夏油傑?いえ、夏油スグリです   作:ロールクライ

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最後の呪い合い(2)

 

 

「さあ、ヒナ。守り切れるかな。」

「守って見せるわ。」

スグリは游雲をヒナに少しだけあてる。

その影響でヒナの態勢は崩れた。

スグリはヒナのその瞬間を逃さない。すぐに蹴りをあてる。

ヒナは後ろに吹き飛ぶ。

吹き飛んだヒナの上には呪霊が迫ってきており、そのままヒナに降り注ぐ。

「終わりだね。」

「まだ・・・。負けてない!」

「・・・負けだよ。君はもう動けない。・・・それでも念のためか。」

スグリはヒナを蹴り、遠くのビル群のあたりまで吹き飛ばした。

「・・・これで最後だ。先生。」

"夏油スグリ・・・。"

「先生。・・・生徒とのお遊びはもう終わりだ。剣先ツルギは予想以上に弱っていておそらくこのままいけば死ぬし、他三人もあなたを助けることはできない。」

夏油スグリの言葉を聞いて先生は黙る。

"お遊び?私は生徒たちと助け合って、一緒に進んできた。"

すうっと息をのみながら言う。

"・・・私は「くだらない。」・・・え?"

「どうせ、あーだこーだ言ってその後にだからだから、君を助ける。みたいなことを言うつもりなのだろろう?・・・くだらないね。もう覚悟を決めた私に先生の手助けなどいらない。じゃあね。先生。最後に話せてよかったよ。」

夏油スグリは先生に歩いて近づく。

ドカーン

爆発音がした。発生源は地面の下。地下水道だ。

先生と夏油スグリの前に現れたのは・・・剣先ツルギだった。

「まさか・・・全ての呪霊を?いや違う。地下にはまだ呪霊がいる。・・・まさか、君。強行突破してきたね。おもしろい。やってやろう。」

夏油スグリはすぐに游雲を構える。

そこに瓦礫が飛んできた。

剣先ツルギと先生の方向ではない。

空崎ヒナを飛ばした方向だ。

夏油スグリが振り向いたその先には呪力をまとったヒナがいた。

「空崎ヒナ!」

呪力をまとったヒナは夏油スグリの方に走り出す。

スグリもそれに応じるように走る。

夏油スグリはそのヒナの移動速度を見て考える。

対して速くなっていない、と。確かに、ダメージを多く負っているとはいえ、呪力で身体を強化すれば桁違いの身体能力を手に入れるはずだ。なのにヒナの速度は戦い始めたときのヒナの移動速度よりほんの少しだけ速い程度だった。さらに言えば、こちらの低級の呪霊の攻撃でかなりのダメージ負う今の彼女を見る。

これにより、夏油スグリは自身が考えたこの世界においての呪力の仮説を確信した。

 

その仮説とは、この世界の強者ほど無意識に呪力を使っているということ。この世界は強者に呪力をもつことが多い。だが、決して呪いは見えず呪力をまとうことはない。

だけど、呪霊操術で取り込んだ存在が固定された呪いは見える。これは無意識に体が呪力を使っているのでは?というものだ。だが、この仮説は夏油スグリにとって信じるに値しないものだった。

なぜなら、それは先ほど言った通り、呪いを捉えることができないから。呪力は無意識でも見えるはずだ。ではなぜ、確信したのか。それは無意識に呪力を制限していたから。そう思ったからだ。夏油スグリはその制限という縛りがあるからこの世界の住人は銃弾を受けてもそこまで大事に至らないと。その制限がなくなれば、身体能力は上がるには上がるが、体はより脆くなるのでは?そう思ったからだ。

 

「君は呪力の制限を解除するべきではなかったと思うよ。なにせ、君は瀕死だからね。」

空崎ヒナの手には銃はない。これは彼女の意志なのか。ただ単に、彼女が銃をなくしたのかわからないがそのままの状態で来たのだろう。

「君は銃がないと戦えないだろうに・・・。それでも先生がやられるのが惜しいか。」

ヒナは拳を握る。

夏油スグリのもそれに合わせて游雲をしまい、拳で対抗する。

 

だが、次の瞬間には夏油スグリは吹き飛んでいた。

夏油スグリの誤算は拳で対抗したこと?それもあるだろう。

先生のついた剣先ツルギを放置したことこれが彼女の誤算だ。

剣先ツルギに夏油スグリが目を逸らした。その一瞬が命取りとなった。

そして夏油スグリの仮説は正しくはない。

これは彼女がヘイローというものを。神秘を知らないからであるのだが、それはともかく。空崎ヒナの拳はとどまることを知らない。

夏油スグリに直撃した。もちろん、多少呪霊で防いでいるものの威力を軽減することがせいぜいだった。

なぜなら、直撃した瞬間に黒い閃光があたりを走ったから。

 

