個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア!   作:波間こうど

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前半は68話後、すぐくらいの話です。


★彼は過去も未来も蝕んで。

 

【相澤side】

 

今でも、初めてその生徒を見た時のことを覚えている。書類ではなく、肉眼で確認したそいつは確かに男子というには可憐すぎた。華奢な肉体、ナチュラルなメイク、女子だと紹介されればそう扱っていてもおかしくないような生徒だった。

 

しかして、彼が目立ったのはその可憐すぎる容姿だけではなかった。

 

他の一年生とは違う、ヒーローとしての資質。

 

『落ち着きなよ、どうもこうも全力を出すしかないでしょ』

 

学級最下位を除籍にすると告げた時の余裕、自分がそうなることはありえないというような顔。入学試験の場で個性が発現したというにはあまりにも熟知しすぎた個性の使用方法、そして入学歴代2位の好成績。

 

爆豪に喧嘩をふっかけ、きっちり手綱を握る少年は、問題ばかりのA組の軸のような男であった。

 

何かあれば舞妓がいる。それはA組全員の認識で、俺もそう思っていた。アイツがいる限りにおいてはこのクラスはまとまるだろうとすら思っていた。将来はオールマイトすらも超えていく、そんなヒーローになる奴なんだと、そう思っていた。

 

「……舞妓が、裏切った?」

「……………………………………そうだ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

「そんなわけないでしょう!」

「相澤くん……私にも何が何だかわからないんだ……」

 

そのはずだった。

 

病室にやってきた、オールマイトさんの話はこうだった。内通者は舞妓で、その舞妓が裏切り、クラスメイトであるA組を倒して消えた。エンデヴァー曰く、攻撃の機会を得ることすらできなかった。彼が手を打ち付けるだけで自分は戦闘の権利すら奪われたと。

 

とても冷たい目をしていたと。

 

考えうる限りでも最悪の存在が、元よりヴィランと繋がっていたという事実は、ビルボードチャート8位という成績を高校一年生にしてとった男が、ヴィランに与するものであった。

 

そんなことが世間にバレればヒーローの信頼はガタ落ち、ただでさえ戦況も良くない現状でそんなことされればヒーローそのものの地盤が崩れかねない。

 

そもそも、あんなにヒーロー然としていたアイツがそんなことするわけが……

 

「馬鹿なこと言わないでください。舞妓がそんなことするわけ……」

「私にも……わからないんだ、彼の考えていることが……ただ、緑谷少年たち全員を下して、彼は、消えたそうだ」

 

何度聞いても意味がわからない。納得できない、理解できない。

 

「なんで……」

「彼は、無個性の自分が誰にも認められないことが許せなくて、オール・フォー・ワンに縋ったんだと、言っていたよ」

 

無個性、それは書類上でもそうなっていた。山田が試験の日に個性が発現したのだと嬉しそうに告げられたと言っていた。彼に個性がなかったことは知っている。それによって辛い目にあったことも知っている。

 

それでもあり得ないことだらけだ。中学三年生の春頃に緑谷とオールマイトは出会った。そこからたった一年以内にAFOに接触して便利な個性を貰い受けて、雄英に潜入した?

 

「……自分で突き止めたんですか?」

 

AFOの居場所を、という目的語は出なかった。それでも、意図は通じたらしい。オールマイトさんが下を向いて答える。

 

「そうなのだろうね……そして、個性をもらって、緑谷少年と私を、目の敵にしているのだと、言っていたよ」

 

何年もかけて、見つけられなかった巨悪にたった数日でたどり着いた。それだけでも信じられないのに、個性を受け取って、我々を欺いた知性、技能、その全てが高校生離れしている。中学生の頃に身につけたのだとしたらさらにおかしい。人間じゃない。

 

……相澤消太は知らない。彼は齢にして五歳から、個性を授かったその日から、いや、目を覚ましたその日から、彼の脳には、この世ならざる経験と、そして力が流れている。天性の才能。ヒーローでもヴィランでもないただ純然とあるこの世界に生きる者としての才能が。

 

「なんで緑谷とオールマイ……」

 

そこまで呟いて思い至った。この二人の、今やA組が、雄英が知っている秘密を。

 

「ワン・フォー・オール」

 

その答えは、彼が持っていた。

 

「彼は、私と緑谷少年の個性の移譲を見ていたそうだ」

 

