長生きしたいけど、生来魔術のせいで生き残れるか怪しい私です。   作:スラム街のオーク

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ふうま弾正討伐作戦(起)

 その12月25日は月もない新月の夜だった。米連、横須賀の基地が事故により消失したと政府に説明があってから数時間が経過した頃。アメリカ高官は、日本国内の米連基地に厳戒態勢を敷かせていた。

 謎の襲撃犯は気化爆弾の餌食となり蒸発してしまい、痕跡の捜査もまだ行えない状況下で動けるのは保守派の部隊のみだ。世界の憲兵としての影響力はある、だがそれはハリボテであるとレベッカはよく知っていた。

 

「特務機関Gに関連する関東圏の組織末端を潰すのが今回のオーダーだから、破壊工作だけじゃないわ。私たちの仕事はあくまでも釘付けにすることだから、基地の制圧ではなく負傷者を増やすことを目標に行動するように」

「はい、レベッカ隊長! 国際問題に発展は致しませんか!?」

「大丈夫よ、私たちは私設武装組織だもの。新月の系譜はまだロールアウトしてないから足がつくことはないわ」

 

 製作者不明の機動兵装とかいう地上を3.8mとコンパクトサイズかつスピーディーに駆け抜け、そんなサイズ感に大火力を詰め込んだような悪夢の機体であり。こんなものを相手させられる一般米連兵士は正直に言えば泣いていいはずである。

 

「気化爆弾使用の前例からその懸念があるから制圧すると基地ごと吹き飛ばされる可能性も考慮して各員、制圧点に長い滞在はしないでね? 防御はできるでしょうけどその性能に胡坐をかいて鹵獲された場合……わかってるわね?」

 

 冷徹な命令とレベッカは内心で自分にも当て嵌ることだと言い聞かせ、各員に告げる。

 

「総員、もしもの場合は全力で遁走してね。何をしてでも生き残ることを優先するのよ?」

『イエッサー。全ては我らが同胞のために!』

 

 真冬の、凍えるような寒さの夜空の下。帳を引き裂いて青いスラスターの残光が街の中を駆け抜けて散っていく。「アレ、忍びってなんだっけ?」と感じる貴方たちは悪くない、むしろ対魔忍は忍ばない。

 アーマードトルーパーもどきが闊歩するという異常事態だが、クローラーの音もスラスターの燐光だけで一切無音で走行しており、光学迷彩を標準装備としているブツのため意外と隠密性能は高く。排熱の熱源も特定不可と言う超科学と魔術の抱き合わせと言う、ほぼ魔法の代物なのだ。

 

「さて、《生きましょう》か」

 

 主人より任された新月を起ち上げ、フットペダルを踏みこんだ。月夜の開発した逆転式アクチュエーターにより駆動音が反響して絞られ、無音で地を蹴り滑り出す。月光に照らされて浮かぶのは曲線の多い丸っこいボディ。

 装甲色は緑を基調としてその左の肩装甲には朱色に塗られ、金色の五車学園が校章、そして裏面には――満月を背に、聖杯を7つの武器に囲まれるように守護されている様な――月の奇術団(ムーンキャンサー)のエンブレムが設えられている。

 走行中に光学迷彩を起動して街中に消えながらシステムチェックを済ませ、街を抜けながら消えて行く。

 

「目標補足、(バグ)投入。さてまずは情報収集ね」

 

 数十分走らせた地点にあった米連基地にてレベッカは超小型ドローンの蟲を使い、施設内をくまなく調べ上げる。ここはふうまの調査網に引っかかった、【特務機関G】に所属する職員が存在する基地なのである。

 地下も地上も、棟の中も時間をかけて調べ上げて。その職員の在籍も確認した。

 

「御免なさいね」

 

 十数分かけて調べ上げ、レベッカは襲撃にシフトした。とは言え単機で乗り込み、基地一つを機能不全に……出来て、しまうのだ。豊富な火器、現代兵装ではまずぶち抜けない魔術装甲と言う、レベッカやリディーナ、アイナたち米連に所属していた者たちが口を揃えて「動く要塞」と評したモノ。

