個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア! 作:波間こうど
『生きがい』とまで言ってくれる皆さまのおかげで僕は書き続けることができます。本当にありがとうございます。たくさんの応援、感想、全て読んでいます。励みになります。
さて、そういえば原作にない完全オリジナルストーリーとかどうですか? 需要ありますかね?
それと今回は皆さん過剰摂取にならないようにお願いします。
「知らない天井だ」
気絶から目を覚ましたら言いたい言葉ランキング堂々の一位(僕調べ)の言葉を呟きながら僕は体を起こした。どうやらここは病院のベッドのようだ。なんなら個室かな? まぁ、今の僕は敵事件の圧倒的な英雄だろうし、特別待遇はおかしい話じゃない。
うんうん、生きてて何よりだ。いや、死ぬような傷じゃないんだけどさ、死なないように弔くんたちと調整してあるし。血が出ないような崩壊の仕方とか、色々試してくれたらしい。耳郎ちゃんと僕が出血多量で死ななかったのはそのおかげだ。
とりあえずナースコール用だと思われるボタンを押す。トイレしたいけどなんせ片足がないからね、動けないんだよね。ナースコールに気づいた人が急いで来てくれた。
ナースさんに頼んで用を足させてもらって(どうでもいいかもだけどめっちゃ恥ずかしいよね、尿瓶)から、今の状況について、ナースさんに確認した。
僕はどうやら一日眠り続けていたらしい。これは恐らく怪我のショックやストレスを体が処理し切るのに時間がかかったからだそうな。今日は臨時休校で、大事をとって明日も休校。明後日から普通に授業が行われるらしい。原作では休校は一日だけだったかな? まぁ、片足無くした生徒がいるんだし、欲を言うのならもっと休校にしてしまいたいだろうけど、雄英がヴィランの襲撃によって生徒に大怪我を許し、その上休校を続けるなんてことは世間体のためにも許された物ではないのだろう。大変だねぇ、ヒーロー。
あのあと、僕が呑気にぶっ倒れている間にブチギレオールマイトによって敵連合の脳無はぶっ飛ばされ、敵連合は応援に駆けつけたヒーローたちによって追い返されてしまったとのこと。これによって僕は、プロヒーローですら何もできなかった状態からたった一人でオールマイト到着まで持たせた英雄になるわけである。結果は上々と言えるだろう。概ね計画通りだね。
喉が痛くて固形物が喉を通らないので、ゼリー飲料をチューチューしていると、病室のドアがノックされる。入室を許可すると、そこにいたのは包帯でグルグルになったミイラマンな相澤先生、それからリカバリーガールと校長先生とオールマイト(マッスルフォーム)だった。多くね?
「相澤先生、無事じゃなさそうですね」
「お前よりは軽傷だよ」
おっと、これはユーモアに溢れた皮肉。まぁ、僕の方が怪我の箇所は少ないけど、度合いは酷いからね。四肢欠損か包帯ぐるぐる巻きのどっちの方が嫌かと言われればまぁ、四肢欠損だろうし。元に戻らないからね、仕方ないね。
「先生方、お見舞いありがとうございます。ベッドから立ち上がれなくてこの様な体勢で申し訳ございません」
「構わん、何も今のお前に無茶をさせようなんて思ってない」
「こういうときこそプルスウルトラでは?」
「乗り越えるのに時間がかかる障害もあるさ」
「右足がない事とかですかね?」
僕の言葉に相澤先生が口を噤む。クッソが、せっかくパンチ打っても顔が歪んでるかどうかワカンねぇミイラマンじゃ味が薄いな‥‥ただ、この苦々しい雰囲気は嫌いじゃないよ。
