長生きしたいけど、生来魔術のせいで生き残れるか怪しい私です。 作:スラム街のオーク
「レベッカ。 アレの相手は無理だよ……」
「そうね……ツクヨ。 撤退戦でいい?」
「何でノマドの首魁がここにおんねん!?」
「勢力下ですもの……仕方ありませんわ。 と言うより、いきなりハードミッションですわ!?」
「私が、ここにいることを忘れていないか、君たち」
疎外感を感じたブラック殿が私たちに話しかけてくる。 もう少し現実逃避くらいさせてください。
ノマドの首魁様を空気扱いにして現実逃避したい気持ちと道理を蹴飛ばし、彼に向き直る。 無茶でも何でも通す気概で臨まないと死ぬオチだぞコレは。
「お初にお目にかかります。 真祖の吸血鬼、エドウィン・ブラック殿。 私はツクヨ。 しがない錬金術師の小娘であります」
「慇懃無礼、貴族に対しての礼儀というわけかな? が、フランクに話したまえ。 似合っていないぞ?」
「グヌ……一応気を使ってるんですけどねぇ」
そっちを立てているわけではないが……と目で伝えるが伝わらんだろうなぁ……ただ、なんだ。とても好好爺な雰囲気出してるけど迸ってる魔力が、おっかねぇんだよアンタ。
「気を使うか……ならば私と少し遊んでくれないかね? 私が目をつけた者に狂いはないと証明してもらいたいのだよ……不死と言うのは究極に退屈でね……」
「いつから目をつけられていたので?」
「君の体に聖杯が宿っていることは予言にあったことだよ。 魔界では有名な伝承でね……ちょうど君が生まれた年に聖杯が現世に降臨すると……それと、ドローンだったかな? 君が飛ばしていたと思うが、目障りだったから全て潰してしまったよ……すまなかったね」
魔界の予言……調べた通り、それで聖杯に勘付いたわけだ……! てか、ドローン全部落とされてたのかよ!? アレ一機幾らすると思ったんだよこいつ……。
「レベッカはキリンとリディを連れてアサギさんの捜索を頼む。 私の本気は味方の被害を抑えれないのは知ってるでしょ? ここで、私のせいで君たちを危険に晒すのは非常に癪だからね」
「了解、生きて帰ってこなかったら桐生にふた○りに改造させてから、蘇生させるから」
「それだけは、ふ○なり改造はマジで勘弁してください……それに検査とか理不尽なゴリ押しで桐生が、朝まで犯されそうだから!」
「大丈夫よ、ムラサキがね。自分以外の女を犯すかそれに類する事をしたら一生口を利かないって脅してあるらしいから」
「……こんどムラサキさんにミスリルハルバードでもプレゼントしよう」
軽口を叩きながらも私は三名をに指示を出してこの場から離脱させる。 律儀にもブラックは私の準備を待ってくれていた。
「私を飽きさせないでほしいな……では征くとしようか」
ブラックの身に魔力の流れを感じる。 間違いない、重力を操るあの異能を待機させている筈だ。正直言って手札全部切らないと生き残れなさそうだ……腹を括ろうか……。
「出し惜しみは無しだ。 私の全力を以て貴方に当たらせてもらう」
「ほう、それは楽しみだ……君は私を殺せるのかな?」
私は完全な不死殺しにまで至れていない。 エドウィン・ブラックにある傲りにつけ込んで殺しきるなんて到底夢のまた夢の話だ。こいつの不死性は真祖ゆえに、完全な吸血鬼ゆえの不死。
銀の弾丸もニンニクのアレルギーも死徒とされる吸血鬼どもと違い弱点はない。錬成も今の私では、全力術式も軽く抵抗されるだろう……星のマナを弾丸にしても不死の「概念」を捻じ曲げれるほどの「権能」クラスの攻撃にはならん筈だ。
アサギ3での顛末は井河アサギと甲河アスカが協力してアスカの対魔粒子砲の全力で滅んだ。 対魔粒子はマジな対魔のチカラを持っているんだよなぁ……私の体もあるけど微々たるもので、かの人を滅ぼせるもんじゃない。
とにかく、概念とも言える不死をカッ消した対魔粒子砲なんてものは
