個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア!   作:波間こうど

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力作です。ぜってぇ見ていってくれよな。

皆様の応援があってこそ、私は作品を上げることができます。たくさんの応援や感想に評価、ありがとうございます。これからは今までのように高頻度では上げられませんが、できるだけたくさん書いていきたいと考えております。よろしくお願いします。


日常の狭間に親交を、平和の影には曇らせを

 

 

【side 出久】

 

戦闘訓練が終わってすぐ、ゆずくんに送り出されて僕は怪我の痛みを我慢しながら廊下を駆けた。僕の言うことなんて何でもお見通しなんだろう。内容まではわかっていなかっただろうけど、かっちゃんと話をしたいって内容だけは感じ取ってくれたみたいだ。本当に頭が上がらない。

 

ゆずくんの言う通りちゃんとその背中を捉えた。トゲトゲした髪に乱雑に肩に担いだ鞄。間違いなくかっちゃんだ。

 

「かっちゃん!」

「あぁ?」

「これだけは君には言わなきゃと思って‥‥!」

 

誰にも言ってない。母にも、僕の唯一の親友にだって、言っていない秘密。

 

「人から授かった“個性”なんだ」

 

僕の言葉にかっちゃんが驚いたのが見えた。たくさんの言葉が口から溢れるが本当に言いたいことは伝えられない、喉の奥に挟まったまま、出てこない。

 

「いつかちゃんと自分のものにして“僕の力”で君を超えるよ」

 

騙していたんじゃない。って、言いにきたつもりだったのに余計なことをたくさん言ってしまった気がする‥‥。「たまに余計なこと言って、しかもその核心を狙わずについてくるよね、出久くん」とはゆずくんの言葉だ。また余計なことを言ってしまったかもしれない‥‥

 

「なんだそりゃ‥‥借り物? わけわかんねぇこと言って‥‥これ以上俺をコケにしてどうするつもりだ‥‥」

 

ブツブツと、怒りを抑えるように、かっちゃんが呟く。その声はだんだんと大きくなっていく。抑えられないものが溢れ出てくるように。

 

「だからなんだ!? 今日俺はてめぇに負けた!! そんだけだろーが‥‥!!」

 

漏れ出た炎のように熱いそれは、かっちゃんが初めて、吐き出した激情のように見えた。

 

「氷のやつ見て! 敵わねぇんじゃねぇかって思っちまった! ポニーテールのやつの言葉に納得しちまった‥‥!」

 

顔を覆う、駄々をこねる子供のように、自分の気持ちを制御できないままに、かっちゃんが叫ぶ。

 

「女男の言葉を理解しちまった‥‥! あいつに‥‥! あいつに‥‥! 今、勝てねぇって! 解っちまった!! クソが‥‥! テメェもだ! デク!!」

 

涙を拭う。拭いきれなかったものを瞳にためながら‥‥、苦しそうに、追い詰められているように、叫んだ。

 

魂からの叫び。

 

「こっからだ‥‥! 俺はこっから! 俺はここで一番になってやる‥‥!」

 

その言葉は、今まで自分以外は下だと、傲慢に笑っていたかっちゃんじゃない。新しい、更に強くなったかっちゃんが生まれたことを理解させた。

 

まだ僕は本当の意味でかっちゃんに勝てていない。そんな中で、かっちゃんはまた殻を一つ破った。今までの僕なら置いて行かれていたかもしれない。

 

でも、今の僕は違うと、胸を張る。

 

「僕も、まだかっちゃんのことを本当に超えられてない‥‥ゆずくんにだって頼りっぱなしだ‥‥、だけど! 悪いけどかっちゃん‥‥! 僕が一番になるんだ‥‥!」

「俺に勝てるなんて二度とねぇよクソが!!」

 

譲れない。譲るわけにはいかないものがある。

 

まだ僕は返せていないのだ。

 

『なぁ、ヒーロー?』

 

僕をヒーローだと呼んでくれた、ヒーローを諦めそうになる度に背中を叩いてくれた、彼に、僕はNo. 1になって、本当のヒーローになって、君は間違えてなかったと証明するのだ。

 

それだけが、僕が彼に返せる恩返しだと思うから。

 

 

  × × ×

 

 

戦闘訓練のその日。帰り際にカメラを回収して、僕は一人で録画したかっちゃんと出久くんの会話の様子を見ながら一人で呻いていた。

 