「今回のお前の行動は教師の言葉を無視しての行動だ。危険で、実際にお前は大怪我している。とても褒められた物じゃない」
相澤先生が備え付けの椅子に腰をかけながら僕に向かって話しかける。そう言われればそうだよね。僕がやった行動って実際は先生の言葉を無視して犯罪者に突撃していったって事だし。結果大怪我までしてるし、雄英側からしたらいい迷惑だろう。
「ただし、お前がいないだけで被害はもっと甚大だったかもしれない。少なくともお前は俺にとってのヒーローだよ、ありがとう」
「‥‥ありがとうございます」
いやぁ、自分から怪我してるし、これも計画だからなぁ、なんかアレだね? こそばゆいね? あと、もっと曇れよ。僕が得しないじゃん。お礼より得をくれ。
「舞妓くん! 君がいたお陰で雄英にヴィランが襲撃したという大事件を撃退することができたのさ! 本当にありがとう!」
校長がオールマイトの肩に乗りながら僕のことを高く評価する。ありがたいねぇ‥‥恥ずかしいけどねぇ‥‥
「いえいえ、オールマイトにも言いましたが‥‥ヒーローになりたいので」
「もう舞妓少年は十分にヒーローさ。義足のヒーローも雄英にはいる。君はトップヒーローになる素質がある」
「ふふ、オールマイトの後継ってお墨付き、貰ってもいいんですか?」
揶揄う様に言うとオールマイトがあたふたしながら「そ、それは!」と否定しようにもどうしよう、という反応をした。後継は出久くんだもんね。わかるわかる。まぁ、これも将来的には曇らせに使える内容だし、いつか言うつもりだったそれを早い段階で言えたのは収穫かな。
「あ、僕って足どうしたらいいですか? そろそろ体育祭ですよね?」
「そうだね! 義足は生活用の物ならすぐに用意できるのさ! ヒーロー活動用のものとなると少し時間がかかるが、好きにカスタマイズできる‥‥体育祭には間に合わないが要望は聞いておくのさ!」
「そうですね‥‥僕は決定力に欠けるので攻撃力が高めのものだといいですね‥‥その辺りも詰めておきますね」
うん。予想外に僕の弱点を強みにできるかもだね。転んでもタダでは起きないとはこの事だ。まぁ、僕のこれに関して言うのなら転けたように見えるけど、自分から前のめりに行ってるからね! 事故じゃなくて故意だわ。僕はこの後にとびきりの曇らせを残してるからね。お得しかない。なんだこれ、無敵か?
「‥‥君は、その‥‥」
なにやらオールマイトが口を開く。これは‥‥‥
曇らせの機会か?
「足がなくなって、何故絶望しないのか? ですか?」
「‥‥‥」
「しましたよ。何度も」
オールマイトの顔が歪む。ふふん、いいね。いつも全部救っているみたいな顔して、平和の象徴なんてあだ名で呼ばれているアナタが! 無個性の少年に惹かれて、自身の個性を明け渡した貴方が! 貴方が救えなかった少女を救った少年が絶望したと告げられた曇り顔はなかなか良いものである。65点くらいかな? トゥルーフォームなら尚良かったかも。
「僕は長らく無個性だったので、自分が正しいと思ってきたことを今までたくさんしてきましたが、それでも、ヒーローになるには個性がいる‥‥」
できるだけ、ゆっくり、人に語る、聞いている人に届く様にわざわざトーンを下げる。
「だから、受験で個性が使える様になった時は、死ぬほど嬉しくて。だから、この個性は人のために使うんです」
貴方に言っているんですよ、オールマイト。
貴方が希望を見出した出久くんと、ラスボス先生に自分から身を捧げた僕。同じ無個性で、こうも違うという設定は‥‥
「絶望するのは、あの10年だけでいい」
この対比は、いつか貴方が知ったときにとんでもない曇らせになるでしょう?
