蒼き地平に星はまた昇る   作:暁真

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ついにここまでこれました。


終幕 明星

 

 

「全く貴方と言う人は……ミカさんはともかく、厳戒態勢の中で貴方まで居ないという話を聞いたときは卒倒しかけたんですよ……!」

「それに関しては言い訳の余地もないので謝る。でもまあ結果的によかったし許してくれない?」

「許しません、貴方はもう少し他人の気持ちというのを考えてください」

「そんなぁ……」

「奇跡的に無事だったからよかったものの、一度に友人を二人も失いかけた身にもなってもらえますか?」

「……それは確かに肝が冷えるどころじゃないね、うん、ごめん」

「少々謝罪が軽いように見えますが……まあいいとしましょう」

「よし、そういうわけで買い物に集中したいんだけど」

「まあ言いたいことは言い切りましたし……そうですね」

 

 

 アリウス自治区での騒動から少し。ミカを守るために先生と二人で聖徒会とドンパチやりあってたけどこりゃジリ貧かなーって少し焦ってたところにトリニティの皆が突入してきてどうにか一生を拾った私はミカ共々無事トリニティに帰還することができた。幾ら歌唱中は無敵と言っても私の喉が枯れれば歌えなくなるしそうなったら障壁も消えてただの無力な生徒に逆戻り、割と真面目に大ピンチだったわけだ。この力の唯一の欠点は制限時間だなー、なんて呑気なことを考えていたらナギサとサクラコに怖い顔されたのは戒めとして記憶に残しておく。

 

「この前のでやっぱり早々に買わないとなって思ってたからさ、ナギサの予定が早めに空いてよかったよ、ほんと」

「空けたのです、どうにかして」

「職権乱用?」

「さあどうでしょうね」

「それ暗にやったって言ってない?」

「ルルさんも分かって来たじゃないですか」

「やっぱりナギサはタチが悪い……」

「ちなみにしていません」

「じゃあさっきの含みある表現は何!?」

 

そういうわけで今日は久方ぶりに予定の空いたナギサを連れて約束通り銃を含め買い物をしにきている。どうせなら他の皆を呼んで女子会でもよかったんだけどナギサたっての希望もあって今日は二人きり。まあ確かに学園トップとつるんでたら要らぬ誤解を受けそうではあるから仕方ないか、一応ナギサは変装してるけど万一があるし。

 

「なんか私の中のナギサ像がもうボロボロだよ……あ、そうだ」

「どうしました?」

「はいこれ、前に言ってた渡したいもの。だいぶ色合い派手だから気に入るかどうかはわからないけど……」

「……成程、ペアルックというわけですね?」

「狙ったわけじゃないけど……」

 

忘れない内に前買った髪飾りを渡しておく。すでに私は着用済みなのでナギサに付けてもらえれば晴れて御揃いだ、何か特別な意味があるわけじゃないから付けてくれたらちょっと嬉しいくらいだけど。

 

「そういうことならありがたく受け取っておきましょう、何せ友人からのプレゼントです」

「なんかちょっとテンション上がってる?」

「かもしれませんね」

 

髪飾りを受け取って即装着したナギサはよく見たら……どころじゃなく目に見えて上機嫌だった。プレゼント、そこまで気に入ったのだろうか。

 

「さて今日はどうしようかな……銃買って、なんか適当にそこらへんぶらぶらして」

「またあの喫茶店でも行きましょうか?前回はほぼ話し合いに行ったようなものですし」

「あ、それいいね採用。後カラオケ行こうよカラオケ」

「……本当にまた歌を好きになれたのですね、貴方は」

「また好きになれるよう努力中ってところかな今は。特にどうしてとか理由はないけど」

「別になくて良いんじゃないですか?」

「どうして?」

「何かを好きなことに理由なんて必要ないと、昔何処かで聞きました」

「ナギサの紅茶みたいなもんか」

「無論好きを言語化できるかどうかは別問題です」

「なんかめんどくさい話になりそうだからスルーで」

「その面倒くさがりもどうにかならないものですかね……」

「生憎性分でね」

 

