蒼き地平に星はまた昇る   作:暁真

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結構難産でした。


第四楽章

 

「僕の声は聴こえていますか? please tell me…… 答えのない虚構の空目指し fly far away !」

 

「不思議だ、あの歌を聞いていると力が湧いてくる……!」

「あの時とは逆ですね……何かあったのでしょうか?」

「なんだっていい、今が奴を倒すチャンス」

 

 無数に現れる人形のような何かに銃を持つ聖歌隊をぶつけ、自らは4体の聖歌隊と共にあちこち走り回って歌い続ける。不思議と疲労感はなく、何処に居ても戦場がどうなっているかが手に取るように理解できる。これが指揮棒の真の性能、文字通り「指揮者」として戦場(ステージ)を支配する力。今までの私がこの力を扱えたとしてもきっと十全に使うことはできなかっただろうし、そもそも指揮棒の中の彼女たちだって私に託すなんてことはしてくれなかっただろう。彼女たちと共に歌って、託された。だからこそ私はこの力を十全に扱えるし、託してくれた彼女たちに恥じない使い方をしなきゃいけない。そのためにまずは……

 

私の歌を、今ここで戦っている皆に届ける!

 

 

「言葉じゃ足りないから 僕のすべて受け止めて」

 

「耳障りな歌をぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

「制御出来ない したくないよ 初めて知る 感覚!」

 

バケモノ……もといベアトリーチェの攻撃をまともに喰らいかけるがスクワッドと戦った時と同じように見えない障壁が弾く、どうもこの障壁は私が歌っている限り常時展開されるらしい。体感ではちょっとやそっとの攻撃なら効きもしないし、さっきみたいなあからさまに殺意の籠った攻撃でも簡単に弾いてくれる。頭に流れ込んできた情報によれば「何人たりとも歌唱を妨げることはできない」という概念防御?で、余程の事がない限り貫通されることはないらしい。要するに心配ないから歌い続けろってことなんだろう、ありがたいことだ。

 

「君に歌うよ 永遠の始まりを」

 

標的をスクワッドからこっちに切り替えたのかは知らないが執拗に襲ってくる腕……いや枝?のようなものを障壁でまた弾き、攻勢に転じるべく聖歌隊を左右に展開、ついでに1体選んで銃を借りる。ごめんね、ナギサと銃買ったらこういうこともなくなるはずだから今だけ許してほしい。

 

「行くよ、サビ!」

 

「だから笑って」

 

サビへの移行と同時に勢いをつけて駆け出し、スクワッドと交代するようにベアトリーチェの前に立つ。

 

「誰よりも熱く 誰よりも強く 抱き締めるよ!」

 

私と同じように銃を受け取った4体の聖歌隊と共に地面を蹴って飛び上がり空中射撃。普段なら絶対こんな高さ飛べないし着地するときだって絶対ただじゃすまない、歌い始めてから何回目になるかわからないけど指揮棒の力に驚愕するばかりだ。

 

「震える心 揺さぶればいい何かが動き出す 僕等!」

 

「その力を渡さないというのであれば……邪魔をするな、生徒風情が!」

 

「きっと、生まれた日から出会える日をずっと探してたんだ!」

 

ベアトリーチェの罵詈雑言に答える気はない。宣言した以上ベアトリーチェは最早倒すべき敵に非ず、あれは演出用の背景であり、結果として倒される物。だから私が真にやるべきは……スクワッドに、先生に、そしてどこかで戦っているであろうミカに私の歌を届けること。

 

「風の鳴く夜は思い出して」

 

「ガァァァァァァアァ!?」

 

「共に奏でた軌跡 天に 舞うよ!」

 

顔面に数発撃ちこんだ後おまけで蹴飛ばし、スクワッドの後ろに着地。借りていた銃を消滅させて代わりにマイクスタンドを召喚、ボーカルに専念する。

 

「休憩はできたかな?個人的な恨みもちょっとあるけどケジメは自分たちで付けてよね!」

 

「言われずともだ!」

「不思議……なんだか胸があったかいです」

「……」

 

最初に比べれば私を信用してくれているらしい彼女たちを後押しするように檄を飛ばし、間奏の合間に呼吸を整える。ベアトリーチェはスクワッドに任せておいて問題ないだろう、次に私がやるべきはちょっかいを掛けてくるお邪魔虫への対処、ついでに大仕掛けの準備。

 

「まだまだ付き合えるね先生!」

「勿論、今日は私とルルで指揮者二人ってとこかな!」

「上手いこと言ってるつもり?結構好きだよ今の」

 

深呼吸ついでに先生と軽いジョークを交わして戦場(ステージ)を見やる。今の主役はスクワッドの皆、最高の音楽で彼女たちを引き立てて見せよう。

 

