オーバーロードと坊ちゃん   作:おしるこをしるこ

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魔導国建国後、もうすぐ百年が経つ。
そんな中、ツアーの口から語られる。

「そろそろ揺り返しが起きる」

その言葉にナザリック地下大墳墓は最大限の警戒をするが……。


坊ちゃんと爺

何も無い荒野を二つの影が駆ける。

 

一つは全身をライトブルーの甲冑に身を纏う若き侍であり、もう一人は夜の闇の如く漆黒の髪に骨の如く白い肌を持ち上質なローブに身を纏う--そのことからこの者が高貴な身分であることを伺える--少年。

 

かつて一つの大森林があった場所であったその場所は【プレイヤー】と呼ばれる者たちにより、燃え…爆ぜ…破壊された。理由は恐らく我らが拠点である【ナザリック地下大墳墓】

 

 

だがとあるマジックアイテムの効果で人間の姿に擬態したライトブルーの昆虫の武人であるコキュートスにはそれらを見て感傷に浸る余裕などなかった。最優先事項に比べて些事でしかなかったからだ。

 

コキュートスの最優先事項とは自らの右手に握られた小さな手の持ち主だ。まだ幼く、その手に比例して力も小さい。

 

だがコキュートスはその力持たぬ者を弱者とは思わない。それは自身が所属する勢力の者ならば誰だってそう認識するはずだ。いやそうでなければならない。そうでなくては我らは【守護者】を名乗ることを許されやしない。

 

 

 

 

「ねぇ、爺。父上たちはいつになったら来るの?」

「……坊ちゃま。アインズ様を始め我らは他の【プレイヤー】たちと戦っておられます。それが終わるまではこの私めが坊ちゃまをお守りいたします」

少年の問いにコキュートスは魔法により人間同様のしゃべり方に偽装された声で答えた。

 

 アインズの出した命令に従いコキュートスはこの者を連れてかつて【トブの大森林】のあった場所に転移した……いやせざるを得ない状況となった。転移魔法を使った吸血鬼は珍しく『若様を絶対に守るでありんすよ。コキュートス。こっちは任せてくんなまし。そして坊ちゃま……どうか無事で』そんなことを言った。

 

あの----守護者最強であるはずの----シャルティアが弱気になるほどの事態。

 

六人のプレイヤーによる【ナザリック地下大墳墓】への襲撃。

 

 

 

 

 

百年の揺り返し。白金の竜王であるツアーから得た情報通りであった。最初はニグレドによる監視が出来た。しかし途中で位置を特定することが出来なくなってしまった。

 

それはとある世界級アイテムの効果……だろうとの推測だ。

 

だが我らが主…聡明なモモンガ様----外ではアインズ様と呼ばねばならぬが----はその時点で現在の『守護者統括代行(・・・)』であるデミウルゴスに命令を出した。それは誰もが想定していなかったものであった。

 

 

 

「【ナザリック地下大墳墓】に所属する全NPCに告ぐ!事前に伝えていた可能性でも最悪の展開であるプレイヤーの位置を把握できない。よってこれより我々はプレイヤーたちを迎え撃つ準備を即刻開始する!」

 

 

それは緊急事態だという意味だ。

 

普段冷静なデミウルゴスですら冷や汗を掻き目には動揺の色が見られた。本来宝石を模した瞳もどこか輝きを失っているように思えた。

 

 

 

「モモンガ様、デハ私モ…」

 コキュートスは常日頃から主の剣……であろうとしている。そしてその役目を与えられた時から"武人"として"誉ある死"を望んでいた。それはつまり主の為に戦い、主の代わりに死ぬことだ。

 

 

(アインズ様ヲ守リ……死ヌ……ソレコソガ……己ノ役目)

 

「すまないコキュートス。お前を戦わせる訳にはいかない」

 

 それが主からの言葉であった。だがコキュートスにとって……【守護者】である自分にとって到底納得できないものであった。

 

 

「何故デスカ!主人ノ為二戦ワズシテ…」

「すまない。コキュートス、お前に一つ頼みたいことがある」

 

 そう言って頭を下げた。コキュートスはすぐに頭を上げるように伝えるも他の守護者たちは何も言わなかった。それは既にモモンガ様の胸中を知らされているからだろう。

 

 

「お前にはあの子を頼みたい」

「ソレハ……」

 

 

「コキュートス、お前の忠義は知っている。お前が武人としての死を望んでいることも知っている。その上で言おう。『私の息子を守護せよ』、そして『絶対に死ぬな』……」

 

その時のモモンガの顔をコキュートスはよく覚えている。

 

声が震えていた。

 