で、私は対魔粒子を持っているが頼りないから、他の対魔のチカラに目はつけてある。 ラピス・フィロソフィカス……某シンフォギアの錬金術師が賢者の石を基盤にして生成し、纏っていた《ファウストローブ》に使用されるものだ。
ありとあらゆる不浄を焼き尽くす輝きとラピス・フィロソフィカスの仮説を立ててみたが……私の作り出した賢者の石の特性は「死と別ベクトルの力を持つ生命力の結晶」とも言えるもの、私の聖杯はその生命エネルギーを「万能のエネルギー体」の霊力に変換するわけだが。 つまり、賢者の石は、完全な不死は実現できなくともムラサキさんが持てばその細胞の不死性が天元突破すると仮説を立てている。
愚者の石はその真逆。 「死を加速させる不浄の結晶」だ。魔族の魔力は元々「不浄の穢れ」とも言えるそれだ。 ブラック氏の不死は概念な訳だから、愚者の石によるマイナスエネルギーの強化を受け付けないだろうけど。
つまりはまあ……プラスの生命力の塊である賢者の石のエネルギーを加工して、不浄を焼き尽くす輝きに変換してるってところか? 私はその仮説を立てて、探求を進めてきた。 で、未完全でもその輝きを有するものを創り出した。
「
スクロールから引き出したのは赤い銃身の黄金銃。 見た目は下品だが、金を素体に貴金属を魔合金属に錬成してから加工したからこんな色になっている。 断じて私の趣味ではない。 見た目は銃身を覆うように噛み合った金色の装甲を持つコンテンダーをベースにした感じだろう。 弾丸は……ブラットマテリアルを使う。
ブラットマテリアルは私の血と賢者の石を錬金して創り出す生命エネルギーを増幅した赤い結晶状の延べ棒で、噛み合う装甲を展開してそこにブラットマテリアルを挟み込むように装填する。 また、変形機構も組み込んでいるので……銃から剣に変えることが可能だ。
銃形態はアルケミック・ガンナー、剣形態はアルケミーソードと名称をつけてある。剣身は噛み合う装甲を展開、銃身を縮めてから接続されているブラットマテリアルからエネルギーを銃口に指向させる。 そして、光子状に迸らせてビームサーベルみたく使うようにしている。 グリップが変形時に可動するから便利な仕上がりである。
「では、加持谷月夜……推して征く!」
私は黄金銃を構えて引き金を引く。 夜闇を切り裂いて真紅のエネルギー弾が放たれた。 煌めく弾丸は空で弾けて錬成陣を描き滞空する。 まずは地の利を相殺する!
「そんな使い方もできるのか……なるほど、これで私と同じステージに立った、と?」
「頭の上から大人しく攻撃されるのは愚者くらいですよ? まぁ単に。 貴方が頭上にいるのが癪だったってのもありますが」
跳び上がり、錬成陣の上に私は立った。 これは足場にできる錬成陣なのである。 もちろん、ここでなら空気を錬金して金属にすることも可能だ。
「面白い小娘だ……私が上にいるのが癪とは」
余裕たっぷりにくつくつと目の前の精悍な男は嗤う。 まぁ、癪だったのは確かだけども。絶対にその余裕の笑みを引き剥がしてやると心に誓いながら引き金を絞る。
「傲り……強者の特権ですよね。 ただ、ヒトを侮ると痛い目見ますからね?」
「ならばやって見せてくれ給え……豪胆な錬金術師よ」
ブラックはそういうと、無数の黒い魔光弾を作り出してこちらに殺到させる。 ふむふむ、簡易解析でサーチすると内面に向けてベクトルが進む、引き込むチカラがかかっている魔光弾だな。 触れたら圧削されるわけだ。
私は焦らずに照準を合わせると、引き金を引く。 銃身に刻まれた錬成陣が光り、弾丸のエネルギーを調律。
魔光弾が炸裂した時に術式を展開する弾丸を創り、放つ。
全弾が黒い魔光弾と衝突、即座に術式を展開して、術式はブラック氏の魔光弾内部に侵入。 内面に向かうベクトルの内から外面に向かうベクトルの指向性エネルギーをぶつけて対消滅させて相殺した。
「ほう、ではこれならどうかな?」
お次はブラック自身の体から魔力が伸びる。 その全てが鋭利な純粋魔力の蔦だ……ヤバい!
