個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア!   作:波間こうど

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蠢く悪にも、陽だまりはある。




★第二次最終決戦

 

 

ヒミコside

 

「……」

 

この家に来たのは、気まぐれだった。

 

感傷に浸る、と言うと少しはカッコいいのかな。ゆずくんたちとも、みんなとも離れてわざわざ来たのは、私が昔住んでいたお家。家族はとうの昔に引っ越したと聞いていたけど、その家はまだ他の人が住んだりしているわけではないようだった。というか、人が住むには少し荒れすぎている。周りが新築の一軒家ばかりだから、荒れ果てて、落書きがたくさんなされたそこは、新築の家に囲まれてチグハグなテクスチャの中に浮かぶ廃墟のようだ。

 

私はこの家で生まれ育った。

 

「…………」

 

ドアを開けて家の中へと入っていく。家の中も荒らされて、もう随分とズタボロだ。置き去りにされた家具はカッターや刃物で切り裂かれ、私がいた思い出はスプレーで「クズ」だとか「ゴミ」だとかって言葉で塗り潰されている。酷いことをするものだ。

 

今更、なんとも思わないけど。

 

階段を上る。上に上って、私が住んでいた部屋のドアを開けた。

 

私の服も、ベッドも、机も、本も、人形も、玩具も、何も残っていない部屋。この部屋の中にも落書きやゴミが残っていて管理が行き届いていない様子が一目で見て取れた。

 

「……全部捨てたんだね」

 

何も残っていない部屋を見て、つい笑みが溢れる。もし、何かが残っていたら大変だ。思い残すことになってしまうから。……そんなもの、ない方がいい。

 

私に必要なものはもう。持ってる。全部貰った。それ以外は全部捨てていいんだ。その気持ちを確かにするために、今日はここに来たんだから。

 

「あっちゃ〜、何これ。酷いねぇ……落書きだらけじゃん。グラフティーは街中にあるからアートなのであって家の中に描くのはセンスねぇぜ」

「!」

「やっほ。夜の散歩かい? ヒミコ」

 

後ろから声がして振り返る。

 

そこに居たのは私の大好きな人だった。

 

白い髪は絹のように美しくて、青い瞳はサファイヤみたい。ダイヤモンドだって彼の前では己の輝きを恥じて、クレオパトラも嫉妬する。楊貴妃が敗北の白旗をあげて、小野小町が京を去る。

 

それほどまでに美しくて、優しくて、最高な私だけの彼。

 

それが、舞妓譲葉だ。

 

「ご両親にご挨拶とはいかなさそうだね」

「えへ、そんなことしなくてもいいです」

「まぁ、俺の方ももうできないからお互いない方が楽でいいか」

 

私の横を通り抜けて、ゆずくんは窓に腰を掛けた。その瞳はどこか悲しそうだ。

 

「……悲しんでくれてるの?」

「え?」

「苦しそうだよ」

「……そうだね、そうかも」

 

そう言って、彼は窓の外へと視線を向けた。

 

明かりはない。当たり前だ。ここはもう全域に警報が出ていて、人なんて住んでいない危険区域なのだから。鼠すら消え失せた廃屋に、こんな綺麗な人がいるだけでも奇跡のようなもので、そもそも人なんて私たちくらいなものだ。

 

何を悲しんでくれているのだろう。彼は、優しいから、きっととてもつまらないようなことでも悲しんでくれるのだ。

 

私がもう既に乗り越えたようなことすらも、彼は私の代わりに悲しんでくれる、そういう底抜けに優しい人なのだ。

 

「ハハッ、きたねー街」

「そうかな?」

「そうだよ。カスみたいな街さ」

 

話題を切って、次の話に進めるためなのか、彼は無理矢理そう笑った。いや、口は笑っているけど、瞳は笑ってない。

 

どこまでも深く堕ちた深海の先で、彼は未だに灯りを探しているみたい。暗がりを手探りで歩いているみたい。

 