× × ×
この後、お医者様がやってきて、リカバリーガールの尽力もあり、ただ、義足をつけて歩くだけならすぐにでもできるということで、局部麻酔の手術を行なって歩くくらいならできる義足をつけた。片足だったのと、膝が残っていたからこの程度で済んだんだとか。本来ならリハビリがいる、苦労するらしいが‥‥まぁ、歩けば慣れるだろう。
と、思い、試しに歩いてみたが、普通に歩けた。お医者様曰く、このレベルでスラスラと歩行できるような患者は30年医者をしてきて初めてらしい。結構覚悟決めたのに‥‥僕の覚悟超返して。
はっ‥‥! もしかして僕のみんなに早く会いたいって気持ちが強かったから‥‥‥? なんてこったい‥‥A組のみんなに会いたいよ‥‥
響香ちゃん含めていい顔してくれるんだろうなぁ。このときのために僕は一生懸命みんなとの親愛度を上げてきたんだし。
というわけで、明日から学校に行ってもいいですか? と雄英に電話をすると「来れるなら来い、時間を無駄にするのは合理的じゃない」との言葉をいただいてしまった。我らが相澤先生である。どうでもいいけどもう出勤してんの? ヒーローは万年人手不足なの? ヒーロー飽和社会なのに? まぁ、優秀なヒーローって少なそうなイメージだけどさ。
それじゃあ‥‥行くか。曇らせの楽園に!
× × ×
「‥‥お前、本当に来たのか」
「はい、来れたので」
合理的でしょ? と首を傾げてみると、俺が悪かったな、みたいな顔で相澤先生がため息をついた。失礼じゃないですかぁ〜?
「‥‥いきなりお前がいくのは説明に時間が取られて合理的じゃない。俺と一緒に教室入るぞ」
「了解です。その間はどうしてればいいですか?」
「‥‥今から職員室の外に出すのは見つかる可能性があるからな、ここにいていい」
「いいんですか!?」
これは思わぬラッキーだな‥‥今のところ話したことがない先生とかいるし。その手の先生とお話しして、曇らせるためにも親愛度あげておきたいなって思ってたところだったんだよね。思わぬ収穫、棚から牡丹餅である。
「ここにいるのは構わんが、他の教師に迷惑をかけるなよ」
「あはは、爆豪じゃないんですよ?」
職員室を見回して、幾人かの先生を見つける。プレゼントマイク先生とかは英語の時間を持ってくれてるし、現代文を持ってくれてるセメントス先生とかは話したことあるし、ここは話したことない先生と話したいが‥‥あ、オールマイト(トゥルーフォーム)だ。
「おはようございます! 初めましてですよね? 舞妓と言います! よろしくお願いします!」
「!? 舞妓少年!?」
「はい? あれ、会ったことありましたか?」
「い、いや! 初対面だがね! 他の先生に話を聞いていてね!」
わちゃわちゃと僕の前で手を振りながら否定するオールマイトに内心苦笑する。いや、その否定の仕方流石に昨日も見たし、誰かわかると思うけど‥‥まぁ? 僕はできた生徒なのでここは知らないふりをしてあげよう。‥‥そっちの方が曇らせのときに面白そうだし。
「舞妓、うろちょろするな」
「相澤先生が居ていいって言ったんでしょ」
「他の教師の邪魔をするなとも言ったぞ」
それはそう。揶揄うのが楽しくてね。
「すいません‥‥、それじゃあ僕は相澤先生の席の横で正座しているので! また今度お話ししましょう先生!」
「あぁ、うん。またね? 舞妓少年」
「おい、正座はやめろ」
僕のテンションに終始押されて動揺しっぱなしのオールマイトを置いて相澤先生の席の側に正座した。ガチで座るなよ、みたいな目で見られたので相澤先生にこう(大人しく)してろって言われました。と他の先生に触れて回る。相澤先生が針の筵になったので僕に椅子を貸してくれた。いい人だね! 揶揄っただけだけど大変満足でした!