それは、悲しい事実。

 

どこまでも悲劇的な、むしろ、彼からしたら惨劇のような、事実。

 

「……どれほど、絶望しただろうね」

「……」

「私は、ヒーローだと謳われて……それでも、一人の少年をヴィランにまで堕としたのだ」

 

No.1ヒーローとして長年トップに君臨していたヒーローが、顔を歪ませる。

 

それほどまでに、オールマイトをして、立派なヒーローになれると太鼓判を押された男なのだ、アイツは。

 

「……無個性であったが故に、他のどんなものを持っていたとしても、ヒーローになれない少年。そんなの……合理的じゃない。あいつは、ヒーローになるために生まれた人間だ」

 

拳を握りしめる。USJの一件で足を無くしたあいつのことを思い出している。あの病室で、彼は笑っていた。とても寂しそうに。

 

『足がなくなって、何故絶望しないのか? ですか?』

『しましたよ。何度も』

『僕は長らく無個性だったので、自分が正しいと思ってきたことを今までたくさんしてきましたが、それでも、ヒーローになるには個性がいる……』

『絶望するのはあの10年だけでいい』

 

あの顔が嘘だと思えなかったのは、見抜けなかったのは、あの顔が嘘じゃなかったからだ。確かに彼は、どうしようもなく絶望していたのだ。足を失うことを前提にして作戦を組んでも惜しくないほどに。彼は、堕ちてしまっていた。

 

ヒーロー社会の闇。個性社会の深淵で、過ごした彼の苦しみや痛みはどれほどのものだったのだろうかと思う。

 

そこを見逃す、AFOではなかっただろう。巨悪からすれば、ただの少年一人程度、御し易かったに違いあるまい。舞妓は個性をもらって、そして悪の手に落ちたのだ。

 

そんなこと、あっていいわけがない。

 

「……必ず、連れ帰りましょう」

「あぁ……」

 

オールマイトへ言葉を告げる顔がどのくらい険しいものだったのかはわからないけど、きっと、今の彼のように険しい顔をしていたのだと思う。

 

教師の結託は固く、無機質な病院のタイルの上に染み込んだ。

 

 

  × × ×

 

 

【トガヒミコside】

 

 

奥渡島。遠浅の海が美しい水平線を描くリゾート開発された南の島。

 

そこは、まさに乱戦にぴったりの場所だった。私を閉じ込めるには、丁度いい。

 

「……水族館が人気なんだっけ。ゆずくんと来てみたいな」

 

まぁ、館長がギャングオルカの水族館に行きたいなんて言えば彼は……いや、「処理してからでいい?」とか言って連れていってくれそうだな。

 

「デクくん!? なんで!? 死柄木のところのはずじゃ……!」

「……危機感知(4th)が、発動しなかった……!」

 

こうなったら、ゆずくんのところに戻るのが最優先。今日、きっと彼は何かをやらかすつもりだろうから。それが何にしても止めてあげなくちゃ。まだ、大事なことも伝えてない。

 

でも、その前にまず、ヒーローの思い通りにさせないことが先だ。相手の一番主力のコマ、弔くんに当てたいであろう出久くんを無理矢理こっち側に引き摺り込んだのはそれが理由。咄嗟の判断にしてはよくできたと思う。

 

「デクくん! 先生はなんて!」

「自力で帰ってこいって! ワープが使えないってことは予断を許さない状況ってことだ……! 早く戻らないと……!」

 

他にも一応理由はある……これはすごく私情だけど。

 

「ねぇ、出久くん、お茶子ちゃん」

「……!」

 

斬りかからない。まず、戦闘はゆずくんセレクトの脳無に任せておく。ダツゴクも、ゆずくんが教育(という名の洗脳)を施してるからそう簡単には負けないと思う。だったら今のうちに私用の方を片付けちゃわなきゃ。

 

「私ね、出久くんにも感謝してるんだよ。本当は気にもなってたの、昔好きだった人に似てて……あ、大丈夫だよ? 気になってただけだから! 好きじゃないし!」

「感謝……?」

 

感謝をしている。その気持ちは嘘ではない。何で感謝しているのかというのも簡単だ。だって、

 

「君が裏切ってくれたから、ゆずくんは私のところに来たんだもん」

「……!」

 