本当に眩しすぎるなこの主人公‥‥。原作とは違ってかっちゃんのセリフに返答しているが、それはまぁ、僕が絡んでしまった故に起こったことだろう。仕方ないことだ。

 

そんなことよりも、僕としてはこのかっちゃんの反応の方がヤバい。

 

『女男の言葉を理解しちまった‥‥! あいつに‥‥! あいつに‥‥! 今、勝てねぇって! 解っちまった!! クソが‥‥! テメェもだ! デク!!』

 

はぁ〜!? はぁ〜〜!? 何その顔! 原作よりも泣きそうじゃん! ズルくね? そんな顔見せられたらクるって! あ‥‥涎垂れてきた‥‥っていうか僕の言葉ちゃんと律儀に聞いて理解して、僕の試合もちゃんと確認してくれてるの可愛すぎるでしょ! なにそれ、健気か!! 出久くんに負けたのと同じくらい僕に負けたって思ってくれてるじゃん可愛すぎるよ〜!! 僕のせいでその傲岸不遜の態度が崩れて泣いてるかと思うと興奮しちゃうって!! あ、また涎が‥‥!!

 

一人でかっちゃんのあまりにもあまりな様子に喜んで夜を過ごした。これ僕がもっと歪んでたら多分これオカズにしてたな‥‥そこまでは歪んでなくてよかった〜‥‥ただ、それはそれとして出久くんにも順調に僕って存在が刻まれていってて嬉しいね。この育った果実たちもちゃんと収穫してあげるからね♡

 

「なんかゆずくん眠そうじゃない?」

「ちょっと‥‥昨日夜更かしちゃって‥‥」

「何をしているんだ! 学業に励むのが学生の本分だろう!」

「以後気をつけるから大きい声やめて〜‥‥」

 

かっちゃんの曇らせ録画を何度もループで視聴してたら気がつけば朝になっていた。なんでだよ。そこまで集中してたのか? それにしてもずっと見てるのヤバすぎない? 末期患者じゃん。

 

そうですけど?

 

回らない頭で自分にツッコミを入れていると相澤先生が教室に入ってきた。どうやらホームルームの時間らしい。今文章とか読んだら寝ちゃいそうだし、普通の授業よりは気が紛れるから嬉しいって言えば嬉しいけどさ。

 

「昨日の戦闘訓練お疲れ。Vと成績見せてもらった」

 

先生は気だるそうに紙の束を机に置きながらチラリとかっちゃんに視線を向ける。

 

「爆豪、お前ガキみたいなこともうするなよ。能力あるんだから」

「‥‥わかってる」

「緑谷はまた腕ぶっ壊して一件落着か。個性の制御ができるようになればやれることは多い、焦れよ緑谷」

「っはい!」

 

うんうん。良きかな良きかな。こんな一瞬で曇った雰囲気出してくれるかっちゃんずるいよね。席的に僕からはかっちゃんのこと見えないんだけど‥‥雰囲気くらいは察することができる。可愛いね‥‥

 

「さてHRの本題だ。急で悪いが君らに‥‥学級委員を決めてもらう」

「学校っぽいのきたー!!」

「声揃えるの好きね?」

 

テンションぶち上がってそれぞれが自分がしたいということをアピールし始めるのを見てうんうんと頷く。普通なら雑務という感じだけどヒーロー科‥‥特に雄英のヒーロー科は集団を導く素地を鍛えられるトップヒーローに近づくためのものなんだとかなんとか。正直やるつもりはない。僕曇らせの種を蒔くので忙しいからね。

 

「それじゃあまぁ、投票にしようか。投票の紙は用意したからこれに書いてね。僕は降りるから、19人分かな? まぁ、僕以外の名前を書いてくれたらいいよ」

 

席を立ち上がりながらルーズリーフをペラペラと見せてみんなに語りかける。2枚をそれぞれ十等分に分けてしまえば足りるだろう。

 

「はい、後ろに配っていって〜。少しだけ考える時間も作ろうか、5分あれば足りるよね?」

「もうお前でいいだろ」

「僕は相応しくないので」

 

相澤先生に呆れ気味に言われてしまうがここで僕が委員長しちゃうと僕が抜けたときに精神的な支柱になれる奴がいなくなっちゃう。それは大変困るよね。

 

僕は絶対にいなくなるんだから。

 