温もりを、探しているみたいに私には見える。

 

「ヒミコ、帰ろ」

「うん」

 

だから、私があげられるものは全部あげる。

 

体も、心も。全部全部。

 

貴方にあげるから。体が冷えるなら人肌で、心が冷えるなら私の全てを焚べてくれればいい。

 

 

貴方が私の光なんだ。

 

 

階段を降りて、ドアから外に出る。たった数十分だけの帰省とも、帰宅とも言えないような里帰りは終わって、まだ冷える外気に晒されながら私はゆずくんの手を握った。彼は恥ずかしがったり、振り解いたりもしないで指を絡めて返してくれる。なんだか珍しい。

 

「お前みたいなイカレ女にも感傷に浸る感性があったとはな」

「荼毘くん居たの? というか、そんなこと言っちゃダメだぜ?」

「ハッ、お前は気づいてたろ」

 

お家を出た私たちを外で待っていたのは荼毘くんだった。見られてることに全然気づかなかった……でも、ゆずくんはきっと気づいていたのだろう。いつもだったら恥ずかしがりそうなところを恥ずかしがっていないのは、恥ずかしがっているところを見られることの方がよっぽど恥ずかしいからであろうか、それとも別の理由があるのか……まぁ、私は恋人繋ぎができて役得だからなんだっていいんですけど。

 

「というか、君が感傷に浸る云々言うんだ? 自分家で焼香あげて名前を荼毘に改めた君が? 感傷に関しちゃ君のがよっぽどだと思うぜ」

「……お前なんでそんなことまで知ってんだよ。つか、それ知ってるのおかしくね?」

「おかしくないよ。俺はなんでも知ってるから」

 

いつもニヤニヤしてる荼毘くんがムスッとした、子どものような顔をするのはゆずくんの前でだけだ。ゆずくんはいつだって私たちの先を歩いていて、そして、その先で瓦礫を片付けながら私たちを手招きしてくれている。

 

優しくて、強くて、頼もしい。

 

「覚悟は決まったのか?」

 

荼毘くんはゆずくんの隣に歩いてきて、私の顔を覗き込むようにして尋ねてきた。

 

「なんのですか」

「仕様もねぇ世界を終わらせる覚悟さ」

「そんなの……」

 

手を握る。ゆずくんの手が温かく、私の握力を返すように握り返してきてくれた。

 

仕様もない世界を終わらせる。

 

そんなの、

 

「今更です」

「ふふ、だよね」

 

ゆずくんが笑ってチラリとお家を見た。嫌なものでも見るように向けた目を笑顔に戻しながらこちらを、荼毘くんに視線を向ける。

 

合図は短い言葉で十分だった。

 

「いいよ、燈矢。燃やせ」

「ハハ! いいね!」

 

荼毘くんの右腕を青い焔が纏った。焔は束になって、そして、お家に伸びていく。

 

「誰が泣こうが喚こうが、明日は平等にやってくる。それなら、笑おうぜ! なぁ、トガヒミコ! 舞妓譲葉!!」

 

彼の焔がお家を燃やし尽くす。私の居た思い出も、記憶も、辛さも、痛みも、全部包み込んで燃やして。

 

「俺たちは! 笑うために生きてるんだ!」

 

轟轟と燃えるお家を見て、私はつい「見つかっちゃうよ」なんて口にした。それを燈矢くんは鼻で笑う。

 

「現体制に俺たちを捕捉する力はねぇよ。それに、捕捉できたとしてもこっちにはコイツが居る。万が一にも負けはねぇ」

「髪の毛ワシワシするの止めれる? 俺も全盛期のオールマイトが来たら怪しいよ」

「それ以外なら余裕だろ?」

「エンデヴァーだろうと数分もいらないだろうね」

 

バレても問題ない。だから燃やした。

 

それは、話の辻褄は合っているのかもしれないけど、でも本当はゆずくんに指示されたのが嬉しいからってことの方が強いように見えた。ゆずくんが燈矢くんのことを「でっけぇ犬」って言っていたのはこういうことなのだろう。