君が裏切らなければ、きっと彼は温かな陽だまりの中で生を謳歌していたのだろうと思うのだ。

 

彼ほど優れた人も、彼ほど優しい人も知らない。それが最初はただ計画のためにもたらされた優しさだったのだとしても、それを享受してこれまでの一年近く生きてきた私はわかる。これ以上ないほど、彼に毒されて、絆されてきた私はわかる。分かってしまうのだ。痛いほどに。

 

 

彼は、ヒーローになるために生まれてきた人間だ。

 

 

生まれながらにしてヒーローになるべくして生まれた彼が、裏切られたから、私の側にいてくれる。

 

なんて残酷で、なんて都合の良い幸せだ。

 

「ゆずくんとデートも出来たのは出久くんのおかげなんだよ」

「デート……!? デートっていうのは二人で遊園地に行って、手を繋いでクレープを半分こすることだろ!?」

「それはしてないけど……でも、その先はしたよ」

 

お茶子ちゃんが2回くらいビクってしたのが見えた。かあいいね。出久くんのこと好きなんだもんね。見ててわかるよ。だって、その視線の熱は、敵連合でパーティーした時のホームビデオで、私がゆずくんに向けてたものと同じだから。ツーショット撮ったときのゆずくんを見る目と同じでもいい。

 

出久くん。ゆずくんが執着する、ゆずくんがヴィランになる原因になった人。一番大きなヴィランになる所以を作った人。あんなに優しくて、ゆずくんがここまで堕ちてきてくれて本当に嬉しいけれど、そんなことあり得るはずがない。彼のおかげで、ゆずくんが側にいてくれる。まるで恩人みたいな人なのだ。

 

 

「……ねぇ、ヒーロー。君は私をどうしたい?」

「……!」

 

私の言葉に示し合わせたように脳無が水面を跳ねた。それは狙いを定めたようだけど、意図したものじゃない。ゆずくんが躾けたのかな。

 

「わからない……だけど、僕もオールマイトのように強く在りたいと思った、それは今も昔も変わらない……! ゆずくんを縛るお前たちを捕らえて、ゆずくんを必ず連れ戻す……!」

 

……なんて?

 

「ふふ」

 

今、出久くんすごく面白いこと言った?

 

「あはは! すごい! 面白いことを言うんだね!」

 

ナイフを構える。初速は、いつだって弾けるように。

 

「ゆずくんを縛る? 私たちが? 逆だよ」

 

ぐんっ! と出久くんに接近していく、これは明確な、今までにないほどに明確な、殺意。

 

「!?」

「君が! まだゆずくんを縛ってるんだ!!」

 

敵意を向けると攻撃が読まれる個性、彼のワン・フォー・オールに刻まれているのはとても強い個性だ。私の、ただの女の子の攻撃なんて何の役にも立たない、全く当たらない、響かない、刺さらない。でも、距離は近づけた。

 

読んで、動くだけの力があっても読めないものがある。

 

『偶然に付随する悪意って読めると思う?』

 

いつだってゆずくんは私に活路をくれるんだ。

 

「!? 手榴弾!?」

「お茶子ちゃんは避けれるかな? どう思う?」

 

私に近づいてくるお茶子ちゃんと私の間に手榴弾を投げつける。爆破の熱と破片が辺りに散って、大きな水飛沫が上がる。

 

「ッ……」

「デクくん!」

 

お茶子ちゃんを間一髪庇った出久くんが怪我をした。自分に向けられた悪意には敏感になる、でも、人に向けた悪意には? それが偶然性を伴ったものなら? どうやって対処するのか悩むよね? 自分が飛んでくるよね? お茶子ちゃんのこと庇うよね? 全部わかってたよ。

 

 

『緑谷とは本当に仲良くしてたんだ。俺の親友はあいつだけだった』

『いつも臆病でさ、俺がそばにいなきゃ何も出来ないみたいな顔して……俺と一緒にヒーローになって事務所立てるって言ってたのにな』

『俺のこと裏切ってあいつは仲間と笑ってる。なら俺もあいつのこと裏切って仲間と笑わないと不公平だ、平等じゃない。そんな思いをするのは個性がないって言われた十年だけで十分だ』

『いつだって、助けを求める顔をしてたってさ、駆け出して行くんだ。かっこいいよな。無個性でもそんなことができるやつだから認めてた。俺は……俺だって……』

『緑谷が、ずっと頭にチラつくんだ』

 

 

彼が、あんなに固執している君のこと、彼から聞いた君のこと。全部全部覚えてるんだ。だって、好きな人の話してくれたことなんて忘れないものでしょう?