「書けた〜? 誰が誰に投票したのかとか知られるの嫌だと思うから回収次第破り捨てていくね、メモはしてるから安心してくれていいよ」

「もうお前がしろよ」

「向いてませんので」

 

相澤先生の言葉を適当に受け流しながらみんなの投票を集めていく。まぁ、順当に行けば出久くんが委員長になるだろう。その次はヤオモモちゃんかな? 原作だと飯田くんに変わるし、この過程はあんまり意味がない。何故ここで投票の仕切りに立候補したかというとみんなの記憶に残るためである。もっと深くまでみんなに覚えてもらわないとね。

 

「じゃあ集まったし投票結果を書いていくね。同票だったらじゃんけんしてね」

「先生の言うとおりなんで舞妓やらねぇの?」

「ゆずくんがやるなら僕ゆずくんに入れるのに‥‥」

「ふふ、相応しくないからね」

「少なくともまとめ役向いてると思うけどなぁ」

 

どの言葉にも「相応しくないからね」という言葉だけを返す。それだけでゴリ押ししておこう。曇らせる時間がないとか言えないし。いや、この相応しくないもヴィラン堕ちしたときに効いてくるのかな? いいかもしれない。積極的に使っていくことにしよう。

 

「僕四票ー!?」

「なんでデクが‥‥!」

「まぁ、お前よりはわかるけどな」

 

結果は出久くんが四票でヤオモモちゃん二票。他が一票という感じだった。当たり前だが他に投票したお茶子ちゃん、飯田くん、轟くんの名前の横には票数を書いていない。

 

「じゃあとりあえず出久くんに決定かな? 委員長出久くん、副委員長百ちゃんね、拍手!」

「マママママママジでか」

「うーん悔しい‥‥」

 

打ちひしがれる飯田くんを見ながらとりあえず学級委員を確定させる。君そこまでしたいならなんで出久くんに投票したのさ。いや、原作で理由も知ってるけど何だかなぁって感じするよ? 今の君。

 

 

  × × ×

 

 

午前中の授業を睡魔と戦いながら切り抜けてさて、お昼ご飯の時間である。

 

「出久くんは今日食堂だっけ?」

「うん、ゆずくんはお弁当?」

「まぁね、じゃあまたあとでね」

 

ひらひらと手を振って出久くんたちが出ていくのを見送る。いやね? 食堂で食べてもいいんだけど‥‥それだと僕が出久くんにべったりすぎるからさ、そろそろ他のクラスメイトとも親交を深めておきたい。後普通に何か作業しておかないと寝ちゃいそうだったからさ‥‥家族分含めてお弁当作って気を保っていたのだ。

 

「舞妓弁当なの?」

「あれ? 響香ちゃんもお弁当?」

 

小さなお弁当箱ケースを持ちながらヒラヒラと手を振ってきたのはここ最近何かと縁がある耳郎響香ちゃんだ。昨日の訓練もペアだったしよく話すよね。

 

「ウチ今日ヤオモモたちと食べるんだけど一緒に食べる?」

「ほんと? 一人で食べることになりそうで寂しかったんだよね。ご同伴に与ろうかな」

 

そう言って耳郎ちゃんの後をついていくとそこにいたのはヤオモモちゃんに芦戸ちゃん、梅雨ちゃんに葉隠ちゃんという女子メンバーたちであった。お茶子ちゃん以外の女子じゃん。ハーレムか?

 

まぁ、クラスも形成されたばっかりだし、最初は同性で集まるのが手っ取り早いよね。そのうち混ざるようになっていくだろうけど‥‥というか男子二人に混ざっているお茶子ちゃんが強メンタルなのだ。というか多分何も考えてない。

 

「あ! 舞妓じゃん! お弁当なの?」

「うん、今日はたまたまね。ご一緒してもいいかな?」

「もちろんですわ! 個人的にお話ししたいと思っておりましたの!」

「‥‥響香ちゃん、もしかしてこれ口説かれてる?」

「んなわけないでしょバカ」

 

バカって言われてしまった。

 

「改めて自己紹介するね? 僕は舞妓 譲葉。よろしくね」

「八百万 百です。よろしくお願いしますね」

「蛙吹 梅雨よ。梅雨ちゃんと呼んで」

「芦戸 三奈! よろしくね!」

「私は葉隠 透!」

 