 

「聞いてる? ヒミコ」

「え?」

「つまるところ燈矢が優しいって話さ」

「おい、違う。つまんねぇこと言うな」

「ツンデレさんだなぁ。俺が全部正しいんだよ」

「お前から燃やしてやろうか?」

「そんなつもりもないくせに〜。恥ずかしいでちゅね〜?」

「赫灼熱拳……」

「あっつ、ウッソだろお前」

 

ゆずくんと荼毘くんがヘラヘラと笑って、戯けて、ふざけて、私の周りを跳ねてくれる。昔なんかより、今の方が、よっぽど不自由で、よっぽど悪だけど。

 

笑って暮らせる今は自由で、善で、楽しい。

 

「燈矢くん」

「あ?」

「ありがと」

「……おぉ」

「ゆずくん」

「ん?」

「大好き」

 

面を食らったのか彼は少し照れくさそうに視線を外して、頬を掻いてから「知ってるよ」って呟いた。

 

あぁ、どうか神様。

 

願わくば、この世界は私たちの思うがままにありますように。

 

 

  × × ×

 

 

青山くんのことはもう全部済ませた。ラスボス先生の裏は取れただろうし、終始上手くことが運ぶだろう。大丈夫だ。

 

もう、エンディングに近い。僕の望みに近い。

 

全員の顔を曇らせて、世界を終わらせる。

 

全部道連れにして壊して、殺して。

 

きっと、何もかも呑み込んだ終焉を作る。

 

僕の目的の完遂ももう間も無くだろう。今日は、その前夜になる。革命前夜といったところだろうか。混沌に落ちる。最終章が始まるのだ。本当に楽しみで仕方ないぜ。

 

「ねぇ、ゆずくん」

「うん? なに? ヒミコ」

「子どもの名前って考えたことある?」

 

ベッドに腰掛けているヒミコちゃんが急にそんなことを尋ねてきた。え? 脈略なさすぎない? 本当になんの話?

 

……いや、ほんと急になんの話だ? 子どもの名前? この子もうすぐ決戦って自覚あるのだろうか……いや、こんなところで全裸な僕も僕なんだけども……ないよね? 僕はあるよ。みんなの顔が見たいなぁってずっと思ってるくらい。もう完全にギンギンだよ。

 

いや、それは年中そうだわ。みんなの曇り顔が見たくて生きてる人間なんだった。

 

「急にどうしたの?」

「ゆずくん作戦名とか、ゲームのキャラにつける名前素敵だから何か考えてるのかなって」

 

個性の名前も素敵だし! ってヒミコちゃんは言うけど、個性の名前に関して言うなら僕が決めたものではないので大したものではないんだけども。東堂が決めたわけでもない……というか、術式の名前って誰が決めてるのかな? 上層部? この世界の個性は結構役所が決めてたり、その場でなんか誰かが言ったのが書類上でもそうなってたりするから結構雑みたいなんだけどさ。

 

「考えたこともなかったなぁ。まず、子どもを持つなんて……考えるような年じゃないじゃない?」

「そうかな? 私は結構考えるよ? 白馬の王子様が迎えに来てくれたり、誰かが私のことを……救ってくれて、その人と一緒になるんだろうなってずっと考えてた」

「へぇ、ロマンチックだね」

 

シャツに腕を通す。あれ? パンツどこやったっけ……あ、あったあった……随分と一般的なロマンチシズムを持っているものだ。ヒミコちゃんにしては珍しい……いや、そうでもないか。割と感性は普通の女の子に近しいもんね。

 

ただ、同一性というものだけが彼女のことを狂わせていたのだ。

 

「私のことを救ってくれたのは白馬の王子様なんかじゃなかったけど」

「僕乗馬できるよ?」

「そういうことじゃないです……ただ、すごく優しい人で、その人との間に赤ちゃんができるのなんて普通のこと、考えてたよ?」

「そんなもんかぁ」

 

