個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア!   作:波間こうど

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今回の絵はちょっとぶっ飛ぶよ。


★ヴィラン舞妓譲葉とA組舞妓譲葉

 

【出久side】

 

僕たちは寮の共有スペースで、テレビに視線を釘付けにしていた。理由としてはシンプルな話だ。

 

『そして! 本来なら票を与えるわけにはいかないが! その圧倒的知名度と、票数の過半数近くを占めるその圧倒的得票率!! 仮免試験満点という素質、そして、たった一件ではあるが!! その、たった一件の事件解決という実績をもって!! 異例も異例!! 高校一年生にしてビルボードチャートにランクイン!!』

 

ただ、見知った顔が、憧れに並んでいたから。それだけのことである。いや、そのそれだけができるヒーローなんて年に数人とかなんだけど。

 

『No.8ヒーロー!! あまりにも速すぎる!! ホークスを追い越した男! ヒーロー! ユズ!!』

『どうも〜』

 

「ハァァァァァァァァ!?!?!?」

「ウッソだろマジで!?」

「おいおい!! いねぇなぁとは思ってたけどさぁ!」

「先生舞妓検診じゃねぇの!?」

「……こうなるから伝えてから行けと舞妓には言ったんだがな」

 

同じく寮の共有スペースでビルボードチャートを見ていた相澤先生がため息をついた。髪の毛をかきながら心底面倒くさそうに目線を逸らす。

 

「……本来ならあり得ないが、あいつは例外だからな。今まで目立ちすぎて知名度が別格だ。今、日本一有名な高校生だよ」

「高一だろ!? ヒーロー免許もとってない!」

「仮免があるだろ。まぁ、それでもあり得ないんだがな……お前らも見たろ、これ」

 

相澤先生が持つ携帯に映るのは彼が文化祭の当日、雄英高校に侵入しようとしていたヴィランを捕獲する映像。綺麗に切り取られたその動画は彼の戦う様をよく見せてくれる。

 

「誰が撮ったか知らんが、この映像のせいで配信者軒並み抑えて急上昇に乗ってアイツの知名度が、ただでさえあった知名度にプラスして事件を解決した、ヒーローと同じ“実績”が乗っちまったって点で跳ね上がったからな。あいつは今プロのヒーローとしての素質があると見られてるんだよ」

 

全くもって不本意ながらそのせいで全国民の投票率を過半数掻っ攫っていったから無視するわけにはいかなかったそうだ。

 

「女男ォォォ……!!」

「バクゴーこえぇよ」

 

上鳴くんが横に座るかっちゃんから少し身を引く。それを見て横に座っていた麗日さんが少し横にズレるのが見えた。

 

『あ〜……テステス。雄英のみんな見てる〜? 隠しててごめんね!』

 

ゆずくんがマイクを握りながら手を振っているのが見える。その顔には可愛らしい笑みが付き、どこか勝ち誇ったような目にも見えた。

 

「NTRビデオ……?」

「アイツそっち側ではないだろ」

「どう考えても取られる奴だもんな」

「勝ち誇ってんじゃねぇぇぇー!!!!」

「うわ! 爆破すんな!」

 

ボソボソと峰田くんと上鳴くん、瀬呂くんが何やら言っているが、それを掻き消す様にかっちゃんが吠えた。切島くんがかっちゃんから離れる。それを見計らってかっちゃんの頭に相澤先生のチョップがめり込んだ。かっちゃんが頭を押さえながらキッと相澤先生を睨む。

 

「馬鹿。ちゃんと見ろ」

 

その言葉にみんなが釣られて画面に目を向ける。

 

『事件をろくすっぽ解決していない僕がここに立つのは分不相応だと思う人も多いと思います。ですが、少しだけ、時間をください。チャンネルはそのまま! ってやつですね』

『今は、ヒーロー飽和社会だとか呼ばれています。それでもここまでヴィランの犯罪が減らないのは何故か? オールマイトの引退した今、なぜここまで、たくさんのヒーローがいて、こんなことになっているのか。わかりますか? はい、シンリンカムイ!』