まぁ、みんなの名前は出会うよりも10年前から知ってたことなんだけどもそれについては言わないでおく。「昔から知ってたよ」とかホスト以外使わないって。それかラスボス。ラスボスなんて一人で十分だ。

 

自己紹介もそこそこに、それぞれがそれぞれらしいお弁当を広げている中で僕も適当に椅子をそこらの席から拝借して座る。うんうん、高校生のお昼の風景って感じでいいね。

 

「‥‥舞妓よく食べるんだね」

「うん? そうかな? まぁ、男の子の平均くらいじゃない?」

「そっか、舞妓くん男の子だもんね! その顔のせいでまだ脳がバグっちゃうよ! 見て? この混乱してる顔」

「いや、葉隠の顔は見えないのよ」

「ふふ、混乱してる透ちゃんも可愛いね」

 

いただきますと、手を合わせてご飯を食べ始めると芦戸ちゃんからよく食べるね、という褒めてるのかよくわからない言葉をいただいた。まぁ、ここにいる女子みんなよりはお弁当箱は大きいかもしれないけど多分平均サイズだと思うよ?

 

「‥‥ん? どうかした?」

「ねぇ、あんたそれ素でやってんの?」

「なにが?」

 

耳郎ちゃんがジト目を向けてくるので首を傾げてしまう。本当になんの話してんの?

 

「私男の子に可愛いとか初めて言われたよ!」

「え〜? 見る目のない男としか出会えなかったんだね」

 

卵焼きを口に放り込みながらそう言うと横から飛んでくる視線が更に鋭くなった。いや、他の子達もどこか呆れた目をしている。なんなの‥‥

 

「譲葉ちゃんは天然さんなのかしら?」

「えぇ、言われたことないなぁ‥‥そうなのかな?」

「実際わざとやってるわけじゃないんでしょ?」

「だからなんの話? うぎっ‥‥!」

 

僕が首を傾げて不思議そうにしていると急に耳郎ちゃんに踵で足を踏み抜かれた。なんで? めっちゃ痛いんだけど‥‥

 

「僕何かした‥‥?」

「さぁね、自分で考えて。‥‥それより舞妓の弁当美味しそうだね」

「考えてもわかんないよ‥‥あ、お弁当は今日自信作なんだよね」

「え! 舞妓自分で作ってんの?」

 

芦戸ちゃんから驚愕の言葉が飛んでくるがこれについては胸を張らせてもらおう。僕はこの十年間、暇を潰すため、そしてなんか曇らせに使えそうな要素を鍛えるため、様々なことをほとんどカンストレベルにまで鍛え上げているのだ。料理もその一つである。

 

「ふふん、お料理にはちょっと自信あるよ」

「へぇ‥‥あれ? ウチもしかして舞妓に女子力負けてる?」

「そこまで言うなら味見してやろうじゃないかー! 舞妓くん、どれなら食べてもいい?」

「透ちゃんみたいに可愛い子ならどれでもどーぞ」

 

透ちゃんに向かって二段弁当のおかずの方を差し出しながらそう口にすると横から頬をイヤホンジャックで打たれてしまった。だからなんでだよ。

 

「え! いいの!? じゃあ私唐揚げ〜!」

「お目が高いね、得意料理なんだ」

「舞妓ー! 私もいい? 交換しよ!」

「いいよ。僕には卵焼きちょうだい」

 

わいわいとみんなとおかずを交換する。結局全員とそれぞれ一品ずつ交換することになった。‥‥なんか女子とお弁当のおかずを交換するってあれだな? 背徳感すらあるな? 峰田くん辺りがブチギレそう。彼は今日食堂らしく教室にいなくて助かった。

 

「‥‥‥」

「うま、三奈ちゃん家って卵焼きにお砂糖入れるんだ」

「‥‥‥」

「あ、百ちゃんのお弁当プロの味がする‥‥」

「‥‥‥」

「ちくわにチーズ入れるの美味しいよね。簡単だし、僕もたまに作るよ」

「‥‥‥」

「‥‥なんでみんな黙ってるの?」

 

流石に違和感を感じて箸を置く。するとガタン! と椅子を揺らして葉隠ちゃんが立ち上がった。お、おう‥‥? なに‥‥?