 

「出久くんは、守るよね。ヒーローだから」

「!」

「じゃあ何で、ゆずくんとの約束は守ってあげなかったの!」

 

地面を踏み締める。彼が体勢を立て直すより、私の攻撃の方が早い。

 

『二人でヒーローになるって、約束したんだけどなぁ……』

 

あの日、ぼかすように笑った彼の瞳が蓄えた涙を。私だけが知っている。だから、許さない。

 

 

「ゆずくんをこれ以上縛るな!!」

 

 

ナイフの切先は、彼の服を浅く裂いた。リーチが足りなかった? 違う、私が吹き飛ばされたんだ。誰に? 痛みは……腹部に少しだけ、衝撃?

 

「間に合ったわ」

「梅雨ちゃん、いたんだ」

 

視線を上げると出久くんとお茶子ちゃんを庇うようにして梅雨ちゃんが立っていた。その顔は辛そうで、疲れも見える。ギリギリ間に合ったけど走ってきたみたいな? 頑張ったのがわかる。私のことを蹴り飛ばしたのかな? それならお腹じゃなくて別のところにしたらよかったのに……頭とかだったらもしかしたら気絶させられたかもよ? ヒーローはここぞって時に判断が悪い。

 

「息を切らして、そこまでして助ける必要あるの?」

「お友達だもの、当たり前のことでしょう」

「はは、ヒーローだからじゃないんだね」

 

ヒーロー。人を救う人たち。それが職業になって、多くの善なる人を救ってくれる。なら、悪にならざるを得なかった人たちを救ってくれるのは誰なんだろう。誰が私たちのことを救ってくれるんだろう。

 

いじめられて、引きこもってたスピナーくんを。

 

代々続く怪盗の家系に生まれたコンプレスさんを。

 

自分の性別と心に悩んでたマグ姉を。

 

家族から貰えなかった愛に苦しんで復讐に走った荼毘くんを。

 

不運にだけ恵まれて戻れなくなっていった仁くんを。

 

その個性が全部を壊してしまった弔くんを。

 

 

ヒーローに裏切られたゆずくんを。

 

 

誰が、救ってくれるの?

 

「だから、嫌いなんだよヒーロー……君たちが救う人だけが救われるべき人なんだもんね。君たちが手を伸ばせない人は救われるべき人じゃないんだもんね……」

 

暗がりでいまだに戸惑っている人々に。闇の底で今も孤独に怯えている人たちに。今も暴力と差別とドラッグに狂うような人たちに、手を差し伸べてくれる人はどこにいるの? 知らなかったら助けてくれないじゃん。声を出せない人に何もしてくれないじゃん。

 

目の前のものを救うのに精一杯な君たちにはわからない。闇から救ってくれる本当のヒーローのことなんて。

 

「ゆずくんは、私の側じゃないとダメなの。私もゆずくんのそばじゃないとダメなの」

 

だから救いたいし、救ってほしいの。

 

「私たちは、どうしようもない人間の成れの果て……おかしくなったその先で、私たちは自分たちだけを愛し合うんだよ」

 

私はもうこれ以上、何も失いたくないから。だから、他の何も失わないように、今目の前にいるヒーローを殺して、必ず弔くんの作る世界を実現させる。私たちが幸せになる場所を作るためには犠牲が必要なんだ。今まで、大多数の人が幸せな世界を演出するために犠牲にされてきた私たちが幸せになるために。全部を壊すのだ。

 

「トガヒミコ!」

「…………」

「分かり合えるはずなんだよ! 私たち!」

 

お茶子ちゃんが何かを叫んでる。

 

でも、知らない。私は私の当たり前を。生きていきたいから。

 

「分かり合えるわけないじゃん」

 

あの子が笑っていられる世界で、その隣にいたいから。それ以外は、いらない。

 

「ゆずくんはよく言ってる。過去は消えないって……ねぇ、ゆずくんがどれだけ辛かったのか考えたことある?」

 

彼の笑顔に救われてた。彼の言葉に救われた。

 

