個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア!   作:波間こうど

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この作品が完結したら舞妓譲葉の設定を出そうかしら。


★曇らせよりも大事なもの

 

 

【挿絵表示】

 

 

ラスボス先生殺しちゃいましたよー!(大声)

 

僕はあまりの快感と達成感に声を大にして叫んでいた。いや、気持ち良すぎるだろ。どんだけ気持ちいいかと言われたら初めての経験をしたときくらいに気持ちがいい。あれに勝るものってないじゃない? 緊張とか興奮とかないまぜになりながらも最高の経験ができるじゃない? そういう感じのあれね。あ、わかんない? そう?

 

いやー、いい顔してくれて余韻がすごいや。僕マジで興奮しちゃったもん。漲る快感で……飛ぶぜ……このタイミングとは思ってなかったけど、まぁ、実際すぐにでも殺してやらないと僕のチャート上マズ味もマズ味だからね、仕方ないんだけどね。いや! チャートなんて原作準拠のやつは完全にぶっ壊れたのでどうもこうもないんだけど!! チャート? あれ? 数学の参考書? 僕はやっぱり青派。青色やっとけばいいよ。いつだって青色は澄んでるから。

 

さて、どうしようかなぁ。ここからは完全にオリジナルプランなんだよね。エンデヴァーはそこでぶっ倒れてるけどすぐ起きてくるだろうからここで荼毘くんを待ってるのは構わないっちゃ構わないんだけど……うーん、どれが一番みんなのことを曇らせられるかなぁ……というか、曇らせはしてるけど、曇ってる顔を見ることができるかなぁ……

 

あ、曇らせるのと曇らせて曇ってる顔を見るのは意味も何もかも「違う」からね? みんなはちゃんと覚えておくように。

 

「……ぅ、」

「あ、ごめんごめん。まさかNo.1が地べたに寝転がってるとは想わなくて……日光浴?」

 

空は最高に曇り空なので皮肉にも程があるセリフだろう。こういうセリフって効くよね。プライド何度も折られたとしても、貴方はヒーローなんだから。ほらほら、頭をあげてちゃんと僕に曇った顔を見せてくれなきゃ嫌だよ? ……って、あぁ! 僕が頭踏みつけてるんだっけ。ごめんねエンデヴァー。これじゃあ顔があげられないよね? でも一生懸命あげないと、君は努力でNo.1になったんでしょ? なら頑張ってくれなきゃ! 君のことを応援して、君のことを見ている人がこんなにもいるんだよ? なのになんで頑張れないの? 今こそ努力(エンデヴァー)って名前をつけた浅ましい君の本性の本領を発揮しなくちゃいけないところなんじゃないのかな? 頑張って♡

 

「あ〜……手が汚れたんだけど」

 

僕に反抗してきたヒーローたちを返り討ちにした際に汚れた手をそこで倒れているヒーローのマントで拭う……ってこれも血まみれじゃん! まともな布持ってる人いないの? おいおい。なんでみんな血まみれなんだ? あ、僕がしたのか。ごっめーん♡ でもみんなが弱いから悪いんだよ? 折角始める前に「僕は味方じゃないよ」って宣言してあげたのになんでこんなに簡単にボコボコにされるの? みんなもしかしてあれ? 油断してた? それともただただ雑魚だっただけ? この世界は数よりも質なんだからちゃんと僕のことしっかり見てないと。発動条件までわかってるのに僕相手に遅れ取らないでよ。(なお、不義遊戯は多対一に強い術式です)

 

さて、残ってるヒーローはひぃ、ふぅ、みぃ……結構いる? 残ってるヒーローはそれなりに頑丈で強いんだよね。なんか何割か削ったつもりだったのに割とみんな元気だし……ここで転がってる何人か以外は割と使えるヒーローで固めたのかな? いつの間にか脳無制圧されてるし……ヒーロー飽和社会様様ってやつだね。あ、エンデヴァーも転がってるんだった♡ 使えな〜い。

 

「まぁいいや。どうせまだ戦闘あるでしょ。諦めが悪いのが君たちだもんね」

 

だからこそ曇らせが映えるんだけども。君たちが頑張れば頑張るほど、苦しめば苦しむほどに僕としては興奮……もとい興奮するんだけども、それは君たちが頑張って絶望に立ち向かえば向かうほど本当の絶望に心をおられる姿がまさしく芸術的だからだ。ほんと、奥が深いぜ曇らせってやつはよ。僕ほど曇らせを探究した人間もいないと思うから、ここまで奥が深いとびっくりしちゃうくらいなんだけどもね。やっぱり曇らせは最高だぜ。古事記にも書いておいた方がいい。今から書こうか?

