個性『不義遊戯』でいく! 僕の曇らせアカデミア!   作:波間こうど

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それがヒーローってことでしょう?


★エゴイストこそヒーロー

 

拡散性の煌めきは、確かにゆずくんの腕からオールマイトを奪還してみせた。復活したかっちゃんは今までの……いや、オールマイトにすら届きうるような速さでゆずくんの元にまで到達すると、その腕から平和の象徴を奪い返したのだ。誰よりも速く、誰よりも強い爆破の個性。

 

「かっちゃん……!」

 

かっちゃんはオールマイトを助け出すと不敵な笑みを浮かべたまま、勝つぞ! と僕たちヒーローに活を入れた。ビルの上に着地してオールマイトを安全に下ろすところまで見て胸をほっと撫で下ろす。

 

死んでしまったと思っていた。ルミリオンがエッジショットたちが助けるって言っていたけど、望み薄だと思っていた。正直、どうすることもできないと思っていた。

 

それでも、かっちゃんは復活してみせた。

 

「……ッチ、譲葉の邪魔ばっかりするなァ、爆豪……やっぱり殺しておくべきだったか……」

 

死柄木が忌々しそうに、苛立ちを隠そうともしないでかっちゃんを見つめる。その隙を狙って拳を振るったが難なく躱されてしまった。……何で避けれるんだ?

 

「おいおい、不意打ちなんて卑怯な真似するじゃねぇか」

「お前だってやるだろ」

「俺はいいんだよ。ヴィランなんだから。譲葉にはよく搦手使われたもんだぜ?」

「……そういうところが癪に障るって」

 

拳を振るう。生憎とその拳が死柄木に当たることはなかったが、振るった時の風圧が塵を巻き上げて上へ吹き上がった。威力が上がっているのが自覚できる。

 

「言ってるんだよ! 死柄木!!」

「マウントは嫌いかァ? 緑谷ァ!!」

 

刹那。

 

拳が交錯する。二つの握りしめられたそれは、そのまま互いの頬に捩じ込まれた。双方、一歩も引かないでそのままむしろ前に進むように踏み込む。

 

「アァァァァッ!!」

「緑谷ァァァァッッ!!」

 

叩き込まれる連撃、それを打ち返すようにこちらからも捩じ込んだ拳、お互いがお互いのダメージのことだけを考えて、自らの体を何とも思わないままに叩き込み続けるその拳は、お互いの体を貫いて、互いの体を吹き飛ばした。

 

それでも、意地とプライドだけでその場に残り続ける。お互いがお互いの、夢とプライドを賭け続けている。この場で、足を離した方が、負けだ。

 

それがわかっているから、本来なら吹き飛ぶはずの体を無理矢理押さえつける。足腰に力を入れて押さえつける。そうして立ち止まり続ける。

 

ここが正念場だ。

 

「相撲じゃねぇんだぞ? 足離せよ」

「そっちこそ……!」

 

拳はお互いを打ち据えて、お互いを抉りつけて、生傷を作ってなお、前へ。

 

二人の距離がなくなって、間にあった距離がゼロに近づけば近づくほど、僕たちは理解しあっていく。理解してしまう。

 

お互いを、大切な彼の理解者だと悟ってしまう。

 

「緑谷ァァァァァァ!!」

「死柄木ぃぃぃぃぃぃ!!」

 

お互いがお互いを認める。この上ない屈辱で、この上ない、切実なまでの怒りが込み上げてくる。

 

打つ。殴る。相手のことを考えもしない。ただひたすらに殴打する。罵るわけでもなく、ただ自分の全力を以て相手を叩きのめしたいという感情。ヴィランとしては至極真っ当で、ヒーローとしては全くそぐわないようなそんな感情を持って相手を殴りつける。

 

……正直ジリ貧だ。

 

死柄木が「崩壊」を使わないのはこの戦いで個性を使うまでもないと思っているからなのか、一撃で終わらせたくないと思っているからなのか……具体的なことは何もわからないけれど、それでも死柄木の感情が伝えてくる。

 

“必ず殺す”という、憎悪を煮詰めたような殺意が。

 

「お前はオールマイトに見そめられたんだろ?」

「……!」

「お前がヒーローになれるって言われたその時に! 譲葉にそのことの全てを伝えておけばこんなことにはならなかったんだよ!」

 

その通りだ。

 

正しい。

 

僕よりもゆずくんの方がヒーローには相応しくて、ゆずくんがオールマイトの……「ワン・フォー・オール」を引き継ぐべきだったんだ。

 

そんなこと分かってた。でも、ゆずくんとは違って、何もなかった僕が、ヒーローになるために必要なものはその手を取ること以外になくて。

 