黒閃それは呪力を用いた戦闘まれにおこる現象。打撃との誤差0.000001秒以内に呪力が衝突した際に生じる空間の歪み。

衝突の際はその名の通り、黒く光った呪力が稲妻の如くほとばしり、平均で通常時の2.5乗の威力という威力になるというもの。

そしてこの黒閃が決まったとき、術者は一時的にアスリートでいうゾーンに入る。これにより空崎ヒナは120%の潜在能力を発揮している。

 

「黒閃か・・・。私でも過去に一回しか出たことがないよ。まあ、一回でもでれば十分だけど、そうか。相手が使うとこんなにダメージを負うのか。」

夏油スグリは自身のもつ呪霊が出した領域の近くまで吹き飛んでいた。

その瞬間、領域が崩壊した。

「は?」

夏油スグリが出した領域が使える呪霊。それは相手を倒すまで決して崩壊する領域ではない。そして、呪霊が消滅したことを感じることから理解した。

「小鳥遊ホシノ・・・君もか。」

夏油スグリの先には呪力をまとった小鳥遊ホシノがいた。

夏油スグリはすぐに游雲を取り出す。

小鳥遊ホシノも空崎ヒナと似たように違い盾こそもっているもののその手には銃がない。

小鳥遊ホシノの打撃を游雲で守ったときだった。

黒い光がほとばしる。黒閃だ。

游雲の三節混のうち、一節が壊れる。

小鳥遊ホシノは後ろに下がろうとする夏油スグリにすかさず連撃を加える。

その連撃を呪霊でそらしていく。

そのたび、小鳥遊ホシノの攻撃には黒い光が出てくる。

「・・・三連撃だと!?」

ホシノの三回目の攻撃で夏油スグリは態勢を崩す。

「しまった!」

小鳥遊ホシノの黒閃が夏油スグリに直撃した。

豪快に吹き飛ぶ夏油スグリ。

「・・・やるじゃないか。」

 

生徒4人が夏油スグリを見る。

夏油スグリの体はかなり限界がきている。

実のところ、反転術式を覚えているので回復はできるのだがほとんど使わないからかそもそも才能がないのか精度はよくないため、回復力はあまり期待できない。

「・・・いいだろう。」

夏油スグリはゆっくりと立ち上がった。

「なに?負けを認めたの?」

小鳥遊ホシノがそう聞いてくる。

「・・・まだあきらめてないさ。極の番うずまき。」

呪霊を圧縮し、高密度の呪力の塊を放つ技。

術式の抽出というものもあるが・・・一つを除いて抽出はしないという縛りを夏油スグリはする。

これにより、威力をより強力なものにした。

「だが、このレベルの攻撃を君たちがまともにあたるとは思わない。だから・・・。」

「まさか!」

夏油スグリは先生の方に向き、うずまきを放った。

4人の生徒はすぐに集まったようで先生を守るように固まった。

ドッガアアン

巨大な爆風。範囲はともかく、威力だけならミサイルよりも桁違いに高い威力。

「・・・まじでどうなっているんだよ。」

そこにはボロボロとはいえ、立っている空崎ヒナと小鳥遊ホシノがいた。

ホシノがいたから美甘ネルと剣先ツルギは気絶で済んだのだろう。先生も同じだ。

空崎ヒナも死にはしないだろうがホシノがいなければ気絶していただろう。

「もうやめてよ。スグリ。あなたの負けだから。」

「・・・うるさい。」

二節になった游雲をもち、2人に近づく夏油スグリ。

「私の大義は絶対なのだ。」

「でもっ・・・!」

「こうなったら、本来逃げるのが正しいのだろうね。でも、まだ幸い呪霊は534体いる。」

そう、夏油スグリはうずまきで全て出し切らなかったからまだ自分が戦えると思っている。

実際、小鳥遊ホシノも空崎ヒナも急な呪力の放出などを合わせて立っているのがやっというところだろう。

夏油スグリは游雲を二人に放った。

もちろん、ほとんど動けない二人はそのまま受ける。

 

