個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア!   作:波間こうど

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ハッピーバースデイってやつさ、みんな。


★ハッピーバースデイってやつさ。

 

 

 

【耳郎side】

 

ユズに勝った。

 

確かに、勝ったのだ。

 

不意打ちだ。でも、今までは誰も不意打ちなんて入れることができなかった。組み手でも試験でも彼にはいつだって一撃だって入れることができなかった。そもそも、個性が使えるなら彼の個性の性質上遠距離型の攻撃ができる個性はキャンセルされる。だから、不意打ちも届かなかった。

 

だけど、個性の使えない今、ユズはウチの個性で遠距離と中距離を潰されることを嫌って近距離型にならざるを得なかった。そこを突く暗器。

 

どこまでもユズがしそうな攻撃を、どこまでも予測した上での裏を掻く不意打ちで、確かにNo.8ヒーローになるほどの、ウチなんかとはレベルが違う彼のことをユズを討ち取った。これで連れて帰れると思った。

 

そのはずだった。

 

そう思ってたのに。

 

「うっ、うぉぇ」

 

それは、突然の出来事だった。

 

ユズが急に苦しみ出したのだ。体を地面に叩き打ちながら、悲鳴をあげて、この世の全ての苦痛を感じているとでも言うように、のたうちまわりながら苦しみ始めた。血を吐いて、痙攣する体を無理矢理動かすようにして、悶える。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「ァァァァァァァァァァァァ!!」

「ユズ!? しっかりして!!」

 

目から、鼻から、口から血を吹き出した彼のことを助けようと駆け寄った。びくん! びくん! と体が痙攣するのが見える。彼の目が白目をむいて……

 

ぐるん! と戻った。

 

「!?」

「ゔぉえ! ゲホッゲホッ……あ゛〜、死ぬかと思った〜」

 

ゲホゲホと咳き込みながら彼は立ち上がった。血を黒い羽衣(はごろも)で拭いながらウチの前に立ちはだかる。

 

え? 立った? 嘘でしょ。

 

発目の麻痺毒は一日はろくに動けないって聞いたんだけど。というか、今のたくさんの血ってなに?

 

「なん……で?」

「なんで? 何が?」

「なんで立てるの……?」

 

彼が不思議そうに首を傾げるから、ウチがおかしいんじゃないかと思ってしまう。そんなはずないのに。

 

彼がヘラヘラとした笑顔で鼻から血を抜いた。

 

「え? いやね? これって個性が使えたらいいわけじゃん? 個性が使えないから負けたわけじゃん? だから個性が使えるようになればいいかなって……超再生が使えれば、肉体の活性化……つか麻痺毒なんて効かなくなるし? 本来の肉体なら、この程度なんともないわけ……だけど本来の肉体じゃないから俺は負けたわけだろ?」

 

プッ! と口から噛み砕いた歯と血を吐き出しながら彼は笑った。

 

「だからなに……!」

「だからだよ。個性が使えればいいわけじゃん」

「そんなの無理だよ、相澤先生が見たままだった!」

「知ってる。イレイザーヘッドもやなことするぜ」

 

ユズは頭をかきながら当然のように口を開いた。

 

「だから、一回死んだの、俺」

「……え?」

 

なんて言ったの? 今、死んだ……? 嘘でしょ。どういう……

 

「脳みそにチップ埋め込んであってさ。それを歯に仕込んだスイッチを噛んだらボン! 脳みそがぐちゃぐちゃになって死ぬ!」

「は?」

 

脳みそに埋め込まれたチップ。その爆破。おそらくはAFOが残した自決手段。捕まった場合、情報を相手に渡すくらいなら死ねって命令。AFOから与えられた呪縛。

 

「でも、死んだら個性が解けるでしょ? 特にこういう系のイレギュラーな個性はさ。それはイレイザーの抹消でも変わらない……だからァ、その個性が解けること、本当に死ぬギリギリ瀬戸際! 死んでも脳みそがギリギリ生きてるたったのコンマ数秒! そこに賭けた!! 超再生さ!!」

 

つまり、その呪縛すらも彼は飲み干して、彼は生まれ変わったのだ。

 

魔王を喰らう化け物へと。

 