だから、僕はその手を掴んだ。何にも考えずに。

 

その条件を呑んだ。至極当然だというように。

 

「だからありがとう! お前のおかげで! 譲葉はこっちまで! ここまで堕ちてきてくれた! お前のおかげだよ!! お前のおかげで!! 譲葉は俺たちのものになった!!」

「…………ッ!!」

「お前なんて! ヒーローになるべきじゃなかったんだよ!! 余計なことをするのがヒーローの本質だぁ!? そのおかげでヴィランが生まれてちゃ世話ねぇなァ!!」

 

馬鹿にしたように死柄木は笑う。その声が至近距離で耳にまで届く。

 

それは呪詛のようで。

 

僕の足が地面から離れた。

 

 

「お前が譲葉をヴィランにしたンだよ!!」

 

 

その拳は僕の顔を思いっきり打ち据えた。そのまま何回転もして地面に転がっていく。何回転も転がっていくのに痛みは感じない。

 

体は痛いんだろう。実際痛い。節々が痛くて、打たれたところも痛い、殴った拳も痛い。全身が痛くて仕方がない。それでも。

 

心が、痛くて、そんな痛みは誤差でしかなかった。

 

「……………………空、暗いな……」

「さっさと諦めて死ねよ。死んだ体からでも、個性は奪える」

 

死柄木が僕に向かって近づいてくる。そうして、地面を踏み締めて近づいては、僕を見つめた。上から睨みつけるみたいに。睨み下ろすみたいに。

 

僕を、心底蔑む視線は。無個性だと馬鹿にした同級生よりも、諦めろと諭してきた教師よりも、ホームレスを横目で見て馬鹿にする主婦よりも、ずっとずっと、ずっと。

 

人とも思っていない視線で。

 

『諦めるな! 九代目!』

『お前が諦めたら世界が滅ぶんだぞ!!』

 

内側から聞こえてくる声は、先代たちだろうか。正直、その言葉で今までは立ち上がってこれた。

 

自分の罪を償いたかったから。

 

でも、これはもう、死ぬのが一番の……

 

死柄木が僕の胸ぐらを掴んで持ち上げた。すぐに個性を奪わない。崩壊もしない。僕のことをカメラにゆっくりと示すように、見せびらかすように持ち上げれば、そのまま指に力を込めた。個性が発動されることはない。僕の体は、浮かび上がったままで、固定される。

 

もう、ここで終わってしまうんだ。そう、思った。

 

「出久ゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」

 

その声は、遥か遠くから、それでいて、すごく近くから響いた。

 

「か……っちゃ……」

「勝てや!!」

 

そこでかっちゃんがバチンッ! と両の頬を叩いた。そしてキッと空に咆哮を叩き上げる。

 

それは、狼煙のようで。

 

「ちげぇ!!」

「何一人で叫んでんだアイツ……頭イカれてんのか?」

「出久!!」

「……うん」

「テメェ等ァァァァァァ!!」

 

そのテメェ等が誰を指しているのか、それがわからないほど僕は馬鹿じゃない。僕たちは馬鹿じゃない。この言葉は勝鬨への、勝利への号砲。僕たちの背中を押して、手を引くような、そんな聲。

 

遠くの遠くでこだまする声。僕たちを鼓舞する声。

 

「雄英!! 全員ッ!! 全力で殺るぞッッ!!」

「そんで!!」

「取り返すぞッ!!」

 

その言葉は、ただの指針。

 

僕たちの戦いの基準。なんで戦うのか。

 

守るため。僕たちの背中に乗っかった重たくて、かけがえのない大切な人たちを、そして、それ等に胸を張って「僕たちが来た」と言えるヒーローになれるために、そのために勝つんだ。勝つ。

 

『助けて勝つ、勝って助ける』

 

そうですよね? オールマイト。

 

そうだよね? ゆずくん。

 

僕は掴まれた胸ぐらを押さえるようにして死柄木の腕を握りつぶした。

 

「2nd……! 3rd……!!」

「!?」

「悪いね、死柄木。どうやら負けるわけにはいかないらしい……!!」

 

僕は拳を強く握ってからそれを解いた。脱力。

 

『肩の力を抜きなよ。ヒーローは全力で、一生懸命だけど、ガムシャラじゃあダメだよ』

 

「これ、使うのはダメなのかもだけどね。使わせてもらうね、ゆずくん」

 

この黒鞭は死柄木の体を離すわけがない。僕は万力すら想起させるような力で腕を縛ったまま、腰を入れた。死柄木が逃げようと体を動かすが逃すわけがない。

 