『…………それほどまでにオールマイトの存在は重かったのだろう』

『それもありますが! 残念!』

 

ゆずくんがにこやかにくるりと回ってカメラに目を向ける。まるで、どこにカメラがあるのかわかっているかのように。それは自然で、当たり前のことのようだった。

 

『舐められてるんですよ、根本的に』

 

時が止まった気がした。

 

「…………攻めすぎじゃね?」

 

辛うじて僕たちの口から出たのは(上鳴くんのだけど)そんな言葉だけだった。

 

『僕みたいな学生が、高校一年生、仮免を取ったばっかりの子供がここに来ることになった。意味がわかりますか?』

『事件の解決数は一桁、というか一件だ。ただ、僕を支持する声が多かったのは何故? みんなみんなオールマイトに頼りすぎだったんだ』

『今のヒーローはダメなんだよ。今のヒーローに比べれば僕の方が遥かに期待するに足ると世の中の人は考えてるんだ』

 

その言葉が会場に静かに響き渡る。彼の凛とした、それでいてどこか可愛さすら残した女性と間違えられるような声が日本中をただ海面を揺らす波のように包む。

 

『…………って、捉えられてもおかしくない』

『ここが、頂だ。ただの学生がここを、その一角を獲った。実力じゃない、運さ、そんなことわかってる、そして、そんなことはどうだっていい』

『ほら、面をあげましょう! 雄英の先輩にはすごい人がたくさんいて! 僕のクラスメイトもすごい子がたくさんいるんです! それに僕よりもすごいヒーローだって山ほどいるんです!』

 

彼の声が、日本を揺らす。そんな想像が、実現したように僕たちを突き刺す。

 

あぁ、考えたことがないとは言わない。

 

彼の言葉は酷く突き刺さるから。彼の応援は、彼の演説は、僕たちにとても良く刺さるから。

 

きっと、それが、僕たちだけに効くものじゃないことはわかっていたんだ。

 

わかっていたから。

 

『ここからだぜ? 敵連合!』

 

だって、ここまで平和の象徴によく似た少年は。

 

『この前も言ったろう。死ぬほどバズったし、みんなも見たはずだ! だから、敢えてここで! 声を高らかに! 宣言しよう!!』

 

世界を探したって、彼しかいないから。

 

 

『次は、君たちだ!』

 

 

ビルボードチャートを発表する会場がドッと沸き上がるのが見えた。その声は画面の向こう側にいる僕たちにも届いて、刺さって、抜けない。

 

みんなもまさか、思っていなかったのだろう。同級生である彼に、クラスメイトである彼に、友達である彼に、幼馴染である彼に……

 

 

“負けた”と、“格”が違うと思わされるとは。

 

 

「なんだよあれ……勝てねぇよ……」

 

峰田くんがソファに座り込んだ。彼の顔には憧れにも似た、諦めが見える。

 

「なんでアイツあんなにすげぇの?」

「ヤバすぎない?」

「俺たちの何歩も先歩きすぎだろ……」

 

みんなが騒つく。そこで痺れを切らしたかっちゃんが叫んだ。

 

「うるせぇぇぇぇぇぇ!!」

 

キッと僕らを睨む目は、まだ、燃えている。

 

「アイツが先に行こうが超えんだよ! 勝手に折れてんじゃねぇ!!」

 

ダン! と机に飛び上がるとギロリと僕らを見下ろす。それは、まるで自分の方が高いところに登ったと主張する子どものようで。

 

「お前らが折れても俺は行く! お前らあの馬鹿に負けてばっかで悔しくねぇんか!!」

 

それは少しでも負けたくないと主張する子どものようで、自分が負けたことを認めたくない子どものようで、

 

『出久くん、痛いよぉ』

 

泣くことを我慢して、助けを求める昔の誰かと重なった。

 

「……諦めていないし、俺はまだ超えるつもりだ。彼の学友としてね。それと、机から降りたまえ!」

 

飯田くんがずいっと前に出て、かっちゃんに注意をする。それに合わせてみんなからも口々に声が上がった。

 

