蒼き地平に星はまた昇る   作:暁真

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ト……トリニティ……アイドル……????????????


第一楽章

 

「わ、私はえっと……その……」

 

 当然と言えばそうなんだろう、ミカは酷く動揺した様子だった。まあ当然か……って言いたいんだけど、正直動揺したいのはこっちも同じ。

 

「それより、どうして……?ね、ねえ……先生!?ルルちゃんも……どうして二人ともスクワッドと一緒にいるの……?」

「……色々あった、としか言えないかな。無論脅されてるわけじゃない」

「こ、こんなはずじゃ……」

「ミカ……」

 

想定外も想定外なんだろう。ミカの視界は明らかに泳いでいるし、手元も目で見てわかるくらい震えている。

 

「ねえ……どうしてこうなるの……?よりによって、こんな姿を……どうして……」

「……事情を聞いてる暇はなさそうだね、カタコンベが閉まるまでは……っ!」

 

また、爆風。咄嗟に先生とスクワッドを守るように聖歌隊を召喚し、防御行動を取らせる。この状態でも聖歌隊は無尽蔵に召喚できるが、大量に召喚すれば指揮が追いつかずキャパオーバーを起こしてダメになる。やっぱり真に指揮棒の力を使うなら奥の手を使わないとだめらしい。

 

「こっちだ!」

「聖園ミカに……マダムの言っていた捕獲対象もいるぞ!撃て!」

「まだそうなのちょっと面倒だなぁ!」

 

雨のように流れる銃弾の嵐をどうにか聖歌隊で受けきり、状況を確認。思ったより数が……多いな。

 

「助かりました……ありがとうございますルルさん……」

「……時間がない、二人とも、すぐカタコンベに入るよ」

「わかった。細かいことは後回しにしよう」

「……ミカ!細かい説明は帰ってからするからトリニティに戻ってて!」

「走れ!飛び込むぞ!」

 

念のため防御に使った聖歌隊を消滅させ、スクワッドのリーダー……サオリに続いて私と先生はカタコンベに飛び込んだ。

 

 

「はぁ、はぁ……セ、セーフ……」

「……まだ閉じきるまで猶予がある、追手が来る前に急がないと」

「移動するぞ、此処から先は道が複雑だから気を付けた方が良い」

 

なんとかカタコンベに飛び込むことには成功した、此処からはスクワッドの案内に従おう。追手用の時間稼ぎに聖歌隊を展開した方が良い気もするけど……って。

 

「っ……あっつ……って、また!?」

「ルル!?……って、これは」

「な、なんか急に出てきました……」

 

さっきと同じだ、また聖歌隊が1体勝手に出てきて道案内を始めた。

 

「……えーっと、あれ何処への道かわかったりする?」

「……アリウス自治区に繋がる道だ、だがなぜ道がわかるんだ……?」

「私の方が知りたいよ……」

「とりあえず……どっちを信用すればいいのかな?」

「……あれが間違えたら私たちが修正する、それでいいでしょ」

「わかった、行こう」

 

さっき話を聞いた感じじゃ残された時間は限りなく少ない、急がなきゃ。

……にしてもなんでこいつはアリウスへの道がわかるんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……だ、大丈夫です!上がってきてください二人とも!」

「先上がろうか?」

「いや、私が先に行くよ。ルルは念のため後方確認をお願い」

「わかった。念のため、ね」

 

……聖歌隊は道を間違えることなくアリウス自治区への入り口に辿り着き、役目を終えたと言わんばかりに消えてしまった。右手の熱も元に戻っている、一体何だったんだろうな。

 

「大丈夫、追手は来てない!」

 

念のため口頭で報告してから上に上がる。此処が……アリウス……

 

「……一応言っておくけど此処は自治区じゃなくて自治区跡地」

「跡地……?」

 

なにやらアリウスの歴史を聞いている先生を尻目に一応周囲を警戒しておく。ざっと見た限りでは敵影は見当たらないけど……大丈夫そうかな。

 

「サオリ!?」

「どうしたの先生……って、ああ……」

 