「私を……無視するな!」

「だーかーらー、ライブの邪魔なんて野暮な真似はよしてくれないかな!それに今の主役は私じゃなくて……」

「私たちだ、マダム!」

 

サオリが意気揚々と声を張り上げ、一発良いのをぶち込んだところで2番に入る。あの子達はどうやらバックダンサーに入ってくれるようだ、ちょっと嬉しい。

 

 

「僕の想いは届いていますか? true or false…… 触れ合うたび もどかしさが募る crying more crying!」

 

歌声は自分一人なのに、一人で歌っている気は微塵もしない。体から感じる一体感……きっと、指揮棒の中の彼女たちも声こそ聞こえないけど共に歌ってくれているのだろう。随分と過保護なことだ……嬉しいけど。

 

「いつも避けてばかりいた 明日を見失いそうで」

 

「傷付けないように 傷付かないように 嘘だけが増えていく……」

 

 

マイクスタンドを持ち上げてターンする片手間で聖歌隊を新たに召喚し、スクワッドにちょっかいを掛けようとしている人形っぽい奴らを襲撃。ライブにおいて主役の邪魔をすることは許されない、それが誰であってもね。

 

「さあ、もう一回盛り上げていくよ!」

「コールは必要かな?」

「あったら嬉しいけど今は指揮に集中してもらいたいなぁ!」

 

 

「だけど笑って」

 

サビに入る前にマイクスタンドを回転させて聖歌隊に一斉射撃の指揮。ついでに後ろの彼女たちに大仕掛けの準備もさせる。所謂サプライズ演出って奴だ、驚いてもらえるだろうか……なーんてね。

 

 

「痛いくらいに 苦しい程に そう愛しいから!」

 

そういえば選曲はふっと頭の中に浮かんだ歌を選んだけど……歌詞に所々思い当たる部分が多い。いいじゃないか、過去を歌って未来を作る。主語を省くと随分と大層に聞こえるけど……

 

 

「求める気持ち抑えきれない自分が怖かった やっと!」

 

……これは私の過去への決別。そして私が未来に進むための課題!

 

「体中巡る本能のRYTHEMに気付いたんだ!」

 

聖歌隊たちが人形っぽいなにか達を消滅させたのを確認し、人差し指をベアトリーチェに指して照準代わりに構える。とびっきりのサプライズだ、しっかり受け取ってもらおう。

 

「もう二度と君を離さないよ」

 

しっかりと視界にベアトリーチェを捉え、大仕掛けを最終段階に。

 

「ルル、そっちは……って、何それ!?」

 

おお、先生も驚いてくれた。いや聖歌隊が空中でぐるぐる回ってたらそりゃ驚くか。

 

「幾つもの昨日がね、未来を 照らす!」

 

「ちょっと失礼!退避してね!」

 

「ええっ!?」

「……先に言いなよ」

 

「何のつもりで……あ、がぁぁぁぁぁぁ!?」

 

「サプラーイズ、大成功!」

 

ぐるぐる回っていたあの子達を銃口として形成した特大ビームは見事ベアトリーチェに命中、重傷……とまではいかなかったけどあちこちから煙を立てている。キリよく終わりそうで何よりだ。

 

「ラストは譲るからさ、かっこよく決めちゃってよ?」

 

「……そのリーダー気取り地味にウザイんだけど」

「でも、悪い気はしませんね……」

「……確かに任された」

 

「まともに返事してくれるのが一人ってのはちょっと酷くなぁい?」

 

返事をしてくれない人たちに若干文句を言いつつ、再びの間奏の合間にマイクスタンドを消して〆の準備。人形っぽいやつらを倒してスクワッドの援護に回っていた聖歌隊を集結させる。

 

「おのれ……おのれぇぇぇぇぇ!」

 

「おーっと……ちょっとまずいね?」

 

何やら凄そうな攻撃の予備動作を感じた私は即座に駆け出してスクワッドの元へ。間に合うといいんだけど……

 

「不要なのです……貴方達も、その不快な歌も!」

 

「これを不快なんて言ってくれちゃって、相当感性歪んでるんじゃない?」

 

「黙れ……消えなさい。出来損ないの生徒達諸共ォ!」

 

私がスクワッドの所に到着した瞬間を見計らったかのようにベアトリーチェは大技チャージ完了、意趣返しとでも言わんばかりに大きな光弾を放ってきた。

 

「間に合わない……!?」

「いいや、此処は私に任せて」

 

最後のサビに入るタイミングを確認しつつ……

 

 

 