「当たり前だろ! ここで諦めたら男じゃねぇよ!」

「ウチは男じゃないけど……負けられない! 助けられてばかりじゃいられない!」

「ボクも……勇気づけられてばかりじゃダメだ……!」

「大体勝手に諦めたとか言うのやめてくれるー? アタシたちが諦めたみたいじゃん!」

「そうですわ! まだ舞妓さんに負けてなんかいません!」

「うぉ……」

 

やいやいと飛ぶ言葉にかっちゃんが少し気圧されたように机を降りた。ここまでの反応が来るとは思っていなかったのだろう。

 

「……お前たちは」

 

相澤先生が頭をかきながら僕たちを見据える。

 

「アイツに追いつきたいか?」

 

その言葉は至極単純で、その一節がまるで歌詞のようにストンと胸に落ちた。誰からともなく「はい!」という声が飛ぶ。

 

「……なら、訓練の質を上げる。次からのヒーロー基礎学はもっとハードだからな。舞妓にもそう言っとけ」

 

その言葉を残して彼はゆっくりと身を翻して、共用スペースを後にした。

 

 

  × × ×

 

 

【ただのヒーロー、あるいは悪意に遭いたいあなたside】

 

『次は、君たちだ!』

 

その明るく、元気な声が、暗く陰鬱な雰囲気のガラクタ部屋を照らしていた。

 

録画されたその映像は、最早ループ再生するためにその部分だけを切り取り、ぐるぐると同じ映像を回し続けている。

 

さっきから何度目の映像だろうか、気が狂いそうだ。

 

体から血が抜けていくのがわかる。もう、力だってろくに入らない。立ち上がることもできないし、言うことだって聞かない。背中を支えている壁を感じることすらできない。

 

「アーハハハハ!!」

「ね! おかしいですよね!」

「……何がおかしいんだ」

 

ボソリと口を開いた。ようやく、体が動いてくれる。すると目の前でこの体をズタボロになるまで切り刻んでくれた女子高生がニコリと笑って振り返った。

 

「え〜? おかしいですよ〜? ヒーローさんにはわかんないかもしれないですけど!」

「グッ……!」

 

足に突き刺さり、この体を縫い止めるナイフを思いっきり踏みつけられる。体が動かない。この出血量だと下手に動くのも命取りになりうる。救助が来る可能性にかけて、少しでも耐えるしかない。

 

本当に、最悪だ。ヒーローとして活動して20年。幾つも修羅場を越えてきた。それでも、ここまでの絶望は初めてだ。

 

「…………そいつ、頑丈だな。普通死ぬだろ、その傷」

「そこのヒーローもお前みたいに身体中火傷で爛れてるやつに言われたくないだろうぜ。荼毘」

「そんなこと言うお前だって肌荒れでボロボロだろーが」

「もぅ! 二人とも喧嘩したらまた言いつけちゃうからね?」

「トガ、やめてやれ。こっぴどく叱られたあとなんだからよ」

「死柄木も荼毘もしばらく捨てられた子犬みたいな顔してたもんなぁ」

「敵連合のボスが聞いて呆れるな! 可愛かったぜ!?」

「……うるさいぞMr.」

「お前らから燃やそうか?」

 

喧嘩を始めそうになるこいつらは敵連合。その中でも好戦的で数々のヒーローを焼死させたヴィラン、荼毘。そして、国立金庫から金を盗み出し、資金を調達したMr.コンプレス。昨日のヒーロー連続殺人事件の犯人スピナー。謎の深い男トゥワイス。そして…………

 

「それで? 話を戻そうか……俺たちが何をおかしいと笑ってたのか教えて欲しいんだっけ?」

 

 

敵連合のボス。死柄木弔。

 

 

「教えて欲しいならそうだなぁ……お前らヒーローがどこまで俺たちのことを調べ上げてるのかを聞きたいなぁ……等価交換なんてどうだ?」

「…………口は割らないぞ」

「だよなぁ……ヒーローだもんなぁ……」

 

そんな彼がじゃあ、コイツについてどう思う? と胸ポケットから写真を取り出した。それはさっきまで画面の向こうで活躍していたヒーロー。

 