ちなみにお前は宿題を3倍にするって言われました。ふふ、割に合わないかもしれない。
× × ×
どこか遠くで始業を告げるチャイムが鳴る音が聞こえる。いや、校舎中に響いてるんだろうけども。なんか遠くに聞こえるくらいに今ドキドキしてるってことね。すごい曇ってるんだろうなぁ‥‥、期待しかないや。
「怒られますかね」
「確実にな」
相澤先生は受け止めろよ、と一言だけ口にしてから教室のドアを開ける。
「お早う」
「相澤先生復帰はえぇー!!!」
教室がドッと湧き上がる声が聞こえた。うんうん、いい声である。本当に‥‥
ここから落としがいのあるいい声だ。
「おい、何つっ立ってるんだ。早く入れ」
「え?」
騒つく感覚、誰かが息を呑む声、それを聞きながら僕は教室に足を踏み入れた。
「みんなおはよ」
「‥‥‥」
みんなの目線はまず、僕の首元に向かう。まぁ、タートルネック使って隠しているけど包帯でぐるぐる巻きだし、跡も残るって言われたからね。そりゃ気になる。そして‥‥右足にたくさんの視線が集まって、皆が目を背けた。まぁ、長ズボンだし、わかんないだろうけどね! みんなが顔を逸らした理由は普通に僕に盗み見てることがバレたからだろう。そのみんなに視線を合わせてみる。
そこは極上の曇らせの楽園だった。
何その顔! みんな何!? え!? 僕のこと好きすぎるでしょ! うわぁ〜! まとめてそんな顔が見れるなんて感激だよ! みんなの心の柔いところ! みんなはまだ高校に上がりたての子供で! ヒーローの夢を見ていた金の卵で! なのに! 僕一人に守られちゃって! その僕はヒーローを全うした上に、大怪我まで負ってるんだもんね!! そりゃその顔するよね! はぁ〜??? なんでまとめてくるかなぁ〜? カメラ持ってなかったことが悔やまれるいいシーンだよ! 本当にさぁ!! ヤベ、みんなに何か言わなきゃ‥‥でも口開いたら今大声出ちゃうって! 僕は供給に対して大声を上げるタイプのオタクなんだよ!!
「舞妓‥‥」
「なぁに? 響香ちゃん」
ガタン、と席を立ってゆっくりと耳郎ちゃんが近づいてくる。おいおいホームルーム中だぜ? あと、今の僕にそんなに近づかないでほしい。声出るから。今触られるだけで誰も聞いたことがないレベルの大声出るから! 相澤先生! 止めて! 早く止めて!! 僕のために!!
「ウチ、ウチ‥‥謝らなきゃって」
「何をさ、謝ることなんてある?」
「だって、ウチのせいで足が、ウチが油断したせいで‥‥」
「油断なんてしてないよ、相手が上手だっただけ。大体雄英に侵入する様な奴らだよ? 油断してたらもっと怪我してるって」
「でも‥‥!」
「あのね」
耳郎ちゃんが何かを言う前に肩に手を置いてその先のセリフを止めた。彼女の瞳が潤んでいるのがよく見える。うわぁ〜、可愛い〜。
「僕は、僕ができることで、ヒーローになるためにできることをしたんだよ。友達をさ、僕のことを気にかけてくれて、僕と話すことが多い女の子の友達、そんな子を助けてあげたかったんだよ」
できるだけ、曇らせる。みんなとは違う。全てを抱えて怪我した僕だけが唯一のヒーローなんだってことを教えてあげるみたいに笑えば。
「ごめんね、じゃなくてありがとうで良いんだよ、響香ちゃん」
「うぅぅ〜‥‥! 舞妓ぉ‥‥!」
泣き顔も可愛いなぁ〜、なんて思っていると、耳郎ちゃんが泣きながら僕に向かって抱きついてくる。後で恥ずかしくなるだろうけどいいんだろうか‥‥まぁ、僕は可愛い子に抱きつかれて後で照れ顔まで見せてくれてで役得しかないわけなんだけどもね。いやぁ〜、いいね。僕が悪いのになんかこんなに得しちゃってごめんね?
チラッと目線を教室内に向けると、そこには鬼の様な形相をしたかっちゃんがいた。なに? 怖い怖い、他の子はみんな曇った顔してんのになんで一人だけそんな顔してんの???