僕が考えてなかっただけで高校2年生って割と普通にそういう感情あるもんか。でも考えてみたら普通だよね。僕がこの世界の人間と番って子どもを作るなんてことを考えてもみなかっただけで、世界では当たり前に繁殖行為が行われてるわけだし。ま、ヒロアカの世界ではそういうの薄いけど。曇曇らせらせしてるからね。なんだよ曇曇らせらせって。もうちょっと考えて話せ。

 

「ね、だから聞いてみたいんだ。赤ちゃんにつけるならどんな名前?」

「ん〜? そうだなぁ」

 

そう言われると難しい。そもそも彼女がセンスがいいと褒めてくれるネーミングだって元を辿れば何かのパクリやオマージュなんだ。僕個人に何か特別な才能やネーミングセンスがあるわけじゃないんだから普通に考えてそこまで綺麗に名前を決められるわけがないんだよね。昔の……前世の知識から流用してるだけでセンスがいいわけでもなんでもないからなぁ。

 

「難しいなぁ……自分の子どもでしょ?」

「自分の子ども!」

 

……自分の子どもねぇ。

 

きっと、碌でもない人間になりそうな気がするけどなぁ……いやでも、どんな人間に育ったって元が僕の遺伝子からできてるんだったらどんな人間になってもおかしくないな……遺伝子ガチャ的には割と当たりの部類だと思うよ、僕。

 

どんな人間になって欲しいか……いやぁ、僕には似てほしくないなぁ……似ないとは思うけど。似たら最悪だよ。性格も性根もカスなんだから。でも僕の遺伝子半分継いでるんだよなぁ……

 

どんな人間が好ましいのかって話かな? 僕が育てるなら……例えば……。

 

『お兄ちゃん!』

 

暖かい、陽だまりみたいな……。

 

「…………」

「ゆずくん?」

「……優って、漢字は使いたいな」

「え?」

「ただ、優しい子にはなって欲しいんだ」

 

これは、どこまでも僕のわがままだ。僕のわがままで、ありえないことなんて理解しているのに、その上で僕が溢すわがままだと受け取ってくれて構わない。神なんていないこの世の中で、僕のこの願いが叶うことはありえない。

 

そんなことわかっているけれど。

 

願わくば。

 

「目の前の相手を、優しく包み込んであげられる。優しい子になって欲しいな」

 

あの子を抱きしめたい。

 

××優×を。もう名前も顔も、声も匂いも、詳しいことなんて思い出せなくなってきている彼女。

 

その顔がもう一度見てみたいと思うのだ。

 

僕がここまで堕ちた理由があの子なのだとしたら。

 

彼女はどれほどの女だったのだろうか。

 

「そっか! ゆずくんみたいに優しい子だといいねぇ」

 

そんな言葉に、振り返る。彼女は微笑みながら、頬を赤く染めていて。

 

あぁ、きっと、こんな顔だったんだろうなと思った。

 

 

  × × ×

 

 

『ねぇ、お兄ちゃん』

『ん? なに?』

『お兄ちゃんがもし生まれ変わってヒロアカの世界に生まれたとして、個性を手に入れられるならどんな個性がいい?』

『……そうだなぁ』

『私はね! ワン・フォー・オールがいいな!』

『えぇ、なんで? 優香は「治癒」とかだと思ってた』

『たくさんの人を助けたいんだもん。デクみたいに! 人を笑顔にしたいんだ!』

『優香は優しいなぁ』

『お兄ちゃんは?』

『うーん……そうだなぁ……生まれ変わったらってことだよね?』

『うん!』

『そうだなぁ、生まれ変わっても、優香のお兄ちゃんになりたいな。転生してもお兄ちゃん!』

『俺がお兄ちゃんだぞ! ってこと?』

『またお医者さんに漫画読ませてもらったな?』

『えへへ』

『そうだなぁ、そういう意味なら羂索みたいな個性がいいかも』

『え〜? 気持ち悪いよ』

『だとしても、』

 