 

「舞妓くん! お婿に来ない!?」

「え? 透ちゃんみたいな可愛い子なら喜んで?」

「喜んで行くな!」

「どうすりゃいいのさ‥‥」

「舞妓さん、うちの専属シェフになるつもりはございませんか?」

「ヒーローの前にシェフのスカウトが来るとは思わなかったな」

「いや、いくら八百万でもこの味を独り占めはなしだよ‥‥! みんな! みんなで共有しよう!」

「ん? 今三奈ちゃん共有って言った?」

 

どうやら皆さんのお口に召したようだ。ふふ、自分の腕前が怖い‥‥これが才能ってやつか‥‥

 

「そこまで喜んで貰えたなら嬉しいよ、ありがとね」

「いや、お世辞なしで美味しいわ‥‥」

「じゃあどこかのタイミングでご飯振る舞ってあげようか」

「ほんと!? なら私パスタ食べたーい!」

 

みんなが喜んでくれているらしいのでみんなに手料理を振る舞うことを約束する。まぁ、原作通りいくなら寮生活になるし、振る舞う機会はいくらでもあるだろう。林間合宿で振る舞ってもいいし。林間合宿っぽいカレーとかになるかもだけど。

 

こうやって胃袋から掴んで放逐するのも曇ってくれるだろうか? どんな可能性も捨てるべきじゃないからね。

 

「譲葉ちゃんはお料理が趣味なの?」

「ん? ん〜、結構雑食かな? お料理だけじゃなくて、気になったらやっちゃうって感じ、その上ある程度できるようになるまでは続けちゃうんだよねぇ‥‥」

「ならお料理レベルの趣味が他にもあるってこと?」

「まぁ、いくつかね」

 

いやまぁ、料理は家族に振る舞うことも多かったので頭一つ抜けてるかもしれないけど。

 

今世の家族には迷惑かけることが確定してるから、親孝行をたくさんしてきたのだ。おかげさまで家事については一通りできるようになってしまった。まぁ、前世からできたし、習慣にしただけなんだけどね。この習慣にするのが面倒で前世で親孝行した覚えがないんだけども。前世は親孝行しないクズ、今世は親に迷惑かけるクズ。どう転んでもクズに落ち着くのどうしようもないな、僕。

 

「他には何が趣味なの?」

「ん〜、読書とかも好きだし、あとは楽器とか?」

「楽器を弾くのね、素敵だわ」

「ギター、ベース、ドラムにキーボード‥‥バンド系は一通り弾けるよ。あと普通にピアノとフルート」

「思ったよりもいっぱい弾けた!」

 

僕の言葉に反応してガタン! と耳郎ちゃんが立ち上がった。いや、まぁ、耳郎ちゃんならそうなるってわかってたけどさ。でもここでそれを知っているようなことを言うのは不自然だ。そうだな、ロックじゃない。

 

「どうしたの? 響香ちゃん」

「舞妓、好きな音楽のジャンルは?」

「ロック。ポップスも嫌いじゃないけどね」

「好きな楽器は?」

「やっぱりギターかな?」

「好きなスケールは?」

「ペンタトニックスケール‥‥ってなんの話?」

 

いきなりグイグイと僕に詰め寄ってくる彼女に向かってどうしたの? と聞いてあげる。すると彼女は僕の手を取って僕の瞳を見つめた。

 

「‥‥‥」

「‥‥ねぇ、透ちゃん」

「なに?」

「これって告白だと思う?」

「話の内容はわからなかったけど違うと思う」

 

違うらしい。

 

正直、何を言われるのかわかんないんだよね‥‥原作とは全くかけ離れたものだから。結局のところ僕は原作知識はあるけどアドリブの全てに対応しているかというとそんなことないのだ。まぁ、アドリブを楽しめる人間ではあると思うけど。

 

「ねぇ、舞妓」

「なに? 響香ちゃん」

「ウチとバンド組まない?」

「透ちゃんの嘘つき! 告白じゃんか!」

 

葉隠ちゃんの方に視線を向けながらそう言うといやいや知らないよ、違うでしょ、と言うように手を目の前で振られた。制服の動きで辛うじてわかるだけで実際にそう言ってるのかどうかは知らないけど。バンドを一緒に組もうはほとんど告白でしょ、違うの? 違うかも。

 

「いや、ウチ結構音楽好きでさ、どうかなって」

「学業と両立できる? 僕たちこの先普通科の子たちと違って試験とかに実技あるんだよ?」

「んぐ‥‥」

 

まぁ、文化祭でバンドは組むんだけどもね。そのときに誰か欠員が出てたり、クラスメイトが変わっていたとき用に全楽器一通りできるようにしてきたわけだし。

 