「おい、女男てめぇ‥‥足、なくなってヒーロー科辞めるとか言うつもりじゃねぇだろうなぁ?」
かっちゃんのその言葉に周りがざわつく。うわぁお、そんなに直球でくるとは思ってなかった。
さて、どう答えようか。どう答えたら曇るかな? こんなに過剰摂取しておいてアレだけど貰えるなら曇らせなんていくら貰ってもいいと思ってるからね、僕。まだまだもらえそうなら曇らせていきたい所存ではあるんだけど‥‥
「ハハハ、爆豪もヤキが回った? そんなわけないじゃん」
「あぁ!? 回ってねぇわ死ね!」
できるだけヘラリと笑う。ここも伏線にしてやるよ。僕は策士だからね。
「僕が一番ヒーローになりたいんだ」
それは、とびきり、ゆっくり吐き出した、誰の心にも突き刺さる棘。いつの日か僕の本当の姿が分かった時に芽吹く種、僕の全てがこもった、本気の曇らせの種だ。
「なら、舞妓はウチのヒーローだ」
「‥‥へ?」
僕が種を植え切ると僕の頭の下でそんな言葉が聞こえた。え? なに? いきなりすぎて反応に遅れたんだけど‥‥
「ウチのこと、助けてくれた、ヒーロー『ユズ』がウチにとってのヒーローって話!」
「透ちゃん! こんなところで告白されたんだけどどうしよう!?」
「なんでこっちに振るの!?」
「出久くん! 助けて! 僕このままだと響香ちゃんのこと好きになっちゃう!」
「耳郎さん、ゆずくんから離れよっか」
「舞妓お前ばっかり女子といちゃいちゃしやがってー!!」
わちゃわちゃとみんなが立ち上がる。あ、HRなのにそんなに騒いだら‥‥
「合理性に欠くね?」
髪を逆立たせながら相澤先生が教室を睨む。気がついた時には立ち上がったみんなだけじゃなく、僕と涙で目を腫らした耳郎ちゃんまで椅子に座っていた。なんかA組の一員になった感じがしていいね。
「ったく‥‥、まだ戦いは終わってないんだぞ」
「え‥‥まだヴィランの残党が‥‥!?」
教室が三度ざわつく。いや、まぁ、戦いが終わってないなんて言うとこの流れだとヴィランが残ってるのかと思っちゃうよね?
まぁ、全然違うんだけどね。
「体育祭が迫っています」
「クソ学校っぽいの来た〜!!!!」
クラスのみんなが声を合わせる様式美を聞きながら、僕は自身の足を摩った。‥‥なんも考えてなかったけどこの足で体育祭イケるかな? 正直どうとでもなる気はしてるけどね。
× × ×
「ゆずくんもう歩いて平気なの!?」
「そのセリフ今日で何回目?」
「何回も聞くよ!!!」
「緑谷じゃないけど無理してない? ウチになんか手伝えることある?」
やけに介護介護する出久くんに向かって返事をすると切羽詰まった顔でそんな言葉が返ってきた。ウケる。それに最近僕のことを「ユズ」と呼んでくるようになった耳郎ちゃんも僕の役に立とうと必死だ。悪いけどあんまりいらないかな‥‥
もう何度目かわからんよ、この会話。それでも僕が辞めない理由は視界の端に映る他の子が苦虫を噛み潰した顔するからなんだけどね。クズが極まってんなぁ‥‥
「歩けないのにヒーローは目指し続ける、なんて言わないって」
「ゆずくんなら歩けそうだけど! というかその足でヴィランに突っ込んでいきそうだから心配してるんだよ」
「訓練の度に手足ぶっ壊してるやつに言われるとは‥‥」
「ウチもアレはどうかと思う」
「耳郎さんにもダメだし食らった‥‥」
言っとくけど僕は原作を知っている身として君のこと大概頭おかしいと思ってるからね? 口にしたり態度に出したりしないだけでだいぶおかしいと思ってるよ? その手足の潰し方で良く正気保てたなって思ってたし、いや、正気じゃないから潰せたのか? 本当に素質あるよイカれ少年め‥‥耳郎ちゃんもそう思うよね?
