帰ってきたトリコ!! 地球のグルメ探求再び!! 作:ケンタ〜
誰かが言った――
全身からまるでA5ランク牛のような最高品質の肉が取れる、ワニがいると――
一年中空からシャンパンやビールの雨が降る、酒の島があると――
まるでコンソメスープのような味のする、マグマの湧き出る火山があると――
世はグルメ時代――
未知なる味を求め、探求する時代――!
とある日、とある夜、とあるグルメガーデンの出店、『トロイカ串焼き』――
「久しぶりだなあ……
青い髪の毛を持つ、身長2m以上あるお男が、そこで食事をしていた――
『トロイカ』という、全身がトロットロのイカの串焼きを、彼は一口で一本のペースで食していた。
既に彼の横の皿には、20本以上の櫛が置かれており、周りの客と店員は、彼の食事のペースに驚愕の表情をしていた。
「ボクは初めてかもしれないです、トリコさん」
その隣にいた小柄の男が、その男をトリコと呼んだ。
トリコ。美食屋トリコ。
グルメ時代のカリスマにして、美食屋四天王の一人。
この世の食材の2%、およそ6000種以上を発見し、その数は四天王の中でも屈指である。
「え? 小松、おまえホテルグルメすぐそこだぞ?」
その小柄の男は、小松と言った。
彼は美食屋トリコのコンビの料理人であった。
彼もトリコと同様、グルメ時代においては名のある料理人である。彼の世にした貢献は多大であり、かつて天然食材であったスープの再現、調理難度の高い薬膳餅の簡略化など、天才的な腕のある男だった。
彼は国際グルメ機関『IGO』のレストラン『ホテルグルメ』の料理長であり、そしてそれはグルメガーデンから歩いて20分ほどの位置にあった。
「あんまり来る機会がなくて……ボクはホテルグルメで寝泊まりできますし、食事もできるんですよ。トリコさんは、ここにはよく来るんですか?」
「いや……あんまりだな。ホテルグルメに来る用以外ではほとんど来ねえかな」
トリコはビールジョッキを掴み、豪快にゴクゴクと飲んだ。あっという間にジョッキが空になる。
「かーっ!」
カンッとジョッキを机に置く。
トリコはどこにでもアルコール飲料を持ち歩く、かなりの酒豪でも知られていた。
「マスター! ビールもう一杯!」
「あいよ!」
「やっぱりトロイカとビールは最高だぜ、なあ小松?」
「はい、トリコさん!」
バクバクとトリコはトロイカを食べる。
その横にはトロイカだけでなく、コーンや肉の串焼きなど、多くの料理が並んでいた。
「ところで、トリコさん。今回はなんでここに来たんですか?」
小松がトリコに話しかける。
するとトリコは食べる手を止め、空を見つめるように思案にふけて、答えた。
「実はな……グルメ界の第0ビオトープに呼ばれてるんだ」
「グルメ界のしかも第0ビオトープですか!?」
この世界には、人間界とグルメ界というものが存在している。そのなかで人間界は、地球のなかでもたった30%しかなく、残りは広大なグルメ界が占めている。
そしてグルメ界は「美食の不可侵領域」とも呼ばれており、人間界よりも遥かに美味い食材があるとされている。しかし、グルメ界に生息する数多くの種族の生物の殆どが、人間界とは比べ物にならないほど強力である。かつて数百年に一度、人間界に攻め入る四匹のグルメ界の獣よって、人類はそのたびに滅ぼされかけるという程であった。
しかし、その四匹の獣は既に今では死んでいた。ある四人の人間界の守護者によって倒されたのだ。
その四人の守護者こそが美食屋四天王であり、その一人が、この青髪の大男、トリコである。
そして第0ビオトープとは、そのグルメ界に存在する、|美食(グルメ)食材研究・開発機関。IGOによって作られたグルメ食材の研究・開発機関は他にも8つあるが、それは全て人間界にある。そのなかで、唯一、グルメ界に存在するビオトープなのである。
「それって一体、なんの用なんですか? ていうかそもそも、第0ビオトープって、職員の半数がグルメ界での戦いでやられて引退して、半数が消息不明だったんじゃないんですか? まだ残ってたんですか?」
「それがなァ……実は……」
「はいよ! ビール一丁!!」
めんどくさそうな顔をするトリコに、巨大なジョッキになみなみと注がれたビールがドンッと置かれた。
「ありがとよ、マスター」
「おおーう気にすんな!」
トリコは今度はゆっくりと口に運び、グビグビと飲み始めた。
三分の一ほど飲んだあと、トリコは机にコトリとそれを置いた。
「IGO……ていうか会長がさ、俺に新設第0ビオトープの職員になれってんだよ。『グルメ界はお前たちのお陰で比較的人間が入りやすくなったが、まだまだ未開で研究が必要だ!!』ってさ」