「両立できるかどうかまだわかんないでしょ? 普通科ならともかくヒーロー科だし。学校も始まったばっかりだしさ。だからわかるまでちょっと我慢して、もしそれでも気持ちが変わらなかったら言ってきてよ。そのときは組んであげる」

「うぅ‥‥‥」

 

しょぼんとした顔で椅子に座る彼女を見てクスクスと笑う。ちょっとしょげてる顔も可愛いかもしれない。もしかして僕ヒロアカのキャラの特殊な顔ならなんでもいいのでは? 譲葉は訝しんだ。

 

「舞妓が耳郎のことフッたー!!」

「なんてこと言うの」

 

芦戸ちゃんがテンションを高くしながら黄色い声を上げるのを聞いてやめてあげて、ということに昼休みの大半の時間を割いてしまった。なんでさ。

 

ちなみにフッたフッてない論争のせいで恥をかいたという理由で耳郎ちゃんとお出かけするお約束を取り付けられてしまったがそれはまた別の話。いや、別の話じゃないね。他のメンバーも来るらしい、それに関してはなんでなの?

 

 

  × × ×

 

 

「僕は、委員長はやっぱり飯田くんがいいと思います!」

 

原作通り、あの後警報が鳴ってしばらく雄英内は騒然としていたんだけど、それもいつの間にか落ち着いていた。女子メンバーは少し怯えたような顔してて可愛かったです。

 

‥‥弔くん派手にやったなぁ。というのが正直な印象である。やるって聞いてはいたけどもここまで元気に潰しに来るとは思っていなかった。ハザードレベル原作より高かったんだけどどんだけ潰したんだろうか‥‥‥

 

あれよあれよという間に委員長が飯田くんに決まっていくのを眺めながらあくびを溢す。お昼を食べたら眠気がまた帰ってきたようだ。今度から曇らせの映像を見るときは次の日が休みの日にしよう‥‥これじゃあ身が持たない。

 

「つか結局マスコミの侵入が理由なんだってな」

「いきなり馬鹿でかいサイレン鳴るから食堂は大混乱だったぜ。教室はどんな感じだったわけ?」

「それがさ、聞いてよ! 舞妓が耳郎のことフッたすぐ後にサイレンがなり始めて超怖くて〜!」

「‥‥‥あ?」

「芦戸! 誤解生まれるから!」

「三奈ちゃん割と何にも考えずに話しちゃうタイプ?」

 

芦戸ちゃんの言葉そのまま訳すとクラスメイトが告白を断った後にサイレンが流れたってことになるんだけど? 断ったのは告白じゃなくてバンドのお誘いだし断ったんじゃなくて保留なんだよなぁ‥‥。あれ? ここだけ聞くと僕もしかしてすごいクズ?

 

そして三奈ちゃんの言葉にピクリと何人かが反応する。ちなみに一番大きく反応したのはもちろん峰田くんだ。

 

「舞妓お前もう既に女子に手出したのかよ早いよ! オイラまだろくに話せてすらないんだぞ!!」

「そんなこと言われても‥‥なんて返せばいい? あ、羨ましいか〜?」

「羨ましいよド畜生ッ!!」

「ド畜生て」

 

昨今廃れた言葉じゃない? 死語も死語じゃん。

 

「でもそんなこと言ったら出久くんと天哉だってお茶子ちゃんとご飯食べてるんだよ? ねぇ?」

「え? あ、ごめん。ゆずくんが耳郎さんをフッた辺りの話詳しく聞いていい?」

「なんで???」

 

結構真剣な目つきで僕のことを見てくる出久くんになんか恐怖を感じて後ずさっていると、髪を逆立てた相澤先生がそろそろ我慢できないと言わんばかりに僕らを睨みつけた。

 

「お前らいつまで騒いでんだ、時間ねぇって言ってんだろ。次に騒いだやつから除籍処分にするぞ」

 

この後、みんなは一旦鎮まり。授業が終わってからあらましを説明することになった。耳郎ちゃんはめちゃくちゃ恥ずかしそうにしてたけど、僕に告白した不名誉な女というレッテルを貼られたくないのなら我慢して欲しいと説き伏せて、なんか怖い出久くんと僕を目の敵にする峰田くん、こういうのどうでもいいからさっさと帰りそうなかっちゃんまで含めた全員に説明するのに放課後まで使ってしまうことになっちゃった。

