇ってくれるからさ。

 

「ってなわけで無理です。脳無の話に興味がないわけじゃないですが……僕の先輩に当たるわけですし」

「先輩?」

「あ、聞いてないんですか? 僕、改造されたんですよね。されかけた、が正しいんですけど」

 

髪をかきあげて個性を使う。『サーチ』だ。

 

「へぇ……『剛翼』ですか。やっぱり強くていい個性ですね。全部燃え尽きたりしても二日あれば回復って回復力もずば抜けてる。一旦抜いておけばたくさんの羽を作ることもできるんじゃないですか? あぁ、コントロールが難しくなるのか。なら一定の羽だけにしておくのは妥当な案ですね」

「…………へぇ」

「『サーチ』って個性です。プッシーキャッツってヒーローグループのラグドールが持っていた個性ですね。それが僕に移植された形になります」

 

髪を下ろして個性を消す。これパッシブだったの、ラグドール生きにくかっただろうなぁ。勝手に情報入ってくるとかインなんとかさんじゃないんだから。

 

「僕の元の個性にこれを足して、後いくつか足せば廃人になって、ハイ! 脳無の出来上がり! ってな具合らしいですよ? 人が体に備えておける個性には上限があるそうなので」

「それで、先輩か。君、言い方が悪いよ。被害者じゃないか」

「……ふふ、そんな顔しないでくださいよ」

 

ホークスが顔を顰める。さっき個性をツラツラ論った時は嫌そうな顔してたのに、それが悲劇由来だってわかると顔を顰めてくれるんだから貴方はとてもいい人だよ。本当にね。

 

…………え? 本当にいい顔してるな? 僕たちのことを子どもであると最終局面でも言ってた人が、僕のことを同等程度の戦力であると認めた上で僕が誘拐されて、その場に行けなかった彼が、そんな顔するなんて最高すぎない? 思わぬところで曇らせを摂取しちゃったな……やっぱりあれだね? 味変。味変が大事だね? 同じラーメンを食べるにしてもメンマ増やしてみるとか、チャーシュー載せてみる。替え玉するならネギ増やすとかニンニク入れるとか、水じゃなくてお米でお口直しするとか……そういう楽しみ方があるじゃない? それと同じでさ。A組とかオールマイトとか相澤先生とか。見慣れた人で曇らせして、たまに物間くんいじめて楽しんでたのがダメなんだ。こうやってネームドのキャラの新しい顔を見なくちゃいけなかったんだよね。それが足りなかったから僕は最近曇らせ見てもなかなか楽しめなかったのか。合点がいったよ。

 

「だから全員助けてあげたいんですよね。僕なら多分彼らを救うことができる。……まぁ、暴れたりしなければですけど」

 

なんて言いながら手を叩いてみせる。察しのいい天井二人なら僕の言葉の意味がわかってくれるだろう。そうそう、この二つの手を叩けばその“個性”すらも入れ替えられるって話だよ。

 

……本当は条件があるんだけど、その話まではしなくていいだろう。

 

「じゃあもし脳無を捕まえた暁にはユズのところまで連れて行くよ。無力化してってのが条件だけど」

「最悪無力化してなくてもいいですよ? 負ける気がしませんので」

 

ニコリと笑うとホークスが心強いと笑ってくれる。さっきの曇った顔から一転してその顔ができるとか、優しい人だね。

 

だから、曇りやすくて、折れやすいのだ。

 

「じゃあ、僕、明日も学校なのでそろそろ失礼しますね! 雄英に帰るのにも時間がかかるので! 皆さんに挨拶するために回ってただけですし!」

「そっか。明日平日だもんね。気をつけて帰りなよ!」

「……ユズ、焦凍に」

「はいはい、よろしくっていっておきますね。既読無視もしないように言っておきます」

「………………恩にきる」

 

エンデヴァーさんの言葉に適当に返してからドアを閉めた。

 

 

  × × ×

 

 

「やぁ、かけてくると思ってたよ」

『……ワンコールかよ』

「かけてくると思ってたからね」

 