グルメ界はトリコや他の四天王、その他の実力者によって入られ、攻略されている。その実力者の数は十数ほどいるが、それでも数えられるほどであり、彼らにとっても難易度の高い世界であることから、とても人間界の数倍以上あるグルメ界を攻略しきるほどのものではなかった。
そのなかで、IGOの会長――彼もかなりの実力者であり、グルメ界に入りうるものの一人でもある――は、トップクラスの実力者の一人であるトリコに声をかけたのだ。
「ふええ……それでマンサム会長からの直々のお達しですか……」
その会長はIGOの二代目会長で、その名をマンサムと言った。
国際グルメ機関であるIGOの加盟国数は国連すらも上回り、加盟国のすべての国の食材流通に関与している。つまりそのトップということは、世界中の食材の流通を操りうる存在ということで、小松がそんな人間からの直々のお達しに驚くのも無理はない。
「ああ……ようやく人間界に帰ってきたってのに……」
「それで、今日はその話をするために、ここに来たってことですか」
「いや、違う」
「違うんですか?」
トリコはジョッキを持ち上げ、ぐいっとまた半分まで飲んだ。
「マンサム所長……会長が言うには、『お前が断ることぐらい分かっとるわ。だったら代理を用意してこい』だと」
「代理……第0ビオトープ職員がつとまるほどの代理なんていますかね?」
「その代理候補をここに呼んでるんだ」
トリコは世界でも屈指の著名人であり、そのなかで数多くの著名人とも知り合っている。そのほとんどはグルメ関連で、実力者も多い。
「そんな人いるんですか?」
「ああ、多分小松、お前は初対面だろうな」
「どんな人なんですか?」
トリコはビールを全部飲み干し、トロイカの串焼きを三本持ち、一口で食べ尽くした。
「一言で言うと、やべーやつだ。でも、一番第0ビオトープ職員に向いてるだろうな」
「へえ、そんな人が……でも、やばいやつって……?」
『へー、誰がヤバイ奴だって?』
「わっ!?」
小松は急な背後からの声で飛び上がった。
そして、トリコは最初から気づいていたような態度で、めんどくさそうに後ろを振り返った。
「結局、来なかったか」
底には、四枚の螺旋式のプロペラを持つ、円盤型のドローンが飛んで浮かんでいた。
声はそこから発せられていたのだった。
『だってこっち第8ビオトープだぜ? そっちに行けるわけねぇだろ』
「マッハヘリでも乗ってこればいいだろ。3日もかからねぇだろ」
『3日もヘリに乗るならこっちで食材の研究したいんでね』
トリコは席から立ち、円盤から発せられる声と言い争いをしていた。それを小松は不思議そうに見つめていた。
「トリコさん、これって……」
小松が聞くと、トリコは不満そうに紹介をした。
「ああ、こいつが……と言っても来てねーけど、俺が呼んだ奴だ。名前は『イムスランド』だ」
するとドローンが向きを変え、小松の方に向いた。
『やあ、君が小松さんだね。僕はさっき言われた通り、イムスランドだ。イムスでもランドでもイムでもンドでもなんでも呼んでね』
「は、はあ……どうぞよろしく、イムスランドさん……小松です」
『僕まだセンチュリースープ、飲んだことないんだよね。こんど個人的に飲ませてよ』
センチュリースープとは、小松が再現した、かつて天然食材だったスープのことである。スープのレシピは公開されておらず、加えて何十から何百にも渡る食材が材料として使われているため、今のところ小松しか作れず、ホテルグルメでしか飲むことができない、伝説のスープである。そのスープを飲むと、幸福感で笑顔が止められないと言われている。
「オイ本題はそれじゃないだろ」
トリコが言うと、ドローンからため息が聞こえる。
『ハイハイ……君がIGOの会長から第0ビオトープに勧誘受けたって話でしょ。それで身代わりに、ボクが呼ばれたってことね。全部聞いてたよ。トリコが誘ってくるなんて、一体何事かと思ってたけど……』
「でもおまえとしちゃあいい話だろ? 第0ビオトープの職員だ。希少なグルメ界の食材研究し放題だぜ?」
『あのなあ、僕は今グルメ界の食材よりも人間界に興味があるの。食べるのもいいけど研究したいの僕は』
二人の言い争いは止まらなかった。
トリコがこうなったとき、小松が仲裁に入るのが定番であった。
「ま、まあまあトリコさん。そんな喧嘩腰になってもしょうがないですよ。まずはイムスランドさんの話も聞いたほうが……」
「ああ……分かったよ」
『へえ、いいコンビができたみたいだね。小松さんは噂には聞いてたけど、いい人だね』
「別にいいだろそれは。まずなんで第0ビオトープの職員の話を断るかって話だ」