 

みんながズタボロで僕の足の下でエンデヴァーが息を荒らげ、そこで個性を奪われたホークスがかろうじて残った羽で頑張って体を支えて立ちあがろうとしているのを尻目に、僕は僕の目的のために仕事を始めることにした。僕はコツコツと物事を積み上げられるタイプなのだ。出久くんと同じね。努力家タイプの人間なの。

 

「さて……まず、しなくちゃいけないことから片付けようか」

 

最初にしなくちゃいけないことはみんなの場所の確認。こういう面で『サーチ』ってすっごい便利個性だよね。どんだけ離れていてもみんなのことわかるもんね……まぁ、魔改造してあるからズルだし、そもそもサーチ本来の使い方よりも幅広いんだけどそれは置いといて……とりあえず曇り顔を見たい人につけたサーチは見つけて……お、出久くんと弔くんがどんぱちしてる。原作通りかな? ふんふん。ヒミコちゃんから逃げ切ったんだ。やるね。ヒミコちゃんマジで激昂してたから逃げ切れるのか怪しいと思ってたよ。

 

で、かっちゃん……は、ロストしてる? マジ? でもそうだよね。出久くんと弔くんがドンパチやってるってことはかっちゃんの出番は一旦終わってるよね? 死んだのかしら。今がギリギリ死んでるか死んでないかの瀬戸際ってことかな? エッジショットが頑張ってるところか。うわ〜、かっちゃんの死に顔めちゃくちゃ見たいんだけど〜、見れないんだよなぁ〜! 本来なら見るつもりだったのに!! なんなら「それはダメだろォォォ!」っていう物間くん最大の名台詞(これ以外に曇らせチックな名台詞はない、無能、カス、なんのために生きてるの?)を是非とも拝聴したかったんだけどそうもいかないよねぇ……だけど、仕方ないね。僕が油断したのが悪いんだから。こんなところに分断されるとは思ってなかったんだよねぇ……ま、仕方ない。ラスボス先生殺したし、完全独自ルート走るしか……

 

どうしようかと悩んでいると、僕の前で黒いモヤが開いた。

 

「お、黒霧さんだ」

 

ということはトガちゃんたちが来る感じかな? スピナーくんたちのところも観察したいけど……まぁ、そっちは最悪どうでもいいっちゃいいかな? 彼の一番の顔は多分この大戦終わってからになるだろうし……刑務所での彼の顔を見るのが一番いいと思うの。

 

というか、もうそんなタイミング? お、久しぶりにトゥワイスさん見たな。いや、あれはトゥワイスさんというかトガちゃんなんだけど。あ、荼毘くんだ。もうボロボロだけど……まぁ、それが君のしたいことだもんね。僕はそれを肯定するって言ったし好きにしたらいい……って! あ! 君の獲物僕が踏みつけてるじゃん! ごめん足どけるね!! 3秒ルール3秒ルール!! 大体3秒ルールって言葉言い訳のための言葉でしかなくて3秒以上経ってようが経ってなかろうが免罪符にする力しかないからいいよね。とてもいい言葉だと思います。食べ物を粗末にしちゃいけませんよ! 曇らせは生きるために必要な栄養素が入ってるから完全栄養食。

 

うーん……どうしようかなぁ〜。今から見たい曇らせってどれの方が見たいかな? アレとアレは確定として、アレはどうしようかな? というかアレは? あ!! 黒霧さんいるってことは相澤先生見れてないじゃん! アイツ毎回僕の曇らせの魔の手から逃げてない? ナメてんの? 物間くんは顔面地面に打ち付けて気絶してるのかな? どうなってるんだろ。無様も無様なみんなをちゃんと確認しないと僕は生きていけないよ〜! 早く曇らせを見せてくれ! 頼む!! 僕に曇らせを拝ませてくれ……!!

 

『サーチ』を使ってたくさんの人を確認しながら今後の展開を考えていく。今から完全に自分で組んで曇らせのために奔走する突発的なアドリブ勝負なのはわかってるんだけど、ここからどういう動きをしたらみんなの曇らせを見ることができるのか……考えろ考えろ。誰が一番曇ってくれる……?