逃げられるわけがない。このしがらみから、この呪いから。

 

僕の右の拳はみんなを助けるためのもの。そこに恨み辛みを乗せるのは御法度かもしれないね。それでもしっかり乗せて、きちんと乗せて、崩壊させてあげなくちゃ。勝たなきゃ。

 

じゃなきゃ、得られないんだから。

 

「黒閃ッッッッ!!」

「ガッッッッッ……!!」

 

黒い稲妻が弾ける。……真似っこで、別に本当に稲妻が弾けたわけじゃない。僕にはそんな個性はない。ただ、2nd、3rdを使って黒鞭にも威力の増加を付与してから拳を叩きつけただけだ。

 

そして、その稲妻は、何度も何度も弾けるように、死柄木の体を縛りつけた。両手両足を拘束して、その両手足を無理矢理広げさせる。

 

「デトロイトッ!」

「ハッ! 流石だよ緑谷!! 要注意だって譲葉が言うだけあるぜ!!」

「SMASHッッッッ!!」

 

ガード不可、一撃必殺。

 

硬い表皮を破って、拳が死柄木の体を突き破る。痛みが破壊が、確かなものになって死柄木を抉る。壊す。

 

オールマイトのパワーを五倍にしているそれを、何度も叩き込めば?

 

「舌」

「ガ……ッ」

「噛むよ」

 

拳は、脚は、自由に動く。だから、こんな的になった死柄木のことを、僕が打ち逃すことなんてあり得ない。

 

打つ。打つ。打つ。打つ。打つ。

 

殴る。殴る。殴る。殴る。殴る。

 

何度も何度も、拳を打ちつけて死柄木の外皮を回復のスピードよりも早く打ち破る。引きちぎる。相手の何もかもを破壊するその破壊の力を、人を救う力を流用して、そこにまで到達する。

 

蹴る。蹴る。蹴る。蹴る。蹴る。

 

抉る。抉る。抉る。抉る。抉る。

 

無防備な死柄木の体の全てを、使い物にならなくなるまで、その悪意が人々を害さなくなるように、そうなるまでしっかりと、時間をかけて死柄木の体を叩きのめす。打ち込んで、叩き伏せて、捩じ伏せて、僕の全力で、死柄木を壊す。

 

「スマアァァアァァァァァァァァァァァァ!!」

「……………………………………………………ッ!!?」

「ッッッッッッッッッシュゥゥゥゥゥゥァァァァァァッッッッ!!!」

 

声すら出させない。僕の拳が段々と固くなっていくのがわかる。僕の拳の皮が捲れて血が出ても、僕は殴るのもやめない。やめない。やめない。

 

「ァァァァァァァァァァァァッッッッ!!」

 

最後のダメ押しとばかりに、死柄木の腹に、貫通するほどの拳を捩じ込んだ。死柄木が大きく吐血して、それが僕にかかる。それすら拭わずに僕はラストの一発を横顔を蹴り飛ばすようにして彩った。

 

黒鞭を解放して死柄木の体を何度もバウンドさせて地面を転がす。

 

「ハァ……ハァ……ハァ……」

 

息を吸う。吐く。自分の疲労した体を少しでも休める。

 

「全盛期の……オールマイトなら……五発もあれば……十分だっただろうね……」

 

回復が間に合わない。蓄積されたダメージの全てが必殺級のそれを何とか回復させようと膝立ちの死柄木を視界に収めたまま息を整えていく。

 

「僕は……まだまだだ……つい、3000発も……打っちゃったよ」

「……………ぉ゛え゛…………………よく、言うぜ……私怨入ってた……癖によ」

「失礼なこと言うなよ。僕は、私怨なんて……」

 

そこまで言って、入っていないわけがないと思い直す。僕がコイツのことを憎んでいるのは当然のことなんだから。

 

「…………いや、」

「……?」

「男の嫉妬は見苦しい、でしょ?」

「…………最悪だよ、お前は」

「違うよ」

 

僕は胸を張った。だって、ヒーローは胸を張るものだから。

 

「僕は最高のヒーローだ」

 

これは、僕たちが最高のヒーローになるための物語だから。

 

 

  × × ×

 

 

【弔side】

 

……………………?

 

口から垂れて地面へと落ちていく血の雫を見ながら、俺は自分の頭が真っ白になっていることを悟っていた。なんでこんなことになっているのかが全くもって理解できない。把握できない。終始有利に物事を進めていたはずなのに、なんで俺はこんなことになってしまっている?

 

現状が理解できなくて、俺は膝をついた自分が理解できなくて頭の中の情報をなんとか繋ぎ止めていた。なんで、俺は膝をついている?

