「おはようございます。ルルさん」
「……おはよう、なるべく君たちと被らない時間にしたつもりだったんだけどな……」
「ちょっと早めにシャワーを浴びておきたくて……ルルさんはもう終わったんですか?」
「終わったよ、これから帰る」
「帰るって……天井裏に?」
「それ以外にあるわけないでしょ……ああ、食料の備蓄はあるししばらくは食堂好きに使っていいよ。しばらくいるんでしょ?」
「え、ええ!?私たちがいる間インスタント食品だけで……!?」
「そうだけど……そっちが気にすることでもないでしょ」
「気にしますよ!?元はと言えば私達が試験に落ちなければルルさんがこうする必要もなかったわけですし……」
「私が勝手に此処を使ってただけ、君たちがティーパーティーの指示で此処に来ているなら不法占拠してる私より優先度は高い。いい?」
「よ、よくないです!ルルさんもちゃんとした食事をとるべきだと思います!」
「……善処はしておく、心配してくれてありがとうね、じゃあ」
「あっ……行っちゃった……」
「……あ、ケーキまだ残ってた……とっとと持ち帰って食べなきゃ……」
「ちょっと!そこで何してるの!?」
「何って……食べ忘れたケーキを取りに来ただけだけど……というかよく食べなかったね君たち」
「露骨すぎて怪しいものを食べるわけないでしょ!?……ただ食べ忘れただけとか思わないじゃない」
「そりゃあそうか……え何、ケーキの中にカメラでも入ってると思ってた?」
「なんでそんな発想になるのよ!?やっぱり貴方監視なんじゃないの!?顔も見せないし!」
「だから違うっての……それと顔を隠してるのにも理由はある、言わないけど」
「いや言いなさいよ!?疑い晴らしたいんでしょ!?」
「そもそも関わらないでくれって言ったと思うんだけど……まあいいや。それじゃあね」
「ちょっと!?……行っちゃった……」
「……誰だ……お前か」
「お前とは失礼な。名乗ったはずなんだけど」
「それはすまない、謝る……それでルル。こんな時間に何で此処に?」
「洗濯、3日分溜まってたからね」
「なんでそんなに……そうか、私たちが発見するまで……」
「まあそういうこと。君たちと被らないようにわざわざこんな時間にやってるのさ……で、そういう君はどうしてこんな時間に?」
「見張りだ」
「見張り……めんどくさそうだから詮索はしないけども、程々で寝ておくべきだよ。君たちなんかテストとやらがあるんだろ?寝不足で受けるもんじゃないだろ」
「……アドバイスとして受け取っておく」
「そ、じゃあさっさと洗濯したいから私は行くよ、じゃあね」
「ああ、いい夜を……」
「……よし、乾いてる乾いてる……あれ、居ない……寝たのか」
「あらルルさん、こんなところで会うとは奇遇ですね」
「……うん、奇遇なんだけど一ついいかな」
「何でしょうか」
「なんで水着なの?」
「汚れてもいい恰好ですので」
「……そうか、これ以上何も聞かないことにするよ」
「あらあら、意外と初心なのですね?ルルさんは」
「初心というか、何か関わりたくないものを感じた。あとそもそも人と関わりたくない」
「……そうですか。一つ質問しようとしていたのですが、ダメみたいですね?」
「……別に一つくらいならいいよ」
「そうですか、なら遠慮なく」
「昔見た貴方はとても明るく社交的な雰囲気だった気がするのですが、気のせいでしょうか?」
「……人違いじゃないかな?少なくとも私は君を知らないし」
「……ではそういうことにしておきますね。それじゃあ私は掃除に……」
「水着で……?」
「ええ、水着で」
「……うん、もう考えるのやめた」
「……やっぱり演技でもなんでもない、のか?にしてはなぁ……」
補習授業部と先生とやらが別館で生活しはじめてから5日程、これといって彼女らが探りを入れてくる様子もなく私は今まで通りこの別館で生活を送れていた。彼女たちを信じるのなら何も知らないのだろうと判断すべきなのだけど……ただ、彼女たちはナギサの指示で此処に来たと言っていた。……やっぱり信用しきれない、もうしばらく屋根裏に籠っていることにする。どうも特別学力試験とやらでドタバタしているらしいし本当に何も知らないのなら私に構っている暇などないだろう……何でもかんでも疑ってしまう自分が嫌になる。