張り詰めた気を解している途中に先生の心配するような声が聞こえて振り向いてみればサオリが倒れていた。よく見ると随分とボロボロだ、これでよく普通に戦えたな……

 

「……流石に休んだ方がいいと思うけど」

「私もそう思う、少し休もう」

「……そうだね」

「じゃあ、寝ずの番は私が……」

 

……あ。

 

「大丈夫、私がやるよ」

「……できるの?」

「まあその……正確には私じゃなくて彼らだけど」

 

指揮棒を指し聖歌隊を召喚、見張り役の指令を出すと程々の距離で散らばった。

 

「何かあったら連絡するように指令を出しておいた。私が寝てても継続されるはずだけど……万が一何か起きたら起きて更新しなきゃいけないかな」

「……そんな使い方もできるんだ、それ」

「元々指示を出せば何でもやってくれるからできるかなって。割と半信半疑だったけど」

「ええと、それじゃあ……」

「一応最初は私が見張っておく、今のうちに休んで」

 

……皆寝ると独りぼっちだけど大丈夫、独りは慣れてる。私が最初にやるのは当然だろう、きっと。

 

「……無理はしないでね、ルル」

「そりゃあね」

 

寝付いていく皆を確認した後、聖歌隊たちと共に番を始める。相変わらず皆命令に忠実で、勝手に動き出そうとするのは1体も居ない。

 

……結局、あの道案内をする聖歌隊はなんだったんだろう。

まあ今気にすることでもない。いつ襲撃が来ても備えれるように、しっかりと番をしなきゃ。

 

 

……慣れてるとは言ったけど、やっぱり独りは怖いや。

 

 

 

 

 

 

 

「……ルル、ルル、起きて」

「……んぃ……、あれ、寝ちゃってた?」

「多分疲れてたんだと思う、ミサキが起きる頃にはもう意識が朦朧としてたって」

「そっか」

「……あいつらが正常に動いてくれてたから事なきを得たけど、次から強がりはやめて、迷惑」

「ごめん、できるかなって思ったけど……」

 

どうやらそこそこ寝てしまったらしい。寝た自覚がなかったし、先生の言う通り疲れていたんだろう。

 

「……ひとまず全員動けそうだけど……ここからどうするの?」

「アリウス分校の旧校舎に向かう。お前のそれがあるとはいえ戦力差は明らかだ、目立たないで行くぞ」

「……オッケー。道案内は任せたよ」

「ああ」

「んじゃ、行こうか……ああそうだ、忘れずにしまっとかなきゃ」

 

指揮棒を掲げ、聖歌隊を消滅させる。別にこのまま残しておいてもいいんだけど何か勿体ないようなきがして……性分かなぁ。

 

「便利ですね……」

「まあ、便利では……あるかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……アリウスってこんなに人がいない場所なの?」

「いや……これは明らかに異常だ。確かに人通りは少ないが……ここまででは」

 

 スクワッドの案内に従って道を抜け、ようやくアリウスの市街地と思われる場所へ。どうもサオリも認めるくらい人気が消え失せている、何かあったとしか思えないけど……

 

「……聖歌隊を偵察に出してみようか?視界の共有とかそういう便利なことはできないからなにか騒ぎが起きたら程度になるけど」

「まだ待機だ。下手に騒ぎを起こせば……」

「……待って、誰かいる。隠れて」

「……なーんか都合悪いタイミングだなぁ……」

 

こんなタイミングでそこらを歩いているなんて絶対碌なのじゃない。アリウスの生徒か、はたまた……うん?あれって……

 

「……あの時のシスターフッドもどき?」

「せ、聖徒会!?ユスティナ聖徒会ですよね?それにあの姿は……」

「あ、あれそういう名前だったんだ。めんどいしそれにしよ」

「呑気に言い方変えてる場合じゃないでしょ」

 

シスターフッドもどき改め聖徒会、あの時スクワッドが使役してて、多分事態が解決したのならいなくなったであろう存在。此処で再生産でもしたのだろうか?いや、そもそもこれって生産できるものなのだろうか……ん?

