長生きしたいけど、生来魔術のせいで生き残れるか怪しい私です。   作:スラム街のオーク

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万能の錬金術師、薔薇の君と呼ばれる件

 死に物狂い、とはよく言ったものだった。 夜明けの朝日を背中に浴びて、ボロボロになった私は五車学園に帰還した。

 身体中には傷跡があるが致命傷は受けていないし、錬金術で治療しておいた。 まぁ衣服がボロボロだったが。 いつもの光学迷彩白衣は燃え尽きていたので、また新造しないといけないなぁ……問題点も色々あったし、改良版を作っておいて正解だったか。

 

「門限は疾うに過ぎているぞ? 遅いおかえりだな、ツクヨ。 ……って魔族の返り血でボトボトじゃないか!?」

「ああ、校長先生……外回りはキッツイですねぇ……」

 

 校門前で仁王立ちしていたアサギさん、それを見て気が緩んだ私は倒れこむように意識を手放した。 そして、目が覚めたら自室のベッドの上だった。 隣にはほぼ全裸の、下着だけな姿の金髪美少女が添い寝していたが。

 

「おはよう、月夜」

「……ただいま、レベッカ。 変わりはない?」

「ええ、なんの変わりもないわ。 なんの変わりも」

「ところで、何勝手に私の許可なく。 ベットに潜り込んでるのさ……」

「今更じゃない、つれないわね」

 

 こっちの心臓に悪いってーの……部屋着に着替えさせてくれたようだしまぁ、今回はお咎めなしにしておこうか。

 

「今度、無断でベット潜り込んだら。 なんらかの罰与えるからね?」

「わかったわよ……。 留守中だった時のお仕事片付けておいたから、今日はゆっくり休みなさいよ?」

 

 そんな不器用な彼女の優しさを噛み締めて、私は惰眠を貪ろうと二度寝を始めるのだった。

 

 ☆

 

 二度寝したと言っていたな、アレは嘘だ。

 私は現在、「私だけの箱庭」に引きこもって積みラノベや積みゲーを満喫していた。

 それらに飽きたら、自堕落にゴロゴロして今回の反ニュートン力学の論文、雛形を書いたり、東京キングダムの情勢に対しての報告書等いろいろ作成した。

 私は研究者で魔術師で、錬金術師、鍛治師で探求者だ。

 なんかこう盛り盛りなアレは気にしてはいけない。 少なくとも対魔忍ではないけどさ……なんで外回りまでやってんだろ、私は。

 まぁ、対魔忍に潰れられると困るから、仕事はするけどさぁ……あとは「賢者の石」の精製工程を終わらすようにと仕込みをしておいた。

 聖杯を用いてミスリル銀を錬成し錬金術による鍛治を始めた。 ミスリル銀を芯金にして硬度の高い魔金属で刀身を鍛えて、数時間かけて忍刀を打ち出した。 スクロールにしまい、あとでアサギさんに渡すことにしよう。

 魔術の研究も久々に行った。 試して実験を繰り返し、トライ&エラーを繰り返して虚数フィールドを生み出したあの日が懐かしかった。

 さてと、そろそろ知恵熱が出ても困るので研究等々を切り上げてシャワーを浴びて寝ることにしますかね。

 

 ☆

 

「やっほ、アサギさん」

「月夜か。 体調の方はもういいのか?」

「ええ、あと。 頼まれていた品です、コレです」

 

 私は寝る前に校長室を訪ねてアサギさんに忍刀を渡して説明をしておいた。

 

「呪詛も斬って祓えるようにできてますから、大事に使ってくださいよ?」

「呪いまで斬れるとは……凄まじいな」

「ミスリル銀と魔合金使ってますからね。 金属密度固定化の魔術も重ねがけしてますから、耐久力も天下一品ですよ? まぁ、敵に渡るようなミスはしないでくださいね?」

「今の忍刀がダメになったら使わせてもらうさ……鞘はないのか?」

「このペンダントが鞘です。 こうして……っと」

 

 赤い水晶のペンダントに忍刀の鋒を触れさせると刀は水晶に沈み込んでいく。 コレは最近作り出した亜空間ストレージだ。

 