 

『生まれ変わっても、俺はきっとお前のお兄ちゃんになるよ』

 

 

  × × ×

 

 

…………夢を見るのは久しぶりだと思う。

 

ゆっくりと瞼を上げた。といっても、ただの仮眠だから大したものではないのだけど、夢は基本的に起きる数分前に見たことが拡張されているとかなんとかって言うじゃないか。つまるところ大変寝覚めが悪かった。

 

これから最終決戦だと言うのに。

 

「……嫌な夢を見た」

「どうしたんだい? 譲葉」

「いや、なんでもないよ。ただ、なんだか嫌な夢を見たってだけ」

 

体をソファから起こして伸ばす。仮眠していたのはここからしばらくは眠ることもできないからだ。

 

「先生はいいタイミングで来てね?」

「もちろん。ワン・フォー・オールはくれよ?」

「構わないさ。緑谷含めて俺の敵全部俺が処理していいなら個性なんて好きに取ればいい」

 

君には取れやしないけど。

 

こんな薄暗い山荘ともようやくおさらばだ。ようやくだ。ようやく。

 

僕の夢が果たせる。

 

「さぁ、始めようか。全ては、狂った世界をぶち壊すために」

 

パン! と手を叩いた。転移先は工事現場。

 

青山くんとの合流地点だ。

 

「よぉ、優雅。ちゃんと呼び出したか?」

「…………」

「おいおい、そんな顔するなよ。俺が言うのもなんだけど、俺もお前は同じ穴の狢! 同じ釜の飯を食った兄弟だろう? そんな顔するんじゃねぇよ」

 

いい顔してるね〜!! というか演技とはいえそういう顔ができるんだったらお前も結構十分な役者になれると思うぜ? いや、もう既に役者なんだっけ? 役者だから一年間もA組を騙せたんだもんね? 頭が上がりませんねぇ! なんて優秀な男なんでしょうか! これで君の大事な家族は死なずに済むよ! 僕の機嫌がよければね!

 

「これでお前の大事な大事なパパンもママンも死なずに済む」

「……!」

「よかったなぁ? 優雅。そう思うだろ? 緑谷」

 

青山くんの肩から離れて、後ろを振り返る。そこには青山くんが通話で呼び出してくれた出久くんが立っていた。息が切れているあたりを見るに随分と本気で走ってきてくれたらしい。久しぶりに見る親友の顔はどこか青ざめていた。

 

「……ゆずくん」

「おいおい、優雅を責めてやるなよ? 優雅は家族の安全を守りたかっただけさ。そこに何もおかしなことはない。だろ?」

「…………」

「誰だって世界征服をする魔王になりたいなんて奴に歯向かうのは怖いさ。当たり前だ。自然の摂理として、怖くないはずがないだろう?」

 

ゆっくりと青山くんから距離を取る。一応この後ビームを放つ男だ。あれ? レーザーか。どっちでもいいけど。あんまり近くにいると僕が丸ごと貫かれる可能性があるからね。

 

「ほら、優雅。言ってやれよ。友達じゃないって、ハハ、お前たちみたいな個性を持って生まれた勝ち組に、裏切り者に! 友だと思ったことはないってよ!!」

「…………」

 

青山くんが一歩足を踏み出した。イズクくんと向き合って、その口を開く。

 

「……AFOの本当の目的は、混乱して、目先のことしか考えられなくなって、団結力が弱まった世界を、圧倒的な〈個〉の力で支配すること、魔王になることだ。それは舞妓くんが言ってたことも変わらない」

「……そんなのは許さない。まだ僕たちがいる」

「だからきっと、これが最後の詰めなのさ」

 

青山くんは勇敢だ。きちんと状況を理解した上で話している。自分の一挙手一投足が、自分の家族に、大事な人たちに向かうってことを理解した上で、この作戦を飲んだのだろう。とても勇敢だ。勇気のある行動だ。