……本当は私だって何の疑いもなくあの子たちを信じたい、信じてあげたい。昔だったらこうやってコソコソ隠れることもなく友達になろうと補習授業部の皆に絡みに行っただろうし、なんなら勉強を教えるくらいはしただろう。やっぱり年月というのはあまりにも残酷だ……少なくとも私が「誰だお前」と知り合いに言われるくらいには。……まあでも、本当にこっちを探る様子がないのなら、少しばかり信じてもいい……のかもしれない。ナギサが何を考えているのかは知らないが少なくともついでで私を引っ張り出すようなことは考えないはずだし、本当に私の力が必要ならこんなまどろっこしいことはせず直接私を訪ねてくるはずだ……私が頷かないことなんてわかってるのにそんなことをする理由がないけど。……はぁ、考えれば考えるほど自己嫌悪に陥りそうだ。何か食べて気を紛らわすとしよう……
「……あれ、あれ?……こんな時に……!?」
……さいっあくだ、こんな時に給湯器が壊れた。さっさと買いに行かなきゃ……
「じゃあ、今日はこんなところかな。先生とまたこうしてお話できて、楽しかったよ」
「うん、私も楽しかった」
エデン条約、アリウス、セイアのこと……ミカが話したことを頭の中で復唱しながら私は守ってあげてと言われた補習授業部のことともう一人……ルルについて考えていた。ここまでミカは重要機密について話していたが別館に潜んでいた彼女については何も話すことはなく話を切り上げてしまった。彼女は初めて会った時「ティーパーティー」と口にしていたことからミカが無関係とは考えにくいのだけど……うん、考えても仕方がない。思い切って聞いてみよう。
「……ミカ、最後に一つだけ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」
「うん?別にいいけど……何が知りたいの?」
「あまり関係ないかもしれないけど……ルルのことについて……」
「……え?」
……ルルのことを尋ねた途端、今まで軽いノリだったミカの顔が突然真面目な物に変わった。信じられない、とでも言ったような目でこちらを見ている。
「……先生、ルルちゃんと会った、の?」
「……知り合いなの?」
「うん、親友……だった、かな。昔のルルちゃんは誰よりも明るくて、どんな相手とでも仲良くなっちゃう、そんな子だったよ」
意外なことに昔の彼女は初めて会った時の印象とは正反対だったらしい……余計に何があったのか気になってしまう。
「じゃあ、なんで今の彼女はあんな様子で……」
「先生」
「貴方はルルちゃんのこと、知りたいの?」
「……先生として、困っていそうな生徒のことはほっとけないからね」
「……うんうん、先生らしいね。それじゃあ私からは一つだけ」
「ルルちゃんについて知ろうとしちゃダメ。先生がルルちゃんのことをどうにかして知るのはいいけど、そうなったらあの子は二度と先生を信じてくれなくなる」
「知ろうとしちゃ……ダメ?」
「うん、絶対に。先生がルルちゃんを何とかしてあげたいって思うならあの子が自分から話すまで待ってあげて……先生は私と違って何も知らないから、ルルちゃんが心を開いてくれる可能性はある」
「それってどういう……」
「私から言えるのはこれだけだよ。これ以上言っちゃったら先生とルルちゃんのためにならないから」
「……わかった。ありがとう、ミカ」
「うん、それじゃあね先生」
……結局ルルについて謎が深まっただけで、特に何もわからないままミカは行ってしまった。「知ろうとしちゃダメ」って……一体どういうことなんだろう?
ただ、今はルルのことより補習授業部の様子を見に行かないと。少し遅れてしまったが皆うまくやれているだろうか。
ミカを見送って少ししてから、私は別館へと歩を進めた。
文字数が……文字数が少ない……!
評価とか感想で下がったモチベが上がったら続きが早めに仕上がるかもしれません(乞食)