 

「は〜、オリチャー走らないといけないとしても、迷いが生まれる〜! 今から何時間かかけて現状を整理した────」

 

そこで僕は二つの輝きを見た。

 

いや違う。正確には、二つの個性の連なりを『サーチ』が捉えたのだ。

 

個性の輝き、重なるようにして合わさる、眩い輝き。ヒミコちゃんと同質で、異質なその輝きの意味は──。

 

「…………………………………………………………は?」

 

僕には理解できた。いや、むしろ僕にしか理解できない。一人の人間に二つの個性が宿っている意味を。僕だけが理解できるのだ。僕がこの個性を使いこなしているから。僕がこの個性を魔改造しているから。僕だけがこの事の重要性を理解しているのだ。理解できているのだ。

 

…………って、おいおいおいおい! 冗談だろ!? 冗談はよしてくれよ!! なぁ!! 嘘でしょ? たった数回だよ? いやでもそういうもんなのか……?

 

「マジ? いや、えー……うーん…………」

 

うーわ。これは予定変更だ。僕はどんなことをしても、したくないことが一つだけあるのだ。絶対にないと思っていたから、絶対に有り得ない事象だと思っていたからしなかっただけで、考えの外に置いていただけで、僕が絶対にしたくないことがあったのだ。

 

人なんて殺すし、拷問だってお手のものだ、みんなが曇るのなら全部めちゃくちゃにして、踏み躙って、罵って、叩き潰して、終わらせてみせるけれど。それでも、これだけは絶対にしないと決めていることがあるんだ。僕の原点に、オリジンに関わることだから。何がなんでも絶対に手を染めないと思っていることがあるのだ。

 

「こんなことするつもりじゃなかったのに!!」

 

差し当たっては()()()()()()()()()()()んだけど!! クッソ!! 気づいてるのか? いや、気づいてないのか? わかんねぇ〜!! でも、とりあえず捕獲するところから始めないと……!! ここで大事なのは話し合いだから……!

 

とりあえずこの騒動の中で上手くやり抜かなくちゃいけないことをうまくやり切らなくちゃいけないことを、理解して、把握して適切に処理していく、それが僕の今の仕事だ。とりあえずは曇らせのためではなくてそのために動かなくちゃ、こいつら全員無視して一旦離れよう。

 

曇らせを見るためにもさっさと降って湧いた仕事に取り掛かろうとして……そのタイミングで、足元が噴火した。

 

「!?」

 

噴火の火柱はトゥワイスさんの大群……に変身しているトガちゃんの四割ほどを燃やしていく。周りのヒーローの亡骸すらも飲み込まん勢いで火柱が上がった。荼毘くんがこっちに気づいたっぽいね。お父様から馬鹿息子へのラブコールだったりするのだろうか。マジで大人しくしとけや。つか足溶けたんだけど、どんな勢いで燃やしてるんだよガチで自重しろや。足無くなったんですけど?

 

「舞妓……! お前を止める……!」

「ゾンビかよ!! しぶといんだよクソ雑魚メンタル!!」

 

しかし、彼の目的は荼毘(むすこ)くんじゃなくて(ヴィラン)だったらしい。その瞳が未だに強い使命感を帯びてこちらに向けられる。しぶとい上に僕にラブコールなんてしてたら荼毘くんが嫉妬でブチギレるよ? ただでさえ執着心がめんどくさいタイプのファザコンなんだから。……執着心がめんどくさいタイプのファザコンってもしかして終わってる? 性癖がもうちょっとどうしようもないくらいまでに捩れちゃってるもんね、終わりだよそんなの……ところでなんだけど僕父親とか母親とか近親相姦系? 苦手なんだよね。なんかこう、僕が肉親にいい思い出がないせいなのかな。生物としての本能のせいなのかな? ちょっとそういう系の作品苦手。どうでもいい? そっかぁ……

 

「焦凍と約束したんだ……お前を捕らえると。A組のみんなと交わした約束なんだ……」

「轟〜? アイツと約束する理由がわからないんだけど。つーかアイツら自分で来れないからってわざわざNo.1使うのいい度胸過ぎるだろ。誤算なのは俺の方が強いことだけじゃね?」

「あの子が私を頼ってきたのは初めてだ。息子の友人に頼られるのも初めてなんだ……だから」

 