久し振りにただの友人らしい会話を交わしながら何処へ行こうかと考える。マイナスだらけだった私は全部清算してゼロに戻れた。随分と時間がかかったけど、ようやくこれで前を見て好きな場所へ進むことができる。

先生に、補習授業部の皆に、ナギサに、歴代の指揮者の皆。誰かにずっと助けられてここまで来た。私も誰かを助けよう……なんて大層なことは言えないけど。

今はもう一度歌を好きになって、私の歌を誰かに届けられるように。

 

まっさらになった道を、もう一度歩いてみることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ふむ、思ったより来るのが早かったな、最も新しき指揮者よ」

「まあまた、って言ったしね……あれ、あの子達は?」

「今は少し席を外してもらっている、荒療治は終わったようだが私個人としてお前に尋ねたいことがある故な」

「随分と畏まってるなぁ……」

 

銃を買って、喫茶店行って、カラオケして。ナギサとの二人きりの外出を終えて帰ってきた私はそういえばと指揮棒を握って目を瞑ったらまた此処に来ていた。案外この空間簡単に来れるものなんだなぁって思ったけどある意味夢の中のような感じだしそんなもんなのだろう。

 

「で、聞きたいことって何?「始まりの指揮者」様」

「何、至極簡単な話よ」

 

聖堂の中心で如何にもな雰囲気を漂わせて仁王立ちしている「始まりの指揮者」様、なんか凄い堅苦しい感じがするけど……一体何を聞かれるのやら。

 

「汝は歌に何を求めた?」

「求めるって……」

「文字通りだ、何を望んで歌を歌う、何が欲しくて歌を歌った」

「何って言われてもなぁ……」

 

……そう言われてみると結構難しい。どうして歌を歌うのか、なんて言われても即答できる人なんて少ないだろう。でも、今は。

 

「何も、私は歌が好き、だから歌を歌ったし、これからも歌い続けようと思う。望みとか欲しいものとか大層なものはないし、そんなものに縛られたくもない。私はともかく私の歌は自由でありたい。これが私の答え」

「……」

「……あれ?」

 

私何か回答間違えた?

 

「……クク、ククク、ハハハハハ!!!!!」

「なんか急に笑い出した!?」

「いやぁ、昔を思い出してな……私も似たような回答をしたものだよ」

「似たようなって……」

「そうとも、歌は自由であるべきだ。そこに望みも願望も必要ない。歌は確かに思いではあるが、誰かに届けるための歌に俗な想いはあってはならない」

「えーと、つまりどういうこと?」

「汝を選んだのは正解だったということだ、最も新しき指揮者よ」

「そりゃどうも……いきなり大爆笑されたものだからどうなることかとおもったけど」

「共感性羞恥というやつだ、許せ」

「何処が!?」

 

もしかして始まりの指揮者様って存外愉快な人?

 

「うむ、聞きたいことは聞けた、感謝するぞ、最も新しき指揮者よ」

「そういや思ってたんだけどどうして名前で呼んでくれないのさ」

「許せ、これに関しては反射のようなものだ」

「反射?」

 

どういうこと?

 

「我らは指揮棒が記録した指揮者の記憶、その残滓、故に歴代の指揮者達の名を語ることは憚られた。どうしても、という時は名乗ったが……我らには別の名が必要だった」

「じゃあその「始まりの指揮者」とか「最も新しき指揮者」とかが……」

「左様、我らの名前代わりだ。例えば汝と最初に話した彼女は「「情熱」の指揮者」、共に歌った者達は古い順に「「誇り」の指揮者」、「「誓い」の指揮者」、「「歓喜」の指揮者」……」

「凄い中二病っぽいネーミングだなぁ……」

「全員「指揮者」ではわかりにくいにも程があるだろう。故に二つ名のような形で名を付けたのだ」

「へぇ……じゃあさ、もし私がもし次の子に指揮棒を託したら私は「最も新しき指揮者」ではなくなるし、指揮棒に私の残滓も入ることになるんでしょ?」

「そうなるな」

「その時にどう呼ばれるのかなぁ、なんてちょっと知ってみたかったり」

「ふむ……」

 

