ナザリック地下大墳墓 第十階層
そこに
「司書長」
「おや若様。また本をお読みになられに?」
「うん。また読ませてね」
「はい。それで何かお探しですか?」
「今日は自分で探してみたいんだ」
司書長は小さく微笑むと下がった。
ここの管理を任されている。そのために仕事に戻ったのだが……かつてのスクロール制作のようなことは既に終了しているため、自分の作業に戻るにしても文字通り「管理」しているだけだ。そのため司書長は少年が絶対に読まないであろう本棚の整理をすることにした。作業中に
(随分と大きくなられましたね。若様。一度、モモンガ様……----かつてはアインズ様と名乗られていた----が生まれたての若様をお連れして下さった時から、今のように本を読みに来るまでの間はお会い出来なかったですからね。……といってもモモンガ様が来られる度に『育児』に関する本を探させて頂いた時にご様子の方は聞いていたのですがね……)
やがて少年は本棚の中から一冊の本を取り出した。
(おや、あの本は確か…【武人建御雷】様の本棚でタイトルは確か『刀剣全集』。前回もあの本をお取りになられていた。若様は刀剣がお好き?……あぁ、そうか!)
そこで司書長は納得する。コキュートスといえば刀を好んで使う。普段はハルバードをよく持っているが若様が生まれた時から刀を持っておられる。
(コキュートス様の影響ですね。……将来が楽しみですね)
司書長に許可を貰った少年は小さな体に反して椅子を引いてフワリと座る。
「……」
ペラ
ペラ
ペラ
その瞳には好奇心と満足感が溢れていた。
◇ ◇ ◇
◇ ◇ ◇
(随分と熱心に見ておられる。うん?…)
最古図書館のドアが開いた。司書長は誰が来たかを顔を向ける。
(……あの方が来られたということは終わった後に挨拶した方がよろしいですね)
『刀剣全集』を熱心に見る少年。その背後に一人の少女が立っていた。すると背後にいる少女は突然少年の両目を手で隠した。
「だーれだ?」
「ソルナお姉ちゃん」
一度ため息が聞こえると少年は後ろに
「なーんだ。つまらない。私ルプーさんによくされるけど分からないよ。何かコツでもあるの?」
「お姉ちゃんの声は可愛いからすぐ分かるんだよ」
「へへ、そっか……」
そう言ってソルナは照れ笑いをした。頬が赤く染まり、彼女の長い銀髪とも相まって明るい印象を与える。僕はそんな彼女の笑顔が好きだ。
「何か用事あったの?お姉ちゃん」
「うん。坊ちゃんと遊ぼうと思って探してたんだけど、『闘技場』の方には見えなかったから多分こっちかなって」
「アレ?…僕セバスに言ったはずだよ。『最古図書館』に行くって」
「私は聞いてないよ。あぁ……お父様め……直接会って伝えようとして<
「あまり心配かけさせちゃ駄目だよ。この前勝手にエ・ランテルに行って本気で怒られていたよね?」
「まぁ…うん」
普段は活発な彼女がここまで歯切れの悪い返事をするのは珍しい。これは父親だけでなく母親にも本気で怒られたことが原因だろう。彼女マザコンだしな。
「いくら欲しいものがあるからって勝手に出ていくのは不味いよ。爺の顔も真っ青になってたよ」
「いや、コキュートス様の顔は元々真っ青でしょう」
そう言って二人して笑う。
「あー、それでさモモンガ様から聞いたんだけど、あの話って本当なの?」
「あの話?」
「坊ちゃんの『護衛』の件。正式に誰かをつけるって話…」
「うん。僕は聞いてないけど多分そうだと思うよ。今は爺がいてくれるけど、本来爺は忙しいしね。誰になるかまでは聞いてないけどね」
「あーあ。私が坊ちゃんの護衛だったらいいのになぁ。そうしたら街とか好き勝手行き放題なのになぁ…(そうよね。コキュートス様は忙しいものね)」
「お姉ちゃん。本音出てるよ」
「あはは……ごめんごめん」
「それで何して遊ぶの?」
「うーんとね!」
二人は最古図書館を後にした。
ソルナは坊ちゃんの手を握り廊下を走る。
その顔には笑顔があった。
私たちは子供だった。
この時はまだ、子供でいられた。
でもこの時は知らなかったのだ。
この手が坊ちゃんの笑顔を守るにはあまりに小さいなんて……
本当に知らなかったんだ。
きっと私は馬鹿だったんだ。
みんなみたいに強かったら、賢かったら……
守れたのかな。
ソルナ
銀髪の少女。
坊ちゃんより年上。
母親と同様に愛嬌がある。
メイド服を着ている。
ヒント:父親は銀髪、母親は愛嬌のある人。あとメイド服。