そのことからコキュートスは自らの主人が死を覚悟していることを理解した。

 

 

 

 

 そこまでして命令を下したモモンガ様の胸中はどれほどのものであったかは想像を絶するだろう。

 

 

(何モ言エル訳ガ無イ……)

 

 

押し黙るコキュートスに対してモモンガは最後に一言伝えた。

 

 

「だがもしそれでも万が一"その時"が来たら………」

 

続く言葉にコキュートスは迷いなく頷いた。

 

 

 

 

 そして今に至る……。

 

 

 

 

「爺…少し休もうよ」

「っ!駄目です。坊ちゃま」

 コキュートスは心を鬼にした。最優先事項は坊ちゃまの安全であり、致命傷を負っている訳でもないのに休む余裕はない。それぐらいならば少しでもナザリックから離れなくてはならない。

 

 

(ツアーのいる所にまで坊ちゃまを送り届けることが出来れば……坊ちゃまの安全は確保できる)

 

 コキュートス自身はツアーを信用はしていない。だが主であるモモンガがツアーを信頼すると公言したこともあるため従わざるをえない。

 

 

(そう……坊ちゃま(・・)安全は……)

 

 

 

 

 コキュートスは思考を止めなかった。

 

 

 

 

 

ニグレドによる監視すらすり抜けた連中だ。隠密に特化したプレイヤーの集団であればまだマシな類だろう、その場合は純粋な戦闘力は低くなるからだ。だがそれがモモンガ様の予想通りの世界級(ワールド)アイテムの効果であるならば最悪だ。

 

 

 

 

【ダブはオリーブの葉を運ぶ】

 

指定した対象の位置(・・・・・)まで無事送り届ける世界級アイテム。強引に分類するとすれば移動系のワールドアイテム。

 

とある大洪水の描かれた神話において一匹の送り出された鳩がオリーブの葉を咥えて戻ってきたことが由来のワールドアイテム。船がどこへ行けばいいかを案内できるだろう…という効果。

 

このアイテムを使用された側は世界級アイテムの効果を認知できない。"無事に送り届ける"性質ゆえに世界すら歪めてしまう。だから同じ世界級アイテムを持つナザリックですら外界にいたプレイヤーたちの接近に気づけなかったのだ。それに特化したアイテムゆえに。

 

奴らに侵入されるまで気づけなかったのだ。拠点型の世界級アイテム【諸王の玉座】が無ければ恐らく奴らの侵入すら気付けず、既に守護者の誰か…もしくは最悪の場合モモンガ様が討たれてから発覚した可能性も否定できまい。

 

幾ら智謀の王であるアインズ様といえど突然現れた敵対プレイヤーに対して即座に対処は難しい。そうなれば……。

 

(我ラ守護者は……敗北、死ンダモ同然。生キル価値無シ)

 

 

 

 

 

 

 

 

(セメテ……【守護者統括】デアッタ(・・・)アルベドガイレバ……)

 

だが現在【守護者統括】……だったアルベドはコキュートスのいる階層にて……持っていた世界級アイテムを没収された上に封印されている。

 

 

 

(……イヤ…坊チャマノ母君ガアノオ方デアル以上、協力スルノハ不可能カ)

 

 

あの場所で待ち続けたあのお方とアインズ様のご子息……。

 

世界級アイテムと【始原の魔法(ワイルドマジック)】の二つの効果が合わさったことによる奇跡。

 

 

世界の可能性は小さくない。その可能性を示した唯一無二の希望。

 

 

 

 

アルベドが良い感情を持つはずがない。恐らく殺意を向けるだろう。そこに流れる半分の血を憎んで…。

 

そのせいでアルベドはルべドを暴走させ……

 

ナザリックは一度崩壊の危機にまで陥ったのだから。

 

 

結果としては防げたが同じことが起きた場合、今のナザリックに二度目を防げるほどの余裕は無い。ましてやデミウルゴスと同等の知恵を持つアルベドだ。同じ対策は通用しないだろう。アインズ様も同じことは二度できないと仰っていたのだから。

 

 

 

 

(弱気二ナルナ。私ガ坊チャマヲオ守リスルシカナイノダ)

 

 

 

「おいおいマジかよ」

 

存在しないはずの声。そこにいたのは人間であった。

全身を----直観でしかないが恐らく----伝説級の装備に纏う戦士がいた。その両手、腰、背中などに武器を持ってなさそうなことから恐らくモンクのように格闘を得意とするクラス構成なのが分かる。

 

 

「貴様は!」

「あっ?あぁ……そうかお前はNPCのコキュートスか。大した擬態だが……悪いな。こちらもそれを見破る魔法のバフをかけられているから……。ま、無駄な努力ご苦労さん」

 