彼が何を考えているのかなんてわからない。彼がどんなことをしようとしてるのかなんて知らない。きっと、世界の全てが狂うような何かを行おうとしていることは理解している。だけど、きっとそれが私の世界なのか、この世界なのかわからない。

 

私にとって、彼はそのくらい大きな存在だから。私にとって、彼が世界だ。

 

「デクくん! 早く行って! このままだとトガヒミコのペースに飲まれたままだ!」

「でも……!」

「緑谷ちゃんがいなきゃ死柄木は止められない……だから、早く行って、緑谷ちゃん」

「……ごめん、頼むね!」

 

 

「……逃げられると思ってるんだ?」

「逃してもらうよ、デクくんが今は世界で一番強いヒーローだから!」

「好きな人が離れていってなんとも思わないなんて、それでも恋する乙女なの?」

 

お茶子ちゃんの拳に合わせてナイフを沿わせる。少しだけ肌が切れるけど、すぐさま横から飛び出してきた梅雨ちゃんが私の手からナイフを弾き飛ばした。カエルの個性、かあいいけど、今はとても邪魔。

 

「あの子が逃げたら、ゆずくんが仕事するのに邪魔になるなら、逃がさないよ」

「これだけ距離が離れれば追いつかないわ」

 

梅雨ちゃんが私の一挙手一投足を睨みながら言った。何をするのか気にしてるんだろう、私が何かしたらすぐさま止めるつもりなんだろう。でも、そんなの関係ない。

 

「逃がさない。私が、あの子から本当の笑顔を取り戻す」

 

最近はいつも作り物の笑顔だ。本当に笑ってる顔を見てない。いつもヘラヘラニヤニヤしてるのは、本気で笑ってるときより、顔に貼り付けた笑顔の仮面で威嚇してるだけ。

 

剥き出しの欲望を、その目的を知られないため。

 

「私は、好きな人の姿になったとき、個性も使えるようになるんです」

 

出久くんが見えなくなる前に試験管に溜めた血を飲み干す。梅雨ちゃんが止めようと舌を伸ばすけど、それよりも飲み干す方が早い。

 

個性『変身』

 

私が悩んできたもの、同一性、その元になる個性。それを癒してくれたのが彼だったから。私たちは間違ってないって言ってくれたのが彼だったのだから。

 

ゆずくんの代名詞は、不義遊戯。

 

悪戯に、手遊びで、全ての事象をひっくり返す。

 

勝利の女神に無理矢理苦汁すら飲ませる技。

 

「不義遊戯!!」

「!?」

 

足元の手榴弾のカケラと出久くんを入れ替える。いきなり見えてる景色が変わって困惑する彼の脇腹に蹴りをぶち込んだ。

 

ゆずくんの言う通り、思いっきりたっぷりの怒りと憎しみを込めて。

 

 

そうすれば、黒い稲妻が光るから。

 

 

全てを破壊する一撃だ。

 

「あがッ」

「デクくん!!」

 

彼がまるでサッカーボールのように飛んでいく。すごい、周りがよく見えるし、体の調子も良すぎる。吹き飛ばした出久くんとお茶子ちゃんの位置を入れ替える。出久くんがガードしたけど関係ない、その上から殴り飛ばした。

 

黒い稲妻は、何度も弾ける。

 

「ぐゥ……!!」

「逃すわけねぇだろーが。ちょっとはその貧相な頭で考えろよ馬鹿」

 

ほら、君たちにはヒーローとしてのゆずくんの方が印象強いんでしょ? 私たちと一緒にいる時間を削ってまで、彼はその本性を隠して君たちのことを欺いてきたから。

 

だったら、私がゆずくんとして、君たちに絶望をあげる。

 

「ほら、緑谷。お前の相手は俺だろ?」

 

本当のゆずくんを見せてあげることが、私にできる優しさだと思うから。

 

「呪い合おう。そのために生まれてきたんだろ。俺たちは」

 

彼を助けるのは私だ。

 





こんにちは。波間こうどです。

楽しんでいただけていますか。テンポと今後のことを考えて今差し込むしかない話なども過去回想的に挟ませていただきました。やったぜ。いい顔してる♡

この物語も終盤へと差し掛かり、筆が乗ったり乗らなかったらしながら進めています。ラストスパートになります。皆さんの言葉や応援が励みになりますのでたくさん感想や評価してくださいね。

これからも頑張ります。よろしくお願いします。

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