「うぉぉ、何事だぁ!?」
僕らがコントを繰り広げている間にいつのまにか教室の外には人だかりができていた。おぉ、本当に気づかんかった、今僕は出久くんと耳郎ちゃん辺りの曇り顔見るのに必死で周りが見れてないんだよね‥‥反省。
「敵情視察だろ雑魚、意味ねぇから退けよモブ共」
「幻滅しちゃうなぁ」
うんうん、みんな元気にピリピリしてらっしゃってますねぇ〜? あんな風にかっちゃんに初手から馬鹿にされたらピキるのはわかるけどね! あの子普通にデフォルトでこれなんだよね、普通に嫌われて仕方ない素質あると思う。ヒーローになる上で早く直したほうがいいよ、その癖。梅雨ちゃんじゃないけど人気出ないよ?
「隣のB組のもんだけどよぉ! えらく調子づいちゃってんなぁオイ! 本番で恥ずかしいことになんぞ!」
この言葉がトリガーとなって僕の心を揺らした。ビビっときた、と言ってもいいかもしれない。
10年間どこで、どんなことをすればみんなのことを曇らせられるかなって考え続けた人間として、ここはスルーしようと思っていたところだったんだけど、つい最近大怪我をしたばかりで、みんなの顔が曇った状況を作り上げたものとして、これを利用しない手はない。僕はアドリブもイケる口なのでね。
ここは僕が立てたメインプランを無視してみんなのことを曇らせようかな。
「‥‥おい、なんのつもりだよテメェら」
自分が出せる限り低い声で威嚇した。たぶん、誰相手にも出したことがない声だ。教室がざわつくのがわかった。ウケる、そんなにビビらなくていいじゃんか。出久くん目を丸くしすぎじゃね?
「ゆずくん?」
「テメェらがなんのつもりで来たか知らねぇよ、興味もねぇし。正直相手にもならねぇわ、調子づく? はぁ? オツム弱いわけ?」
出久くんが止めようとしてくれるが、ここで止めるわけにはいかない。僕はマンネリが嫌いな男、舞妓譲葉。こんなところで止まるわけにはいかないのだ。もっとみんなに複雑そうな顔してほしい。歪んでほしい、僕のために声をあげてほしいのだ。さぁ、アドリブ開始だぞ。
曇らせるためならなんだってしてやるのが僕だからね。
「なんだっけ? 敵情視察? 宣戦布告? ハハっ、ご苦労様だね」
「んだよテメェ!」
「なにってこっちのセリフなんだけど‥‥喧嘩売ってきたのはそっちだろ、ゾロゾロと引き連れやがって、有象無象が、図に乗るなよ」
僕の予想外の言葉とキレた顔にモブ達が後ろに下がっていくのが見えた。今からの言葉がこの目の前の有象無象のモブどもの顔をぐちゃぐちゃにして、A組のみんなも曇らせるのだから、言葉選びは慎重に、だけど、大きく、カサブタねじくりまわしてやろう。
「僕たちはヴィランに襲われたの、怪我人も出てる。恐怖を克服して、それでも前に進もうとしているところなんだよね。それが何? 調子づく? 偉そう? ハハハ、馬鹿も休み休み言えよ。A組にまで来た空気読めないお前らより100倍マシだわ」
「調子に乗りすぎだろッ!」
ギリって音が聞こえるほどの歯軋りを響かせながら誰かが叫んだ。うわぁお、見たことない顔だな‥‥普通科の誰かなのだろうか? マジで記憶にないから本当にモブなのだろう。
ならまぁ、壊してもいいかな? 尊厳とか。
僕はおもむろに右足のズボンの裾を左手で掴んで引き上げ、タートルネックを右手で掴んで引き下ろした。
「僕はUSJ襲撃で被害を受けた生徒の一人だ。僕一人だけなら許してやるよ、でもまだ傷が癒えてない女の子がいる。心の傷だぜ? わかるか? 傷が癒えていないのに、わざわざそれを意識させるようにやってきて‥‥被災地に現れるハイエナ記者か?」
僕が見せつけた義足とぐるぐるに巻かれた包帯にモブ共が顔を顰める。‥‥うーん、なんかいまいち興が乗らないなぁ‥‥モブ顔ばっかりなんだよね、やっぱり中身を知っているって言うのが曇らせには最低限必要なのかな? 僕がグルメだから知ってる顔を曇らせたいだけなのかもしれないけど。心操くんはいい顔してるね! うんうん、わかりやすくて好ましいよ、本当にね。