「おお、魔術ストレージか……」

「この中にはそこそこ物を収納できますよ? 抗魔剤、回復薬、携帯食とかも」

「便利なモノだな……いくらだ?」

「試作品ですからお代は結構です。 と言いたいですが、使用感とかの報告をとかをおねがいします。 実戦で使ってもらわないと、問題点とか改良点を見つけられませんから」

「わかった。 そろそろ消灯時間か」

「そーですな、そんじゃまた明日」

 

 私は校長室を後にして自室に戻った。

 明日からはまた仕事が始まる、社会人は辛いなぁ……まぁ私は16歳なんだけどね? 

 

 ☆

 

「この口座に入金すればいいんだな?」

「ええ、代金諸々でこの値段です」

「む、なかなか値がはるな。 コストの都合上やむなしという事か……」

 

 五車学園の近郊、そこにあるとある喫茶店でふうまの頭領とお茶もとい、取引をしていた。 武器、忍刀《無銘》の代金支払いである。 そのお値段は約600万です。

 

「精製できるミスリルの都合上です。 私の術式でしか錬金できませんから」

「そういう事か……あのクラスの上質な武器なら納得はいく値段だが」

「ヘッドハンティングは無しで。 あなたと私はビジネスライクな関係とさっき契約結んだでしょうが」

「ふん、わかっている。 まぁ貴様から武器を買うために、そして五車学園に入れるようにする見返りに対魔忍の依頼を受けろという事だろう?」

「うちの頭領ともお話は付いてますから。 対魔忍を潰さない程度であれば見逃すとのことです」

「それほどまでに人手不足なのは貴様の働きぶりを見ているとわかる……俺より年下で気苦労の絶えん奴だ、ともな」

「う、うるせーですよ」

 

 私は契約という形でふうまと手を取ることをアサギさん、頭領に伝えた。 まぁ私の発言力がえげつないことになっているため、すんなり通ったが。彼の組織は、現代ふうま一党には利用価値がある。 というのも、ノマド、米連、対魔忍の組織力に対抗しうる唯一の組織がふうまの頭領傘下なのだから。

 対魔忍から将来有望に見られるダイヤの原石……粒揃いの生徒は渡さないが、私が見出していない対魔忍(ダイヤ)の卵ならば手を出してスカウトしてもいいとしておいた。

 

 あとは、彼が求めるノマドと米連の情報。 対魔忍側(わたし達)の関わる情報は渡さないが、其れ相応の価値の情報を抜くのは見逃すことにしている。裏切りを働けば、即座に彼に売ったある物がその命を奪う。 が、なんだかんだ言ってこの男が早々に裏切るとは思えないが。

 抜け道はあるかもしれない。 けれどハイリスク・ハイリターンな関係となるだけの話である……まぁ、わたしの責任がかなり重いけどね。

 

「はぁ、いっそのことあなたが対魔忍を率いて欲しいくらいですけど……頭領が脳筋組織(たいまにん)はつらいですから、ハイ」

「忠誠心があるのかないのかわからん奴だな……まぁいい。こちらは今月末から五車学園に非常勤講師として働く手筈だ。 まぁ、貴様のフォローも任されてやろう」

「こちらからも、よろしくお願いしますね」

 

 わたしはわざと彼の手を握った。 そして、ふうまの頭領は目を見開き、その瞳が銀色に輝く。彼の邪眼が何かを奪った時の反応だが、これは譲渡するために構築した魔術式なので問題ない。

 

「な、どういうつもりだ……この魔術式は?」

「ちょっとした実験です。 あなたの生命力が弱るとこの術式が新陳代謝を強制的に高めて怪我であれ、致命傷であれ……即座に快復させますよ?」

「貴様……何をしたかわかっているのか?」

「あー大丈夫ですムラサキさんの細胞を錬金術で再現しただけです。 それに、信頼するならあなたにも見返りが必要でしょう? もっとも、死なれたら困るだけですから」

「後悔しても知らんからな」

「後悔するくらいなら、あなたの手を取るつもりはありませんよ」

 