「正直五分五分だったんだけど……でも成功は成功だ。RTAってのはいつもガバが起きるもんだろ? 失恋RTA走者ちゃん?」

 

手を開いてユズは舌を出しながら嗤う。見ていて理解できる。今までのユズと、このユズは別物だ。何か、今までとは違う圧倒的な何かが……

 

何かを掴んでいる。

 

「さぁ、個性ありの勝負といこうか、耳郎響香。お前をヒーローと、脅威と認めよう」

 

いや、構わない。そんなことはどうだっていい。超再生は体の損傷、毒を治すだけ、となれば脳を揺らして気絶させるウチの攻撃は通る。だからまだチャンスはある!

 

「負けない!」

 

それは咄嗟に口から出た言葉で。次の瞬間には、勝負はついていた。

 

聞き慣れた、拍手の音。気がついたらウチは地面に倒れていて──

 

「悪いな、レベルどころかステージが違いすぎた」

 

鳩尾に鈍い衝撃、痛み、呼吸ができないほどの苦しさ……黒閃でもなんでもない、ただのボディーブロー。そんな一撃でウチは今地面を舐めてた。

 

「お前はヒーローとして認めるが、強者としては認めない。お前じゃ俺には勝てないよ」

 

胃酸が口から溢れて、目の前が霞む。そんなウチを見ても、彼は手を差し伸べてくれたりなんかしない。

 

『大丈夫!? 響香ちゃん!』

 

一緒に過ごした日々は、二度と戻っては来ないんだ。転んだだけでウチに手を差し伸べてくれた彼はもういないんだ。ウチなんて、あの女の足元にも及ばないような存在でしかないんだ。

 

ウチが地面から立ちあがろうとすると、奥で爆発音がして、熱気が吹き荒れた。木々がざわめいて。

 

「お、すげぇ爆発音……もしかしてももしかしなくても……僕の出番か?」

 

もう、ウチのことなんて見てもいないその瞳に映りもしない。ねぇ、ユズ。あんたにとって、ウチってなんだったの? A組ってなんだったの? あんたは青山とは違う。恐怖で支配されてたわけじゃない。それはさっきの自殺と復活でもわかる。あんたは本当に緑谷と爆豪に復讐するためだけにいるの? 違うでしょう? 何か、彼には何かあるはずなんだ。

 

彼の心を射止めて、掴んで離さない何かがあるはずなんだ。それが何かがわからない。

 

「ね……ぇ……ユズにとっ……て、A組は……ウチは……嘘、だ……ったの?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

ウチの口から言葉が溢れた。涙はこぼさない。

 

本当ならお情けだって欲しい、あの女の立ち位置に立っているのは本来ならウチのはずだったんだ。それでも、お情けなんてしてくれるような人じゃないのも知ってるから。

 

「……ううん。違うよ」

 

でも、返ってきたのは予想外の言葉だった。悲しそうな瞳をこちらに、彼は振り返る。

 

「裏切りには裏切りを。それだけ。みんなのことは確かに、友達だと思ってた」

 

悲しそうに笑って、彼は言った。

 

その優しい青い目も。困った時に頬をかく癖も、笑った時にできる笑窪も。全部、全部ウチらと一緒にいたときのままなのに。

 

とても冷たい────

 

 

「今までありがとう。さようなら。響香ちゃん」

 

 

ユズは、ウチのヒーローは。

 

寂しそうに笑ってウチの横を素通りした。

 

落ち葉を踏む音が遠ざかっていく、彼の背中が見えなくなっていく。それは、どうしようもない絶望で。

 

「馬鹿……」

 

好きだって言ってないんだ……それなのに、そんな悲しいフられ方したら……諦められないじゃん。

 

「最後に……呪いの言葉なんて吐かないでよ……」

 

ウチの言葉は、頬を伝う雫と共に地面に染み込んで消えた。

 

鼓舞するような、あの拍手の音は、もう、聞こえない。

 

 

  × × ×

 

 

いや、まさか僕が耳郎ちゃん程度に追い詰められるとは本当に思ってなかったんだけども。すごくない? よもやよもやってやつだよ。

 

おかげさまで僕の奥の手一つ切っちゃったじゃん。マジの奥の手、使わなければいいなと思いながらも準備してた本当の奥の手だ。

 

その名も脳みそ爆破キャンセル。

 

脳みそをぐちゃぐちゃにして、それを反転で治しただけなんだけど、それができるということは最強の術師が見せてくれていたし、出久くんに向けて悪感情を最大限にして叩き込むために埋めたチップに爆破の機能をつけることくらいは造作もなかったから、この作戦を思いついたのだ。いやー、死んだら個性が解除されるのを知った時から相澤先生に対するカードの一つとして持ってたけど、こんなタイミングで使う?