すると、ドローンからの声が少し止まった。
『う〜んとね……別にいい話だとは思ってるんだけどさ……やっぱり、こっちの手が離せないんだよ。ビオトープみたいな感じでさ。ああ今は第8ビオトープにいるんだけど、それはフィールドワークの一環でね。メインの研究があるんだ』
「第0ビオトープの話を断るレベルの研究なんてあるのか?」
『あるんだよ。少なくとも今はね。ご存知グルメ食材の食材の研究さ。そうだ、よかったらトリコも見にきなよ。小松さんも連れてさ』
「えっ、僕もですか?」
『うん。きっと気にいると思うよ。グルメ界の戦いのお陰で人間界も肥沃になってきてるけど、まだまだ美味しい食材は求められているからね』
「期待していいんだな、ランド」
『わかってるよトリコ。結局、君が一番楽しみにしてるってコト』
小松がトリコを見上げると、その口からはよだれがだらだらとたれていた。
(うわっさっき食べたばっかなのに)
小松はトリコとグルメ食材を探求する旅を続けて久しいが、それでもトリコの圧倒的な食欲にはいつも感嘆せずにはいられなかった。
「へへっ、バレた?」
トリコはよだれを手で拭い、ドローンに向けて言った。
『天下のトリコ様を満足させられるかはわからないけれど、期待しててよ。それに、僕の研究成果だしね』
「よし!! そうとなったらメシだメシ! 腹減ってきたぜ!!」
「えっトリコさんめっちゃ食べたばっかですよね!?」
トリコはトロイカの店にの椅子に戻り、ガツガツと串やトウモロコシ焼きを食べ始めた。
『まったく、さすがの食欲だな。ラスボスを食べるだけの話はあるか……』
「はは……トリコさんの食欲には驚かされてばかりです」
ドローンからの声に、小松は同情するように苦笑した。
『さて、僕はもう戻ろうか。小松さんも食べに行きなよ』
「ランドさんは、もう戻るんですか?」
『ドローンじゃ何も食べられないじゃないか? それに、トリコの食欲のために今から食材を用意しておかないとね。あいつの食い意地レベルは小松さんもしってるでしょ?』
「はは……いつもホテルグルメの食料庫を空にされてます……」
小松は頬を掻いて苦笑いした。
『そういうことだよ。それじゃ、またね』
「ありがとうございました、ランドさん」
『いつの間にかランド呼びに……まあそれが一番呼びやすいか。じゃ、またね』
そう言って、円盤型のドローンは小さな風の音を響かせながら、高度をするすると上げていった。
あっという間に高層ビルよりも高い高度に達すると、プロペラが円盤内部に収納され、代わりに円盤の上と下に合計六つの小さな噴射口が空いた。
そこから爆発したかのような勢いで、炎が噴射され、円盤は圧倒的な速さで夜の空をすっ飛んでいった。
数十秒で音速を超え、更に加速していき、同時に円盤の高度も上がっていった。
そして円盤は高度100キロを超え、宇宙空間に達した。そこから炎の勢いは更に上がり、音速の壁を20段ほど越えていった。
そこまで行くと円盤は炎を止め、空気抵抗のほとんどない宇宙空間をマッハ20以上ですっ飛んでいった。
そこから数時間。円盤は宇宙空間を飛び、高度を下げはじめていく。
円盤がくるりと向きを変え、逆向きに噴射口を向ける。
そしてバッとまた爆発したかのよう炎を噴射し、速度を落としていく。
ある程度まで減速したあと、炎を止めた。
そして円盤は大気圏に突入し、赤く発光を始めた。空気抵抗によって温度が上昇していく。
何千度にも温度はあがっていき、どんどんと減速していく。
そして円盤は大気圏の下層にまで到達し、ほとんど勢いを失った。
そしてその頃には、太陽は空の真上で光っていた。
円盤は螺旋式のプロペラを展開し、それで飛んでいった。
円盤の下には、青い海と、向こうに見える大きな島があった。
円盤は時間をかけてそこまで飛んでいくと、島の浜辺に、長い金色の髪を持った、白衣の男がそこに立っていた。
男は近づいてきて近くで止まった円盤を片手でキャッチすると、それをまじまじと見つめた。
「一回で燃料全部使い切りか……超圧縮燃料と噴射もっと効率化しないとだな」
そして男は白衣のポケットにそれを仕舞った。
男は踵を返し、浜辺の林に足を向かわせた。
「さ、トリコのために、食材もっと用意しないとだな。大変だな〜〜〜」
そういう男の表情には、笑みが浮かんでいた。
その男の白衣の胸には、「イムスランド」のバッヂがついていた。
イムスランドはもともとイムドランスだったけどゴロ悪かったのでイムスランドになりました。読み方もランドでいいよね
読んでくれてありがとう!!次回はいつ投稿できるかわからないけど良ければブックマークして楽しみにしててくれよな!!それじゃ、また次回!!