 悪い笑を浮かべてわたしは嗤う。 ふうまの頭領は困ったような、納得がいかないような顔をしていて苦笑いを浮かべていた。

 ストーキングされて拉致られるリスクよりも、こちら側に引き入れて仕舞えば裏切りのリスクよりも安心感の方が勝る。 わたしは今回の提案を後悔するのか、それとも……

 

「お館様、どちらにおいででしたか?」

「この先、手を組むことにした。 お前の進言もあったことだしな」

 

 俺はアジトで出迎えてくれた時子に今回の顛末を話した。

 

「対等であれば手を貸すでしたか」

「ああ、俺の体を錬金術で弄りやがったがな……デメリットは無しで致命者の快復か……ノイに診てもらったほうがいいだろうか?」

「では、数日後にアミダハラへ?」

「そうする。 では俺は休むぞ」

「ハッ、承知いたしました。 お休みくださいませ」

 

 後日、アミダハラにノイ・イズーレンの悲鳴が轟くことと相成った。 曰く、稀代の天才。 万能の錬金術師、薔薇の君と呼ばれる。

 賢者の石を生み出す錬金術師で、ノイが認める天才としてあの女の名前は西でも広まるのであった。

 

 ☆

 

 うぐぐ、寒気がした……風邪でも引いたかな? 

 ふうまの頭領が田中太郎の偽名で非常勤講師として五車学園にやってきた。 時子さんはパートの封魔忍だとか……封魔忍ってなんだよ、封魔忍て。

 そして数ヶ月の時が流れた現在、強化装甲《新月》の量産を始めることにしてみた。

 まぁロールアウトの作戦で、私の指揮下で運用してみた結果……東京キングダムの魔族の蔓延る一区画を更地にしてしまった。

 そりゃ自重せず、ロゼットランチャーとか30ミリ機関砲、ミニガン等々の超過剰火力なのはわかってるけどさ……ちなみに、その時の操縦者はレベッカだった。

「魔族撃滅スルゥゥゥ!!」とトリガーハッピーに成っていたのが恐ろしかった。 まぁ、戦力的に有効ということでアサギさんから量産を依頼されたわけで(新月を見てすっごいお目々がキラキラしていたけども)。

 とりあえず、堅牢で魔術も物理も効かないスーパーアーマーを評価するのは当たり前か。 まぁゲームだとこっちが無敵のクソゲーだろうけど、やり過ぎなくらいに頑丈な方がいいに決まってある。

 

 それに並行して研究を行ってきた結果。 テレポート・ジェムなる物も開発できた。

 足の裏で踏んで砕くと保存された術式が展開して、自分の思い浮かべるところに跳ぶことができる便利アイテムだ。まぁ、錬金術による身体分解と身体再構成は完璧に仕上げておいたし、着地できるようにしておいた。

 

 原案はシンフォギアとかいうアニメの錬金術師が使っていたアレである。 再現まで2年かかった……動物や魔族のオークを実験台にして。 分解の摂理を学び直し、探求した結果である。

 

 おかげさまで、爪先ほどの大きさの賢者の石で再現できるローコスト化もできた……動物とオーク? もちろん実験後のケアも十分している。

 オークに関しては一生遊べるくらいの金を渡しておいた。 まぁ傭兵で稼ぐよりもこうした実験で稼ぐ方がいいと思うけどなぁ……

 まぁ、犠牲者はいないので、大目にみてくださいな。さてと、実験の後片付けとかしないとなぁ……分解の摂理を自己で編み出したわたしは魔術、もとい錬金術狂いなのかな?

 

 わたしの補佐官は元米連の人が多いけど、おかげさまで増えてきている。 組織の長としては若すぎると思うんだけど……ねぇ。基本的にみんなにはご主人(マスター)と呼ばれている。 まぁ、奴隷じゃないのに何故なんだろうか? 

 

 ちなみに、古参謀のレベッカはわたしを名前で呼んでくれる……友達っていいよね! 近いうちに魔族の情報屋とかも雇ってみますかね? できることが多いと夢が広がる、そう思うわたしでしたまる。

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