スクワッドの皆を庇うように前に立った私は、光弾をまともに喰らった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふ、はは、ははは!やはり生徒など所詮この程度!絶対的な力の前では……」

「……ベアトリーチェ」

「なんです先生?今更命乞いでもする気ですか?」

「いいや、お前に言っておくことがある」

「最後の強がりですか、聞くくらいの慈悲はくれて……」

 

 

 

 

 

「私の「生徒」達を、見くびらない方がいいよ」

 

「……なんですって?」

 

「嬉しいこと……言ってくれるじゃん、先生!」

「なぁっ!?」

 

ふぅ、危ない危ない。ギリギリ障壁が耐えきれると思って盾になったけど……ほんとうにギリギリだったらしい、ちょっと服が焦げてしまった。

 

「……すまない、助かった」

「無礼講って最初に言ったよ、貸し借りはなし!」

咄嗟に庇ったからちょっと不安だったけどスクワッドの皆も無事だ、よしいこうラストスパート!

 

 

「この身朽ち果てても伝えたいものがある」

 

再び歌唱に合わせて聖歌隊が一点、私の周囲に集結する。

 

「響け 生命(いのち)の絶唱(うた) 彼方 羽ばたいて!」

 

右手を掲げれば聖歌隊は号令を待つようにして銃口をベアトリーチェにむけ、その時を待つ。

 

「さあ終わりだよ、ベアトリーチェ!」

 

「だから笑って」

 

「戯言を……!」

 

「誰よりも熱く 誰よりも強く 抱き締めたい!」

 

サビの第一声を号令代わりに聖歌隊はベアトリーチェへ向けて一斉に発砲、隙を作る。

 

「ぐぅぅ……小癪な……しかしその程度の豆鉄砲がいくつ集まったところで!」

 

「震える心 揺さぶればいい何かが動き出す 僕等!」

 

……何を勘違いしてるのかな、ベアトリーチェは。

 

「きっと、生まれた日から出会える日をずっと探してたんだ!」

 

「……確かに、受け取った!」

 

私はボーカルであっても今回の主役じゃない。

 

「風の鳴く夜は思い出して」

 

「終わりだ……マダム!」

「サオリ……貴方が、私を……!?」

 

今日に限っての主役は……

 

「共に紡いだ軌跡 天に 舞うよ!」

 

「おおおおぉぉぉぉぉおおお!!!!!」

 

 

 

 

「ガ……ハッ……」

 

……彼女たち、アリウススクワッドなのさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……にしたってよかったの、先生?」

「何が?」

「スクワッドの皆と別れちゃったの……二重の意味で」

「確かに私は生徒を導くのが仕事だけど、だからと言ってあの子達の未来を決める権限はないからね」

「まあ先生ならそういうと思ってた……はい聞きたいこと終わり!ここからは急ぎだよ!」

「言われなくとも」

 

 ……結局ベアトリーチェは完全には消滅しなくて、スクワッドの皆が最後の一人を助けている間に頭のない変な奴があいつを連れ去って行ってしまった……何か先生と面識がある様子だったけど、知り合いだったのだろうか?

まあ今はそんなことを考えている場合じゃない。

 

「こっちで合ってるんだよね!?私意識戻ったのほんとについさっきだから先生頼りなんだけど!」

「大丈夫、合ってる」

 

二人して奪取でバシリカを逆走し、次の戦場(ステージ)へ、先生の言う通りなら……っ!

 

「先に行ってる!」

「わかった!」

 

ベアトリーチェの戦いから間もなくということもあって衣服はそのまま。強化された身体能力のごり押しで目的地へと向かう。

 

 

 

「先生と一緒に、帰りたかったのに……」

 

……はぁ、随分と弱気なこと言っちゃってさぁ。ごめんだけど先生、白馬の王子様ポジションは貰うよ?

 

「La……!」

 

軽めのコーラスと共に再び聖歌隊を召喚し、彼女……ミカに止めを刺そうとしていた聖徒会を迎撃、その隙にミカを抱えて距離を取る。

 

「あ、え……貴方は……」

「どこの誰だか……いや多分知ってるけど、今の私は正真正銘壊羽ルルだよ」

「ぁ……ど、どうして!?」

「どうしてって……何を?」

 

折角助けたというのに困惑された、ちょっと悲しい。

 

「なんで……ここに……?私……」

「……なーんでそういう野暮なこと聞くかなぁ、仕方ないから特別に答えてあげるよ」

 

ミカを後ろに下がらせマイクスタンドを召喚、彼女を守るように聖徒会に立ちはだかる。

 

「友達を助けるのに理由とか、いる?」

 

さあ、アンコールだ。

 

 

 




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次回、最終話。

おまけ:公式キャラ画像風ルル(指揮者)

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