あ、ちょっと考え込んでしまった。

 

「汝は一度歌を手放し、それでも足掻いた。足掻いて足掻いて足掻き続けて、歌という光をもう一度取り戻した」

 

「そうして手にした光は一段と強く輝いている。夜空に浮かぶ星のように」

「随分と詩的な表現だね」

「元の私は作曲家でもあったからな……そうさな、汝の指揮者としての名は……」

 

 

 

「「明星」の指揮者、これが相応しいだろう」

「……明星……いいじゃん、気に入った」

 

ちょっと中二感はあるけど……響きが結構気に入った。

 

「じゃあさじゃあさ、これから私のことは「最も新しき指揮者」じゃなくてその「「明星」の指揮者」って呼んでよ、そっちのほうが語呂良いし」

「汝がそれを望むのなら、そうしよう」

「やったぁ!」

 

流石にナギサや皆には言えないけど、こういう称号みたいなのを貰えると地味にうれしい、さながら音ゲーの如く。

 

「さて、汝もわざわざ命名されるために此処に来たわけではあるまい?」

「うん、約束したからね、「また一緒に歌おう」って」

「なるほど、言葉の通りだ、「「情熱」の指揮者」よ」

「え?」

 

始まりの指揮者様が名を呼んだかと思ったらいつのまにあの子が彼女の隣に立っていた。流石は精神空間、なんでもあり。

 

「まさかそっちから此処に来るとはおもってなかったけど……約束、守ってくれたんだね」

「忘れないうちにね」

「そっか、皆は?」

「勿論」

「……では私は聴衆に……」

「えー、せっかくだし一緒にやろうよ、始まりの指揮者様」

「む……」

「ほんと、本心では自分もやりたくてたまらない癖に初代様は変なところで真面目なんだから」

「むうう……」

 

意外と可愛いところもあるじゃん、彼女。

 

「……一回だ、一回だけだぞ?」

「だってさ、言質取ったよ、「明星」の君」

「よし、じゃあ残りの皆も……」

「勿論、居ますわ」

「うわぁっ!?……ってそうだよね、「情熱」の子が突然出てきたんだからそりゃあ皆も唐突に現れるか」

 

気付けば始まりの指揮者を含めた6人が聖堂の中心に揃った。前と同じように席だって満席。

歌うには、とても良い場所だ。

 

「前と同じように私がしゅや」

「いいや此度は私が主役だ、前の労を労わせろ」

「えー、ずるいよ初代様!だったらわたしだって!」

 

……今回は前と違ってセンター争いが激しくなりそうだけど。

でもやっぱり楽しい、歌を誰かに届けるのは。

 

「ああもうそんなんばっかじゃ一生始まんないじゃん!ミュージック!」

 

気付けばそこに居た楽器を持った歴代の指揮者達に指示をだすと彼女たちは苦笑した様子で演奏を始める。なるほど、此処っていっつもこんな感じなんだ。

 

「私の時代の曲だから私がセンター!こればっかりは譲らない!」

「いいや私だ、汝の知る曲は我らも知る曲」

「じゃあ力づくで奪い取ってやる!」

「やってみるがいい、小童」

「にゃにおう!?ああっもうとりあえず……!」

 

……さあ、まだ見知らぬ誰かに届ける訳じゃないけど。

 

「私の歌を聞けェ!」

 

精一杯、歌うことを楽しむとしよう。

 




なんだかんだに2作品目の完結まで漕ぎつけることができました。応援してくださった皆様に深く感謝を。
ここからは前作と同じように気が向いたら番外編を書き記していく形になると思います、気が向いたら是非読んでみてください。
最後にいつも通りにはなりますが、評価、感想等頂けると大変今後の励みになります、良ければよろしくお願いします。
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