「……舞妓譲葉?」

「そうそう。ヒーロー名ユズ」

「優秀なヒーローだ。貴様らが攫った後も変わらない。彼は立派な、素晴らしいヒーローになる。それが先のビルボードでわかったろう。彼がお前たちを逃さない」

 

ギロリと睨みつける。もう、逃げられないだろう。そうは思っていても、何か、何か少しでも彼らに一矢報いてやりたかった。ギロリと睨むと、死柄木弔は少しキョトンとした顔をして。

 

「プッ」

 

笑った。

 

「何がおかしい……!」

「いや? 別に? 知らないってのは幸せだなと思ってな」

 

なぁ? と彼が仲間に振り返る。その顔には笑みが浮かんでいた。先程まで喧嘩に発展しそうだった奴らの顔を綻ばせる言葉がどこかにあったのか。

 

意識を巡らせる。こいつらが言う「知らない」とは何のことだ? 何を言っているんだ? 何のことだ? 舞妓譲葉にそこまで執着する理由は? ずっと舞妓譲葉に執着しているのはデータからもわかる。ならそれは何故だ?

 

……いや、待て。もしかして、ヒーローたちは。世間は。

 

 

特大の勘違いをしているのではないか?

 

 

その考えは、当たっていたことをいとも簡単に告げられる。いや、見せつけられる。

 

 

「ありゃ。みんなこんなとこで何してるの?」

 

 

階段を降りてきたのはさっきまで画面の向こうで目の前の敵連合相手に啖呵を切っていた白い天使だ。青い瞳を蝋燭の炎に当てられて輝かせながら現れた彼に声が出なくなる。

 

あぁ……今日は厄日だ。あり得ない。そんなことがあっていいわけがない。この情報は必ず持ち帰らなくては、あり得てはいけない。そんな、嘘だ。

 

「初めからゆずくんは“こっち側”なのにねー!」

 

ゾッとする言葉。あぁ、そうか。

 

間違えていたのだ。最初から。

 

彼は、救うべき子どもではなかった。その白い髪に幼さの残る女子と間違えそうな顔をした彼は。全くヒーローなんかじゃないんだ。

 

「お前ら勘違いしてるだろ? まだ、バラすタイミングじゃないんだけど……でもまぁ、死ぬお前に手向けだ」

「え? なんでそれまだ生きてるの? 殺しておいてって言ったじゃん」

 

画面の奥に映る顔が目の前にいる。何故だ、おかしい。おかしな話だ。それでも、それが勘違いではないことはたった一つ、たった一つの実感を持って伝えてきた。

 

その地獄の様な事実を。

 

 

「ヒーロー、ユズ。舞妓譲葉は、敵連合のNo.2だよ」

 

 

体から血と一緒に生気が抜けていく。あぁ、なんということだろう……彼は、いや、奴は。

 

ヒーローの金の卵ではなく、寄生虫のついた、卵だったのだ。悪魔の子だ。それが──

 

「こんにちは、先輩。ヒーローチャート8位のユズで〜す。まぁ、敵連合No.2の方が個人的にはしっくり来るけどね」

 

この、白い悪魔なのだ。

 

「やぁ、えっと……出久くんがなんか言ってたな……なんかランキング上位の……ほら、一時期はトップ10にもいたことがある……ほら、えっと……忘れちゃった!」

 

白い髪の彼がニコリと笑う。その顔はまるで天女の様だ。だが、今ならわかる。

 

その、奥に潜んでいる灰色の、ワカラナイ恐怖。ゾッとするほどの、敵意と、その暗い、重い闇。

 

「まぁ、誰でもいいや。敵連合の居場所を早い段階で見つけたヒーロー……僕たちにバレなかったら英雄だったのにね。ダメですよ〜? 索敵能力がお粗末過ぎる」

 

彼が腰を落とす。しゃがんで、目を合わせる。

 

「いい個性だ……本当は貰ってやりたいところだけど……まぁ、生憎ストックがなくてね。仕方ないから殺すね? あ、悪くない顔だけど、味が薄い。絶望して生を諦めるやつの顔は不味いんだよ」