 

「爺……」

「坊ちゃま……お逃げ下さい。こやつは私が必ずや討ち取ります」

 

「へぇ……ワールドチャンピオンだった【たっち・みー】なら分かるが、NPC如きがこの俺様に勝てると思ってんのか……。【武人建御雷】よりは強いぞ。この俺様は!」

「……貴様ァッ!」

 

「爺!」

 その言葉にハッとしたコキュートスは激高した自身を落ち着かせるために咄嗟に毒を飲み込んだ。ほんの少しだけだが冷静さを取り戻す。

 

(落チ着ケ……私ガ冷静デナクナッタラ誰ガ坊チャマヲオ守リスルノダ!)

 

コキュートスは偽装を解いた。その姿が人間から虫の姿に戻る。

 

「【守護者】コキュートス。参ル!」

 

 

 

 

 

「やめて!爺を放してよ」

「あっ?何言ってるんだ?殺すぞ。まぁ後でお前も殺すけどな…」

 

 

貫手で心臓を貫かれたコキュートス。

 

 

 

 

 

 

(アァ……主ヲ守ッテ死ヌ……憧レテイタガ……上手クハイカナイ)

 

 

「起きてよ!爺!死なないで!」

 

 

(坊チャマ…?)

 

 

そうか……何故自分は戦うのか?

 

 

 

 

 

「コキュートス。それでも万が一の時が来たら……」

 

 

 

 

「私の為でなくあの子の為に死んでくれ!」

 

 

 

 

 

「ッ……ガッァァァァ!!」

「何!?」

 覚醒したコキュートス。心臓を貫かれただ絶命を待つだけだった肉体が動いた。精神が肉体を凌駕したからだ。その原動力はただ一つの想いからであった。

 

 

忠義

 

 

ただ主の為に生きる(・・・)

 

 

(ソウダ!私ハ戦ウ!忠義トハ主ノ為二死ヌコトデハナイ!死ヌ…ソノ最期ノ一瞬マデ主ノ為二戦ウコトダ!)

 

 

「ウォォォォォォッッ!!!!」

 コキュートスは残された腕で一振りの刀を握った。刀の名前は『斬神刀皇』。切れ味が最も鋭いのだ。その刃が男の首の肉に……。

「テメェェェェェッッ!!」

 

男は咄嗟に刀身を掴む。首に食い込む刃を致命的に達する寸前で掴んだ。だが左手は刃に鋭さに負け、数本の指が切り落とされる。

 

「痛ぇぇぇぇぇぇっっ!!」

 

男は絶叫。だが流石にレベル100のモンク。即座に拳を作り----指が無いので拳を作れない----殴りつける。殴打。殴打。殴打。

 

 

「何故だ!?何でお前は倒れない!」

「…」

 

殴打、殴打、殴打。だが再び刃が男の首の肉に侵入する。

 

 

「いい加減、死にやがれ!」

「…」

 

 

殴打、殴打、殴打!男の首の骨にまで達する。後少しで切り落とせる程までに。

 

 

 

「死ねぇぇぇぇっ」

(絶対二斬リ落トス!コノ命、ココデ使ワズシテ何処デ使ウト言ウノダ!)

 

 

 

「爺ぃぃぃぃぃぃぃっ!!!」

 

 

次の瞬間、目の前に広がった光景は……。

 

 

 

男の首が宙を舞い、自らが爺と慕う者が地に伏した姿だった。

 

 

 

 

 

コキュートスの持つ刀が地面に投げ出され、無機質な音を出す。

 

 

「あっ……あ……あぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

急ぎ駆け寄った。冷たいはずの肉体に"冷え"が消失していた。

 

 

 

「爺……ごめん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何が『ごめん』だ!クソガキ」

 その言葉と共に子供が吹き飛ばされる。頭部に強い衝撃が走った。

 

何度も地面に叩きつけられた体がようやく止まると倒れた姿のまま声の方向へと顔を向ける。顔しか向けないのはダメージを受けすぎて立てなかったからだ。

 

「何故?……死んだはずじゃ」

「あぁ。死んださ。おかげで蘇生アイテムが消えちまったじゃねぇか。とんだクソ野郎だ。この虫はよぉぉ!」

 

そう言って男は地に伏したコキュートスの頭部を蹴りつける。何度も何度も。

 

 

「やめろよ」

「あっ?」

 男は子供の言葉に苛立ったのか、死んだコキュートスの頭部に向けて唾を吐き捨てた。

 

「!?っ…」

「こいつ解体した後でてめぇ殺してやるからよ。それまで待ってろよ。おチビちゃん」

 