 

「もう降参したらどうだ死柄木。僕だって……憎くても、殺したくても、それをするべきじゃない立場なんだ」

「…………」

 

なんで、俺はこんな奴に跪いている? なんで俺はこんな風に負け犬のように膝をついている? こいつを見上げている?

 

持っている個性なら俺の方が上。

 

その扱い方も俺の方が上。

 

身体能力だって俺の方が上。

 

相手の研究も俺の方が上。

 

志も、譲葉との繋がりだって、俺の方が上。

 

上、上、上だ。

 

何もかもが勝っているはずだ。何も間違っていないはずだ。何もおかしいことなんてないはずなんだ。俺は、アイツは、何も間違っていないはずなのに。

 

 

なんで、こいつの拳はこんなにも重い?

 

 

「降参……? 負ける……わけねぇだろ」

 

俺は膝に手を置いて支えにすることで体を立ち上げた。体が個性に合わせて成長を繰り返しているはずの体でなおわかる巨大な傷。

 

……なるほど、どうやらあまりのダメージに蓄積された分を回復させるのに手一杯らしい。無理矢理治してもいいが見せかけだけのハリボテになるな。プールで力んでるやつみたいになっちまう。このまま体は放置しておくのが正解だろう。

 

「テメェが、譲葉に与えた傷に比べたらこの程度なんてことねぇよ」

「……お前は」

「あ?」

「いつからゆずくんと一緒にいる?」

「は? なんだよ急に」

「答えろよ」

「……2年前、お前等が中学三年のときの春だよ」

「…………つまりゆずくんは僕がオールマイトに特訓をつけてもらってた頃にはお前に接触していたのか」

「それがなんだ?」

「じゃあ……最後の一押しは僕だったんだね」

 

俺の前に立ち塞がる緑谷がそう呟く。

 

「そうだ。お前みたいな奴に個性が、ワン・フォー・オールが渡っちまったことが全ての元凶だ。もし! 譲葉にその個性が渡っていたのなら、俺たちはきっと勝てなかった……!」

「…………」

「お前のわがままが! 人類を窮地に追いやってるんだよ!!」

「……そうだね」

 

緑谷は凪いだ瞳で俺のことを見つめていた。そんなこと理解しているというように、傷だらけの頬を綻ばせる。傷だらけの体で、立っているのもおかしいくらいの体で立ち上がっている。

 

それは、オールマイトの勝利のスタンディングのようで。

 

それは、ヒーローとしてあるべき姿そのものを体現しているかのようで。

 

それは、譲葉が憧れた、自分の身近に居た、頑固なヒーローそのもので。

 

「だから勝つんだよ」

 

恐怖の象徴。全ての覇王。時代を破壊する覇者そのものとなった俺のことを見下したりもしないで、ただ、打倒すべき悪として……いや、これは違う。

 

もっと、邪悪で、余計で、自分勝手な感情。

 

「ごめんなさいを言う前に、地球が滅んだら大変でしょう?」

 

人を救い、自分も救う、ボランティアじゃない、救済行動。

 

ヒーローとは、人を助ける存在で。

 

人助けを“仕事”にするエゴイストの集まりなのだ。

 

その中でも特別なエゴを持つ存在が、俺の前に立っていた。

 

ただ、世界で一番強い力を携えて。

 

「負けないよ。僕は」

「…………」

「かっちゃんと約束したからね」

 

強い意志を持って、澱んだ決意を持って、緑谷出久は俺の前に立つ。

 

「みんなとも約束したんだ。ゆずくんを取り返す」

 

俺の大事なものを奪う存在として。

 

「だから勝つんだ。だから負けないんだよ」

 

 

【挿絵表示】

 

 

俺にとっての死神として。

 

 





色んなところから絶対わかんないだろ、ってオマージュ入れるのが好き。

どうも、いつもありがとうございます! 波間です! 

今回の更新も楽しんでいただけましたでしょうか? 楽しんでくれていたのならば幸いです!! ヒーロー側の執念。エゴイスティックなヒーローの存在を出せたらいいなと思います!!

そろそろ爆発的なシーンをお見せできると思います!!

最近、皆さんがたくさん評価と感想くれるから僕も嬉しくて嬉しくて、頑張る手に拍車がかかりますね。本当に嬉しい。お気に入りも、⭐︎10とか⭐︎9ってすごい評価だと思うんです。これからも頑張る中で、こんな評価に相応しいようなものを書くことができればなと思います!!

なので是非ともたくさん評価してください!! よろしくお願いします!(承認欲求)

いつも応援してくれてありがとうございます!! これからも頑張りますので、さらなる応援よろしくお願いします!!

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