 

ちなみにことの発端である芦戸ちゃんは僕と耳郎ちゃんにジュース奢ってくれました。

 

 

  × × ×

 

 

委員長が決まった日。僕は家に着く少し前に出久くんたちと別れ、家から少し離れた路地裏へとやってきていた。人目につかない場所に来た理由なんて決まっている。

 

「舞妓譲葉。少し遅刻ですよ」

「お待たせしました黒霧さん。少し立て込んでまして」

 

敵連合に向かうためである。大体ここから敵連合に向かうためには新幹線を乗り継がないといけないので、呼ばれる場合は行き帰り両方とも黒霧タクシーに乗せられていくことになっているのだ。大体呼ばれる日かその前日くらいにメールで連絡が来るんだよね。返信はできないからコミュニケーションツールとしては失敗だろと思わなくもないが、ヴィランの連絡なんて誰がどこで聞いてるのかもわからないし、このくらい隠密性を極めた方がいいのだろうか?

 

「いつもは時間より早く来ているのに珍しいですね」

「学校のことで少しね」

「それはお疲れ様です」

 

黒霧さんは基本的に僕に優しくしてくれる。何でかと言われるとわからないが、まぁ、弔くんの友達だからみたいな曖昧な理由なのだろう。

 

黒霧さんにワープさせてもらってアジトに足を踏み入れる。すると待ち構えてたのかと思うほど素早く弔くんと目が合った。なに? 主人の帰宅を待ってるワンちゃん? 僕の周りワンちゃん多くない? 端から名前呼ばれて喜ぶワンちゃん、怒りんぼワンちゃん、お出迎えワンちゃんだ。順に出久くん、かっちゃん、弔くんである。命知らず過ぎるかもしれない。

 

「やぁ、弔くん。元気してた?」

「来たか。この前もお前が勝ち逃げしたせいで最悪の気分だったよ」

 

弔くんに挨拶をすると顔につけた手の指の隙間から僕のことをジロリと睨みつけた。そんな顔しなくてよくない?

 

「そんなこと言っても僕頑張ったと思わない? 飛車角落ちで弔くん相手に奮闘した方でしょ」

「その上で勝ち越してるから最悪の気分なんだよ」

 

首をボリボリとかきながら弔くんはそう言うと、先生から呼ばれてるんだろ、座れよ。と弔くんの座っている席の隣の椅子をひいてくれた。優しいねぇ‥‥順調に仲良くなれているようで何よりである。

 

「先生のお話ってなんだろね?」

「さぁな‥‥」

 

さして興味なさそうに弔くんは答えると、机の上に将棋盤を持ち出した、机に設置するなりパチパチと駒を並べる。

 

「‥‥‥まさかとは思うけど」

「安心しろ、先生に呼び出されてたのは本当だ。ただ負けっぱなしが気に食わないから待ってる間に将棋指す」

「弔くん将棋で世界とか狙ってる?」

「お前に勝てる実力がある時点で世界が取れるって言うのなら狙ってるって言ってもいいのかもな」

 

なるほど、他は眼中にないけど僕を倒すことには興味があるってわけね?

 

僕はこの一年間。弔くんと暇さえあれば遊びまくった。いや、遊んだというと人聞きが悪いかもしれない。ヴィラン側の作戦を考えたり適当な取り巻きを斡旋したり(この取り巻きは使い捨てなので僕は顔を見せていない)戦闘訓練をしたり‥‥その中でゲームしたりする機会が多く、弔くんがしっかり僕に懐いてしまったのだ。まぁ、僕の方が今世では年下なので懐くという言い方は良くないかもだけど‥‥情緒五歳児だし懐いてるでいいよね? それに前世の年齢足したら僕もう三十‥‥これ以上はやめておこう。死人が出る。

 

「おい、今日は飛車落ちだけにしろ」

「飛車落ちだけって‥‥飛車角落ちでも僕に負けるんだよ? 弔くんってば強がっちゃダメだって」

「は? 負けねぇけど?」

「今の所全戦全敗でしょ」

 

まぁ、大駒2枚落ちでの戦績ではだが、じわじわ強くなってるからこれ以上落とした状態でやると十中八九負けるだろう。

 

ちなみに駒を落とすというのは対戦相手が強い駒を最初から失った状態で戦うことである。つまり僕はハンデなしの状態で弔くんに負けたことがない。案外やるもんだね、僕。

 

「それじゃあ軽く捻ってあげようかな」

「ぶち殺すぞお前」

 

僕がヘラヘラとそう言うと弔くんが忌々しそうに舌打ちした。ここですぐに手が出てこない辺りそれなりに仲良くなれてるとは思うんだけど‥‥弔くん相手だとしたら結構破格の待遇貰ってるよね? そろそろ曇らせてもいいかな?