会話成り立たないんだけど。どうなってるんだ? 片腕欠損からの流血過多で意識が朦朧としてんのか? でも自分で傷痕焼いて無理矢理止血してるしな……は? そんなので無理矢理止血してんの本当にするやついるんだ? 馬鹿なのかな……つーか、その息子への愛情とか、息子の友達への義理立てを大事にするんだったらちゃんと荼毘くんに対しても優しくしてあげないといけなかったんじゃないですかねぇ? 今更何したって過去は消えないんだよ? 君の体にのしかかってまとわりつくものなんだよ。今更何オトウサンしようとしてるんだよムカつくなぁ。

 

「お前を捕らえるッ!!」

「だるいんだよDV野郎!!」

 

業火が僕の周りを焼き尽くした。体を翻しながらその焔を避けていくが、その分僕の目標との距離は離れていく。もう面倒だ。荼毘くんには悪いけど、ここでエンデヴァーのことを適当な僻地に転送してや……

 

「あ?」

 

そこで僕は初めて自分の体の違和感に気づいた。あれ? なんか右腕ないんだけど。右腕がチリつく。さっきの業火で燃やされてたか……! やっべ、全然気づかなかった……ッ!! 感覚鈍ってんのか? 痛覚が適切に反応してないんだけど……! バグった!?

 

「何故、お前がオール・フォー・ワンを討ち取ったのかは知らんが……」

 

エンデヴァーの目はまだ、死んでいない。

 

曇りなんて全て跳ね除けた太陽のような瞳が僕のことを見据えていた。

 

はぁ〜〜? 何その顔、さっきまでの曇った顔でいろって言ってんだろうがナメやがって!! 僕が不義遊戯できないからってナメてたらぶち殺すぞクソおじが。マジでこういうタイプの復活するヒーローが一番タチ悪い! ラスボス先生が言ってたところの「手負いのヒーローが一番恐ろしい」ってのはまさにこのことだね。ラスボス先生だって最後の方はエンデヴァーを認めてたくらいなんだから流石だって話さ。これが執念、轟炎司という男か。くぅ〜! 曇らせが映えるぜ全くよぉ!

 

「お前を止めるのは、今日の俺の役目でな」

「おいおい、初めて尊敬するぜ。クソボケが今じゃないといけないのか? カスが……!! 急いでるって言ってんだろうが!!」

「どうせ碌なことではないのだろう? 俺が必ず止めてやる。もうこれ以上、お前の好きにはさせん!」

 

歯軋りをする。イライラが収まらない。頭痛はぶり返してきて、腹が立って仕方がない。目の前の現状が、僕の行く手を阻む全てのことがムカついて仕方ない。記憶を思い出すときみたいだ。()がぐちゃぐちゃになって、()が顔を出してくる。頭がおかしくなってしまう。このままだとまた僕の大事なものが失われてしまう。それだけは避けなくちゃ、それは僕が僕じゃなくなっちゃうから。

 

僕にとって一番大事なことを邪魔する奴は曇らせに有益であっても殺すぞクソが。

 

「俺は!! お前を止める!!」

「加齢臭のするおっさんの相手してる暇ねぇんだ!! 退けよ!! ヒーロー!!」

 

腕に反転を施しながらエンデヴァーに吠えた。イライラが脳みそを支配していく。反転で治したばかりの脳みそにエラーが溜まっていく。僕の体が怒りに見舞われてしまう。僕の頭がどうしようもないほどのエラーを抱えてしまう。反転をしながらイライラを重ねる。自分のこの怒りに、憎しみに、呪力が増大していくのがわかる。

 

反転で治した右の拳に呪力を纏わせて、僕は地面を蹴った。

 

拳が、交錯する。

 

 

  × × ×

 

 

【ヒミコside】

 

さて、これからどうしたものだろうか。

 

デクくんが弔くんの方に行ったのは大丈夫。もう彼の大事な大事な幼馴染くんは虫の息なのが『サーチ』からわかってるし、彼が辿り着く頃には息の根は止まっているだろう。弔くんがまさかそこで手を抜くようなことがあるとは思えない。出陣前にわざわざ「何があっても余裕だ」って彼が言っていたのだから、心配すること自体がリーダーへの不敬だ。

 

ずっと爆豪くんにキレてたもん。その怒り具合はもう私たちに八つ当たりしてこなくてよかったなってレベルで、そういう怒りだったり憎しみが原動力になるような人なのは知っていたから、敵連合のみんなは何も言わなかったけど、彼の爆豪くんへの怒りは凄まじかった。ちょっと誰も茶化さないくらい。荼毘くんだって茶化さないくらいだったんだからすごいと思う。……いや、ゆずくんは茶化してたけど。

