ホロライブ恋人概念   作:-つくし-

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いつもの感じとは異なります


またいつか

 彼女がここから離れて2年が経った。今でも連絡を取りたい、そして俺からも手紙を送りたいと思っている。しかし彼女はもう俺の前に現れてくれることはない。連絡先も持っていない。彼女は元気にやれているのだろうか。人見知りで自分で陰キャって言ってしまうくらいには引っ込み思案な彼女。新天地で新たにテリトリーを見つけはたまた作れているのだろうか。ふとした時に最後に貰った手紙を見る。手紙の所々にあったシミは乾いてしまっていて、時間の流れを痛感する。ああ、またいつか会えるのだろうか。

 

 

 

 俺と彼女が初めて出会ったのは中学校に入学した頃だった。真新しい制服に包まれ、初めて校門をくぐり抜けたその先で俺は既に彼女のことを見つけた。明るいピンク色を基調に水色のインナーカラーが入っていてる。その綺麗な髪はツインテールでまとめられていて思わず俺は目を奪われた。一見すると陽キャの部類に入るくらいには鮮やかな髪だったが行動を見てるうちにそうではないことが見て取れた。彼女は落ち着きがなくて少し緊張していた俺が馬鹿らしくなってくるくらいにはあたふたしていた。

 

(あれ、もしかしたら、可愛いかもな)

 

 中学校に入ってからの一目惚れは思ったよりも早く来てしまったようだった。

 

 

 

 教室に入ると小学校からの友達がポツポツと席に着いていて、新天地での友達に困ることはないだろうと安堵した。席の前後の人はまだ来てなかったため、俺は真っ先に馴染みのある友達のところにいき、談笑をしてHRまでを過ごすことに決めた。

 

 他愛もない話をしているうちに席の大半は埋まって来ていて、俺も新たなコミュニティを築くべく、自分の席へと戻った。

 

 俺の席の後ろには校門で見た彼女が体を小さくして座っていた。教室という大きいようで小さな箱の中でどうして彼女が入ってくる瞬間を目撃することができなかったのだろうか。今のように既に小さい体をまた小さくして教室のドアをくぐり抜けて来たのだろうか。しかし俺にとってそんなことは既にどうでもなかった。気づいたら俺は好奇心のままに彼女に話をかけていた。

 

 俺が一目惚れした女の子の名前は、湊あくあさん。これだけ特徴的な髪色をしていて名前すら聞いていないのは、中学校入学に合わせて引っ越してきたからであった。初めて声をかけた時には飛び上がるほど驚かれてしまった。彼女曰く異性に話しかけられることはほとんどなかったらしい。本当だとしたら小学校の男子共の目は節穴に違いない。

 

 あくあは一言で言えばとても面白い子だった。俺は小学校から陸上やバスケットボールに明け暮れていたスポーツボーイだったが反対にあくあはゲームが好きだった。俺は会話を出来るだけ広げたくて普段は全くしないおねだりをしてまで両親にあくあがやっているゲームを買ってもらったりもした。部活が終わると真っ先に帰宅しゲームに打ち込んだ。夜通しプレイしてしまったこともあった。そんな話をするとあくあは笑ってくれた。

 

「...あ、あてぃしと一緒に、ゲームやろうよ」

「えー、でも俺初心者だし結構下手だよ?」

 

 年頃の男の子らしく照れ隠しをしてしまった。もちろん答えはイエスだしノーと断るつもりもなく舞い上がってしまいそうなほど嬉しかった。

 

「もしもし、あくあ」

「...」

「もしもーし?聞こえてる?あくあ」

「あっ、うん聞こえてるよ。ッスゥー...へ、部屋作るね」

「はーい。あくあよろしくね」

「.うん、よろしく」

 

 あくあは俺の想像の5倍は強かった。あくあは1番上のランク帯に1人でいけるくらいには強いそうだ、俺とやってるゲームが実は違うんじゃないかとまで思った。この機会を皮切りに俺とあくあの仲はどんどん深まっていった。最初こそあくあは話す時にドギマギしたり声が小さくなったりしていたが今では互いにいじりあえるくらいには仲良くなれた。俺の部活がない日は一緒に帰ったりもした。同級生に囃したてられ、うるせー、なんて言ったりもしたけどあくあといる時間が俺にとってはとても幸せだった。そんなおもしろ可愛い一面を知って俺はますます彼女に惹かれていった。