 

「彼らのやり方がわかってるからこそ私が当てられた訳で。まずは、第一段階(First phase)。管理棟にダメージを与えて虫の巣を突いて出てくる出来損ない(バグドローン)を擦り潰す」

 

 管理棟にミサイルを撃ち込み、少なく無い被害をもたらすと索敵のために出撃した多くのドローンを襲撃する。光学迷彩を解除せずにヘビィマシンガンの掃討でドローンを片っ端から破壊して回りながら、レベッカは他人事のように。

 間抜けにもこちらに向かってきた一般兵の足を奪うため右肩部に背負ったミニガンでゴム弾を掃射する。

 

「足がぁぁ!? 吹き飛んで無いけど折れちまった!」

「ああクソ、卑怯者め! 姿を現せ!」

「ジーザス! 聖夜だってのに硝煙に抱かれるのは趣味じゃねぇんだよ!」

 

 ドンパチのプロたちである彼ら(米連)でも、休戦するクリスマスだからこそこの状況を嘆く。尤もである、とレベッカも同情するが非情に徹した。戦闘不能にされていく米連の兵士たちを他所に、新月の進撃は止まらない。

 

第二段階(Second phase)。重要拠点である情報集積所を破壊する」

 

 どっしりと構えて。ヘビィマシンガンと12連装肩部ミサイルポット、ロケットランチャー、肩部ミニガン、腰部グレネードランチャー、3連装脚部マイクロミサイルの飽和攻撃(フルバースト)で情報集積所のスーパーコンピューターが建物ごと破壊されて吹き飛んだ。

 轟々と紅蓮に染まる廃墟が可愛く見えるほどに、更地にされた場所のスキャンを行い、この基地に他のバックアップは無いと判断したレベッカは潮時として場を離れる。

 

「ミッションクリア、この残弾なら……別の駐屯地も襲撃できるわね」

 

 残弾と相談してミッションの継続を判断したレベッカは次の標的に向けて新月を発進させた。

 

 ☆

 

「さぁさ、ノマドも米連も寄って集って押し寄せませい! やんやと、我が朱槍が戦さ場に號と吼え(たてまつ)れば! 血肉湧き踊る今宵の祭り、誉れと洒落込もうや!」

 

 東京キングダム近郊の魔族と米連がヒリ付く場所に現れた1人の傾奇者。赤や青、派手な色のふんだんな刺繍と絢爛さを引き立てる金糸で整えられた男物の和装に分厚い虎の毛皮で作られた羽織りを優美に靡かせながら、長大な槍を自在に操り多くのオークや米連の兵士が吹き飛ばされる。

 亜音速の域に到達した槍の穂先で頸を刎ね、ぐるんと回り返る石突きが頭蓋を砕き脳漿をぶち撒けるのではなく粉砕して。木っ端微塵の血煙に変える。装束を血に、赤く、黒く染めながら傾奇者の大暴れは止まることを知らず加速した。

 

「なんだこの人間台風は!」

「グェェ、やメシニたな」

「きょきょきょ! 狂戦士めがぁ〜!」

 

 がきんと鉾と切り結び朱槍が止まる。しかし、鬼族の意識外から迫った凶刃は音速で振り抜かれる。運動エネルギーだの位置エネルギーだの小難しいことを慶華には説明できない。キリンと同じ武力に秀でた人種の定めなのだろう。

 その証拠に、止まった勢いを入れ替えるように抜刀した千手院村正は音もなく……鬼族の鉾ごと頸を刎ねて見せたのだから。

 その後も懐に滑り込みながら米連の兵士が膾斬りにされ、オークが下半身を裂かれて臓物をぶち撒けるなどとまぁ、阿鼻叫喚死屍累々。断末魔が闇の街に響き渡って数時間ほどが経ち、他の地点を制圧して様子を見にきたキリンが唖然としていた。

 

「味気のない連中であるなぁ、キリン殿」

「よーやるわ、アンタ一人でええんちゃう?」

 