 

『弔、譲葉。悪いけど将棋は後に回してくれないかい』

 

僕がそんなことを考えているとバーの奥にあるテレビが急に映った。いつも思うんだけど会話どこから聞いてるんだろ‥‥盗聴されてるってわけでもないと思うんだけど‥‥

 

「先生、こんばんは」

『譲葉、急に呼び出して悪かったね』

「全然いいけど‥‥今日は何のご用?」

 

画面の向こう側でクスクスと笑う声が聞こえる。ラスボス先生は結構いつも余裕こいて笑ってるよね、煽る、嘲る、貶める。ヴィランの必須条件でもあるこの辺りについては割と僕も参考にしようと思ってるところ多いし、なんだかんだ言ってラスボスは伊達じゃない。

 

『今日は譲葉に英雄になってもらおうと思ってね』

 

勿体つけた言い回しで切り出したラスボス先生はそのまま次の作戦について語り出した‥‥。それはUSJについての作戦である。まぁ、サブプランではあるが。

 

なるほど。つまり要約すると‥‥

 

合法的に曇らせられるってわけだな?

 

「おい先生。それはいくら何でも」

「いいよ。先生がそう言うのならね」

 

弔くんが思わず口を挟んでしまうような内容であるが、それを遮るようにして承諾する。そして弔くんの方に視線を合わせた。

 

「弔くん。僕たちがやろうとしてることは犠牲がなくてもなしえるようなこと?」

「違うが、それでも‥‥お前がそうなる必要は‥‥」

「あるよ。覚悟決めてよボス。君は頭だ。君が迷ったら全部がブレる‥‥」

 

これは僕個人としても渡りに船な案件だ。だから乗ってあげる。少し‥‥いや、だいぶ怖いけど背に腹は代えられない。

 

弔くんの視線が揺れるのがわかる。そして僕から苦しそうに目を背けた。あ、何だ。

 

もうそこまで僕のこと信頼してくれてたんだ?

 

「弔くん、君が王だ」

 

僕の言葉を聞いて覚悟を決めたのか、弔くんが手のひらを握りしめる。指の間から鮮血が流れ出るくらいにキツく握りしめたら、僕と再び目を合わせた。

 

「‥‥‥譲葉」

「うん」

 

死ぬ気で声を絞り出してるのか声は細く、震えている。その声に対して僕はしっかりとした声を返してから微笑んだ。

 

「俺のために苦しめ」

「了解、ボス」

『すまないね、譲葉』

「いいって、元から何の犠牲もなしに上手くいくとは最初から思ってないしね」

 

ここまで、僕は格好良くヘラヘラとしていたが、正直我慢の限界だった。

 

理由なんて言うまでもないだろう。弔くんのことである。

 

いや、ヴィラン連中も曇らせてやるよ! とは思ってたよ? 思ってたけどここまでお手本みたいな曇り方してくれるとは思ってなかったんだって! 最高じゃん! もしかして僕のために生まれた? ってくらいいい顔してる! 全部壊しちゃう崩壊って表情にも適用されるの? あ〜、クソ! その手邪魔なんだよ! 次に曇らせるときには外せよマジでよぉ!! いや、でもその手外した状態で僕に曇らせ顔を見せるなら僕から距離離れて欲しい。多分大声あげちゃうから。

 

その日は辛そうな弔くんの機嫌をとって、その後に作戦会議をしてから帰宅する流れとなった。僕の個人的な話をしていいのなら最高の日であった、ということだけを明記しておく。今夜はいい夢が見れそうだ。次のヒーロー基礎学が楽しみだな、と思いながら、僕はその日、眠りに落ちた。

 

 

 

 





これからは不定期更新になります。ですが毎回クオリティと文量はなるべく落とさないようにしていこうと思いますので、よろしくお願いします。

皆様が最高に楽しめる作品をこれからも執筆していきます。頑張りますね。

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