 

何の躊躇いもなく拳銃を取り出した彼が引き金に指をかけた。

 

あぁ、そうか。

 

悪魔は、人の形をしているんだ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「バイバイ、ヒーロー」

 

人生で最期に向けられた言葉は、そんな、ありふれた言葉だった。

 

ダンっと銃声が響いて────

 

 

 

 

「……はぁ。死体処理、どーしようか。わかりやすく山にでも捨てる?」

「俺がバラす」

「あ、そう? じゃ、弔くんお願いね。お礼に晩御飯好きなのにしてあげるよ」

「あ? なら……」

「えぇ〜! 弔くんばっかりずるいです! 私今回このヒーロー倒すの頑張ったよ!」

「雑魚一匹狩っただけだろうが。おい譲葉。ビーフステーキにしろ」

「やです! ゆずくんオムライスがいい! ハート描いてあげるから!」

「お、リクエストタイム? 舞妓。おじさん舞妓お手製のサンドイッチが食べたいなぁ。ほら、フルーツとかいっぱい入ったやつ」

「…………海鮮丼」

「おい、蕎麦にしろ」

「はぁ!? 全部作んな! 俺はどれでもいいぜ!」

「面倒な料理ばっかりで嫌だなぁ……じゃんけんね!」

「は? おいおかしいだろ」

「というかご飯作ったら帰るからね?」

「え〜! 一緒に寝ようよ〜!」

「もし泊まるにしても寝ないよ!」

 

 

 

死してなお、最期まで残った聴覚が、これが彼らの日常であることを告げていた。

 

 

  × × ×

 

 

「あ〜〜〜!! 帰ってきた〜〜!!」

「え? うん。ダメだった?」

 

葉隠ちゃんに抱きつかれながら頭をポカポカと殴られる。なになに、何のじゃれつき? なんて反応をしているけど本当はわかってるんだよね。当たり前だけど。

 

「舞妓! 言ってくれよ! 心臓止まるかと思ったわ!」

「そうですわ!」

「親父に何か言われたか?」

 

ゾロゾロと集まってくるみんなに手を振って挨拶する。そりゃ、みんなもびっくりするよね?

 

同級生がいきなりトップヒーローになったらさ。

 

「やぁ、みんな。No.8ヒーローのユズだよ。どうぞよろしくね!」

「何がユズだよ。だ馬鹿!」

「ちょっ! 電気、しまってる。絞まってる……!」

「オイラが聞きたいことはただ一つ……! ミルコと話したか……!」

「く、くるし……! え? ミルコさん? あぁ、話したよ?」

「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!」

「そんなに? ぐっ! ちょ、鋭次郎! 殴るな! 今電気に絞められてるからガードできないんだって!」

「お前あんなの見せられたら燃えるだろうが! 後で俺と組手しろ!」

「疲れてるから寝かせて欲しいんだけど……!?」

 

日常的な男子高校生のノリでガヤガヤと囲まれる。そんな中で、一番最初に飛んでくると思ってた二人が一歩下がったところにいるのが見えた。目が合ったのでトントンと上鳴くんの腕を叩いて解放を促す。まぁ、うん。思ったより簡単に解放してくれるんだね? あ、葉隠ちゃんも出来れば離れて欲しいな……何でお腹に顔埋めてるの? え? 赤ちゃんの声がする? するわけないだろぶっ飛ばすよ?