 げんなりした様子のキリン。側から見れば血を噴き出すスプラッタースプリンクラーに見舞われたかのように頭から赤黒く染まった慶華の有様を見て、辺り一帯が人と魔族が何人斬られたかも分からぬほどに血の海になっていれば。

 その様は風邪で鼻が不調だとしても、光景だけで誰もが鼻も顰めるほどの血生臭さだろう。

 暴食の権能は無限の食欲と、無限のスタミナ。病気とは無縁となって生肉を喰らえる様になった慶華は飢餓に苦しむことないよう、魔族の首を噛みちぎりそのまま食らっても腹を下すことがない。

 

「総じて魔族は不味いでござるなぁ」

「やめて!? そんなけったいなマニア向けの食レポとか誰得やねん!?」

 

 殺した魔族の肉を味見している慶華にドン引きしながらもキリンは警戒を怠らず。怠惰にあるまじき勤勉さであった。なお彼女の内心では、この軽くホラーな場面を新米のまりが見ていなくて良かったと胸を撫で下ろす。

 

「うぇぇ、血生臭いです……」

「こっちもスプラッター!?」

 

 別方向から中継点に合流してきたまりも真っ赤になっていた。手甲を真っ赤に染めて、対魔忍スーツも所々破損はしているが無傷ではあった。

 

「洗脳って難しいですよねー……守って貰うように動かしたかったんですけど、殺し合いを始めちゃって」

「血のクリスマスって報じられてたなぁ。まぁ、帰ったら大目玉かもしれへんで?」

「ひぅ!?」

 

 米連のシマに土遁で潜入、裏路地でいざこざを起こして抗争を起こすのがまりの任務だったのだが。色欲の罪の権能が扇動と洗脳。集団幻惑などの意識障害を引き起こすモノであり……実にピーキーだった。その結果、扇動のつもりが集団幻惑に陥り一部が表通りにまで進出。

 そのまま暴動と言う大乱〇スマッシュブラザーズも真っ青なスマッシュゲームにより、負傷者多数の事件に発展してしまったのであるが。その隙にまりは米連の基地を複製巻物弾によって引っ搔き回し、屈強な米連サイボーグ等々も持ち前の怪力で殴り倒して制圧の後遁走してきたようである。

 

「疲れましたぁ……」

「なぁ、まり。そのデカイケツについてる発信機はなんや?」

「はい?」

 

 ピコン、ピコンとGPS発信器がまりの臀部に張り付いて点滅していた。そして遠くから元気に喧しいプロペラの駆動音が響き渡り聞こえてきた。

 

「おや、アレはヘリコプターですな? ……軍用の」

「「……」」

「はっはっは! やはり退屈せんですなぁ、ココは場所が悪いですな」

「迎え撃つんやのうて、撤退の判断しぃやぁぁぁ! ってまり、何しとん!?」

 

 えい、とかわいらしい掛け声とは裏腹にバガンとアスファルトが捲り上がる。土が剥き出しとなりそこに大穴が穿たれた。そのついでに尻を払って発信器を払い落とす。

 

「逃げるが勝ちですよね! キリン先輩、先に失礼します!」

「おいぃぃぃ!?」

「くくく、流石忍びですなぁ。関心、関心」

 

 土遁の忍法で地を潜航して逃げたまり。残された慶華は発信器を踏みつぶし、そのままキリンに二ッと笑いかける。

 

「さぁて、現代の武士(もののふ)に逃走のに文字はなし散ってなんぼでしょうや!」

「ここではアカン。関係ないのも巻き込んでまうわ」

「然様! 某に心当たりがありまする、そこでどうでしょうかな?」

「しゃぁない……絶対まり犯して孕ましや?」

「そそられるのは確かですなぁ……あのデカい乳はさぞ揉み心地も良いでしょうな」

「だぁほ!? 本気にしぃなや?」

 

 その問いには勿論と軽口を帰して、人気のない路地に彼女たちは退却、そして数分の後、特務機関Gの息がかかったサイボーグ部隊もそこに突入するのだった。




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