 

 

 

 イルミネーションが街を鮮やかに彩る頃にはデートをした。インドアなあくあが外に出てくれるか不安だったがあくあは快く承諾してくれた。大きなクリスマスツリーが立ってる前で俺は一世一代の大勝負にでた。

 

「好きです、俺と付き合ってください!」

「...あたしも好き」

 

 俺の差し出した右手をあくあは小さな手で握りしめてくれた。クリスマスというロマンチックな日に晴れて俺たちは恋人になることができた。

 

 

 

 互いに異性との付き合い方を知らなかったがそれは杞憂に終わり、俺たちらしいペースで付き合いを進めていった。中学生の俺たちは中学生らしいお祝いの仕方で記念日の喜びを分かちあった。誕生日会を開いてプレゼントを交換したり、その後はいつもと変わらずゲームをした。部屋でゲームをしている途中、顔真っ赤にしたあくあが俺に突然抱きついてきた。

 

「ねえ、○○」

「どうした?」

「キスしたい」

「え...」

「...○○はいやだ??」

「全然!!そんなことない!でも俺やり方わからないしその.」

「うん」

「恥ずかしいんだよね」

「...そっか。そうだよね」

「いや!でも、俺はあくあとキスがしたい。やり方は分からないし失敗するかもしれないけど、初めてのキスはあくあがいい」

「ふふ、○○あてぃしのこと好きすぎ」

 

 あくあの両頬に手を添えて静かにあくあの唇に俺の唇を重ね合わせた。歯と歯がぶつかってしまったが、そんなことはその場の雰囲気がカバーしてくれた。ファーストキスはレモンの味、という言葉があるがキスの味を確かめる余裕なんてあるはずがなかった。

 

「...あくあ、もう1回」

「...うん」

 

 顔を好調させ上目遣いのあくあを前に俺の理性があるはずはなかった。部屋の中の静寂はだんだん激しくなるリップ音が切り裂いてくれた。振り返るととても不器用だったと思う。それでも俺たちは確実に1歩ずつ大人になっている気がしたし、これからもずっと恋人でいられると確信していた。

 

 

 

 高校は同じ所へ進学することができた。しかし中学校の頃とは違い別々のクラスになってしまった。あくあと離れることに一抹の不安を感じつつもその分日常を大事にしようと思うことができた。

 

 

 

 高校に入ってからの放課後はやりたいことが沢山あった。あくあと一緒にカラオケに行ったり、クレープを買って食べながら帰路についたり、ゲームセンターに行って楽しむあくあを間近に眺めたり、メモ帳に書き出さなければ忘れてしまうほど沢山あった。

 

「今日は何のクレープ買ったんだ?」

「フルーツがいっぱい乗ってるやつ〜」

「うわ、めっちゃホイップクリームとか乗ってるじゃん。太りそうだな。44.5キロ以上あr」

「うるさい!!」

「ちょっと、ほんとにごめんごめん俺のソフトクリーム少しわけるから許して」

「全くもう。女子に体重の話なんてデリカシーなさすぎ」

「ほら、ソフトクリーム、食べていいよ」

「うん!ここのソフトクリームはやっぱり美味しいね」

「あーあ、食べちゃったからまた太っちゃうわー」

「もう!」

 

 正直にいうとあくあをいじるのが心底楽しかった。あくあのリアクションを見ていると自然と笑顔になれたからだ。そして自分の思っている100倍はあくあのことが好きだった。

 

「あくあといるとすごい安心する」

「もうーくっつきすぎ」

 

 俺は人肌が恋しくなるタイプだった。恥ずかしながらあくあよりも俺からハグを求めることが多かった。ハグだけに留まることは稀で、無論ベットが軋み、愛情を育むことも沢山あった。この時間は永遠のものだと勝手に思い込んでいた

 

 そんな幸せな時間は無限にあるはずはなかった。

 

 俺が思うよりも高校に入ってからは時間が無かった。一年生の時こそあくあと多くの時間を過ごすことができたが、二年生になってからは主に部活が多忙を極めた。二年生になってからは本格的に主力としてチームに貢献することも多く、キャプテンに抜擢されてしまった。朝練はもちろんのこと部活後の居残り練にも精を出していると家に帰ったあとは体力はオーバーヒートし泥のように眠る日々が続いた。