 

「出久くん」

「……うん」

「僕はここまで来たよ」

「…………うん」

「早くしないと。No.1は見える場所にあるよ」

 

手を伸ばしてみせる。それは掴む動作。そして引き寄せる様にグイッと引っ張った。

 

夢を引き寄せる動作。

 

「置いていくぜ?」

「……すぐ行く!」

 

思い返すのはあの日の約束。そう。僕たちが無個性ながらに夢を見て、雄英の体育祭の決勝戦で当たることを約束したあの日。あの日、勢いで、そのまました約束。“どっちが先にNo.1になるのか”って、そんな約束。僕はちゃんと覚えているよ? だって、それも全部、僕の、僕が。

 

僕が君に植えたとびきりの種だからね。

 

「おい……女男……! デクぅ……! 俺は眼中にねぇってか? オォ……ッ?」

「え? いや! そんなことないよ! かっちゃんだってライバルだよ! ね! ゆずくん!」

「別に? 僕にとってのライバルは君だけさ」

 

梯子を外された出久くんが絶望した顔をして、かっちゃんがギロリと僕を睨む。そんな彼を見てクスリと笑ってみせた。

 

「いや、そりゃそうでしょ。仮免取ってからにしてくれる? 差が開いてるんだからさぁ」

「テメェぶち殺したろか……!」

「その言動でマイナスになったんだろーが。気をつけたまえよ爆豪くん」

「馬鹿にしてんじゃねぇ殺すぞ……!」

 

ケラケラ笑いながら馬鹿にしてあげるも本当は今すぐにでもひくつく頬を解放してあげたいところなんだよ? だってさぁ……かっちゃん可愛いんだもん♡ さっきから僕のことを必死になって睨んでる姿はポメラニアンかな? もしくはチワワとかかも? どっちにしてもギャンギャン吠える小型犬だよね〜♡ え? どうして小型犬かって? そんなの決まってるじゃん。え? 言っていいの? 負け犬ちゃんだからだよ♡ こんなのたまんないでしょ♡ 負け犬ワンちゃんなんだからさぁ〜。さっきから相手にされなくて悔しいね〜! でも正論だからグゥの音も出ないよね? 可哀想に……必死に吠えても相手にしてもらえない気持ちはどんなもんだい? 可愛いワンちゃんが必死に吠えて僕からしたら君がしてたことの再現なんだよ? ほら、言ってたよね? “道端の石ころ”だってさ。君は、わざわざ道端の石ころに目をやらないよね? 僕もそうなんだ♡ だからさっさとここまで上がってきてね♡ その嫌な、曇り顔をちゃんと破壊して、君のプライドも尊厳も全てめちゃくちゃにしてあげるからね♡

 

「……俺も、まだダメだな」

「あ〜……そうだね? 焦凍もダメだね?」

「舞妓のライバルになるのって難しそうだな」

「目蔵はいい線いってるぜ?」

「私はどうだ!」

「三奈ちゃんももう一歩」

「ねぇ、ウチは?」

「申し分ないね」

 

みんなに囲まれながら寮を歩く。なんかカモの親子みたいで嫌だな……じわじわと連れ立たないで欲しい。邪魔なんだけど?

 

あと、ライバルっていうのは出久くんとのライバル関係ね? つまり曇らせってこと。曇らせがいのある順で話してます♡ だから障子くんはダメで、芦戸ちゃんはもう一歩(林間学校で暴露を先導してくれたから)で、耳郎ちゃんは申し分ないんだよね。ちなみに轟くんはまだこっから進化するからそうなってからの方が楽しみなんだよね。君たちは僕のライバルの話なんてしてないんだけど勝手に解釈してくれて助かるよ。

 

自分の部屋に戻る途中で出久くんがひょこりと横から顔を出した。そして疑問に思ったのであろうことを尋ねてくる。

 

「でもゆずくん遅かったね? すぐ帰ってくると思ってた」

「ん? あ〜……ちょっと用事があってね。寄り道してきたのさ」

「へ〜。どこ?」

「ん? 内緒〜」

 

寄り道先でのことを思い出して、少し笑った。

 





…………今回の譲葉めちゃくちゃ色気ないですか? この子になら殺されてもいいよ、俺。
さて、今回も感謝を! 皆さんの感想、評価のおかげで書く気力が湧きます! いつもありがとう……皆さんが僕たちを最高に褒めてくれるおかげです!
これからも頑張ります!!

そして、今回の挿絵も我らが絵師、んこにゃさんです! 感謝を!
こちら彼のTwitterです! よろしくどうぞ!
Twitter : https://x.com/Nkonyasabu

それでは次回もお楽しみに!

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