「《荊姫》ッ!」
いつも通り等価交換、質量保存の法則をガン無視、全力の魔力で空気を錬金。 鋼鉄を創り出すとそれを基盤に荊姫の術式錬金。 魔力の塊を迎撃させつつ後ろに黄金銃を向けて発砲。 新たに錬成陣を空に描いてそっちに跳躍した。
荊姫で迎撃できないと直感的に悟って回避したわけだが、あの魔力の蔦は相殺しにくいぞ。 鋼鉄の蔦を輪切りにしてくれたからな……クソッ
黄金銃を剣形態に変形させてブラックの魔力の蔦を切り裂き無力化するが、ドンドン数を増やしていく……無駄を少なくするために、魔力による身体強化そして魔導結界を張って魔力によるダメージを受け去なす。
「ほぅ、何が狙いかな?」
「
號、と風が迸る。私の聖杯から零れ落ちる霊力を魔力に変換して放出する。刀身の燐光が黄金の風へと変貌を遂げ、私はそれを天に掲げる様に構える。
「ほう、こけ脅しではないな。素晴らしい魔力だ」
「これならどうです、私の切り札其の一ィィィィ!
そのまま振り下ろしながら、聖なる光なんてものじゃないただの暴風の暴力でブラックを魔力蔦ごと切り裂いた。が、奴は何事もなかったかの様にその場に佇む。
だが、それでいい。ブラックの攻撃パターンを解析して理解した私は禁忌を使うことにした。キリがないから一撃でカタをつけよう。 でも、これやったら燃え尽きるんだけどね……服が。
黄金銃から枯渇したブラットマテリアルを再装填して構えて撃つ。 弾丸はリフレクター《ブリガンディ》。 魔障壁を放つもので魔力によるダメージを抑える分厚い魔装障壁だ。
「何をするつもりかね?」
「貴方の根城ごと吹き飛ばします」
『ツクヨ、アサギさんを確保したわ』
『了解、ちょっとのま通信できなくなるよ……黄金錬成を使う』
『私たちは退去済み。 派手にやっちゃいなさいな』
テレパスでレベッカと連絡を取って私は魔力を集める。 龍脈から星のマナを吸い上げて、胎内の聖杯から膨大な霊力を溢す。星のマナと霊力を錬成。 大気中でから空気を集めて、超高温超高圧で圧縮する。 水素をヘリウムに転換させてから、卑金属の基礎を作り出し、そこから転換を繰り返していく。
躍動する、蠢動する。 スパークが弾けて、ノイズが響き渡る。 世界が軋む、身が焦げる。 練って、錬って、煉る。
「これが私の最大火力……大気中での黄金の錬成」
「こ、これは……流石に予想外だよ、錬金術師」
「理解したか? ならば……燃え尽きろ!」
私の頭上には膨大な熱量の魔力の塊……魔術的核融合炉を生み出した。 私の体は錬金術の影響を受けないように再錬成しているから、問題ない。服にまでその術式を施していないから……火球を支える左腕の袖から先、服が一気に燃え尽きてしまった。
つまりは、私のもろちちどころか全裸状態である。 白衣も同様、うら若き乙女の胸を魅せるサービスなんてそうそうするもんじゃない。つかテメェのせいで空飛ぶ痴女だよこっちは!! そんな八つ当たり気分で左手を振り下ろし、まるでツングースカ級のエネルギーを孕んだ火球をエドウィン・ブラックめがけて投げ放つ。
「くっ、此処は退こうか……楽しかったよ、ツクヨ……!」
闇に溶け消え、エドウィン・ブラックは引いていった。黄金錬成、その火球は対象を見失い……東京キングダム、ノマド首魁勢力下の廃ビル郡中心部に直撃して爆ぜる。
その日。 人々は朝方に、地上で金色に輝く太陽を見た。
夜明けの太陽よりも神々しく輝く光を。
轟音と爆風が巻き起こる。 爆裂音と破壊の不協和音が私の耳を痛めつけてくる。 まぁ、この程度、問題ないけどね。
やがて、光は晴れて、朝焼けに東京キングダムが照らされる。 黄金錬成の余波は、ビル群を丸々削り取った。 ビル郡の屋上は軒並み吹き飛んで、あたりに破壊をまき散らした。
私の手には……
「ほんっと、割に合わないねぇ……」
米粒ほどの黄金がちょこんと、乗っていた。