 

本当にガバだよ全く。こんなことになるなんて思ってもみなかった。でも……まぁ、僕の落ち度だし? めっちゃ曇ってくれたし? そういう面では良かったのかもしれないけどね。

 

本当に…………

 

本当に……耳郎ちゃんの僕が血を吐いた瞬間の顔! それから僕が最後に見せた笑顔と呪いの言葉に対する泣きそうな顔! できると思ってなかったからやってなかったけど恋愛を軸にした曇らせって結構脳みそに効くというか最高に興奮するなぁー! 僕がゾクゾクくるなんて思ってもみなかったというか、いや、曇らせ自体に興奮するのは当たり前だからさ、ここまで使って興奮するものだとは思わなかったというか! 唆るものすぎてびっくりしたよ! 僕の心の中のチンチンが(いや、体の方のちんちんでもいいんだけども)最大硬度になって仕方ないぜ!! マジで感度良好だ! 僕が曇らせたいと思った子は曇らせると結果可愛いことが多すぎて嫌になるぜ! 曇らせだけで世界平和できるかも! というか恋愛曇らせの破壊力すごいな……人の心が以前よりもわかるようになったからこっから使えるなら積極的に使うようにしていかなきゃね!! でもまぁ、使うタイミングあるのかと言われたらわかんないけどこの先の人生で死ぬほど使えばいいんだよ! 僕はこの先も生きるんだからさ!! 耳郎ちゃんの前で何度だってフッてやって、適度に飴を与えて気持ち良くしてあげなくちゃいけないよね!! まぁ、僕はもうヴィランとして確定しちまった身だから上手くいくかはわからないけどそこはそれ! 僕の才能でなんとかしてあげるよ!!

 

よしよし、満足もしたし……ここからはオリジナルだ。

 

さて、僕の目的を皆さんはご存知だろうか。

 

そう、曇らせだ! 世界を震撼させる。そして、全てをめちゃくちゃにした上での曇らせ。僕という存在が王として、神として、世界をしっちゃかめっちゃかに掻き乱して、僕が、俺が満足するシチュエーションを作る。誰にも邪魔させない。僕は僕として、僕だけが! 俺だけが満足する世界を作り上げる! 誰にも奪わせない! 俺だけが満たされる世界を!!

 

それが、舞妓譲葉の至上命題。

 

ではここで問題です。じゃーじゃん!

 

 

Q.今の今まで、ネームドキャラで、すっごい活躍をしてるのにも関わらず! ろくに曇っていないキャラクターはだーれだ!

 

 

チッチッチッ、考えたらわかるよね? すぐに理解できるはずだ。ろくに曇らないカスの顔を思い浮かべろ! ……顔? なのかはともかくとしてね!

 

そう! その答えは!!

 

「終わった? 先生」

「あぁ、丁度いいところに来たね。今終わったよ」

 

ラスボス先生は、片手でホークスの首根っこを鷲掴みにしながら口元に笑みを浮かべた。おーおー、切り札切らされたってのにこの笑顔。流石は最後まで試そうとしている男だ。面構えが違うぜ。なんかゆらゆらしてるのキモイんだけども。体巻き戻っていってますよー。

 

というかちょっと雑木林で耳郎ちゃんとにゃんにゃん(死語)して、脳みそぶっ壊してから治して戻ってきたらさぁ、焼け野原になってなんかゆらゆらしてるラスボス先生がいるの普通に考えて理解できないけどなぁ……僕が原作理解してる人間じゃないと意味わかんないと思わない?