 

その全てを呑み込む、魔王が相手であるという点を除けば。

 

「やっぱり僕、パパンとママンの安全を守りたい」

「よくやってくれたね、青山優雅。譲葉の言う通り、友を裏切るのは心苦しかったろう? 信用されるのは辛かったろう?」

「AFO……!!」

 

出久くんが戦闘態勢に入った。といってもおっぱじめるつもりはないのだろう。戦闘が始まるというよりは迎撃の準備といったところが、体に纏う電気はフルカウル特有の輝きで、緑色の閃光は人々の希望……と。

 

「本当に曇らせがいのある主人公だねぇ」

 

つい口を突いてでた言葉は誰にも届かなかったらしい。届いても困るけど。

 

「君の語った僕の未来の話も……厳密には外れだが悪くない線だ。パパとママに聞いたのかな?」

「えぇ……貴方の作る世界で僕らに幸福を約束してくれると」

「信じてたのに!!」

「心苦しいなんてものじゃ……なかったよ! 叔父さま!!」

 

出久くんが叫ぶ。その言葉が合図だった。青山くんが振り向き様にレーザーを放つのは、彼のセリフが終わるのとほとんど同時だ。

 

手を叩いてラスボス先生を僕の足元の小石と入れ替える。入れ替えた石ころは青山くんのレーザーに焼かれて散った。

 

「別に助けなくても良かったのに」

「俺は恩人にはきちんと恩返しするんで」

「青山優雅とは違うということだね。といっても、恩人より同盟だろう。僕たちの関係は」

 

いらんこと言わんでいいんです。青山くんと出久くんがおしっこ漏らしたとかなんとかって話しながら僕のこと睨んでるのが見えないのか? 僕が貴方から個性をもらってないことは言わないで欲しいんだけど、いい? できそう? 大丈夫? あ、ダメっぽい。弟くんの個性が目の前にあるからって興奮しちゃってらァ。頭ぶっ飛んでるぜ。この金玉。

 

ラスボス先生が両腕を広げた。することなんてわかりきっている。自らの場所に対象物を持ってくる泥での転移だ。

 

「罠だろうと構わないさ! 目の前にワン・フォー・オールがあり! 有力なヒーローが散っているのは譲葉からの言葉でわかっている!」

「……!」

「つまり君たちは二人! それに対してこの人数! この状況が既に! 手遅れじゃないか!!」

 

おーおー、ゾロゾロとまた引き連れちゃってまぁ……というか原作見てた時に思ったんだけどさ。この中に見たことないというか、この後あんまり出てこない奴とかいるよね。気のせいかな? 数揃えるためになんか良さげなキャラデザ出したらいいと思ってない? 気のせい?

 

「……パパンとママンはこうも言ってた」

 

青山くんと、出久くんの後ろに、黒いモヤが出現した。

 

見慣れたモヤだ。一年以上お世話になったモヤ。つまるところ黒霧さんの個性。

 

「日本はまだ終わっていないと世界が知ること、復興の光があると、日本が示し、世界が団結すること!! だから今日!!」

 

青山くんの瞳が僕たちをキッと見つめる。強い光を蓄えたいい目だ。本当に。

 

壊したくなる、希望を蓄えた。強い瞳だ。

 

「ここでお前たちを倒す!!」

 

それじゃあ、こちら側からもきちんと声をあげておこうか。うちのボスは今頭の中でラスボス先生と体の所有権取合いしてるだろうからさ。

 

「ヤれるもんならヤってみろよ!!」

 

 

【挿絵表示】

 

 

その日、第二次最終決戦が幕を上げた。

 





楽しんでくれてますか? 波間です。こんにちは。

最終決戦が37巻くらいのイメージあって、原作終わるのが42巻なのでもう後5巻!? って感じがします。早いね。

ラストまで突っ走るのでよろしくお願いします! 今後ともどうぞ! よろしくね!!

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