子供はその時、何か自身の中にどす黒い感情があふれ出したのだが分かった。

 

 

 

「■■■■■■■■■■■■」

「?今何ていいやがった?」

 

 

 男は思わず後ずさった。目の前で倒れていたはずの子供から異常な空気を感じ取ったからだ。

 

 

「■■■■、■■■■■■■■……■■■■。■■■■■■■■■■■■、■■■■」

「!?何だ……おい」

 男は自分が怯えたのかと思ったがそうではない。それが証拠に男は言葉を紡ぐことが出来てしまった。

 

 

だから男は気づけなかった。戦士でありながら直感を磨いていなかった。もし直感を鍛えていればこうはならなかっただろう。立てるはずのない子供がまるで糸で操られた人形のように動いた違和感、それと自身が動くことすら出来ないことに。

 

 

「おい、お前!それは!」

 男は幻視した。まるで……

 

 

 

この世界の憎悪を全て凝縮したような(・・・・・・・・)ナニカを。

 

 

 

 

そしてそのナニカが男に向かって右手を向ける。そのポーズに思わず一人の魔法詠唱者を思い出した。

 

 

 

 

「<大災厄(グランドカタストロフ)>」

 

 

無機質な声が聞こえると同時に、男の全てが純然たるナニカによって滅却された。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 子供は周囲一帯のみが"消失"したような景色を見た。

 

 

何も感じなかったのだ。

 

 

この虚無の空間を見ても何も……。

 

 

 

 

その少年の心はこの時、虚無となった。

 

そしてその瞳には……

 

誰の姿も無かった。

 

 

「……コキュートス(・・・・・・)

 

 

 

 

 

まるで"世界"から誰もいなくなったようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

六人のプレイヤーの死因

 

 

 

一人目

開戦直後は形勢有利に戦うもシャルティアの奮闘により相打ち。

 

 

二人目

ガルガンチュア、アウラ、マーレによる連戦し第五階層突破寸前にて、援軍に来たセバスにより討たれる。

 

 

 

三人目・四人目(女)

第七階層を突破するも、第八階層にてルべドとの戦闘で死亡。ルべド自身は大した被害は無い。

 

 

四人目

モモンガと単騎で戦い敗北。モモンガ自身も重傷を負う。

 

 

五人目(モンク職)

二人目と共に行動するも形勢不利だと感じ逃亡、セバスに追われるも逃げきった。

コキュートスが戦った相手でもある。

自身を強いと思い込んでいるが、よくて上の下クラスの戦士職。

 

 

六人目

パンドラズアクターによる奇策(宝物庫に転移し、至高の四十一人を模した化身を暴走させる形で自分ごと討たせた)により死亡。

 

 

 

 

 

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某鎧さん

 

「やけに遅いな。迎えに行こ」

「えっ、アレって……。彼の死がトリガーに?うん、勝てない」

「仕方ないから。アレを抑制かコントロールするアイテム作ろ、うん。そうしよう」

「はぁ。迎えに行かないといけないのか……一応約束だし」

 

 

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ユグドラシルと異世界ではクラス取得の仕様が変わっているとあったので一つの可能性を書きました。

 

 

某有名漫画の主人公が親友を目前で殺害されて激高し黒髪から金髪になり、覚醒しパワーアップする。それのイメージです。

 

 

坊ちゃん

一応主人公。

目前で「爺」と慕うコキュートスを殺害されたことで、プレイヤーに対して強い憎悪を持ちそれが極限に達し、『ワールドディザスター』のクラスを取得。

ただし坊ちゃんは生まれが特殊過ぎるため事前に『ワールドコネクター』を取得している。そのため様々なものを犠牲(感情など)にユグドラシルと異世界の法則を結び付け、そこに極限までの憎悪が加わったことでこのクラスに目覚めた。一時的にグランドカタストロフを行使できたのはワールドディザスターを最高レベルまで上げた訳ではなく、自身が持つクラスの一つがジーニアスであるためそれによって"一時的"に最高レベルまで引き上げた感じ。

威力や消費MPなどが多すぎるあまり感情などを代用して消費した感じ。

 

本来ドラゴンでない坊ちゃんがワールドコネクターを取得できるはずがないのでしが、そこは『生まれが特殊過ぎる』ためです。

 

幼少期のイメージは特に固めていないですが、成人後のイメージは某漫画の四番目?に強い某ホロウさんです。

 

 

コキュートス。

もう一人の主人公。

すごいNPC。この時既に子供が一人いる設定。

相手は……。

作者が好きなキャラの一人。ただしセリフを書くのは非常に面倒くさい。

 

 

 

 

 

 

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