 

見たらわかるけど、ラスボス先生は原作通り、エンデヴァー相手に切り札を使ったのだろう。いやはや、お互いに大変だね、先生。

 

「いい機会だ、剛翼は貰っておこう。カス個性だが追いかけられなくなるだろう」

 

エンデヴァーはぶっ倒れてて、周りのみんなも降参気味? ぐったりしちゃってまぁ……というか、残ってるのはヒーローくらいで、そのヒーローたちも今のラスボス先生には打つ手無しって感じだよね。なるほど。

 

「そっかそっか! こっちも終わったよ。雑兵処理!」

「お別れはちゃんとすませてきたかい?」

「もちろん! ちゃんとフッてきたよ」

 

ひらひらと手を開いて、僕の間合いへ。

 

「譲葉はモテるなぁ。僕もあやかりたいものだ」

「先生の方がモテるでしょ」

「生憎とちゃんとモテたことはなくてね」

「ウッソだぁ〜」

 

ラスボス先生の背後を通るようにして、敵意は隠せ。隠せ、隠せ。その上で……

 

「こんなに想われてるのに」

 

背後から銃口を突きつけろ!

 

拳銃をラスボス先生の背中に当てる。上裸の貴方には薄皮一枚貫通した時点でこの銃弾が命取りになることくらいわかるよね? わかるもんね? だから、止まったんでしょう? 動きも、思考も! 会話すらも!

 

「………………なんのつもりだい? 譲葉」

「なんのつもりも何も、俺たちはこういう契約だっただろ。先生」

 

さて、どういう言葉が一番効く? どういう言葉が君から、曇らせという名の、表情を引き出せる? そういうシミュレーションをたくさん考えてきたんだ。僕の頭が擦り切れるくらいに。生まれてからずっと、貴方の曇った顔が見たかったんだ。

 

それはきっと、貴方が弟くんに縋るように大好きなんだって名言を残したときからね。

 

うーん……やっぱり、これかな?

 

「いーや、こう言った方が的確か? なァ、死柄木全」

「!?」

 

これを知っているファンブックの情報まで頭に入っていた過去の僕に感謝せざるを得ないよ。君の名前は本編では出なかったからね。だけど僕にはわかるよ、君の名前が。君の本名が。

 

きっと! 誰も知らない! 君の名前も!!

 

「……何故」

「何故!? 何故もへったくれもあるか! 君が僕のことを調べ回っていたのには気づいていたさ、そしてその上で僕が君のことを調べていたのを知らなかった! それだけの話だろう!」

 

いや、調べたところでわかるわけがないんだけどね。君の情報なんてほとんど全部消されてるから。本来なら僕がこのことを知っていること自体がおかしなことなんだけど……そんなことまで気づかないよね? 気づけないよね?

 

それに気づけるだけのページ数(じかん)なんてかけてあげない。そのつもりでいく。

 

「さてと……ま、そんなことはどうでもいいんだ。でも、この状況は一応お前が悪いんだぜ?」

「なに……?」

「ただ、俺の望む通りに動いてくれれば良かった。俺はお前の望む通りに動いた。お互いがお互いを利用する……」

 

空いている左手を動かして鼻で笑う。これでこのシーンは固定される。ほらほら、他のみんなもポカーンとしているだろう? この大きな声がよく聞こえるだろう?

 

「そういう契約だったろう? だけどお前は俺の望み通りに動かなかった! だからこれは裏切りじゃない。先に裏切ったのはお前さ!」

「裏切った? 僕のどこがそうだと言うんだい?」

「おい眠たいこと言うなよ。俺は弔くんの全てを上書きするなんて聞いてないぞ?」

「……なるほど、その件か」

 

それが僕の行動を正当化するキー。僕が弔くんのことを友達だと、親友だと、ヴィランサイドにおいての相棒だと言い続けてきたのは、彼の存在自体を僕の心の友として固定してきたのは、これが理由だ。

 

僕がただ弔くんとイチャイチャしてただけだと思ってた? なんなら弔くんに絆されたと思ってた? 違う違う! 彼の曇り顔が見たいってのは本当だし、僕個人としても弔くんのことを愛しているよ? 曇らせの似合ういいキャラだ。だけど、最初に僕が弔くんと友達という関係を築いたのはこのためだった。

 

「弔くんを返せ。僕、今超絶キレてっから」

「おいおい、弔だって望んでることなんだぜ? それに、今更そんな銃弾一発で僕がやられると思っているのかい?」

「思ってる」

 

そりゃ、どんな銃弾でもほとんど無敵になっている傷すらも巻き戻る今の君のことを殺すことはできないだろうね。シルバー・ブレット……銀の弾丸で殺すことができる存在にも限度があるからさ。狼男を殺せても君のことを殺すには流石に力不足過ぎるだろう。だけど……

 

僕は君のことを曇らせると誓った男だぜ?