「ヒーロー科に転入? B組? ヒーローになりたい? 大いに結構。好きにすればいい。まぁ、自分のことしか考えられない今のテメェらじゃ一生かかっても無理だろうけどな。ところでさぁ‥‥」
できるだけ悪どく、この先二度と僕の時間を取らないように、心を叩き折りに行こう。
「自分が大怪我を負ってでも誰かを助けるヒーローでいられるって奴いんの? 自分のことしか考えられないのに? 話にならないから帰っていいよ」
両手を離して拍手を一回打つ。ガヤの一番後ろの奴と僕の場所を入れ替えた。これで簡単に廊下に出て彼らのことを誘導できる。
わかりやすく、個性を使っての威嚇だ。
「散った散った、今のテメェらが宣戦布告しても意味ねぇよ。ぶっちゃけ僕の敵になるのA組だけってことがよくわかったし。一位から二十位くらいまでは独占じゃね? 分かったら帰れ、不愉快だ」
さっきまで目の前にいた相手が急に後ろに移動したことに驚いたのか、それとも何か別の感覚なのかわからないが、モブ達が振り返って、歪んだ顔で僕のことを見る。自分がどれだけヒーローの器じゃないのかってことを認識したようだ。うんうん、感心感心。
「わかった? テメェら全員ヒーローの器じゃないんだよ」
後ろから人ごみに向かって歩く、すると、かき分けるまでもなく勝手に道が開いてくれた。いや〜、いい気分だね。
人ごみを抜けて教室に着くと、みんなが顔を曇らせているのが見えた。‥‥やっぱりA組のみんなの顔が一番いいね! クるわ! 月とスッポン! 天と地の差! いいね! 最高だわ! 後ろのモブどもはこう言う顔をするようにしてください!! 見て!? 怪我をまじまじと見せられたのが初めてだからなんだかんだ言って義足を見たのも初めてで! 曇りに曇ったあの顔! 癌にも効くようになるよ! 最高じゃん!! くぅ〜!! あ、やべ、ヨダレ出そう‥‥耳郎ちゃんなんて泣きそうじゃん! ごめんね! これ作戦で君が悪いんじゃないんだよ! 安心してね!
「ゆずくん‥‥」
「‥‥みんなごめん! つい売り言葉に買い言葉で返事しちゃった‥‥」
とりあえず手を合わせて頭を下げる。こうやってまず謝罪した理由は今、緩んだ顔をしているであろう僕の顔を見られないためである。別に急に怒鳴ったことに対して謝っているわけではない。それに謝ってるけどあんまり謝罪の気持ちは込めてない、どちらかと言うと「あ、みんないい顔してましたよ! ご馳走様!」みたいな気分だ。クズかな?
は? クズだが?
「そういうわけで!」
下げていた頭を上げる。そしてみんなの目を一人ずつ見てから言ってやるのだ。
「1から20位くらいまで独占しようね! 期待してるよ? みんな」
ヘラヘラと笑った僕の言葉は、みんなの心にどう届いたのかはわからないけど。
ただ、出久くんが拳を握りしめるのがやけに鮮明に見えた。
前書きでも書きましたが、皆さんの応援や評価に助けられてモチベーションが天元突破しております。やばいやる気です。今月中に体育祭までは行きたいなぁ、と思ってましたが体育祭終わるところまで行けるかも? 頑張りますね!
映画編を入れるかどうかのアンケートをさせてください!
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入れたのが見たい!
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本編だけ追いかけるのでOK!
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アンケート結果が多い方で!