 

「っ……ま、また熱く……今度は何の警告……?」

「大丈夫、ルル?」

「へーき……こういう時は大概やばいことが起きてるって認識だけど……」

 

「私たちの任務は……」

『一体何の意味があったのか』

 

「っ……!?」

 

何処からか妙な声が聞こえた瞬間右手がさらに熱くなった。間違いない……これは、相当マズい状況だ。

 

「……包囲されています!?」

「……相当マズいじゃなくて、大ピンチだねこれ」

 

相当マズい、どころではなかった。確か聖徒会は奥の手を使った状態の聖歌隊で善戦できる程度。

……歌を使わなきゃ、不味いか?いやでも……

 

「……マダム」

 

気付けばサオリは映像越しに姿を見せた声の主……マダムとやらと対峙していた。あれが黒幕……ってうん?なんかやけに私の方を見ているような……

 

『しかし「指揮者」の力を持つ彼女まで同行してきたのは嬉しい誤算でした。余裕があれば程度の認識でしたが……こうして自分から乗り込んできたのなら話は別です』

「指揮者……彼女か!」

「……え、私?」

「た、たしかに指揮棒を使ってますけど……」

「……「指揮者」なんて初めて知った」

 

ちょっとまって、それ私も初耳なんだけど。

 

『かつて聖徒会への抑止力と言う建前で作られた組織「聖歌隊」、そしてその指揮棒は組織の支配者「指揮者」に代々継承されたと言われる証。とうの昔に失われたと思っていましたが……貴方が新しい「指揮者」となったことで再び日の目を浴びることとなった』

 

……

 

……何それ、全く知らない。本当に初耳なんだけど。ていうか名前聖歌隊で合ってたんだー……って今はそう呑気に考えてる場合じゃない!

 

『どうですその力、私に献上しませんか?貴方はそれを手にしたが故に要らぬ諍いに巻き込まれ、心を閉ざした。そのまま持っていても宝の持ち腐れでしょう』

「……自分が上手く使ってやるから寄越せ、とでも?」

『まあそういう解釈でもよいでしょう。悪い取引ではないと思いますが』

「ベアトリーチェ……!」

「大丈夫だよ先生、答えはとっくに決まってる」

『ほう?』

 

たしかにこれのせいで散々な目には遭い続けたし、人は嫌いになったし、引きこもりにだってなった……でもね、ある意味こいつのおかげで成長できたところもある。でもこいつには言ってもわからないだろうし……これだけで充分だ。

 

「捕獲対象だとか言ってしつこく追いまわしてくる奴に事情を説明したところで納得なんてするもんかってんだバーカ!」

『……生意気な口を……』

 

効いてる効いてる……ってわけじゃないけど、これで充分私の意思は伝わったはずだ。

 

「ルル……」

「1回狙われた時からこれを狙ってたことは想像に難くなかったしさ、わざわざ甘い声ですり寄って来ても渡すわけないじゃん」

『……まあ良いでしょう。あなたの答えがそうだというのなら私は無理やりにでも奪うまで』

 

そんなこったろうと思ってた。

 

「ほら見たことか……スクワッドの皆、一応聞くけど準備できてる?」

「……逆にできてないと思ってるの?」

「無論、です……」

「ああ」

 

とはいえごめんね、あんな啖呵を切っておいてあれだけどまだ歌は使えない。

……どうせ使うなら、あいつを思いっきりぶっ飛ばすときに使いたいからさ。

 

『始末してください、「指揮者」だけは生かして連れてくるように』

「……随分と舐められたものだね、ほんと」

 

少し指揮棒を握る手に力が入った。珍しく怒っているらしいな、私。

その怒りのままに聖歌隊を召喚し、スクワッドの3人と陣形を組む。

 

「行こう!スクワッド!ルル!」

 

「ああ!」

「うん、行くよ……!」

 

さっきの話通りならこの力は聖徒会への抑止力らしい。あいつらを倒すには最適ってことだ。

精々吠えかいてろベア何とか、こいつら全部ぶっ倒してお前の顔面に一発叩き込んでやる……!

 




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