 

「銀の弾丸を持ってきたぜ?」

「僕のことを狼男かヴァンパイアだと思っているのかな? そんなものでは死なないよ」

「あぁ、言い方が悪かったかな? シルバー・ブレットって意味で言ったんだ」

「なんだと?」

「お、目の色変わったな? いいぜ、教えてやるよ」

 

なんで今このタイミングで彼のことを曇らせようと思ったのか。理由はたくさんあるんだけど……例えば、もう既に用済みになったからとか、もうすぐエンディングだからとか、もうここで死んでも僕のプランは崩れないから。そしてそしてとても重要な側面がまだ一つだけ残っている。これだけが大事で僕は彼のことをここまで生き残らせてあげたんだ。本当に感謝して欲しいぜ。なんだと思う?

 

正解は!!

 

「個性消失弾を込めてある。お前が今からどんな個性を使うよりも早く、お前の体にこれが届く」

「!」

「お前の体は今個性で動いてる、個性が動かしてるんだろ? 誰かから奪った個性で生命維持をサポートしてるんだ。そんな奴が壊理から作った力でやりたい放題ってのはそうは問屋が下さないって話さ」

「君はどこまで見越して……!」

 

 

この! 目も鼻も口も全部ついた! ラスボスの顔が曇って歪むところが見たいからだよ!!

 

 

「どこまでも! 見越しているに決まっているだろう! 知っているんだから!」

 

それは貴方で言うところの限定的な未来予知、すなわち原作知識によって! 僕は全てを見通している! 僕は天井から見ている!

 

神の御使いは! 全てを把握している!

 

さて、そしてそして、ここから最後の問題です!

 

このラスボスが最高の曇るセリフはなんでしょうか! 答えは簡単です!

 

「所詮お前はラスボスでしかないんだよ」

「……何が言いたい?」

「魔王になる? お前の読んだコミックはアメコミだっけ? そんじゃ教えてやんよ」

 

彼の行動原理をへし折ってやることさ。

 

ほら、小さな声で、こいつにしか聞こえない声で言ってやれ! コマとコマの間の! 本当にごくスキマ! 小さく! 正確に伝えろ!

 

この世界が作り物であるということを!

 

「この世界は、コミックで、お前はキャラクターで、僕はプレイヤーなんだよ。可哀想な夢を持っていい動きしてくれてご苦労! お役御免だぜ! ラスボス先生!」

「は?」

 

パシュ! と間抜けな音が響いた。この音に、君は反応できないよね? だって今の今までの人生の全てを否定されたんだから。ぐちゃぐちゃになったんだから。だから、君はガードも回避もできない。今、不意打ちも不意打ちの不可避の銃弾。

 

「な、ん……だと?」

「BLEACHかよ。オサレバトルじゃないよ。この世界はさ」

「おい! どういうことだ! 説明しろ譲葉!!」

「説明も何もないよ。それが事実で、完璧なまでの正解だ。さよなら、ラスボス」

「舞妓譲葉ァァァァァァ!!」

 

彼の体が崩れていく。ダメージは若返りに帰着するけど、これは“個性”をなくす薬だ。彼の体を駆け巡っている全てを台無しにする、個性因子をズタズタに引き裂くもの。

 

であるなら、彼の体を巻き戻そうとする壊理ちゃんの薬も全て消え去るだろう? 打ち消しあって、彼の体が元の年齢に……枯れた花のように急速に老化していく。

 

僕はそれがしたかった。だから、死穢八斎會編で、わざわざ仮面なんてものを被ってまでも壊理ちゃんの薬を奪取したのだ。弔くんの手からではなく、僕の手からラスボス先生に渡すため……つまり! 僕が使う銃弾分以外を先生に渡すためにね。

 

ほらほら、伏線回収といこうぜ? 全てのピースが繋がるこの感覚! そして、最高に見たかったぜ!