 

そんな弔くんを心配するのは野暮だから、今心配しなくちゃいけないのはゆずくんだ。今、ゆずくんが何をしているのかが気になる。彼は私たち敵連合の……あ、もう一個の方の名前なんだっけ……長すぎて覚えてないんだよね。まぁ、敵連合でいいか。うん、敵連合の軸である存在だ、敵連合に所属している人間の全てが彼のことを愛している。これは事実で、変わることのないことだと言えるだろう。彼のことを多くの人が愛している。彼のことを多くの人が認めている。それはいっそのこと、盲目なまでに。

 

だからこそ、みんなは気づいていない。彼の本当の行動理由。薄々は何か目的があるのは理解しているだろう。ただ、本当の行動理由にまで至っているのは私だけだと思う。きっと、弔くんすらもここにまでは至っていない。彼の本当の行動原理。

 

その行動理由に察しがついてしまうから、私はゆずくんが今何しているのかがなんとなくわかる。きっと、こちら側の利益として取り返しのつかないことをしているのだと思う。なんとなく、そんな気がする。作戦参謀名乗ってるけど結構当たり前というか、至って普通みたいにアドリブぶち込んではその場を掻き回したりする人だから……本当に自分の考えのためにアドリブすらできてしまう人間なんだよね。

 

そして、それが敵連合にとって都合が悪いことだったとしても、それを支えてあげるのが私たちの……私の仕事だ。なんとか彼の側に行ってあげたい。……そのためにゆずくんの血のアンプルをまだ使ってもいいんだけど、私じゃ『不義遊戯』を……『呪力』を完璧に使いこなすことはできない。

 

彼の個性はものを入れ替えるだけじゃない。いや、シンプルに類別するだけだったらそれで十分だと言えるけれど、それが全てではないのだ。何を入れ替えるのか、どのタイミングで入れ替えるのか、拍手のタイミングは? 入れ替えるときと入れ替えないときは何で判断する? 相手の行動は? 個性は? 強さは? 自分が何をしたら勝利条件を満たすことができる? その全てを並行で判断しながら、多対一の状況で相手を圧倒する。

 

こんな処理ができるのはゆずくんくらいのものだ。というか私には無理。そもそも個性を発動するのに原動力となる呪力を溜めないといけないからそう簡単に連発もできない。

 

この個性は欠陥品だ。激しい憎悪を心の内で燃やし続けているゆずくんだから扱うことができる個性なのだ。怒りや、憎しみや悲しみ……そういう負の感情を溜めることでだけ、この個性は入れ替えることができる。純粋なまでの負のエネルギーを個性へと変換させることができる。つまり常に怒り心頭で、憎しみを心の奥底で抱いてなければできない芸当だ。……そりゃ、デクくんも頭が割れるほどの憎しみを自分に向けているだなんていうだろう。その通りなんだ、ずっと煮えたぎっていた怒りや憎しみをぶちまける。向け続けるのが、彼の個性の特徴なのだから。

 

だからゆずくんのアンプルを使うのは最後の最後どうしようもなくなったらだとして……次に使えるのは仁くんのアンプルだ。

 

私の『変身』の個性で変身して、個性を使える対象は今の所2人。

 

ゆずくんと仁くん。この2人の個性は『変身』した後も使うことが出来る。私の大好きを形にすることが出来るのだ。

 

でも、仁くんの個性でこの場を切り抜けたとしてもゆずくんの場所にまでいくことはできないと思う。この島から出るための船をヒーロー側が島に残しているとは思えないし、「愚かな者たちの行進(サッドマンズ・パレード)」をしても血のアンプル的に個性が持つのは30〜40分……快進撃はここで終わっちゃう。ここだけを制圧してもゆずくんはおろか敵連合にすらメリットを与えることができない。それはまずい。私のしたいことから離れてしまう。

 

「トガヒミコ!」

「そんなにおっきい声で呼ばなくても聞こえてるよ。お茶子ちゃん」

 

この2人を倒す、殺すとブラフを張ったのはいいけど。いつまでも攻撃を避け続けるだけじゃダメだ。私の目的のためになんとかしてこの島を脱出しないといけないし、そもそも私単体じゃこの2人には勝てない。