ガタンガタンと新幹線に揺られながら電話に出る。もちろん、盗聴防止は完璧だ。そう簡単に盗聴されないようにしてあるさ。周りに人もいない、こんな状況じゃないと出ないしね。まさかグリーンを取ってくれるなんてヒーロー公安も中々に特別待遇だよね。

 

「お父さんに会ったよ。いや〜、あの人強いね」

『…………』

「いい圧だった。ありゃ殺そうと思えば相当骨が折れるよ」

『…………本当にお前はなんでも知ってるな』

「なんでもは知らないよ、知ってることだけさ。いつもそう言ってるだろう? 荼毘くん」

 

電子音を介して荼毘くんの声が聞こえる。そりゃそうだよね。気になるよね、大好きなお父さんだもんね。ファザコンが。

 

「あ、ホークスは異常なしだよ。むしろ彼は自分に課された仕事はちゃんとしてた。まだグレーだけど、仲間として認める段階としては一歩前進かな?」

『……怖いやつ』

「君が話したい内容なんてこの辺りでしょ。それとも僕と世間話でもするかい? あ、みんな元気?」

『あぁ。うるさいくらいにな。トガがさっきから代われ代われってうるせぇ』

「代わってあげれば?」

『……まだ、話すことがあるからな』

「そう?」

 

クスクスと笑うと彼が調子悪そうに唸る。手のひらの上で転がすってこういうことを言うんだよね。わかってくれたかな?

 

「君の願いも叶うさ」

『……その時は手伝えよ』

「もちろん。君の夢を支えてあげる」

『だから』

「うん。踊ろう。派手にね」

 

彼のダンスは綺麗だからね。きっと、そのダンスが輝く様を見てあげないといけない。

 

あれほど、この作品に強く惹かれる瞬間はないからね。

 

『あ! ゆずくん! 荼毘くんがやっと手を離してくれました!』

「あ、ヒミコちゃんやっほ〜。元気?」

『元気だよ! ゆずくんは?』

「元気に決まってるだろ〜? どーせ配信見てた癖に〜」

『見てたよ! みんなで笑ってた!』

 

心底おかしそうにクスクスと笑うヒミコちゃんの声が聞こえる。その声に合わせて奥からスピナーくんがツボを突かれたようにありゃ傑作だ! と大きく笑い声を上げた。

 

「え〜、なんで?」

『だってだって! 次は君たちだって! ゆずくんこっち側なのに!』

「ふふ、ね〜? おかしな話だよね」

『あれに拍手してる人たち、きっと、きっとみんな! いい顔するんだろうなぁ……』

 

恍惚の顔を浮かべているのがわかる。声だけで顔まで思い浮かべられるの流石にキモいかな? 割とみんなできるよね? これくらい。

 

『ね! ゆずくん!』

「ん〜? どうしたの?」

『壊そうね!』

 

それは、きっと切なる願い。

 

彼女のその胸の内に秘めた焔に、正しく油を注いだのは────

 

「当たり前じゃん。壊すよ、全て」

 

きっと、僕という異分子だ。

 

新幹線はまだ進む。僕という異分子を乗せて、物語の中心へ。まるで時が進んで、人が流れるように。

 

歪み、曲がりくねりながら。

 

ただ、前へ。

 





ここまできました。まず、大きな山場ですね。特大の布石と、特大の回収。こいついつもカメラを使ってんな? って思わなかった? 何でそんなに目立つんだって思わなかった? このときのためだったのです。
ここに来られたこと、書き続けられたこと、その全てにありがとうを言わせてください。
んこにゃさん、挿絵を描いてくれて、僕の物語に色を添えてくれてありがとう。そして評価をつけて、お気に入りをして、感想を書いてくれるみんな! 見る専のみんな! ありがとう!!
さて、ここからは「曇らせ」へと続いていきます。まだまだいきます。
応援のほどよろしくお願いします!!

映画編を入れるかどうかのアンケートをさせてください!

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