 

 気づいたらあくあと連絡もゲームもあまりしなくなってしまった。たまに一緒に帰るくらいになってしまった。これが俗に言う倦怠期だったと思う。

 

『○○部活お疲れ様』

『うん、ごめん眠たいから寝るね。おやすみ』

『あくあがメッセージの送信取り消しました』

『あくあがメッセージの送信取り消しました』

『あくあがメッセージの送信取り消しました』

 

 この状況は彼氏としては何があったかを聞くべきなはずなのに、俺はそれさえもしてあげることができなかった。その年の文化祭などのイベントは互いの友達と過ごすようにまでなってしまった。

 

 

 

 遂に3年生になった。つまり俺とあくあが出会って6年が経過していた。過去にあくあは俺と一緒に大学に行くと公言していた。そして俺もこの体たらくなはずなのに勝手にあくあが着いてきてくれると思っていた。

 

「湊あくあさんは今月を持って遠くの方へ引っ越すことになりました」

 

 と担任は言った。わけが分からなかった。引っ越すことでは無い。問題はなんで彼氏である俺が知らないということだった。

 

「なんで、言ってくれなかったんだよ」

「だってそれは○○が忙しそうで...」

「でもそんな大事なことは誰よりも先に言ってくれよ!」

「でも!○○はあたしがLINEしてもすぐ寝るじゃん!少しはあたしに構ってくれても良かったじゃん!あたしにもあたしの正義がある。あたしはずっと○○を待ってた。迷惑だろうから連絡の頻度も落としたしゲームもあんまり誘わないようにした!でもたまにはさ」

「.構ってくれてもいいじゃん」

 

 あくあの目には大粒の涙があった。何粒も何粒も頬を流れる俺はとても拭えるような立場ではなかった。

 

「...別れよう、あたしたち」

「あくあ、待って!」

 

 

 

 それ以降俺たちは接点が無くなった。そして恋人としてではない本当のお別れの日はすぐやってきてしまった。

 

 

 

 俺は最後の最後まであくあに顔を向けることはできなかった。だって嫌われたと勝手に思っていたから。

 

 

 

 あくあが引っ越した次の日、同じクラスの紫咲さんに呼び出された。

 

「なんで来なかったの?」

「だって嫌われてるだろうし、あくあも会いたくないだろ」

「それは○○くんが勝手に思ってるだけでしょ?」

「そんなことない、だってあんな振られ方をしたんだ。紫咲さんも知ってるでしょ?嫌いに決まってる」

「...○○くんと別れたあともあくあはずっと好きだったよ」

「...は?」

「あくあは○○くんを気遣って別れた。部活で忙しいし引っ越したあとはほとんど会えなくなることを危惧して。あくあすごい泣いてた。だって6年の仲じゃん」

 

 確かに俺はちゃんとした理由を聞いていなかった。ただ単純に愛想を尽かされたと思っていた。でもその気持ちになっていたのは俺ではなくあくあだった。

 

「ずっと気にかけてたよ○○くんのこと。今度大会だけど大丈夫かな、体調崩したりしてないかなって。そして最後くらいまた前みたいに笑顔を向けてくれないかなって」

「...ごめん、言葉が出てこない」

「...これ、あくあからの手紙」

 

 ○○へ

 突然引っ越しなんてしてごめんなさい。そして6年間ありがとうございました。○○に伝えたいことがあります。まずはずっと傍に入れなくてごめんなさい、大学に一緒に行けなくてごめんなさい。あたしは本当は○○と別れたくありませんでした。でも引っ越して○○と会えないこと、○○が忙しそうにしているのを見ると別れるのが賢明だと思いました。あたしにもあたしなりの正義があります。好きな人には好きなうちにいっぱい愛でてあげてください。別れは突然やって来てしまいます。日常がずっと続くとは限りません。その一瞬一瞬を大切にしてください。最後の最後まで好きでした。最後会いに来てくれたら嬉しかったな。

 湊あくあ

 

 読み終える頃には手紙の余白のシミはひとつからふたつへと変わっていた。

 

 

 

 

 

 

 




湊あくあさんの引退未だに信じられません。最後まで応援します

次話、何期生で書けばいいでしょうか?

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