 

当たり前だ。私の戦い方として、基本は隠密スタイル。普通のヒーローとかならそれなりに戦うことができるだろうけど、この二人は雄英高校に進学することができるほどの才能の持ち主で、ゆずくんが鍛え上げた存在なんだから、その状態で二対一になってしまっている以上、そう簡単には押し勝てない。というかお茶子ちゃんのマーシャルアーツだっけ? これが普通に強くて厄介。その上で梅雨ちゃんが保護色をしつつ周りから補助してくるから私は防戦を強いられることになるんだよね。

 

ここをなんとかしなくちゃいけないけど、そんなことよりも私の目的は遠い。敵連合の敵を殲滅すること。敵連合を守ること。それが私の目的なんだから邪魔になりそうなものは排除する必要がある。

 

「……スケプティックさん」

『なんだ気狂い。連絡してくるな! 今いいところなんだ!』

「私をゆずくんのところにまで連れて行って」

 

インカムに声をかけながら焦っている彼の声を無視して命令する。ゆずくんや弔くんの命令とは違う。私には人の上に立つ才能がない。

 

それでもいい。そうだとしても構わない。ただ上から踏み潰すみたいに、聞けって、なんとかしろって命令を下した。なんとかしろ。私の言うことを実行しろ。助けろ。それが私のできる命令。言うことを聞かせるというためだけの無理矢理な命令だ。

 

そんな無理矢理な命令を聞いて、スケプティックさんがなんだか少し面白そうに笑う声が聞こえる。純粋な笑みを浮かべた笑い声だ。私の言うことが面白くて仕方ないと言うような声。

 

『荼毘にも似たことを言われたよ。お父さんのところに連れて行けってさ』

「?」

『お前ら似てるよ。丁度いいタイミングだって言っておこうか』

 

何やら会話になってない返事が聞こえてくる。首を傾げようとしていると目の前をピンクの物体が横切った。……あ、梅雨ちゃんの舌か。びっくりするからやめて欲しいです。ナイフを這わせようとすると無理矢理引っ込められた。舌切りスズメみたいでかぁいいと思うから切ったらいいのに。

 

「どこにも行かせないわ。なんのための分断だと思ってるの」

「ゆずくんと弔くんが揃ったら困るもんね? みんなは“それ”を最悪だって言ってるもんね」

 

スケプティックさんの言ってることに気づいて私は仁くんのアンプルを取り出した。それをぐびっと飲み干しながら、後ろに暖かい……黒霧さんを感じる。

 

「だったら私たちの目的はそれを達成することだよ。そうすればきっと、全盛期のオールマイトとスターを相手取っても負けない私たちの救世主が現れる」

 

またブラフを張る。こうやってみんなには私の本当の目的を伝えない。本当の目的なんてみんなには理解できないから。私が大事に思っていることはこんなことじゃない。私の目的はこれじゃないってことを。みんなは知る必要がない。

 

「トガヒミコ! 待って!」

 

黒霧さんに包まれながら私は体が仁くんに変わっていくのを感じていた。目の前でお茶子ちゃんが叫んでいる。その顔は、私を説得しようとしているようにも、私に純粋な想いを伝えようとしているようにも取れる。

 

「私! まだ貴女と恋バナしてない!!」

 

………………恋バナ。

 

ふふ、ごめんね。そんなの出来ないんだよ。私たちはお友達になんてなれない。もう、何もかも分たれてしまった。私には彼だけが必要で、それだけがどうしようもなく必要で、だから……もう、いいんだ。恋なんて、その次元に私はもういないんだ。

 

私の心に渦巻く感情は、愛だ。

 

「できたらよかったね。バイバイ、お茶子ちゃん」

 

辺りが黒い霧に包まれる。包めば、ひとつだ。

 

瞬きの刹那、ドクン、と鼓動が大きく聞こえた気がした。

 

 





皆さん読んでくれてありがとう。波間です。

皆さんの評価が嬉しいと言った側からめちゃくちゃ評価していただきありがとうございます。マジで嬉しいのよ? ガチで。この物語を書いていて読者の方のコメントや感想が見れるのは本当に支えになるんです。作品を書くって素晴らしいね。

んこにゃさんのイラスト、皆さんの声、評価がどこまでも僕のやる気になってます。これからも頑張り続けますので、応援のほどよろしくお願いします!! 頑張るぞ!!

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