夏油スグリはその間にも反転術式をまわし続ける。

ミゲルが逃走用に使った呪霊が祓われたからだ。

もうじき、聖園ミカがくる。

タイマンなら勝てるだろうが、このダメージだ。彼女との戦闘はきびしいとスグリは考えた。

「先生を・・・殺さないと。私の目的が。」

後悔はないはずだと自分に言い聞かせる。

今までいろいろやって取り返しのつかないことをわざとして言い聞かせてきたはずだ。

でも、相棒(空崎ヒナ)の大切な人。自分はあぶないのにすぐに前に出て犠牲なろうとする自己犠牲の精神の塊を殺すことなんてできなかった。

手が震えるスグリ。

「私にもし、前世というものがなければこうなることはなかっただろうね。もし、あの子が呪霊に殺されなければ、私は壊れなかっただろうね。」

夏油スグリはゆっくりと深呼吸をする。

「だが、ここまで来たんだ。私はやるべきことをする。」

夏油スグリが連邦生徒会長のかわりに頂点にたち、強者のみを導く世界をつくる。

それが夏油傑に似た夏油スグリの役目だ。

「さよなら、先生。」

游雲を振りかざしたその時だった。

銃弾が夏油スグリに飛んできた。

「・・・確かRABBIT小隊だったか?」

先生を殺せなかったことに安堵した自分と焦る自分がいる。

だが、焦るほうが本来の自分だ。

呪霊を出し、壁を作る。

「先生を殺すのに邪魔はいらない。」

ドオオン

近くで着地音がした。

現在そのような着地ができるのは一人しかいない。

「聖園ミカ・・・君も来たのか。」

「・・・。」

聖園ミカは黙ってこの状況を把握する。

「この状況。あなたが全部やったの?」

「そうだね。・・・呪いが私と同一判定ならそうだ。」

夏油スグリは游雲をもち、構える。

近くにはRABBIT小隊が近づく足音。

目のまえにはそこまで消耗していない聖園ミカ。

夏油スグリの負けはほぼ確定していた。

「まだやるの?」

聖園ミカがスグリに対してそう問う。

「愚問だね。負けそうでも私はやるんだ。」

「そっか。」

聖園ミカも構える。

隕石の危険はない。ここには他の生徒と先生がいるから。

最後の殴り合い。

どんだけダメージを受けていようと近接においてタイマンで夏油スグリの上をいく存在はこのキヴォトスにはいない。

聖園ミカも苦戦する。

一撃。また一撃と聖園ミカはダメージ負う。

RABBIT小隊は呪霊をぶつけている。邪魔はない。ここで聖園ミカを倒すとスグリは決めた。

しばらくして聖園ミカが膝をついたとき、夏油スグリがまとう呪力はなくなった。

身体能力が落ちたことを聖園ミカが見逃すはずがなく。

夏油スグリは連撃をくらった。

 

「・・・ごめんね。あなたも十分苦しんできたのは知っている。けど、私はここまでみんなを傷つけたあなたを許すことはできない。」

聖園ミカの攻撃が夏油スグリに降り落とされる。

 

しかし、その攻撃が届くことはなかった。

「・・・ゲヘナの風紀委員長。あなたがかばうのはなぜ?」

「まだ話をできていないから。もっと。もっとスグリには私たちを知ってもらう必要があるから。命を償う必要があるから。この我儘をお願い。」

「・・・いいよ。」

「え?」

聖園ミカはあっさりと許可した。

許可することは何もおかしいものではないのだが、ヒナにとってはとてつもなく不思議でたまらなかっただけどそれよりも先に言葉が出た。

「ありがとう。」

「うん。先生に言われたからね。私だってそこまで鬼じゃないし。」

「ねえ、スグリ。すっきりした?」

ヒナの顔をしてあきれた顔をあらわにするスグリ。

「何を言っているのかさっぱりだ。すっきりね。どちらかといえばしていないかな。」

「そっか。」

静かな空間。夏油スグリはすでに呪霊をしまっていてRABBIT小隊も戦闘はやめている。

「もう単刀直入に言うけど。戻って来てゲヘナに先生の権限を使ってくれるって言ってたし、私も今までの功績を理由にしてそういう権限を使うから。そして今までの罪を償って。」

「・・・戻れないさ。償うことも私にはできない。ヒナ、私の性格は知っているだろう?」

「けどっ!」

「ヒナらしくないな・・・。」

ヒナの顔は泣き顔でくずれていた。

夏油スグリはヒナの頬に手をあてる。

「ここまで私を助けようとしてくれてありがとう。」

夏油スグリがそう言ったときだった。

タン

一つの銃弾が夏油スグリの頭を貫いた。

 

 

 

 

 

 

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