 

君の曇り顔♡

 

は〜♡ 年甲斐もなく曇った顔しちゃってまぁ! そんな顔しちゃったら僕みたいに悪〜い奴が欲情しちまうぜ!? お前のその顔をぐちゃぐちゃにしてやりたいってさぁ! お前の顔をもっと汚してやるってさ! でもお前の顔もここで見納めだなぁ! 所詮はこの世界は僕の思うがままなんだから! お前の出番は覚醒たった数ページの出来事で! 僕が満足できるような顔して終わってくれればいいんだよ! それだけで最高に唆る! ほら! オールマイトと駆藤……二代目! かっちゃんとかにしかしなかったその顔を僕に向けたな!? 僕相手にぐちゃぐちゃになる顔をしてくれたな!? 最高だよ! そうだ! 曇らせってのは落差が大事だからさァ! そういう顔を見せてくれるお前みたいな奴がいてくれなきゃ俺は盛り上がらないよなァ! 最高に唆る!! 気持ちいい!! 興奮する!! 僕の言った通りだ!! 曇らせは生み出してなんぼだ! 僕がこの世界においてはクリエイターだ!!

 

いっつも余裕ぶった顔しちゃってさぁ! 曇らせは!! いつだって!! 落差が大事なんだって何度も言ってんだろうが!!

 

「舞妓譲葉……いいだろう、わかった……ここは僕の負けだ。認めよう……だけど、まだ僕個人が負けたわけじゃない」

「ん? 遠吠えかな? それなら別に今しかないんだし今しておいてよ」

 

もうボロボロと崩れて消えていくラスボス先生を見つめる。その顔の曇りは晴れて、今は……もう、僕を殺す目をしてる。

 

化け物の瞳だ。

 

個性がこの世に生まれ落ちた創世から、9代に渡ってワン・フォー・オールが完全には消し去ることができなかった闇。永久を統べようと蠢く魔王。それでこそ! 最高の曇らせへと至るキーマンだ!

 

「君は、僕が殺す」

「ん? ……あー! 弔くんの方ね、はいはい。できるもんならしてみろよ。悪いねヴィラン」

 

消え失せていく彼に、僕はベーと舌を見せた。

 

悪いね、この人生(せかい)はもう既に。

 

「次も、僕だ」

 

消えていく彼のことを見送って、焼け野原に目を向ける。僕がしでかしたことを理解できないヒーローたちが僕のことを見ている。僕の声も届かないようにしてたからね、多分ヒーローのみんなには仲間割れって感じに見えたんじゃないかな? そう見えるように誘導したからそう見えてて貰わないと困るわけだけど。

 

「……あー、ごめん。悪いんだけど。スパイしてたわけじゃない」

 

そうだ。僕はヒーローに勝って欲しいなんて一ミリも、微塵も思ってなんかいない。そんなこと思ってるわけがない。

 

ただ、

 

ただ、みんながみんな、僕の思い通りに曇る方へと。

 

暗雲立ち込める最高の地獄の方向へと、導くだけなのだ。

 

「さぁ、ラスボスすら飲み干した俺の登場だ。全員骨も残らね〜と思おうな?」

 

さて、オリジナルプラン。始動だ。

 

 





作家にとって感想ってそれを貰うだけで心躍るものなんですが、ここ最近は我慢して溜まってる感想に目を通さないようにしてるんですよ。理由は一気に読みたいから。でもこれって問題があって一気に返さないといけなくなって大変なんですよね。皆さんの感想には基本的に全部返してます。いつもありがとう。

さて、もう終盤も近づいてまいりました。この物語も、残すところあと僅か。物語が膨らむことはありますが、譲葉の進む道中ももう先が見えるものになりました。とうとう今回で原作が後戻りできないほど崩れてしまいましたしね。

ここからが譲葉の、そして僕の腕の見せ所です。頑張ります。

それでは、頑張る僕から一言……

皆さんの応援が励みになります! いつもありがとう! これからもよろしくお願いします!!


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